グローバル・ヒーティングの黙示録

第五章 都市における変化

 

第五章 都市における変化

都市は運輸や電力に依存している部分が大きいため、それ自体では大したことはできないように見えますが、逆にみればここに大きな改善余地があることがわか ります。

 

ライフスタイルを変えて炭化水素燃料消費を減らす

ライフスタイルを変えて炭化水素燃料の消費を節約ことは大切です。日本政府が提唱しているのはラフな服装で冷房温度を高めに設定するというク−ルズビとか リサイクル・ペーパーを使うということですが、若い世代は将来の被害者ですから覚醒していて健康で持続性可能な生活スタイル(Lifestyles of Health and Sustainability) に関心があります。例えば、夜更かしはやめて早寝・早起きをする。シャワーはみだりに使わない。レジ袋や料理用のラッピングやホイルは使わな い。ペットボトルはリサイクル使用する。エンジン・ウォームアップは短く、アイドリング・ストップ、車はやめて歩くか自転車を使うなどです。

2002年の人口一人当たりの自転車保有台数は1位オランダで0.9人に1台、2位ドイツで1.3人に1台、3位日本で1.5人に1台ですが自転車専用道 路の整備状態ではオランダ17%、ドイツ5%、イギリス4%、日本0.2%で日本では行政の対応が遅れていて発展途上国です。車優先を見直し、都市部では 30km以下でそうこうしなければいけないゾーン30はパリでは道路の10%になる。またパリではベリブというレンタサイクルシステムが導入されていま す。

全館空調はやめて居室限定空調、自家用車や航空機は使わず、公共交通機関を使い、会議のための移動は大型スクリーンを使ったビデオ会議で代替するなどで す。著者も自家用車を持っていますが、ハイブリッド車を買う余裕もないので、高価な高速道路代金とガソリン税の節約のためにほとんどの時間ガレージの中で 眠らせておいてゼロ・エミッションカーだと悦に入っています。

政府は紙のリサイクルを奨励していますが、リサイクル・ペーパーを使うことは製紙連合会の資料によれば伐採した木材のパ ルプを使うときは紙1トン製造するために石油を使って366トンの二酸化炭素放出ですみますが、リサイクル紙を使う場合は石油をさらに多く使って712ト ンと約2倍になるので 、炭化水素燃料の節約にはなりません。日本は先進国では第3位の森林面積比率を持つ国であるにも関らず日本の林業は製紙業に木材を供給することをやめて久 しく、外国から森林を買って紙にしているため自給率は10%にまで低下しております。製紙業は国産のパルプを使って石油の消費を減らすのがサステナブルな 政策といえるのです。

オフィスではサマータイムを採用することが考えられます。ただサマータイムは家庭の照明用電力は減ってもオフィスから早く帰るため、冷房電力が増えるとい う研究もあります。

若者達はまたヨーロッパで採用されているカーボン・フットプリントを消すためのカーボン・オフセット募金などへの寄付などにも自発的に参加していますが IPCCが間違っていたのですから無意味です。

ライフスタイルに関しては沢山論じられていますからこれ以上深入りせず、技術で対応できることに限定して論を展開します。

千利休の「南方録」に

家はもらぬ程に 食事は餓えぬ程にて たることなり、これ仏の教え 茶の湯の本意也

 

照明器具・エレクトロニックス機器の効率向上

現在のライフスタイルを維持しながら炭化水素燃料の消費を減ずる方策としてはエネルギー消費端の効率を向上させることです。

もっとも簡単にできるのは照明器具を白熱電灯から蛍光灯や発光ダイオード(LED)や有機エレクトロ・ルミネッセンス照明に替えることです。一般家庭では 電力の1/6を照明に使い、オフィスや店舗では20%です。工場も含めた国内の照明用電力は4%ですから無視はできません。白熱電灯からLEDにすれば 80-90%節約になります。そしてディスプレーを陰極管から液晶や有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルに替えることです。LEDは各種ありま すが照明用に使われるようになったのは光ー電子変換効率の高い直接遷移型半導体に分類される窒化ガリウムという発光素子を使って青色発光できるようになっ てからです。現在では酸化亜鉛でも青色発光が可能となっています。そして黄色蛍光体と併用して白色発光ができるようになったのです。

現時点では家電は交流です。しかしLEDは直流で点灯します。このため偶数のLEDを組み合わせて、電圧と交流のそれぞれの波の両側で発光するように電球 に組み込みます。ソーラーセル (PV)で分散発電する場合はインバーターで交流変換せず、直流LEDを使えば発光効率が向上し、夜間照明はバッテリーで可能となります。

自動消灯・点灯も考えられますが、自動制御機器の待機電力にも配慮する必要があります。 一般に平均的な家庭の待機電力は消費電力の5-10%です。LSIの記憶は不揮発性メモリであるMRAM(磁気抵抗メモリ)またはフラッシュメモリに蓄え る回路を開発して待機電力を減らす必要があります。

エレクトロニクッス機器例えば、テレビやパソコンの表示機器をブラウン管から液晶に交換する。自動化に伴う、待機電力の 節減、CPUの低電力化などがあります。

TVなども基本的には直流ですのでこれもバッテリー化が可能です。空調は昼間蓄冷をすれば、100%オフグリッド電力となります。今後ソーラーセル (PV)の普及に伴い、直交変換ロスを減らすために直流で稼動する照明器具、冷蔵庫、空調機が市場にでてくるでしょう。

 

空調の効率の向上とゾーン化

ヒートシンク温度TH=35oC、ヒートソース温度Tc=28oC の時の空調の理論成績係数は理論COP Coefficient of Performance)といいます。理論COP=TC/(TH-TC)= (273+28)/(35-28)=43です。

1998年のCOPの実績は4(伝熱温度差18oC)しかありませんでした。2005年には7(伝熱温度差9oC) にまで向上しました。特別に伝熱面積も増やさず、伝熱係数を向上させなくともCOPが約2倍になったのはインバーターによる可変モーターの採用のためで す。圧縮率が可変となればヒートシンクとヒートソースの温度レベルに応じて インバーターで電力網の交流を一旦直流に整流し再度負荷に応じた高周波交流に変換しモーターの回転数を調節することができます。従来オンオフ制御で温度制 御していたときは装置の稼働率は50%程度でした。しかし可変モーターは圧縮比を自在に変えられますので常時運転が可能となり、稼働率は2倍になります。 そうすると見かけ上、伝熱面積が2倍になり、温度差は半分になります。図-2.1のようにVCOPは2倍になるわけです。

これを2050年には3倍の12(伝熱温度差4oC)にするのだという目標を元東大総長の小宮山氏が展開しています。しかし理論成 績係数に近づけることを伝熱温度差を小さくすることで達成しようとすると、温度差の逆数は伝熱面積ですから温度差が小さくなるほど伝熱面積は双曲線をた どって増え、温度差ゼロでは無限大に大きくなってしまいます。たった一台の空調機を作るために全世界の資源を食いつぶしかねないわけです。このように効率 向上には限度があります。

家庭でもオフィスでも全館一斉空調はさけ、ゾーン化して無人の部屋や領域の空調はしないという配慮が必要でしょう。 冷媒にはオゾン層にやさしいアンモニアとか二酸化炭素を使います。

図-5.1 空調の理論成績係数COPと伝熱面積

冷媒は漏れて空気と混ざっても爆発しない不燃冷媒フロンをデュポン社が開発してから世界のヒートポンプはフロンをつかってきました。しかし、フロンがオゾ ン層を 破壊することが明らかになってから、デュポン社が塩素を全く含まない炭素とフッ素だけの化合物を代替フロンとして開発して世界はこれを使ってきました。と ころが代替フロンも温暖化ガスとして、また熱 効率も低いことから再びイソブタンとかプロパンが使われるようになりました。特にヨーロッパが意欲的に炭化水素系に移行しています。日本でも冷蔵庫はイソ ブタンにかわりました。年中う使うわけですから省エネ効果は大きい。冷蔵庫は冷媒ホールドアップが80グラムで、たとえ漏れても爆発範囲に入らないからで す。しかし空調機はもし漏れたときに部屋を吹き飛 ばす可能性はあります。福島原発のようなこともあり得るということになります。無論放射能はのこりませんが家が壊れてしまう。家庭では都市ガスを使ってい るのですから危険度は同じなのですが、メーカーは製造物責任に問われるのがいやで販売していません。自己責任でフロンを炭化水素冷媒に交換すれば省エネ は可能です。無論潤滑油もまぜないとコンプレッサーは焼きつきますが。ヨーロッパでは空調機もすべてプロパンになっていると聞きます。冷媒交換ビジネスし もありますが規制緩和のできていない日本では申請作業が大変のようです。

エネルギー的には効率よくありませんのおすすめできませんが、ガス空調機を使って電気代を節約する手はあります。しかし 国家的にエネルギー輸入量が減るわけではありません。

ヒートポンプの利用と効率向上

<ヒートポンプの利用>

一般に環境と熱のやり取りをする圧縮機を使う熱サイクルをヒートポンプ・サイクルと言います。空調機もその一つですが、空調サイクルの室内外を逆に切り替 えて使うようにできます。この場合消費電力の数倍の熱を外気から取り込んで暖房に使えます。ちょうど発電サイクルで失った熱を取り戻すような形になりま す。

東京都下水道エネルギー社は下水道が都市空間の隅々まで張り巡らされているとこと、下水温が外気より10oC高いことを利用し、 ヒートポンプを介して温水を製造し、東京ドーム周辺のホール、ホテル、金融機関のオフィスに暖房用の給湯をしております。

東京都交通局も地下鉄網が都市空間地下のあらゆるところに張り巡らされていることと、駅構内の気温が外気より高いことに着目し、ヒートポンプを介してビル 暖房用のお湯を製造しております。

青森県栽培漁業センターは八戸の廃棄物処理業者奥羽クリーンテクノロジーからトランス・ヒート・コンテナーでゴミ焼却の廃熱を18km輸送して海水を温め 魚の養殖に利用しようとしております。トランス・ヒート・コンテナーはドイツが開発した技術で酢酸ナトリウム水溶液などの潜熱蓄熱材(Phase Change Material, PCM)を詰めたプラスチック・ボールを油の中に充填したコンテナです。

<効率向上>

専用加熱器として使う場合、二酸化炭素を高圧にして超臨界冷媒として使うと冷却曲線がほぼリニアになりますので温水との温度差を小さくできますのでCOP を2.1から3.5と向上できます。また伝熱係数向上のために外径1mm、内径0.5mmという細管にフィンをつけた熱交換器の採用などの工夫がされてい ます。

交流を一旦直流に整流してから自在な周波数の交流を発生できる電界効果トランジスターMOSFETやBT(Bipolar Transistor)を使うインバーターで交流モーターの回転数制御をして容積型コンプレッサーを駆動するとオンオフ制御用に用意された伝熱面積を常時 使えるため実質伝熱面積が増えてCOPが向上します。

 

ジェヴォンズのパラドックス

高効率化はジェヴォンズのパラドックスで無効化されます。ジェヴォンズ・パラドックスとは、「最先端の省エネルギー技術 を開発途上国に導入すると、所得効 果等により、かえってエネルギー消費量が増大する」という省エネルギー技術導入とエネルギー消費量の間の逆説的な関係を指摘したものです。今から140年 以上も前の19世紀半ばのイギリス経済学者、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(William Stanley Jevons)が『石炭問題(The Coal Question)』(1865年)のなかで指摘したパラドックスです。ジェヴォンズ・パラドックスの他にも、燃料電池は高価格で使えません。


スマートハウス

1980年代にドイツの物理学者ヴォルフガング・ファイストとスウェーデンの建築家ボー・アンダソンが考案したパッシブ・ソーラーハウスというものがあります。パッシブハウスは窓の開口部を制 御するもので日本家屋はかなりこのパッシブ性格をもっておりました。これに対し積極的に家屋を断熱型にするアクティブ・ソーラーハウスという概念がありま す。スェーデン式無暖房住宅とも呼ばれます。現在の日本の住宅は5cm程度の保温材しか使っておりませんが、アクティブ・ソーラーハウスであるスェーデン 式無暖房住宅の概念を採用して厚さ45cmの保温材で家を包みます。窓には近赤外輻射をカットする膜をガラス内面に張り、2重ガラスの間隙にはクリプト ン・ガスを封入して対流による熱損失を阻止し、出入り口はダブルロック方式とします。熱交換式換気を採用して生活で発生する熱を回収します。こうして室温 を維持します。これをゼロ・エミッションハウスと呼ぶ人もいます。

しかし熱還流は窓が最大です。

   
外気温 -2.6 33.5
室温 18 27
% 58 73
% 15 7
% 7 3
屋根 % 5 11
換気 % 15 6
合計 % 100 100

日本の窓の熱還流率は各国に比べて高い。その理由はアルミサッシを使うからです。

  W/m2K
日本の8割の実態 6.5
日本の新築 4.65
経産省の窓の等級 2.33-4.65
フィンランド 1
ドイツ 1.3
デンマーク 1.5
チェコ 1.7
オーストリア 1.7(住宅1.4)
イギリス 1.8
ハンガリー 2
フランス 2.6(住宅2.1)
イタリア 2-4.6
スペイン 2.1-2.8
韓国 1.4-2

しかしこの方式は木造戸建を一生に1回建てたいというような願望を持つ日本文化では無駄な投資になります。数世代にわたって使うという文化をまず育てない と投資はおこなわれないでしょう。


オフグリッド・アクティブ・ハウス

このアクティブ・ソーラーハウスの屋根に4.1kWのソーラーセルを乗せ161kWhのバッテリーに投資して分散発電します。これも電力会社に支払う電力 料金より安くつくのです。 一番重要なポイントはPVを屋根材として使うことで屋根材分だけコストダウンすることでPVはただ同然の評価でよいことになります。集合住宅においては壁 面材もPVで代用できます。

図-5.8 オフグリッド運用のアクティブ・ハウス

自家発電した電力を直交変換で損失させないために電力は200V程度の直流とします。(トヨタのプリウスと同じ直流システムで統一)昼間は可変周波数の直 交変換インバーター内蔵永久磁石同期電動モーター駆動の自動洗濯機を使い洗濯から乾燥まで行ってしまいます。同じ仕掛けでヒートポンプによる蓄冷式冷凍・ 冷蔵・空調機を稼動し、夜間用の蓄冷をします。蓄冷式冷凍庫は冷凍庫内に装備した凍結済みの冷凍板からの冷気の自然対流により冷凍庫内を一定温度(冷凍・ 冷蔵温度帯)に保ちます。空調は蓄えた冷熱で行いますが、部屋毎に分割してゾーン制御します。断熱型家屋のため能力は小さななものです。

<PV+バッテリー>

余剰電力をバッテリーに蓄えて夜間電力として使います。こうして前節でのべた電力網から独立してオフ・グリッド運用が可能となります。蓄電は高価ですので 夜間の消費量を極力小さくするために冷凍・冷蔵・空調用のファンは可変周波数の直交変換インバーター内蔵永久磁石同期電動モーター駆動とし、LED照明、 情報機器も直流電源とします。AV機器や情報機器のためにDC電圧を14Vに下げるためにはDC-DCコンバーター(一旦交流変換してトランスを使い電圧 を下げ再度整流して直流にもどす箱)を使 います。これもプリウスと同じコンセプトです)。料理はIHで行います。

AC転換するPV+バッテリーシステムは2011年に商品化されています。

<PV+ハイブリッド車 or EV車>

バテリーは高価ですからプラグイン・ハイブリッド車またはEV車搭載のバッテリーを兼用することも可能です。プラグイン・ハイブリッド車は燃料電池または レシプロエン ジン搭載です。長期間天候不順でバッテリーが空になればスマートハウスと自家用車は直流システムで直結されていますから自動車搭載の燃料電池電池またはエ ンジンが自動的に稼動して充電します。EV車はこういう芸当ができません。燃料はサンベルト地帯でCSP発電で製造したアンモニア燃料が使われるようにな るのではないでしょうか。ドイツでは サンベルト地帯でCSP発電で製造した水素やメタンを考えているようですが、アンモニアのほうが貯蔵・輸送費は安上がりです。

プラグイン・ハイブリッド車搭載のバッテリーがなくとも長期不順天候のための予備として自家用揚水発電または浸透膜発電装置に蓄えることも考えてもよいで しょう。

CNG ハイブリッド車やEV車をPVのバックアップ電源と共有するという方法もあります。トヨタ、ニッサンが2012年6月商品化すると発表しました。

ソーラーセル・ハイブ リッド・コレクターとボトミング・サ イクル発電

PV と温水加熱器を組み合わて発電と温水を同時につくりこの温水で発電する方式です。後で別途詳しく説明します。

スターリング・エンジン集光発 電

詳しくは後で述べます。

< 自家用揚水発電>

自家用揚水発電は直径1m、深さ100の井戸を2個を並べて掘り、39.6トンの水を50mの落差で上下させます。回収 率70%として約3.7kWhの蓄 電が可能です。夜間電力500Wで約7時間の消費に耐えられます。3.7kWhのリチウムイオンバッテリーの単価は50,000yen/kWh、寿命9年 です。100年間の費用は205万円となります。したがって100年間自家用揚水発電はつかえるでしょうから井戸の建設費が205万円ならバッテリー価格 とほぼ等価となります。井戸が資産として評価される時代が到来するかもしれません。

建設省土木工事積算基準によりますと

 

単価yen/m3

土砂,レキ質土のバックホー (0.6m2)を使う人力併用機械掘削単価

828.0

積み込み単価 200
一時置き場までの運賃土砂運搬費 1500
埋め戻し土運搬費 1500
人力併用機械埋め戻し 828.0
埋め戻しなしの深井戸土工事単価合計 2,528
埋め戻しはするが段階的掘削で土砂運搬なしの土工事単価合計 1,856
埋め戻し、運搬費込みの広域掘削土工事単価合計 4,856
重機回送費 20,000
諸経費 100,000
固定費合計 120,000

表-5.6 土工事単価

揚水蓄電用直径1m、深さ100の井戸を2個を並べて掘削する土工事費は2,528yen/m3 x (p/4) x 100m x 2 + 120000=520,000yen コンクリートヒューム管工事含め150万円 となりますので100年間つかえれば揚水発電はペイしますが、そうでないときは27万円のバッテリーをえらぶでしょう。揚水発電では30%の往復ポンプ・ タービン損失で水は加熱されますから、温水加熱器がなくとも暖房とシャワーに使えるかもしれません。 家の基礎の下2-3mの土を蓄熱体とする方式も考えられます。

<PV+ 浸透圧発電>

浸透圧発電(Osmotic power)の一つ、浸透膜発電Pressure retarded osmosis(PRO)方式による蓄電は13トンの真水の容器と塩水の容器と小さな濃塩水タンクを用意します。昼間、余剰電力で塩水を脱塩して真水を作 り溜め、夜間真水が塩水を希釈して作る落差150m相当の高圧でタービンを回します。回収率を70%とすれば3.7kWhの蓄電をすることができます。


オフグリッド・パッシブ・ハウス

オフグリッド・アクティブ・ハウスは高断熱ハウスにPVで昼間空調機をフル運転させ、余った冷熱を蓄冷して夜間空調するというの仕掛けです。

<地中熱利用空調>

しかし地球の 表面温度は第1章で説明したとおり、年間平均すれば15oCです。地表の上層の温度は昼間太陽日射で 変動しますが、深さ1.5mの地盤の温度は13-17oC、深さ15mでは15oCに維持されています。 (この温度は緯度によって決まっていてドイツでは5oC低い)この地盤が蓄積するエネルギーを循環不凍液(ブライン)を介して室内 空気と熱交換すればヒートポンプ式空 の負荷を限りなく小さくできます。(ground source energy)冬季はこれを暖房に使えるのです。

必要な工事は家の近くの地下に直径1インチ、厚さ3mm、長さ80mのポリエチレンチューブを埋設するだけです。 チューブの埋設法としては家の床下にも可能ですが、太陽光から遮断されますので蓄熱目的にしか使えません。太陽と地盤との絶妙な熱交換の有効利用のために は床下は避けます。地下室がある場合は家の周囲1.5m深さに チューブを2回巻きつけます。広い庭があればそこにトレンチを掘り、そこにチューブを水平に埋めます。庭が無いときにはドリルで掘った直径1インチ以下、 深さ5−10m程度の縦坑数本にチューブを垂 直に埋め込みます。この3法のうち、いずれかの方法を採用します。

土の熱伝導率はPHPP式では2.0W/mK、QPEX式は0.7W/mK。国際的なディフォルト値=1.5W/mKを日本でも採用していく傾向にありま す。

広い庭にトレンチを掘る土工事費は1,856yen/m3 x 40m x 1m x 2m + 120,000 = 268,000yenですから、土工事は27万円かかります。ここに埋め込む熱交換用のポリエチレンパイプやデンマークのGrundfos社製で世界標準となっているUPS型インバータ回転制御方式 の超小型インライン・遠心ポンプはドイツで市販されてい る価格から類推して100万円となります。合計投資額は127万円となります。これは蓄熱型空調機の初期投資額30万円+PVより高価ですが長い目でみれ ば経済的です。問題は地中熱利用は日本では暑すぎてヒートポンプ併用となりますから、工事費を正当化できません。

これはパッシブ・ハウスでもあります。しかし建物の保温はアクティブ ・ハウスの高断熱思想を受け継ぎます。 ここでもアクティブ・ハウスと同様、一番重要なポイントはPVを屋根材として使うことです。屋根材分だけコストダウン出来、PVはただ同然の評価でよいこ とになります。電力消費の多い空調機がなくなりますので、冷凍冷蔵庫も、不凍液循環ポンプ、空調ファン動力も全て夜間はバッテリー駆動とします。

図-5.9 オフグリッド運用のパッシブ・ハウス

ヨーロッパのようにレンガ造りで100年以上使用する家屋の場合、地盤空調とか揚水発電の土木構造体は100年は使えますから2世代で住むか、このような 設備を評価する買い手がいれば投資のし甲斐はあるというものでしょう。

望月氏によればヨーロッパではEU指令2010/31/EU によって、2020 年からは新築の建物はすべてパッシブハウスでなくてはならないとされているとのことです。日本の意識との何たる落差。日本では集合住宅は古くなれば二束三 文、個人の住宅はわが町を25年間観察した結果、持ち主が死亡した場合、残された遺族はこれを売りに出します。買った人は建て替えか、敷地を二分割して マッチ箱の家が2軒というのが事実。これは 土地代金がいまだ高値のままであるにもかかわらず相続税が高率に維持されているため、子が親の遺産を相続できないことも一因です。こうした悪循環で日本の 住宅は貧民窟化しつつあります。また地下室も母屋と一体となった屋根付きのガレージもないのは地下室にも、屋根付きガレージにも固定資産税がかかるからで しょう。そして集合住宅に一様に醜悪なテラスのあるのは固定資産税がかからないため物置として使うためなのです。税制は住宅までゆがめ、かえって国富の無 駄使いと国家の疲弊を招いているとしか思えません。とてもドイツのような長期的展望にたっているとはみえません。これでは国力が衰えるのもむべなるかな。

2011/7、パナソニックが藤沢市の工場跡地に1,000個規模のスマートタウンを建設すると発表しました。

青 森で1家が冬使う灯油は30万円。地中熱施設には400万円かかります。鎌倉の雪ノ下に断熱材を厚くし、換気熱交換し、窓を3重にした高断熱パッシブ・ハ ウスができました。プレファブメーカーは利益があがらないと商品化はしませんから注文建築となり、高価になるため、政府が法制化しないかぎり普及しないで しょ う。土地が高価格の日本ではオーナーは土地取得で息切れしてしまうので、断熱材に投ずる資金は残っていないのです。

戸建向け地中熱利用ヒートポンプは300-400万円かかる、内訳は地下100mのボーリング代金の単価が20,000yen/m、北海道では普及度が高 く単価が10,000yen/m古井戸をつかえば節約できる。年間消費電力は49%節約できる。

<外断熱による建物躯体による蓄熱>

レンガ造りの家はレンガの外に保温すれば煉瓦製の躯体が蓄熱体になって内部は快適な住空間になります。昔3年間英国にに住んだ経験によれば、寝る前に暖炉 の 火を消します。ドラフトで熱がにげないように暖炉の空気口を閉じてベッドにはいるとレンガ壁からの放熱で石炭をくべなくても一晩中、安眠できました。日本 でもコンクリート製のマンションならこの効果は多少あります。特に下の住人の熱が有効である。しかし外断熱はしていません。そもそも内部だって保温層も薄 い安建築です。

外断熱は蓄熱だけでなく結露を防止して建物も痛まないし、衛生的です。日本では建築家だけで研究したため、露点問題に気がつかないまま、コンクリート壁内 面に防湿層なしでウレタン断熱材をつけることにしてしまいました。冬に外気温が下がると日本方式ではコンクリート温度が下がり、ウレタン内壁断熱層も長期 間に渡っては水分移動抵抗を充分持っていないため、断熱層およびコン クリートが結露領域に入ります。カビ、ダニは関係湿度80%から発生しやすくなるため、日本ではカビ、ダニによる肺炎、ぜん息、アトピー湿疹の被害が多く なっています。また日本のアパートのベランダは独立支柱がないためコンクリート矩体と一体となった片持ちカンティレバー構造のため、外断熱が不可能で建物 の寿命も短い。200兆円 の損失といわれていまる。 日本は地震国、コンクリート製は金がかかるから戸建ては伝統的な木製の家を建てる。そして薄い内断熱。これに大金かけて外断熱しても蓄熱体がせいぜい木柱 しかないから、さしたる蓄熱は期待できない。

外断熱や厚い断熱層が普及しない最大の問題はメンテナンスはせず家は 40 年で 伊勢神宮文化です。これでは断熱層に大きな投資はできません。

コジェネレーション・コプロダクション

炭化水素燃料から熱サイクルを使って発電するときの廃熱を利用するスキームをコジェネレーションと言います。グローバルヒーティング防止という面ではコ ジェネレ−ションは総合効率を高めますので望ましいのですが、制約が多く、普及するでしょうか?電力は蓄えることができず、その配電は独占企業に握られて おり、並産される熱は蓄えられますが、分配にコストがかかり、コジェネレーションは一般に広く普及できませんでした。

コプロダクションはもともとコジェネレーションをもじったネーミングです。外国ではトライ・ジェネレーション(熱+電気+クリーン燃料並産)またはポリ・ ジェネレーション(熱+電気+複数のクリーン燃料並産)と呼ばれるものとおなじものです。石炭をガス化して水素を製造し、LNG、LPG、メタノール、ジ メチルエーテルなどの合成油、アンモニア燃料合成、還元製鉄、セメント製造プロセスで発生する廃熱を利用して発電するのがコプロダクションです。これも総 合効率を高めますので望ましいのですが、省エネと同じく効率を高めるだけの技術ですので効果は小さく、一方で日本では配電網を独占企業に握られているため うまくゆくでしょうか?石炭を海上輸送せず、石炭の産地で液体燃料化して消費地に運 び、発生する二酸化炭素は隔離するというというグローバルなコプロダクションと競合できるのでしょうか?

エクセルギー損失を少なくするためにプロセス内で熱回収を行う熱交換器のなかで発生する温度差がゼロになるピンチポイントを圧縮機によって避けることもこ れに含まれています。これは環境との熱交換をするヒートポンプと呼ぶに対し、ヒートサーキュレーションと東大生産研の堤教授によって定義されました。

ニュージーランドのWisperGenという企業も窒素ガスを使う 4気筒副動ヨーク式のエンジンを市販しております。発電端効率15%です。これは家庭用コジェネレーション目的で開発されました。弁もクランクもありませ んから非常に静かに稼動します。

東京ガスはホンダの1kWガスエンジンを使ったコジェネレーション・パッケージを市販しております。 パナソニックはスターリング・エンジンを使ったコジェネレーション・パッケージを市販しております。

<集中発電・コジェネレーション>

原発、火力発電所、CSP発電などの集中発電の廃熱を利用することは1970年代の石油価格高騰時に火力発電所の温排水の利用をNEDOを中心に研究され ましたが発電所から都市への循環配管による熱配給システムがコスト高で普及しませんでした。森永晴彦氏は原発の廃熱で温水を作りバージまたは鉄道で消費地 まで輸送する構想を温めております。問題は火力発電所と同じく、発電所と消費端の距離があり、熱配給システムがコスト高になることと、放射能漏れ事故のと き汚染を拡散させてしまうリスクがあることです。

カルフォルニアで建設中のCSP発電の廃熱を利用することも考えられますが砂漠など遠隔地に建設したものは配管費が膨大になって採算にのりません。

<分散発電コジェネレーション>

火力発電にしろ原発にしろ発電所と消費端の距離があり、廃熱配給システムの高コストがその普及を阻害していますが、ディーゼル・エンジン・コジェネレー ション、燃料電池・コジェネレーションソーラーセル・コジェネレーションは分散発電ゆえに熱配給にコストがかからず普及しやすい面を持っ ています。 ソーラーセル・コジェネレーションとも呼べるものです。温水は暖房と風呂に使います。

結晶型のソーラーセル(PV)は温度上昇に伴う発電効率の低下があってつかえませんが。薄膜型シリコン・ソーラーセル(PV)やバンドギャップの大きな金 属化合物型半導体は、温度感受性は低く、高温でも効率低下は少ないので可能です。

 

ソーラーセル・ハイブリッド・コレクターとボトミング・サ イクル発電(PVコンバインドサイクル)

<温水タンクなしの直接発電>

発電効率7%の低効率のアモルファス・シリコン薄膜型ソーラーセルは温度感受性が低いため、熱回収部をハイ ブリッドにしてハイブリッド・コレクターを作れ ます。真空ガラス管に熱につよい薄膜PVとサーマルチューブを封入して発電と熱回収する方式がよいのではと思案していました。

この温水を熱源とし、大気または冷却水をヒートシンクとするランキン・サイクルをまわすボトミング・サイクルを構築できます。作動流体はアンモニアー水か ペンタンのランキン ・サイクルを使うものとします。

ソーラーセル(PV)は多量生産によってコストダウンを図る技術体系に属します。そこで熱サイクルの規模もソーラーセル (PV)にあわせます。一般家屋の 屋根に設置可能のハイブリッド集熱器の面積として40m2としてコスト検討してみましょう。

PVと温水加熱器を組み合わせるのは難しいとことがあり、別々でもよしとしなければならないかもしれません。膨張機は小 型では容積型が優れています。工業用には市販されている神戸製鋼のスクリュウ膨張機を使うか、摩擦型のテスラ・タービンもありますが、気化器、凝縮器、ポ ン プ、冷水塔などの費用を入れれば250万円位 で建設できるとすれば。建設単価は約1,390円/Wとなります。

第5章で詳しく述べます固定型のキャパシティー・ファクター=0.3162、ウエザー・ファクター=0.4、利用率= 0.9として、1kW相当出力の年間 発電量は997kWh/yとなります。均等化経費率=11.98%/yとすれば発電 単価は166円/kWhとなります。

ケース

ボトミング・サイクル

効率

温水温度

PV出力 ボトミング・サイクル出力 合計 総合効率 最高圧力 ヒートシンク 冷却水 ボトミング建設単価 ボトミング発電単価
    %

oC

kW kW kW % atm oC liter/h yen/W Yen/kWh
1 アンモニアー水サイクル 6.7
98-64.7 2.8 1.80 4.60 11.5 32.6 30 0 1,390 166
2 ウエハラ・サイクル 6.7
98.0-64.68 2.8 1.84 4.64 11.6 35.0 30 0 1,390 166
3 ペンタン・サイクル 8.2 90-86.6 2.8 2.25 5.05 12.6 4.44 32 34.2 1,390 166
4 スターリング・サイクル -
150-140 2.8 0 2.8 7 - 32 - - -

表-5.1 40m2のハイブリッド・コレクター ボトミング・サイクル総合効率

こ れでは価格競争力がありません。家庭用空調機の圧縮機を逆回転させる容積型膨張機を開発して大量生産することが考えられます。普及型空調機のスライドベー ン型、スクロール型圧縮機を膨張機に原動機を発電機に転用すればコストは1/10になるかもしれません。作動流体にはありふれたナフサ留分を使います。

ULVAC理工は2011 年5月31日に90ºCのお湯により3kW級(100V、30A)の発電ができる高効率可搬型小型発電システムを開発したと発表。ランキンサイクルの膨張 機には偏心旋回駆動方式のスクロール膨張機 [Eccentric Orbiting Scroll Expander]を使っている。

神戸製鋼は2011年10月に自社製スクリュー膨張機を採用したバイナリー発電装置は販売開始しました。70-95℃の 温水から代替フロンHFC245faを使い70kW(正味60kW)で単価は25,000,000円ですから建設単価は416yen/Wとなります。発電 単価は排熱コストゼロとして49yen/kWhとなります。発電 機とタービン一体型のベアリング・レスでガス漏れはありません。フロンによる絶縁不良やエナメルの劣化、フロンの加水分解対策をしてあるとのことです。

元シャ―プで東大特任教授の富田孝司氏が創立したベンチャー企業スマート・ ソーラー社が インジウム・ガリウムなどの化合物半導体をつかったPVを半円凹面反射鏡の焦点の位置に設置するガラス管内に封入し、代替フロン循環で冷却して熱を回収す る方式を開発したと2012年7月報じられました。太陽追尾方式で発電効率23%、熱回収率20%を達成。設置費込み、1台10万円で250W、熱 200W取り出せます。建設単価は 400yen/Wですから発電単価は40yen/kWhとなります。これを電力会社に引き取ってもらえれば。得られる温水が無料ということになります。こ の無料の排熱で神戸製鋼の温水発電機をうごかせば、PVコンバインドサイクルが完成します。


<温水タンクを持つ太陽熱蓄熱発電>

昼PV発電しつつ、集熱器で温水を製造し、温水タンクに蓄える。夜間は蓄えておいた温水を使って夜間発電します。こうすればオフグリッドハウスが完成する のです。長期間天候不順対策としては都市ガスエンジン発電バックアップでよいでしょう。

 

スターリング・エンジン集光発電

パナソニックからヘリウムガス封入の400Wのフリーピストン・スターリング・エンジンが市販されています。

エンジンヘッドを集光面におき、810℃に直接加熱し60oCの冷却水をシリンダージャケットとラジエーターを循環すれば。発電端 効 率27%で400W出力が得られます。

光学アクリル材を使って特殊成形し、鏡面を蒸着する直径1.4mのバラポラ鏡またはアルミ板を精密研磨するバラポラ鏡で集光面積は1.5m2を 確保します。太陽の位置センサーとパソコンとサーボモーターまたは車用のワイパーモーターを組み合わせた太陽追尾装を組み合わせます。全部で100万円で 完成できれば、建設単価は2,500円/Wとな ります。

第5章で詳しく述べます追尾型のキャパソティー・ファクター=0.4166、ウエザー・ファクター=0.4、利用率=0.9として、1kW相当出力の年間 発電量は1,314kWh/yとなります。均等化経費率=11.98%/yとすれば 発電単価は228円/kWhとなります。

 

太陽熱利用

<太陽熱温水器>

太陽光エネルギーの全ての波長域を熱に変換して利用する方法で、温水を作り利用することは古くからある技術です。屋根に設置して風呂程度の温水を作るには 最も適していて安価な石油が出回る前は普及しておりましたが、石油に駆逐されてしまいました。200社に達したメーカーも廃業してしまいました。変わりや すい日射量の下で適温の温水を作り、蓄えることが自動化されていなかったことも駆逐された理由でしょう。

矢崎総業は黒く塗った金属板の下に直径1cm程度の細い管を何本も通し、不凍液を循環して300リットルのお湯をつくるシステムを販売しております。夏な ら80oC、冬は40-45oCの温度になります。これを暖房と風呂に使うことができます。この設備費は約 100万円で燃料費はただですから、政府のお声係りでシャニムに普及させようとしている燃料電池の給湯システムより安くなります。

炭化水素燃料の価格高騰と自動化技術の進歩で、都市ガス価格が高騰すれば見直され、普及するようになるだろうと思います。

直径100mm長さ2m程度の2重ガラス管環状部を真空にし、内管 内部に金属製の集熱板を設置し、銅製のヒートチューブを設置するコレクター技術が見直されて市場にでてまいりました。 これは古い技術で中国メーカーによって生産されています。

<家庭用集光型太陽熱発電機>

集光型スターリング・エンジンはすでに米国やスペインで企業化されておりますが、小型のスターリングエンジンを多量生産すれば実用になる可能性がありま す。

夜間発電できる完全分散型として溶融炭酸塩にて蓄熱する蓄熱型家庭用発電機も検討してよいかもしれません。

<季節間蓄熱>

森永晴彦氏は太陽熱を利用して作った温水をセメント会社が石灰石を採掘した後のピットを温水ダムにして夏季に蓄熱し、冬季に熱供給会社にこの温水を鉄道輸 送する構想を持ちました。しかし集熱、蓄熱、消費が隣接して行える適地が少なく、今だ実現しておりません。しかし 炭化水素燃料価格高騰でいずれ出番がくるだとうと思っています。

オランダの大手園芸会社ハイドロ・ハイズマンでは深さ35mの巨大な井戸を2つ掘り、一つには夏の太陽熱を蓄え、冬温室を暖め、冷えた冷水をもう一つの井 戸に蓄えて、夏、温室の冷却に使っています。冬の補助加熱源は天然ガスです。 このコンセプトは地盤を蓄熱材に使えますが地下水が流れているような地盤では使えません。

温水の蓄熱は環境との温度差が大きく、温度がすぐ下がってしまいます。しかし氷の場合は環境との温度差も小さく、かつ潜熱ですから、採算に乗ります。大手 サーバー運営会社がデータセンターを北海道に建設するのは空調電力コストが下がるためです。季節をまたがる氷蓄熱も電力コスト低減として採算にのる時代が きております。

 

蓄濃夜間発電

臭化リチウムまたは塩化リチウム水溶液を使えば真空管式ソーラーコレクターで作る温水と冷却水の温度差の間でランキン・サイクルを組めます。しかしこれは 効率が低く、ソーラーセル発電に対してコスト的に負けます。ただソーラーセル発電は夜間発電できませんのでバッテリーが必要となります。

ソーラーコレクターの熱、またはソーラーセル発電(または買電)で運転する空調機廃熱を利用して昼間、高濃度臭化(塩化)リチウムと水を製造して常温・常 圧タンクに溜めておき、夜間この濃度差を利用して発電する方式はバッテリーを必要としません。蓄濃夜間発電が買電ないしソーラーセル発電+バッテリー電力 単価に競合できるか検討する価値があります。

臭化(塩化)リチウム/水系では膨張機出口が凍結領域に入る可能性がありますので水/メタノール系、ペンタン/トルエン系など考えられのではないでしょう か。

二酸化炭素/アミン系ランキンサイクル

 

マイクログリッド

ソーラーセル(PV)、マイクロエンジン発電などの 分散発電、小規模蓄熱・蓄乾、バッテリーを組み合わせた半自律型小規模配電網が構想されました。それぞれのマイクログリッドは交流で電力会社の系統に連結 されて逆潮流も可能となっています。一番小さな単位が各家庭で、中規模は集合住宅や団地毎にグリッドを造ります。

ソーラーセル発電能力を自家消費以上に設置した家庭はある意味で最小限のマイクログリッドを構成していると考えてもよいかもしれません。

 

ソーラーセル電力を逆潮流させて系統連携

ソーラーセル(PV)を屋根に設置しますと、余剰電力が発生します。これは配電網に逆流させて電力会社に買い取ってもらうことになります。

蓄熱などしていない標準的家庭の電力消費パターンは図-2.2の通りとします。総消費電力は355kWh/monthで す。ここでは昼間も空調をフル運転 する生活様式を仮定しました。JISでは年間冷房を1,430時間、暖房を2,889時間使うとしてい ますが2009年の産総研のアンケート調査では冷房325時間、暖房を190時間でした。

415リッターの省エネ冷凍冷蔵庫の年間消費電力は330kWh/年ですから夜間1時間の月間電力消費量=330/12/24=1.15kWh。(これは 平均38W)待機電力を4%とすれば夜間1時間の月間電力消費量=355x0.04/24=0.59kWh/month。常夜灯夜間の1時間の月間電力消 費量=0.1x30=3kWh/monthとなりますので夜間1時間の月間総電力消費量=4.8kWh/monthとなります。これを丸めて 5kWh/month(160W)としました。

通常の従量電灯料金Bの30A契約では8,435.4円/month(単価23.8円/kWh)です。

季節別時間帯別電灯契約は昼夜の大きな需要変動を平準化して夜間需要の落ち込みを防止し、原発をフル運転するために設定されたものです。この月額基本料金 1,260円。時間帯10:00-17:00の昼間料金は28.28円/kWh、時間帯23:00-7:00の夜間料金は9.17円/kWh、朝夕の時間 帯料金は23.13円/kWhです。この方式で料金を計算すると9,610円/monthで従量電灯料金と大差ありません。

季節別時間帯別電灯契約を締結して月間380kWhの発電量のソーラーセル(PV)を設置すれば、単相の逆潮流により月額544円の売り上げになりますの で8,979.4円/monthの利益となります。(料金還付の仕組みがない場合はセーラーセル容量を減らせばよい)

ソーラーセル(PV)の発電原価は電事連方式で計算すれば25.4-15.3円/kWhとなります。従量電灯料金の概略単価23円/kWhよりも安くなり ますので急速に普及するでしょう。

図-2.2の紺色が時間帯の料金、赤色が消費量、黄色が発電量、空色がグリッドとの取引電力量でマイナスは逆潮流を意味します。 消費は現時点では昼間の消費は少ないのですが、昼間の空調機消費量の多い未来型の消費パターンを仮定しました。

図-5.2  分散電力を逆潮流させて系統連携する場合

出力1kWのソーラーセル(PV)は年間1,030kWhの発電をしますから月間380kWhの発電量を確保するには380 x 12/1030 = 4.4kWの出力のソーラーセル (PV)が必要となります。2014年の建設単価は250-150円/Wですから、ソーラーセル(PV)の建設費は1,100,000-660,000円 となります。

ソーラーセル建設単価が250円/Wの場合、1,100,000/(8,979.4x12)=10.2年で元がとれます。150円/Wの場合、 660,000/(8,979.4x12) = 6.1年となります。セルの寿命は30年以上ありますから、後は儲けということになります。

電力会社は夜間は火力でバックアップするのが最も低コストであるとはいえ、再生可能電力を系統に取り込むと、電力会社の採算性が低下します。電力会社は

@料金を据え置いて季節別時間帯別電灯契約を昼夜差の少ない電気料金体系に変える

A電気料金の値上げをする

のいずれかをしなくてはなりません。

@の昼夜差のないフラットな料金体系にしても消費者が支払う電気料金は月額670円で大差なく、有効な手とはなりません。

結局Aの値上げしか対策はありません。 そのときの値上げ幅は表-5.40の原発+再生可能電源+火力のように2002年ベースで5.9-4.3円/kWになり、電気料金は28.9-27.3円 /kWhとなります。

消費側にどのようなリアクションがあるでしょうか?外需に依存する産業界は自家発電をして自衛するか製造プラントを海外に移転させるでしょう。 一般消費者は自前の安い電力を確保するためにバッテリー、コジェネレーション、蓄熱の導入を検討するでしょう。

 

3相AC→直流コンバーターと直流→単相交流インバーターを使った低圧電力契約

一般家庭の月間消費量を355kWh/monthとするとTEPCOの通常の単相従量電灯料金Bの30A契約では電力料金は 8,435.4yen/month(単価23.8yen/kWh)です。

同じ月間消費量355kWh/monthとして低圧電力(3相200V)契約できるとすれば力率85%、0.5kW契約で、基本料金 1071yenx0.5=538yen。電気使用料金10.3yen/kWhx355kWh/month=3,656yenです。月間料金は合計 4,195yen/month(11.86yen/kWh)となります。

この差額は3相AC→直流コンバーターと直流(少容量の蓄電池)→単相交流インバーターに投資しても十分ペイすることを意味します。3相から単相をとりだ すようなこともなく、送電系に悪影響もでません。市販されている無停電電源装置(UPS)は3相AC→直流コンバーターと直流(小さな蓄電池)ですから、 UPSに単相交流インバーターをつけるだけでよいことになります。

無停電電源装置(UPS)を設置するためといえば電力会社はOKせざるを得ない。しかしこれが普及すれば小口ユーザーから高料金で料金を徴収する料金体系 の矛盾が吹き出て経営がなりたたないおそれがあります。どういうことになるのでしょうか?

UPSよりプラグインハイブリッドの3相交流電源からの急速充電装置が普及すれば装置は安価になりますのでこの直流出力に単相交流インバーターをつければ 安い家庭用単相交流電源となります。


スマートグリッド・デジタルグリッド

<低圧系の逆潮流>

電力は配電用変電所から柱上トランスへ3相、6,000Vで送られてまいります。そして10軒に1ヶ所の割りで柱上トランスがあり、単相100V、 200Vに落としております。そして電圧は柱上トランスから家庭に向かって電圧降下する前提で設計されています。このラインを逆に中央に向かって電力が流 れることを逆潮流といいます。その量が多くなると配電網のインピーダンスのため消費端の電圧が上昇します。電気事業法第26条では100Vの場合±6V、 200Vの場合±20Vを逸脱 してはならないことになっています。 この時代遅れの法を楯に資源エネ庁を中心とした産官複合体が不安定な再生可能エネルギーを電力網から締め出す陰謀が動き出しました。それは2030年に向 け、太陽光発電の出力抑制かバッテリーによる系統安定化対策をする。そして原発の一定運転を確保するために連休などには出力抑制スケジュールを事前に設定 してするようなカレンダー方式による太陽光発電の出力抑制機器の開発、PCSや バッテリーの実証、スマートグリッドによる太陽光発電の出力抑制を画策しております。

逆潮流を少なく出来るバッテリーは成功してもEVまでで、電力網の安定化には高コストすぎます。やはり建設費が安い火力との系統連携しかないでしょう。 炭化水素がピークアウトして火力はなくなれば揚水発電の出番ですが日本には原発用がすでにあります。このレベルまで逆潮流できるようにすれば既設の揚水発 電を不安定な再生可能エネルギーに利用できます。

近未来にソーラーセル(PV)のコストダウンが成功したとしても電力系統に昼間の余剰電力を送り込んでオフィスで使ってもらい、夜間は火力や原子力の電力 を受け取るということができなければソーラーセル採用の意味がありません。

ソーラーセル(PV)が普及すればその発電量あたりの国民の総投資額は原発のそれより大きくなることを考えればソーラーセル(PV)の休日の出力抑制は行 わず、むしろ休日には原発の出力抑制をするほうが、国家的損失は小さいのではないかと思 います。補助金を出し、倍額買取制度をしてソーラーセル(PV)を普及させても意味がありません。そもそも遅れてきて導入された倍額買取制度はソーラーセ ルの単価を高めに固定する弊害があります。

地域独占の電力会社としては低圧系の逆潮流を受け入れる義務があるのですが、ソーラーセルの普及が急速に進むと独占体質の電力会社は電線を太くするなどの 対応をせず、 姑息な手段をとろうとしています。これは設備投資した者の権利を不当に奪うものです。このようなことではオフグリッド運用を助長するだけでしょう。またこ のような箱をつけると系統の電圧が乱れたときかえって一斉開列を生じる危険もあるのです。

この低圧系逆潮流問題の解決のためには@100V消費端の許容電圧6Vを上げる。A100Vラインを200Vにあげる。B6,000Vラインを太くする。 C柱上変圧器の分割設置。DSVC電圧調整装置の設置 、ここでSVC(Static Var Compensator)とは静止型無効電力補償装置といい、容量を連続的に制御可能なリアクトルと容量固定のコンデンサを変圧器を介して系統に接続する もの。E交流・直流変換器採用によるループ運用などがあります。

そもそも100Vラインが中心の国は日本と韓国ぐらいで世界のほとんどは200Vで逆潮流の問題は少ないのです。鉄道の狭軌と同じ日本のくびきであるわけ です。

グーグル、IBM、ヴィリディティエナジーなどがスマートグリッドの制御ソフトを開発している。

<中圧系の送電線容量>

風力の出力は6.6kVの中圧系につなぎますが、この系統の送電能力が不足し、風力の買電の条件として発電会社は専用の送電線を給電変電所まで引くことを 発電業者に強要 しています。個別の投資はむだですから配電会社がまとめて面倒を見ることが正しい。地域独占の趣旨に反するご都合主義です。

<バンク逆潮流規制と九電力間の電力融通>

給電用変電所(substation)を越えるバンク逆潮流は現状では規制されているという問題があります。かってはバンク逆潮流はゼロとされていました が、最近は分散電源対応としてバンク容量の10-20%以下とする緩和方向にあります。しかしこれは 限りなく100%に向かって緩和されるべきでしょう。

また九電力間の電力融通も殆ど行われていません。電力会社間の送電線の許認可が受益者でない住民の権利を保護するという趣旨で行われたという経緯を逆手に とった電力会社保護策以外のなにものでもないでしょう。政治家が問題意識をもってトリッキーな規制を撤廃していかねばならないでしょう。


図-5.3  逆潮流を許容するグリッド

<電力の託送>

配電は地域独占だ。その理由は高圧送電線をやたらに建てるわけにもゆかないし、道路に電柱を何本も立てることは出来ない し、何より2重投資になって不経済です。

日本では発電の自由化は少しずつ(多分米国の圧力で)進んでいる。wikiによれば、

2003年 >2MWの大口需要者
2004年 >500kW
2005年 >50kW

になっています。そして電力取引所も開設されました。その結果、東電はこれまで約280社の大口顧客を新規電気事業者に奪われてしまいました。東京電力は かなりの危機感を抱いて、神奈川支店では営業部員を増員し、顧客死守のための営業強化に動き出しています。多分エクソンなどは川崎のIPP電力を周辺の工 場に売り込ん で、東電の顧客を奪ったのでしょう。彼らは石油を売るより、利幅の大きい発電事業を世界各地で推進しています。中国も例外ではありません。東京電力の没落 はな にも福島原 発事故がなくとも始まっているのです。ジャスコなど大型店舗もこの制度を旨く使っているようです。ただ最後の砦でもっとも利益の上がる数kW程度の一般家 庭はまだ自由化されていません。自然エネルギー普及の代案として電力事業の自由化を更におしすすめ、一般家庭まで拡大することがコストダウンの要諦でしょ う。 そして電力業界は託 送に専念するという方法があります。

2012年での日本の電力自由化の実態は自家発電が余る会社すなわち特定規模電気事業者(PPS)が東電に託送料金を支 払って契約した別の会社に電力をうるという仕組み です。託送料金は通産省が定める託送料金 算定規準によって計算されます。その精神は実費という建前です。60-20kVの特高送電線託送料金は2.25yen/khW、6kVの高圧送電線の託送 料金 は4.24yen/kWhということになっています。2012年夏には10%程度値下げがありうるとのこと。

託送には「30分同時同量」のルールがあります。送る電力と消費を30分以内に3%以内におさめなくてはな らない。そして不足する量が3%ならバックアップ料金は11.66yen/kWh、夏季昼間 40.69yen/kWh、その他の季節の昼間35.5yen/kWh夜間32.42yen/kWhです。 電力会社のバックアップコストが実コストの10倍と異常に高いのはペナルティーコストと考えている証拠でしょう。 電 力需要が減少している局面では余剰の火力、 原子力施設があり、償却済みの固定費は小さ くバックアップコストは大きくありません。実際はむしろ風力発 電分、燃料費が節約になるのだ。どうして電力会社にこのようなペナルティーを課す権利があるというのか分からない。不等な権利の行使であろう。これを見逃 している官庁は公僕たる責任を放棄している。

これが現実ですがそうならば単価が高くともバックアップ電力供給会社というPPSビジネスもあり得ます。そういて再生可能エネルギーのPPSは日本卸電力取 引所 (TEPEX)経由で不足分バックアップPPSよりバックアップ電力を購入するのです。

<直流送電>

現在の電力システムは交流が主体です。エジソンの下で働いていたハンガリー人テスラが交流を提案したのですが、エジソンがこれを退けたので、テスラはGE を去り、交流電力会社を設立します。そしてウェスティングハウスがこれを事業化しました。最後には結局GEは交流のメリットを認めるということになった有 名な逸話があります。交流は電圧を上げ下げできることがメリットで高圧にすると送電線を細くできます。ところが交流は周辺に誘導電流を生じるのでロスが大 きい。パワー半導体が使えるようになって電圧の上げ下げは交流で行い、送電線は直流でするほうがロスが少ない。こうして直流が再び見直されています。不安 定な再生可能エネルギーを全国送電網で系統運用するための必須技術となるでしょう。

トヨ タのハイブリッド車のメーンバッテリーはDC 200Vです。しかしカーラジオなどはDC 14VですのでDC-DCコンバーターで電圧下げています。いまや省エネ家電のモーターは全て一旦直流にしてネオジム磁石を持つ交流モーターを可変交流で 可変速で動かしている時代です。送電に関しては最後はエジソンが勝ったというわけです。GEが残り、ウェスティングハウスはいまや東芝の傘下というのも何 かこれを暗示しています。

<原発負荷追従運転の必要性>

フランスでは原発の比率が高いですから、需要が低い休日は原発すらとめております。日本で出来ないはずはありません。

<バッテリー>

参考までに蓄熱などしていない図-2.2に示した標準的家庭の電力消費パターンで消費電力は355kWh/monthについて季節別時間帯別電灯契約して 9.17円/kWhの夜間電力をバッテリーに蓄え、昼間の時間帯に使うことを検討してみました。

この場合電力料金は7,108円/kWh(20円/kWh)となります。従量電灯料金Bの30A契約の8,435.4円/monthより1,327円 /month安くなるだけです。一方バッテリーコストは 電力回収率85%寿命1,000サイクルのリチウムイオン電池の現時点の蓄電単価は2009年では100円/kWhですが、目標単価は35-59円 /kWhです。

バッテリー容量は216kWh/month(7.2kWh/day)必要となりますので消費電力の61%ということになります。加重平均した蓄電コストが 上乗せされると20+0.61 x 35 =41.4円/kWhまたは20+0.61 x 59 = 56円/kWhとなり、全く合理性はありません。これは電気料金に配電費12円kWhが含まれているためとも考えられます。

<HEMS・BEMS>

デジタルグリッドやスマートグリッドを構成する消費端の制御システムは家庭用をHEMS, Home Energy Management System、ビル用をBEMS, Building abd Energy Management Systemといい規格を統一している。

米国発信の構想です。交流マイクログリッドが潜在的に抱えるソーラーセル設置者が自動的に逆潮流を抑制する頻度を下げるために、ひいては配電用変電所を越 えるバンク逆潮流を可能にするために分散発電、小規模蓄熱、バッテリーのあるマイクログリッドにスマートメーターと情報システムを組み合わせて潮流コント ロールする構想です。EV搭載のバッテリーも組み込むことを考えています。

消費端、分散発電にを設置し、電力取引価格も潮流に応じてリアルタイムに変えて消費電力を市場原理で即時的に制御するということも可能となります。

デジタルグリッドはスマートグリッドの発展型で、消費者同志が電力の融通することが可能となります。

オフグリッド運用と直流家電

ソーラーセル発電量が総発電量に閉める割合が増すと電力会社はその全量を引き取ることは困難になり、逆潮流抑制を避けることができなくなります。そうなる と折角の発電ポテンシャルを使わないことになり 、投資回収効率が低下します。

このような事態の解決にはマイクログリッドを完全に配電網から切断してオフ・グリッド運用をすればよいのです。そのときはそれぞれのマイクログリッドを DC200Vに し、ソラーセルも直列結線でDC200V発電とします。蓄熱・蓄乾型の空調機、冷凍庫、バッテリーを設置し、非常用を除き、DC200Vオフグリッド運用 をすることが考えられます。

昼間ソーラーセルが発電する総量で蓄冷式空調機または蓄冷式冷凍庫を冷やします。負荷調整を必要とせず、圧縮機はフル運 転すればよいのです。したがって余 剰電力を全て蓄熱に振り向けることができます。同時にヒートポンプの廃熱を使って温水を作り、風呂、シャワー用に蓄えます。洗濯と乾燥は昼の間に自動直流 自動洗濯機で行ってソーラー電力を使ってすませます。

夜間の蓄冷式空調機の冷熱の取り出しはバッテリー蓄電の電力を使い、これもDC200Vのインバーター内蔵の直流ブラッシレスモーターで送風機を回して冷熱 を回収します。インバーター内蔵の直流ブラッシレスモーター は永久磁石同期電動機(PMSM Permanent Magnet Synchronous Motor)とも呼ばれます。いずれも回転制御は可変電圧可変周波数制御 (VVVF) インバータで行います。

バッテリー蓄電の電力の残りはDC200VのLED照明 します。

コンプレッサーはDC200Vのインバーター内蔵直流ブラッシレス・モーターでよいことになります。整流器が不要となるだけ損失は減少します。クラシック な整流子つき直流モーターは安価でよいのですが寿命が短く、家庭用にはむきません。

売電を使う家電は交流で設計されていますので整流器内蔵型単相AC/三相ACインバーターが装備されています。しかしインバーターは図-2.6 のように低負荷で使うと損失が大きくなります。 市販のAC100Vの家電や 非常用にグリッドと接続するところでのみDC/ACインバータを使います。

図-5.4 DC/ACインバーターの効率

PINダオオードとか静電誘導サイリスタという損失がほとんどゼロの直交変換もあるようですが、家庭向けインバーターはMOS FETやBT(Bipolar Transistor)が使われています。できるならインバーターを省略できるのなら省略したいですね。

エジソンが電灯を開発したとき、直流発電機を使っていました。その後交流発電にすれば変圧器で電圧をあげて電線を細くできるとテスラが説きましたがエジソ ンはその必要はないと却下したため、テスラはGEを去ってウエスティング・ハウスを作ったとされています。しかし今、ソーラーセルが発電の主力となります とエジソンが正しかったと思われるではありませんか。

下図は我が家の実験用風力/ソーラー・ハイブリッド発電ナノ・グリッドにおいてDC/ACインバーターの低効率を避けるためにDV12Vで作動するタイ マー とLEDでインバーターをバックアップシステムとしました。直流家電の先駆けです。

図-5.5 DC/ACインバーターの低効率を避けるシステ ム構成例 (黄色は改造で追加)

2007年には存在しなかった直流家電製品がこの3年間でようやく市場に登場しました。そのうちの一つオフ・グリッド・ソーラー社では直流照明器具、直流 テレビ、直流オーディオ・セット、 直流冷蔵庫、水ポンプなどを販売しています。直流空調セット米国のSolarPanelsPlusがディープサイクル・バッテ リーと組み合わせて販売しております。

 

二次電池の蓄電単価試算

電気事業連合会は産業技術総合研究所の「系統安定化に向けた蓄電池技術の動向と課題」外より抜粋加筆した現状の電池価格を下表を発表しております。

  大容量化実績 W当たり電池価格 kWh当たりの電池価格 寿命
 

MWh

(yen/W) (yen/kWh) (cycle)
鉛蓄電池 1 150-250 50,000 3,000
NaS電池 100 240 25,000 4,500
ニッケル水素電池 0.1 100 100,000 2,000
リチウム・イオン電池 0.01 50-1,500 100,000-2,000,000 3,500
揚水発電 10,000 180(8h容量) 230,000 20年以上

表-5.2 電気事業連合会作成の価格の評価

<鉛蓄電池>

正味容量=公称容量 x 放電深度(分率)です。そして寿命は放電深度が深いほど短くなります。グリーンウッド氏所有の12V、210Ahすなわち公称容量2.52kWhディープサ イクル ・バッテリーの価格は120,000円です。放電深度40%での容量は2.52x0.4=1kWhとなります。寿命は1,200サイクルとなりま す。従って単価は120,000yen/kWhとなります。 ただこれは小売りですので50,000yen/kWhで良いでしょう。

図-5.5 ディープサイクル ・バッテリーの寿命

<NAS電池>

メーカーは価格を公表していませんが日本碍子がドイツに輸出したものは1kW当たり70万円とのことですから建設単価700円/Wになります。日本碍子が 2009年にフランスのEDFに輸出したものは出力150,000kWの風車出力用蓄電装置に300-400億円とのことですので200-266円/Wに なります。1日8時間充電・8時間放電とすれば公称容量kWh当たり25,000-33,000円となりますので産業技術総合研究所の25,000円を採 用しましょう。電力回収率は0.75です。

<リチウム・イオン二次電池>

現在EV用に開発されたリチウムイオン電池を家庭用のバッテリーに転用することを考えましょう。プラグインハイブリッド 車搭載のバッテリーを補助的につかうことも可能です。 2009年6月発売の三菱自動車のバッテリー車、2010年発売予定のニッサンのリーフ、トヨタが2009年から量産体勢にはいるプラグインハイブリッド の販売価格から逆算するといまだ公称容量kWh当たり100,000円の ようです。産業技術総合研究所の安い価格100,000yen/kWhです。 電力業界が目標にするバッテリー価格では50,000/kWhとなります。コンサルタントの期待値30,000円/kWhです。

2012 年9月東芝が家庭用に市販しているバッテリーは1,500,000yen/6.6kWh=227,000yen/kWhで依然として価格は下がっていませ ん。日本では携帯電話用のラミネート型が多く、コストダウンはまだ無理でした。ところが米国のDOEはコストダウンのベースは、およそ年8%で2030年 までにコストは90%下がるとしています。

ニッサンのEV車リーフはNECのラミネート型を採用し、正極に酸化マンガンを使って子会社AESCに製造させていました。しかしNECは2017年に手 を引き、ニッサンはこの子会社を中国系ファンドGSRキャピタルに売却。酸化マンガンをつかっているのはよいとしてラミネート型はコストダウンが難しいの ではないか?今後は専門メーカーから調達するという。

2013年になり、テスラモーターがロードスターのバッテリーパックに使用している汎用円筒型セル18650フォームファクターは、日本で市販されている パナソニックの直 径は18mm、長さ 65mmの汎用円筒形リチウムイオン・バッテリーを 多量購入し、7,000本をパケージングして自動車用に使っています。パナソニックとテスラ社を取り持ったのはKurt Keltyです。今後は中国がEV車にシフトする国家目標を定めてギガクトリーに投資するた め、メインストリームになるでしょう。Kurt KeltyはICU卒業後パナソニックに15年勤めてリチウムイオン電池開発に携わり、2006年にテスラに移って、パナソニックを口説いてネバダに工場 を作りました。それが完成した2017年に自分の役割は終わったと孫氏が投資している独自の生育システム・センサー・AI技術を活用うる垂直農法の作物工 場を開 発するPlenty, Inc.というベンチャーPlentyの役員に転職しました。野菜生産はコンビニ内で分散して行われるので流通コストを低減できます。彼はこのように野菜 生産は集中か分散かというパラダイムシフトに賭けたのでしょう。



図-5.6 18650 フォームファクター

NECが手を引いたところを見ると今後、産業用はこの円筒型が普及するのではないかと思います。毎年 10 億個の円筒形セルを自動化工場で製造することになります。その後ステンレス鞘の2170が開発され、米国の工場で製造し、最新のテスラに採用されていま す。2枚の電極シートと隔膜の計 3枚を巻き取っただけの簡単な単三型円筒バッテリーです。これを箱に収納し、温度センサーでグリコール液を制御するバッテリーパックに仕上げるのです。正 極にはコバルトを使っていますので一次的なリチウム、コバルトなどの資源の逼迫があるかもしれませんが、ステンレスと資源的には共通基盤に乗っているので 長期的には心配ないと思います。単三型の円筒バッテリーを7000本も束ねるなんてと思ったものですが、携帯のバッテリーのようにコンパクトの箱型にリー ド線付きの電極を折り曲げるより無理なく巻き取り筒型のまま薄いステンレスの鞘におさめ、個別に系統管理するのが10年という保証期間を確保してます。

ベンダーはAESCは中国に売られ、残るはパナソニック・三洋電機(テスラと契約して米国で工場建設)、ソニー(2017年村田製作所に譲渡され、中国な どで展開)と、サムスン、LGです。このバッテリーはすでに量産されているため、価格は驚くほど安価。 現在、大雑把に言って1kWh当たり4万円くらいだとされています。これを中国製にすれば製 造原価は1.5万円/kWh(究極のターゲットは100$/kWh)を達成していると聞こえてきました。以上を勘案してここでは図-5.7のように推定し ました。以後の試算はすべてこの数字をつ かいます。



図-5.7 リチウムイオン・バッテリーの価格

寿命は使い方にもよりますが自動車用は1,000サイクルで寿命がくるように使います。電力回収率は85%です。

その後、10年の歳月がたった2018年にはJPモルガン証券がリチウムイオン電池セル価格が2022年に100ドル/kWh (110,000yen/kWh)を下回ると予測しています。これはオフグリッド電力が 完全に採算に乗るという価格です。

<電力蓄電単価試算式>

二次電池による蓄電単価を後述の発電単価試算と同じく年間の(NCF-電力損失)/初期投資額(% /y)は割引率を4%とし、バッテリー寿命は1日の充放電サイクル数が決まれば 電力事業者にとっては次表のようになります。

  鉛蓄電池 NAS電池 リチウム・イオン電池 リチウム・イオン電池
充放電の総回数 (サイクル) 1,200 2,500 1,000 1,000
1日の充放電サイクル数 1 1 1 0.3
バッテリー寿命 (年) 3.3 6.8 2.7 9.1
NCFの割引率 r (%) 4 4 4 4
資本金/初期投資額 (%) 100 100 100 100
バッテリー使用年数 (年) 3 7 3 9
固定資産税+事業税 (%/y) 1.4+1.3 1.4+1.3 1.4+1.3 1.4+1.3
保険料/初期投資額 (%/y) 0.5 0.5 0.5 0.5
保守費/初期投資額 (%/y) 0 0 0 0
管理費/初期投資額 (%/y) 1.0 1.0 1.0 1.0
燃料費/初期投資額 (%/y) - - - -
(NCF-充電 費)/初期投資額(%/y) 40.24 20.86 40.24 17.65

表-5.3 バッテリーの均等化経費率

電池の単価は通常、公称蓄電量(kWh)当たりの円で表示されます。これをソーラーセルの蓄電とし て使う場合は1日に1回の充放電となります。 自動車の場合にはこれにさらに車の稼働率の逆数を乗じることにします。自家用バッテリーは電気事業税の対象となりませんから(revenue- charge cost)/equity=16.3となります。

蓄電量当たりバッテリー単価42,000yen/kWh、 バッテリー寿命9年 固定資産税1.4%、保険料0.5%、管理費1%とすればバッテリーの均等化経費率=(NCF-充電電力費)/(初期投資額)= 16.355%/yとなります。バッテリー電力回収率0.85 PV発電原価=20yen/kW とすれば、蓄電単価は下式のように計算できます。

NCF=1kWh  x  42,000yen/kWh x 16.355%/y = 6,867yen/y

年間蓄電電力=1kWh/d  x  365d/y  = 365kWh/y

蓄電単価=NCF/年間蓄電電力+充電電力費=6867/365 + 20/0.85 = 18.8 + 23.5 = 42.3yen/kWh

 

ソーラーセル/バッテリーによるオフ・グリッド自家発

日本の電力は貧弱な送電網しかもっていませんので再生可能エネルギーの大量導入は困難、政府は打開の方針をもっていません。米国と中国 がブレークスルーすればPTTにより国境はひらけれていますから日本メー カーがだらしなくとも、家電製品の輸入は可能ですから屋根持ちの家庭はPV+バッテリー導入に走り、集合住宅もまとまって原発依存の電力を見捨て、自立す るでしょう。これはニューヨーク の馬車が1900年から 1913年の間に全て自動車に置き換わったようなランドスライドとなるのではないでしょうか。そういう意味でPV+batteryはトニー・セバがいう disruptive technology(破壊的技術)といえそうです。

第4章でのべましたようにPVコストが下がった時点でこれを系統連携するとき、 消費端近くでバッテリー(EV車含む)を使うことは配電網の維持費用が余分にかかりますから電気料金は上がります。安価な原子力や揚水発電をバックアップ に使っても配電 網の維持費用が余分にかかりますからこれを上乗せした電気料金は上げざるをえません。消費者は自衛策として家庭にリチウムイオン電池を設置してソーラーセ ル電力で昼間充電し、夜放電するグリッドから完全独立する可能性があります。こうすると電力料金の半分は配送電費ですからその分節約になります。

図-5.7にその需給バランス図を描いてみました。紺色が消費電力355kWh/month、赤色が発電量 380.5kWh/month、黄色が充電量 161.6kWh/month、空色が夜間使える放電量131.6kWh/month、紫色は収支バランスゼロでグリッドとの取引はないことを示してい る。回収率は131.6/161.6=0.81となります。

PV電力のうち、充電に使わず日没までに直接消費出来る比率は(355-131.6)/355=0.63となります。夜間使える放電は131. 6/355=0.37です。

昼と夜の加重平均電力費=0.63 x 20yen/kWh + 0.37 x 42.3yen/kWh= 12.6+15.7=28.3yen/kWh

図-5.8  ソーラーセル分散発電とバッテリー分散蓄電のハイブリッド

PV建設単価が図-3.25の各電源 の建設単価のように下がるとしますとPV+バッテ リー複合電力コストは表-5.5のようになります。

PV charged battery for home use unit 2000 2030 2060 2090
power source - PV PV PV PV
PV module cost
yen/W
440
160
100
100
type of battery - lithium ion lithium ion lithium ion lithium ion
battery construction cost yen/kWh 100,000 28,000 14,000 14,000
life y 9 9 9 9
power recovery % 85 85 85 85
annual recovered power kWh/y 310 310 310 310
(revenue-fuel cost)/equity %/y 16.35 16.35 16.35 16.35
(revenue-fuel cost)/recovered power yen/kWh 52.70 26.35 21.08 21.08
PV power price yen/kWh 44.78 16.28 10.18 10.18
lost power yen/kWh 6.72 2.44 1.53 1.53
recovered power cost yen/kWh 104.20 45.08 32.78 32.78
average power cost(PV:63%,battery:37%) yen/kWh 68.84 23.25 13.78 13.78

表-5.5 PV+バッテリー複合電力コスト

さてこの数値と第3章で試算したグリッド市販価格と比較してみますと下図のようになります。小口消費者に配電費を多く 負担させている現在の電力企業のビジネスモ デルは2020年以降破綻することを意味します。 すなわちバッテリー・パリティー達成です。


図-5.9 グリッド価格とオフグリッド自家発電

実際の初期投資額はどうなるかといいますと月間発電量380.5kWh/monthはピーク発電能力380.5/(0.316x0.4x24x30)= 4.1kWです。120Wのパネル34枚に相当します。2030年にはPV建設単価が140yen/WとすればPVには57万円の投資で済みます。バッテ リー 充電量161.6kWh/month(5.39kWh/d)で単価は28,000yen/kWhですからバッテリー投資額は15万円となります。PVの寿 命は30年ですから30年に1回の投資となります。バッテリー寿命は短いですからこれを9年毎に繰り返すわけです。それでもグリッド価格より安くなるので す。残念ながら2011年における東ガス、積水ハウス、JX日鉱日石が商品化しているバッテリー価格は1軒当たり100-168万円程度でまだ高価です。

電力会社の大口の三相電力ユーザーにこの配電費を分担してもらおうとすると大口ユーザーは自家発ににげますのでそれを防止するために今のビジネスモデルが 考案されたわけで、これは世界的な構造です。しかしこのモデルも崩壊することは予言できます。むしろ大口が自前の安い再生可能エネルギーを自家発に採用す ることが生じるかもしれません。電力事業のビジネスモデルが崩壊するのですからこれは猛烈なインパクトを社会にもたらします。

2011年6月9日、シャープが直流家電を開発し、試作機を作ってPV+リチウムイオンバッテリー+プラグインハイブリッド+直流家電システムの実証試験 を開始したと発表した。技術標準を作って10年後の普及を目指す。

さて本システムのアキレス腱は長期間天候不順対策です。これに関しては稼働率が5%以下と低いプラグインハイブリッド車 搭載エンジンを非常用発電機にする ことが考えられます。

ドイツでコミューンのような形で100%再生可能エネルギーで自活する村があります。人間は最終的には自然に従って生きるしかないという哲学で始まったも のですが、経済的にもこの方式が最も安くなる可能性を秘めています。英国のコッツウォルド地方には多くのIT長者が済みついてケーブルだけでビジネスをし ています。茅葺の屋根のPVを乗せるのは景観上避けるでしょうが、田舎の1軒屋は裏庭に設置できますし、案外普及するのではと思います。日本の団地だって 建物の壁に全てPVを張りつければいいですね。これからは屋根材、壁材そのものをPVで作ることにすれば、家の壁のペンキ塗り替えも必要とならず一挙両得 という時代がくるでしょう。心ある人は都心部から郊外、また は田舎へという動きがでると思います。そして郊外に広がる戸建住宅、周辺に広大な未使用土地を持つ田舎に点在する村など、電力会社から独立してしまうで しょう。そうして田舎に点在する原発をますます迷惑施設と認識し、反対運動が生じるでしょう。廃棄物を受け入れる自治体もでてこないでしょう。原発を誘致 しても16年の法定償却期間をすぎれば固定資産税はゼロになってしまうからです。ということは都市の貧民窟に住む貧乏人はますます高くなる電力にしがみ付 くことになり、いずれ社会騒乱の原因になるでしょう。


<電力網との関係>

電力網が売る電力料金は一般ユーザーと大口ユーザーに差があります。小口は配電に余計なコストがかかるわけで誰も否定できなく、欧米でも差はあります。し かしこの説明に悪乗りして日本の電力会社は大きな料金差を作り出しているということは否定できないでしょう。極端な場合、3yen/kWhで特定ユーザー に売っている例もあります。日本の電力会社は低需要時でも原発を一定負荷で運転するために大口ユーザーには安くしてもよいと考えるわけです。しかしこれは 原発とか送電線の償却費は一般ユーザーから徴収しているわけですから明らかに公平なる商取引を逸脱した行為です。一般消費者に公示されている価格はほんの 一部で全体を見渡せるデータはヤミのなかです。したがって一般消費者はこれに 気もつかず、気がついたとしても対する対抗手段をもちません。役所や政治家は産業に安い電力を供給して国際競争力をつかせて産業立国すると考えるから不公 平には目をつむっています。虐げられた消費者は疲弊し、次世代の子供を持とうとしません。かくして国家は衰退に向かっています。

余剰電力をグリッドに売るかどうかはその時の相場でダイナミックに決めることもできます。 しかしようやくソーラーセルという一般家庭の屋根または庭に設置する発電法のコストが下がりつつあります。 ドイツはフィードインタリフでPVを多量生産させて価格をさげるように政策的に取り組んでいます。こうして安くなったPVには国境はなくなり流通します。 ピークオイルの影響で炭化水素燃料火力の発電単価も上がり、一般家庭への グリッド価格はPV+バッテリーの自家発コストとクロスオーバーします。2030年を過ぎればピークウラニウムさえ予想され、原発の発電単価が上昇し、配 電網の重荷を背負ったグリッド価格はますます上昇する方向です。こうしてオフグリッド運用(分散発電)する家庭が増えるのでしょう。高く買ってくれる一般 顧客を徐々に失う電力会社は大口ユーザーへの料金を上げざるえなくなります。これに耐えられない産業は海外に移転するか、自家発電をはじめるでしょう。

EUでは電力業を崩壊させないために電力側が揚水発電を持つことを国家を挙げて検討しております。高速増殖炉やトリウム炉が成功して資源量が無限大になっ ても、廃棄物が溜まり続けますから、ウランもトリウムも社会的資源を枯渇させてしまうという意味でウランもトリウムも再生可能とはいえません。いずれ行き 詰まる宿命にあると思います。EUは原発も炭化水素も再生可能エネルギーではないと判断し、100%再生可能エネルギーに転換し、安定した電力を供給する 責任があると考えるからです。民を説得する方便としIPCCなどを設立し、気象学者を動員して二酸化炭素が気候変動の原因説まででっち上げたのではないで しょうか?日本のようにIPCCの表面的な意味にかく乱されて原発一辺倒でがんばると明治時代より営々として築いてきた一極集中発電・配電のビジネスモデ ルは崩壊し、分散発電の世界が出現するのです。これは原子力の火が消える日をも意味します。電力は分散発電電力の融通サービスを提供できなければ市場から 消えて行く運命にあるといえます。これをグリーンウッドのドミノ理論と申します。

欧米は発電事業と配電事業は分離しておりますから分散発電電力の融通サービスを構築する身軽さを持っています。しかし日本はいまだ一極集中発電・ 配電のビジネスモデルに固執し、かつ原発優先の国是のもとに何の動きもありません。東大の教授連ですら原発を一定負荷で使うための夜間電力有効利用のヒー トポンプとか風力の不安定さを平滑するリチウム電池の研究をしているだけです。ソーラーセル発電で蓄冷をする とかマイクロ揚水発電の研究は皆無です。なぜか?東大教授は官吏ですから分散発電電力の融通サービスをどう構築するかの研究は産官複合体に楯突くことにな るからです。こういうことも世界の研究者が東大教授の文献を孫引きまでして引用することもなくなり、世界における日本の大学ランキングが凋落しつつある一 因となっているのではないでしょうか?日本から発信する革新思想がないのです。それもこれも原発中心思想で固まったしまった日本人の脳細胞の固着した結線 の結果と私は思います。我々がしなければならないのは自らの足で立って、自らの頭で考えることではないでしょうか?


ソーラーセル /圧縮空気蓄エネ(CAES)によるオフ・グリッド自家発

PVが普及すれば逆潮流で電圧があがり、逆相禁止のリレー回路が働き、PVの余剰電力を電力会社に売れない事態も予想されます。そのようなときに、PVの 余剰電力をガス圧として蓄え、夜間電力にするということが可能となります。

30Mpaの圧縮空気は50Wh/liter、鉛蓄電池は60-75Wh/liter、リチウム・イオン電池は250-620Wh/literですから自 家発用としては容積では鉛蓄電池程度です。

昼はPVでまかない、夜間は1kW程度8時間程度とすれば蓄電容量は8kWhとなり、300気圧116リットルの空気があれば良いことになります。 さて空気を閉回路で使えば大きいな低圧タンクが必用になります。そこでオープンシステムで使うとすると機凝縮水分離をさけるために除湿が必要となります。

圧縮機はカナダのFuelMaker Corp.や中国の多数のメーカーが市販している家庭用多段往復動CNG充填機を転用できます。圧縮熱は空気乾燥器の再生や冬は暖房用に使います。膨張機 は家庭用空調機に使われている安 価なスクロール型とすればリチウムイオン電池より安い蓄電池となるかもしれません。

膨張後の低温・乾燥ベント空気にて夏の空調用に使えます。オールシーズンでは冷凍・冷蔵庫に利用可能です。


図-5.10 ソーラーセルと圧縮空気蓄エネ

このスキームの応用として時間帯別電力料金制度と組み合わせ、安い夜間電力で蓄圧をし、昼間高価格帯で発電して電力に売るということも可能となります。そ の時、乾燥低温ベント空気にての空調と冷凍・冷蔵が同時に行えます。

私がこの家庭用CAES方式の構想を書いたのは2009年頃ですが、同じころ、英才教育をうけたDanielle Fongが最大250kW程度の圧縮空気エネルギー装置を開発するベンチャー企業 Light Sail Energy を設立しました。炭素繊維コンポジット製の200気圧の蓄圧タンクを使うところは同じです。異なるところは往復動圧縮機のシリンダー内に直接水スプレーで 圧縮を等温で行うこ と、こうしてできた温水の熱は熱媒体に回収され別の保 温タンクに蓄えておきます。膨張時に圧縮空気にこの保存熱で再加熱した水をシリンダー内に再スプレーして膨張時の温度低下を防止します。往復動圧縮機は膨 張機としても使います、そしてモーターはジェネ レー ター としても使うというものです。シリンダー内部に水インジェクションして等温圧縮すれば単段で圧縮可能でしょうが、潤滑油はエマルジョンになるため使えない でしょう。したがってテフロンライナーやピストンリングの工夫が必要です。蓄圧タンクの空気は水で飽和しているため、たとえ温水を使って加熱してもシリン ダーへの圧縮空気 注入弁で氷が発生して詰まるなどという問題をが生じないような構造的にしなければなりません。

2016年になっても製品がでていないこと、資金が底をついたことなどが聞こえてきます。配電コストが高い家庭用を狙わな かったことがうまくゆかない一つの原因かもしれません。Fongは女性起業家としてもてはやされ、ビルゲーツが乗り出すなど、米国の新技術に取り組む熱気 は日本にはありませんね。

ソーラーセル/蓄冷によるオフ・グリッド空調、冷蔵・冷凍庫

電力会社は現時点では原発の一定運転のために夜間電力を安くして、夜間温水を作り、温水タンクに蓄えるという商法をとっています。三菱電機は夏季のピーク 負荷回避のための氷蓄熱槽を持つ5馬力の空調機エコ・アイス・デュエットを2005年から160万円で市販しておりますが夜間無電力では冷熱をとりだせま せん。 また騒音被害もでております。

夜間電力利用促進は逆に昼間、ソーラーセル電力を高価格で買うはめになり、2倍額買取制度もあいまってソーラーセルの販売促進となっています。 しかしこれは電力会社にとって墓穴を掘る商法でいずれ破綻し、買取量制限をかけるか、料金体系をかえるでしょう。そのときソーラーセル設置者の自衛手段と してソーラーセルと蓄冷を組み合わせたオフ・グリッド空調が普及するかもしれません。

氷蓄熱は実用化されておりますが、空調機を0oC以下で運転しなければならずCOPがよくありません。潟сm 技研が開発した18oCで172kJ/kgの潜熱蓄冷熱ができるCaCl2・6H2O をプラスチック容器にパックした蓄 冷ブロックと組み合わせると蓄冷が経済的に行われます。日中ソーラーセルで空調機をフルに稼動させ、冷熱を溜めて夜間利用するシステムを作れば、寿命が短 く高価なバッテリー無しで済ますことができます。

冷蔵庫は氷蓄熱かカルボキシメチルセルロース(CMC)を1-15%の食塩水に混合した保冷材を冷蔵庫内に保持し。昼間だけ冷却させます。

冷凍庫はJISで-18oC以下に保持できる能力を要求されます。夜間電力で蓄冷する方式の冷凍庫はすでに市販されております。蓄 冷材はカルボキシメチルセルロース(CMC)を1-15%の食塩水に混合した保冷材に融点-59oCプロピレングリコー ルを1-20%添加することで凝固点-27oCの冷凍用の蓄冷材を製造することができる。

米国のSolarPanelsPlusが 販売しているようなDC48Vスイッチング素子内蔵ブラッシレス・モーターで駆動するロータリーコンプレッサー搭載の空調機を組み合わせれば、インバー ターロスも節約できます。

 

ソーラーセル/蓄乾によるオフグリッド空調

蓄冷と等価の方法に蓄乾という方法があります。電力網が逆潮流防止のために屋根設置のソーラーセルの最高出力時に買電をカットオフするような事態に使えま す。

早稲田大学の木村らが太陽熱利用開放式除湿乾燥システムの実験研究 : その3 蓄乾槽の実験をしています。蓄冷の代わりに高濃度の塩化(臭化)リチウム水溶液をソーラーセルで稼動させるヒートポンプ式空調の廃熱で再生し、空冷で常温 に冷却して蓄えておき、夜間空調は昼間蓄乾した液体乾燥剤を循環して空気の湿度を下げ、水の蒸発僭熱で 冷却を行うものです。真空管式ソーラーコレクタと組み合わせも可能です。

 

ソーラーセル/都市ガスエンジン発電によるオフ・グリッド運用

昼間はソーラーセル、夜間は都市ガスを燃料とするガスエンジン・エンジンによるコジェネレーションを組み合わせるハイブリッド・システムを検討してみ ましょう。経済産業省が音頭をとるエネファームなど燃料電池を使うシステムは高価すぎ、補助金でようやく成立させています。補助金は恣意的に打ち切られる ものですのでここでは検討の対象にしません。

エンジン発電機としてはホンダのガス・エンジンを使うものと、パナソニックのスターリング・エンジンを使うものがあります。スターリング・エンジンは 静寂性に優れていますので屋内に設置可能となります。発電量400W、貯湯量150lです。

消費量はいままでと同じ355kWh/monthとします。ソーラーセルの発電量と昼の消費量がほぼマッチするようにします。そうするとソーラーセルの発 電は187kWh/monthとなります。この場合は187x12/1030 = 2.2kWの出力のソーラーセルが必要となります。2014年の建設単価は250-150円/Wですから、ソーラーセルの建設費は550,000- 330,000円となります。

ソーラーセルの発電原価は25.4-15.3円/kWhで変わりません。

図-5.11  ソーラーセルとコジェネレ−ションのハイブリッド

コジェネレーションの発電量は168kWh/monthです。ソーラーセルの発電量は53%、コジェネレーションの発電量は47%となります。

コジェネレーションは最大出力1kWあればよい量です。ホンダの家庭用の1kWの163cc発電効率22.5%(ガス消費量4.92kW)、寿命10年、 温水タンク付きでシステム価格は870,000円がピッタリです。

都市ガス13Aの料金は130円/m3、熱量は45MJ/m3ですから都市ガス燃料単価は10.4円 /kWhとなります。電力に変換したときの燃料単価は51円/kWhとなります。

コジェネですから温水を最大1,180kWh/月製造してくれます。この温水は風呂と暖房用に使います。都市ガス消費量は冬季は100m3/ 月(1,250kWh/月)、夏季は10m3/月(125Wh/月)ですから、冬季は燃料代金がチャラとなり、夏季だけ51円 /kWhかかることになります。年間平均して電力あたりのガス代金は25円/kWhとなります。

ガス炊風呂釜の価格は150,000円ですからこれを控除するとコジェネの発電部分の設備の価格は720,000円となります。10年間、 168kW/month発電するとすれば設備償却費は35.7円/kWhとなります。 ガス代金含めコジェネレーションの発電単価は60.7円/kWhとなります。

ソーラーセルの発電原価は25.4-15.3円/kWhですからコジェネ・ハイブリッドの複合単価は41.9-36.6円/kWhとなります。一方電力会 社の提供する電力料金は表-5.42の再生可能電源+火力のように35.9-32.7円/kWhですからコジェネレーションをソーラーセルのバックアップ に使うのは稼働率が低く、無理のようです。

ただ熱効率が60%になると期待される早稲田大学理工学術院基幹理工学部機械科学・航空学科内藤健教授が効率60%のレ シプロエンジンが実用化されれば、PVのバックアップだけでなく、単独で電力事業と競合できるかもしれません。

以上のように専用の分散エンジン発電ではコジェネを併用してもコストはさがりません。そこでエンジン発電機を自家用車と 兼用することで実質設備費をゼロにしますオフグリッド運用が可能となります。詳しくはCNGハイブリッド車をご覧ください。


ソーラーセル/LPガス・アンモニア燃料 エンジン発電によるオフ・グリッド運用

前述の「ソーラーセル/都市ガスエンジン発電によるオフ・グリッド運用」の燃料を都市ガスより安価になる可能性のあるLPガスまたはボンベ詰めのアンモニ ア燃料とする。もしこれらの価格が「次世代エネルギ−の展望」の最後のページに記載のようにボンベの配達ではなく、LPガス・タクシーのように 給油ステーションに出 向いて購入することにより85yen/kWh(2.8yen/kWh)であれば、消費者がLPガス給油テーションい出向くことによって、この構想はすぐ実 現可能です。そのためのデバイスとして自家用LPガス車ノLPガスボンベから自家発用エンジンへの給接続口を追加するだけでよい。LPガス購入はこの車を 運転して出向き、夜間は駐車して夜間電力をこの車載LPガスを使って小型エンジン(効率22.5%)で発電します。

PV電力の高値買る制度がなくなってもPV無しでグリッド価格より安い電力をつかえるようになります。無論発電機は防音などしっかりすることが条件となる でしょう。この方式はアンモニア燃料にも機材とも転用可能です。キャブレーターを交換するだけ。

集合住宅の場合は設置型ボンベに供給業者が巡回で給油して回る方式も工夫できます。

 

都市ガスエンジン/圧縮ガス蓄電による オフ・グリッド自家発

望月氏から仏プジョーがバッテリー不要の新型ハイブリット車、ハイブリッド・エアシステムで駆動 日本車に対抗というReuters記事を送ってきまし た。 根幹技術は独自動車部品大手ロバート・ボッシュと共同開発だそうです。ガソリンエンジンと圧縮窒素による駆動力を組み合わせる新技術で、従来のハイブリッ ド車 に比べ軽量化し、排出削減コストを半減できるとしています。窒素がすは高圧と低圧を循環させる方式です。圧縮窒素により油圧モーターを稼動させます。

ならば図-5.8 ソーラーセルと圧縮空気蓄エネのPVを家庭用ガスエンジン発電機と置き換え、封入窒素ガスによる蓄圧を組み合わせればよいということになる。目的はあくま でガスエンジ ンを最高効率で動かし、オンオフ運転することにより、低負荷で効率低下する小型エンジンでも蓄圧と組み合わせて高効率の発電ができることにある。エンジン 効率の高い吸気バルブの閉じるタイミングをカム形状だけで下死点の付近で遅らせる(遅閉じ)ことで実質的な圧縮比を10程度に抑さえ るようにしたミラーサイクルを採用する。



図-5.12 都市ガスエンジン/圧縮ガス蓄電によるオフ・グリッド自家発

1kW程度を圧縮ガス発電で1時間使うとすれば蓄電容量はkWhとなり、300気圧14.5literの圧縮空気があれば良いことになる。

家庭用負荷変動に応じスクロール式膨張機は可変速になる。これと一定周波数の家電製品とのマッチングのためにインバーターを介在させる。エンジンならびに 圧縮機アフタークーラーの排熱は暖房に使える。膨張で発生する冷熱は空調、冷凍・冷蔵に利用できる。

熱併給型は温水タンクも必要で利用勝手が悪い。これは新しい分散発電の一つの候補になるだろう。

スマート・シティー

<既存都市>

前述のアクティブ・ソーラーハウスの屋根にソーラーセルを載せるスマートハウスは既存の郊外型戸建住宅の土地占有面積が大きい時に可能となります。炭化水 素燃料を湯水のごとく使う自動車交通の普及により、都市はゾーニングによる機能化などが行われ、都市の郊外へのスプロール化、商業施設などの大規模化が望 ましい都市のありかたとされてきたためです。

しかしいずれ炭化水素燃料の枯渇後、電気自動車に移行するにしても、通勤に自動車を使い、郊外の大規模ショッピングモールで買い物する時代はいずれ終わる ときがきます。そのときは都市は拡散型から集約型の都市に転換する必要に迫られるでしょう。

現に日本でも若い世代は共稼ぎが常態となり、郊外型、一戸建ての住宅から都心の高層住宅に住むようになってきています。いわゆる都心への人口回帰が生じて いるのです。職住接近、歩いて暮らせる街のニーズが高まっています。

地域暖房は都市の電線と配管を全て地中化して都市の美観が増しますがこれも日本では大都市と青森市のように特別収入のある町以外は無理ではないでしょう か。

<コンパクト・シティー>

このような時代は集合住宅を中心とするコンパクト・シティー構想がでてまいります。「コンパクトシティ」とは人口200万人の都市 を直径5km程の円形の敷地に16層の人工地盤を積み上げて一戸あたり400m2の敷地を確保する効率的な立体都市のイメージで す。食料品も 周辺の農地とリンクし、地産地消として輸送エネルギーを節約します。また周辺の土地にソーラーセルを設置する分散発電も可能となります。このような意味で 「コンパクトシティ」は米国ではサステナブル・コミュニティーとも呼ばれております。

地産地消の思想を突き詰めてゆくと小さな都市が一定間隔で分布する中世都市の伝統を受け継ぐヨーロッパの都市を思い浮かべます。ヨーロッパに遅れて産業化 したアジアは巨大都市への一極集中が過度となり、サステナビリティーという面で問題を抱えています。ただ大都市はアイディアや創造性のルツボとしてイン ターネット時代においても人々を引き付けるでしょう。

<スマート・シティー>

昼は巨大日傘を広げて日射を避け、夜は閉じてスラブの放射冷却を促進するパッシブ・シティーが中心となります。アクティブ・ソーラーハウスとコンパクト・ シティー構想 で構成されます。真空集熱器による給湯も併用します。

自動車道路の一部を自転車専用レーンに切り替え、EV路面電車、共用EV、フード・マイレージを短くする地産地消のための物流・決済インフラをもつ中小都 市構想です。

炭化水素燃料は一切使わず、ソーラーセル、風力、溶融塩蓄熱付き付き太陽光集光型発電、都市生ゴミのメタン発酵による発電、地熱発電、ダム式水力発電、揚 水発電、スターリング・エンジン ・マイクロガスタービン発電・燃料電池を使うマイクログリッドで夜間電力を含む全ての電力を賄い、 バッテリー、蓄熱、蓄冷、蓄乾、蓄濃をリアルタイム・プライシングするスマートグリッドで制御します。そして余剰電力は売ります。直流LED照明、直流 IT・AV家電のために直流が標準となるでしょう。

ストックホルム、マラガ、ドバイ、マルタ、オハイオ、エンデサ、フレデリクトン、横浜においてパイロットプロジェクトが動きはじめました。UAEのドバイ では炭化水素燃料に一切依存しない10万人の都市をアブダビに建設するマスダシティー(MasudaCity)計画があります。潤沢なオイルマネーを使っ て未来の先取りをしようというというコンセプトです。炭化水素燃料枯渇後の立国は砂漠に豊富にある太陽光を活用しようという壮大な計画で、産油国に限ら ず、人類に残された最後ではあるが永続性のあるエネルギー源を活用するカーボン・ニュートラル技術開発の場にしたいという崇高な理想を掲げています。 余剰電力を売るというところがミソで、炭化水素燃料が枯渇したら、太陽光から合成自動車燃料を製造して輸出産業に育てるという本来の目標は隠されていま す。

三井造船がここで東京工業大学の玉浦式ビームダウン集光型のCSP実験装置を建設しております。

 

都市廃棄物発電

炭化水素燃料の25%はプラスチックに変換されて利用されていますが、用済みとなって廃棄されたとき、まず材料としてリサイクルし、リサイクルできないも のは埋め立てや単なる焼却処理をせず同時に発電して有効利用します。

<都市生ゴミ・メタン発酵>

嫌気性菌で都市生ゴミを発酵してメタンガスを製造し、都市ガスにブレンド使用するか発電して売ることです。北欧で普及しております。 メタン発酵する生ゴミの分別がキーとなります。

<セルローズ系廃棄物のアルコール発酵>

微生物で製造した酵素でサトウキビ、トウモロコシ等のバイオマス、廃木材や古紙などを糖化するか、硫酸で分解して糖化し、これに酵母を加えてエタノールと して内燃機関燃料とするか、MTBEとしてオクタン向上剤とする廃棄物利用です。

<廃棄物焼却発電>

一般廃棄物、古紙などの焼却炉の熱で水蒸気タービンを回して発電します。

<廃棄物熱分解ガス化発電>

廃棄物を熱分解してガス化し、ガスタービン発電するものです。

<廃棄物固形化燃料>

Refuse Derived Fuelを略してRDFとも呼びます。廃棄物とプラスチック廃棄物を混合して乾燥し、混和することで固形燃料を製造します。

 

都市生ゴミのメタン発酵

一般廃棄物を焼却処理せず、嫌気的に発酵させてメタンガスを作り都市ガスシステムに供給するか、自治体発電して電力会社に売れば発生する二酸化炭素を減ら すだけでなく、発生するメタンガスのエネルギー分の炭化水素燃料の消費もダブルに節約できます。スエーデンが積極的に取り組んでいます。

日本では都市ゴミは厚生省の担当のため全て焼却という方針で突っ走っていますからダイオキシン問題がでても焼却炉を作りなおすだけで、これをメタン発酵し て都市ガスにするなどという発想はでてまいりません。炭化水素燃料がピークアウトすれば焼却用の燃料価格が暴騰し、焼却路線は破綻します。暴騰はしばしば 予期せずやってきますのでその時では遅すぎるのです。

横須賀市では2002から3年間メタン発酵の実証プラントを住友重機械と共同研究し、2006年には実用化可能との結論をだしましたが、2010年、吉田 雄人市長は焼却方式採用と表明しました。鎌倉市でもタン発酵の導入を検討しましたが、現市長はコストを理由に、現時点の分別法では困難として対象からはず したようです。いづれ焼却用燃料価格が高騰することを見越すこともできず、行き当たりばったりの決定を残念に思います。 焼却炉向きに普及した現在の家庭での分別と市による収集作業では紙などセルローズ系のゴミがキッチンの食品残渣に混じってメタン発酵がむずかしくなりま す。 キッチンの食品残渣はメタン発酵 に、紙などセルローズ系のゴミは可能な分別を行う必要があることを認識して市民の協力を取り付けてメタン発酵という方法を採用してゆくことが理想なのです が。

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April 1, 2007

Rev. November 7, 2019


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