総合知学会

コンパクトシティー

2008年8月23日

 

今回はメンバーの東急設計コンサルタントの田代洋志氏が「コンパクトシティー」というタイトルで職住接近、親から子へ住む家を残せ、歩いて暮らせる街についてプレゼンテーションをされた。


トルコ以東のアジアの建築をおさらいしてその多様性のなかにもアジア共通の要素があることをアップルのプレゼンテーション・ツールである「キーノート」を使ってプレゼンテーションをされてから「コンパクトシティ」の主題に入った。建築家らしい華麗な編集であった。

過去においては都市の巨大化に伴いゾーニングによる機能化などが行われ、化石燃料を使う自動車交通の普及で都市の郊外へのスプロール化、商業施設などの大規模化が なされ、それが望ましい姿とされてきた。しかし人口減少に伴い、都心の空洞化、米国では貧富の差拡大にともなうセキュリティー確保のためのゲートシティー化が進んでいる。

しかし化石燃料の枯渇から自動車時代はいずれ終わるときがくる。そのときは都市は拡散型から集約型の都市に再転換する必要に迫られるだろう。

現に日本でも若い世代は共稼ぎが常態となり、郊外型、一戸建ての住宅から都心の高層住宅に住むようになってきている。いわゆる都心への人口回帰が生じているのである。職住接近、歩いて暮らせる街のニーズが高まっていると思われる。

大都市はアイディアや創造性のルツボとしてインターネット時代においても人々を引き付けている。 「コンパクトシティ」とは中世の小都市をイメージさせるが、人口200万人の大都市を直径5km程の円形の敷地に16層の人工地盤を積み上げて一戸あたり400m2の敷地を確保する効率的な立体都市のイメージ もありうる。

「コンパクトシティ」は化石燃料の消費量が少ないので米国ではサステナブル・コミュニティーとも呼ばれる。

このような海外の動向に着目して2006年都市計画法と中心市街地活性化法が改正された。このコンセプトに従い埼玉でコンパクトシティー建設のために農地が開放されたが、実際に完成したものは 過去の延長上にあるエネルギー多消費型の自動車時代に適合した郊外型大規模ショッピングモールであったという。

このような店舗では地産地消などは題目にすぎず、海外食材廉価大量販売で地元農家は依然カヤの外である。このようにヨーロッパの動きに比し、いまだ日本社会には意識の遅れがある。健全な市民意識が育っていないことも一因だろうか?


ついで科学技術・生存システム研究所の神出瑞穂会長がサステナブルという観点から「小規模な自給自足の自律分散した閉循環社会」を提案された。

NPO法人知的社会システム研究開発機構の大庭英雄氏とテクノマネジメントソリューションズの太田吉美氏が共同で茨城県に提案した「ITを知的に活用した広域地方自治体」(道州制に向けた県政の改革)の紹介があった。

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