Earth  ◆ そんなに増えてどうするの? ◆

確か僕が小学生のころ、世界の人口は38億人だと教えられた気がします。 それが20年たった今(1996 年)では、58億人だそうです。

人口増加のことを考えると、暗い見通しが頭を巡るばかりです。
最近の新聞記事には、以下のようなものがありました。




人口が伸びないと言い、人口が増えると言い、子供が少ないと言っては、 それを憂えるようなニュースが流れます。いったい何が望ましいの でしょうか。

人間は長い進化の果て、つまり厳しい生き残り合戦を勝ち抜き 続けた末に残った生物ですから、死ぬよりは生きるように行動し、 苦しむよりは楽なほうを選択するようにできています。 生活に余裕があれば子供は2人より3人欲しい と思います。
淘汰による進化プロセスの必然として、そういう直観的な感じ方 (よろこび) を人間は持つようになっています。
その感じ方にしたがって、人間は医学を発展させて寿命を伸ばし、 食糧生産を増やして生活を楽にし、人口を増やして来ました。

でも一方で、老齢人口の割合増加は望ましくないとか、人口が 増えすぎてもいけない、資源は有限だ、環境を保護しろという問題が 口にされるようになりました。
それももっともなことです。これほど急激に死亡率が減り、環境を 加速度的に消費しながら大発生した生物は地球史上まれなものでしょう。 この調子で人間が増え続けたら、 けっこう悲惨な未来 が待っていることは想像に難くありません。

少し考えればわかることですが、 産めよ増やせよゴーゴー! では、悲惨な未来へまっしぐらです。
これらは産業社会がおこる以前の、環境に余裕があった時代や、死亡率の 高い戦争期には安定に働いていた信条かもしれません。 しかし、人が死ににくくなった現代においてはもともと矛盾した 望みなのです。
「人口一定」を固定条件とすると、「長寿」と「多産」のどちらかを あきらめなくてはなりません。
つまり、これからは直観的には幸せと思えない選択をしないと、 不幸な未来が待っている(そういう意味で、既に世界はいびつに なってしまっている)ということです。

さて、ここで頭を働かせて考え直してみましょう。
生物種として「繁栄する」ということの本当の意味は何でしょう?
増えることでしょうか、高等になることでしょうか。 美しくなることでしょうか、楽することでしょうか。
ほんとうに僕達が望むものはなんなのでしょう?

僕の考えるひとつの答えは、 「種として安定して続いて行くこと」です。
例えば、人口、出生率、死亡率が一定の世界です。 生涯出産子数は2を少し超える程度 で、ある程度歳をとったら死んで行ける世界です。
あるいは、長寿化が進みつづけ、子供がどんどん減る世界です。
いずれにせよ、発展し続け、消費し続け、増え続けることを前提とした 考え方は、そろそろ捨てるべきでしょう。

「人口一定」かつ「ひとりあたりの単位時間エネルギー消費量一定」 とするのも良い基準かもしれません。なぜなら、地球に供給される 唯一のエネルギー源である太陽エネルギーは、単位時間あたり一定量しか 得られないからです。それ以上のエネルギーを使おうとすると、 過去か未来の分を引っ張り出すことになり、それはやがて破綻します。 (例えば石油エネルギーは過去に蓄積された有限のエネルギーです。)

長生きが幸せではなく、死が逃れられないことだとすれば、 「自分の意志で穏やかに死んで行けること」が一番の幸せとなるのかも しれません。そういう信念(あるいは宗教)が流行るのかもしれません。
将来、人間の死因の第1位は、自殺による安楽死 となっているような気がします。



たまたまある講演を聴いていて耳にしたのですが、
「70歳以上での死因に、自殺が占める割合は、日本が世界で一番高い。」
だそうです。(データ出典が不明確で確認できないのですが。)
日本は ( 医療も社会保障も発達して ) 世界一の長寿国、 つまり死ににくい世界なので、死にたいと思うまで生きてしまうのでしょう。

「生きたい、死にたくない、という意思」によって、僕たちは生きます。 そして、「病気や怪我や老衰などの、 意思ではないもの」によって死に至ります。
その両方向の力によって、あるバランスが 保たれていたのですが、このごろは意思を重視して医療や技術が発達し、 死ぬ要因はどんどん減らされてきました。 この、両方向の要因が、意思と非意思による別のものであり、その片方だけを 重視したことが、現在のアンバランスに至る、ひとつの原因であると思います。

「死ぬことは絶対に良くない」と人はいいます。でも年老いて、 ただ生きることはできるが、生きるのが楽しくないというとき、 たとえば体も動かず目も耳も衰えてしまったとき、 あるいは体に問題はないが、やりたいことが何もないと感じてしまうとき、 それはどういう世界で、そこにはどういう選択肢が残っているのでしょうか。
1997/09/11, 1997/10/04



週間地球TV(TV朝日 1997/10/17 深夜放送)を観ていたら、 こんなデータが出てきた。
「日本の15〜44歳の死因のうち、男女とも自殺は1位か2位である。」
「自殺により1年間で2万3千人死んでいる。交通事故死者の2倍の数。」
だって。もうすでに1位になっていたのか。すごいことになってるなこりゃ。
1997/10/20



《新聞記事 1999/10/22》
国連は10月12日、世界の人口が60億人を突破したと発表した。
2003/02/24



読売新聞社の世論調査(2000/01)によれば、 子供の数の理想は、1人 1.6%、2人 39.8%、3人 48.3%、4人 5.0% だそうです。 それに対し現実の子供の数は、1人 12.4%、2人 42.5%、3人 18.0%、4人 3.7%。
2000/01/30



【データ】日本の人口データ(2000年12月31日 読売新聞を参考)

1900年ごろ 1999年
平均寿命・男 43.9 歳 77.1 歳(世界一)
平均寿命・女 44.8 歳 83.9 歳(世界一)
乳児死亡率
(出生時1000人中1年未満の死亡数)
155 人 3.4 人(世界一)
1930年 1999年
初婚年齢・男 27.3 歳 28.7 歳
初婚年齢・女 23.2 歳 26.8 歳
女性一人が産む子供の数
(合計特殊出生率)
4.72 人 1.34 人
1世帯の人数 4.98 人 2.88 人(1995年)
離婚率 0.8 % 2.0 %
生涯未婚率・男 1.68 % 8.99 %(1995年)
生涯未婚率・女 1.48 % 5.10 %(1995年)


* だんだん発言が "ユナボマー" みたいになってきたなぁ、と自分で思う。:-p)

1996/05/05 T.Minewaki
2003/02/24 last modified T.Minewaki

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