'98年2月


「チャイニーズ・ボックス」- Chinese Box -

 ウェイン・ワン監督。ジェレミー・アインズ、コン・リー、マギー・チャン主演。

 香港返還の1997年が舞台。中国女性に恋した英国人記者が、白血病で先が無い事を宣告される。伝統的な設定である、西洋の男と東洋の女のラブストーリ。しかし、主たるテーマは、やはり香港返還を背景にして、それぞれが自分のアイデンティティを求める物語だと思う。

 全体には、ちょっと思い入れが強すぎて、エンターテイメント性に欠けるのが気になる。詰らなくはないのだけれど。
 ウェイン・ワン監督の「ジョイ・ラック・クラブ」「スモーク」の様な、人間ドラマは上手く出ているが、やはり思い入れが先に立ってしまっているのだろうか。

 コン・リーも年をとって、美しさよりも貫禄を感じてしまう(^^;)。


「ジャンク・メール」- Junk Mail -☆

 去年のカンヌの批評家週間最優秀賞、東京国際映画祭のシルバー賞、ノルウェーのアマンダ賞を総ナメした話題作。映画祭の時は観られなかったが楽しみにしていた。監督は、ポール・シュレットアウネ。

 ノルウェー映画。オスロの街のかなりヘンな郵便配達が主人公。一人の女性から、犯罪やら何やらと絡んで行く展開が面白い。出てくる登場人物、誰も彼も、善人なんていなくて、一癖ありそうで、それでいて憎めないキャラクタばかり。不思議な面白さを持っていた。


「もう、ひとりじゃない」

 じんのひろあきの監督作品第二弾。初監督の「月より帰る」は観ていない。

 二人の多重人格同士の中の、二人の恋人同士が施設から逃亡する話。「櫻の園」の脚本を書いているじんのひろあきだけに期待していたんだけど…、どうも面白く無かった。
 退屈するという程では無いのだけど。結局、多重人格同士の恋愛というアイデアだけでそこから発展する所が無かったので、ストーリ的に膨らみがまったく出てきていない。病院の医者や、他の患者なんかも面白いキャラクタだったのに、ストーリには生きて来ない。
 多重人格という面でも、キャラクタの性格付けがはっきりしてないし、融合に対する恐れなんかも上手く表現出来ていない。

 撮影がビデオだけど、画面が観にくいし、手持ちが多くてすっごく疲れる。


「お墓がない!」

 原隆仁監督、岩下志麻、袴田吉彦、安達祐実主演。
 岩下志麻演ずる大女優、桜咲節子はガンだと思い込み、自分の理想の墓を探し始める。

 お墓をポイントに、葬儀や戒名やもろもろの疑問について突っ込んでいくアイデア自体は悪くないと思うのだけど、結局最後はあまりに当たり前な所に落ち着いてしまって期待ハズレ。ぱっとしない映画だった。


「この森で、天使はバスを降りた」- THe Spitfire Grill -☆

 サンダンス映画祭で観客賞を受賞。監督、脚本はリー・デビット・ズロートフ。

 刑務所から出所した若い女性のパーシーは、田舎町に新天地を求め、バスを降りる。自分の過去に対する街の目を気にしながらも、やがて職を得た食堂の女主人との心の交流を深めていく。この心の通わせ方の微妙な描写がなかなか上手い。それでいて、ストーリも変化があって面白い。
 ラストにはちょっと違和感あったけど、余韻があって好きな映画。


「ゲーム」

 「セブン」のデビット・フィンシャーが監督。マイケル・ダグラス、デボラ・アンガー、ショーン・ペン主演。

 デビット・フィンシャーは、前作の「セブン」が人気高かったので、今回、難しい所。結果的には、楽しめた。ただ、ちょっとしつこいぐらいのどんでん返しに疲れ切ってしまったけど。こういう疲労感は、「セブン」にもあったかもしれないが(^^;)。
 まあ、ちょっと無理な展開もないでもないけど、それを無視して楽しめる。


「同居人 背中の微かな笑い声」- Natural Enemy -

 ドナルド・サザーランド主演。

 養子をテーマに、復讐のために一家に接近する青年のサイコ・サスペンス。地味ながら、結構面白かった。もうちょっとストーリのディティールに凝って欲しかったけど。大雑把な感じが残る。ラストも単純過ぎるし。


「蘇える優作・探偵物語(特別編)」

 なぜ、今、松田優作なんだか…よく判らない企画。

 '79年9月から'80年4月まで日本テレビ系で放映された「探偵物語」。第1話「聖女が街にやって来た」(村上透監督)と第5話「夜汽車で来たあいつ」(澤田幸弘監督)を、新たに35mmにブローアップしたもの。このほか竹中直人のナレーションによる、TV予告編、ハイライトシーン、メモリアル・フィルム(15分)など。当初、最終話「ダウンタウン・ブルース」を予定していたが、ナイフ事件などで第5話に変更したらしい。

 スクリーンで観ても特別の感慨も無いのだけど。


「スポーン」- Spawn : The Movie -

 コミック、アニメで人気がある「スポーン」の映画化。多少期待していたけど、作りはまったくの子供向け。日本で言えば「モスラ」みたいな子供の客層を狙っているのか。ちょっと大人では楽しめないかもしれない。

 「ジュラシック・パーク」のCG担当のマーク・デッペが監督、ILMがCGやるだけあって、SFXはそこそこは面白いのだけど。


「G.I.ジェーン」 - G.I.Jane -

 リドリー・スコットが監督、デミ・ムーア主演。

 男女同権を訴える女性議院の道具となり、シールズ(海軍特殊偵察部隊)の訓練を受ける。軍隊訓練物も今まで多いし、同じパターンでは辟易してしまうが、まあ、それなりに面白かった。リドリー・スコットだけあって、訓練シーンの描き方もリアリティがあって、映像的に迫力を出している。
 単純な愛国主義にも陥っていないし。いいバランスをしていると思う。


「リング」☆

 これほど怖い映画は無かった。とにかく、怖い。この監督、中田秀夫の「女優霊」はまだ未見なのが残念。
 原作は出た当時に読んでいるが、映画を観た後に再読した。うまく映画化されていると思う。特に設定を変えた部分がうまい。主人公を女、松嶋菜々子にした事、相棒の龍司を夫にした所が映画的に面白さを増している。

 映像的に作るには、とにかく難しいと思ったビデオの内容が非常に怖い。単独では大した事ないのだろうけど、あれほどの映像はなかなか作れないと思う。中田秀夫、ただ者では無い(^^)。

「リング」原作感想
「リング完全版」(ビデオ)感想


「らせん」

 「リング」に対して、こちらは「NIGHT HEAD」の飯田譲治が監督、脚本。「リング」ほどは怖くなないけど、そこがよい。「リング」みたいな怖いのを二本続けて観たら疲れ切ってしまう。「らせん」は「リング」に続いて、説明的、解説的な部分が多いが、二本でちょうどいいバランスを作っている。

→「らせん」原作感想


「ジャングル2ジャングル」- Jungle 2 Jungle -

 ディズニー映画。「サンタクローズ」の監督、主演コンビ。「サンタクローズ」は夢も何も無いつまらない映画だったので、期待してなかったが、その通り、つまらなかった。

 13年間別居中の妻と、正式に離婚するためにアマゾンの奥地に向かう、バリバリのビジネスマン。そこで自分の息子ミミ・シクと初対面する。アマゾンしか知らない息子をニューヨークに連れてくる、そのドタバタ劇。「クロコダイル・ダンディ」の様な、文化的な差異を使ったコメディだが成功していない。平凡、面白みが無い。


「HANA-BI」

 かなり評判がよかったけど、個人的には、北野武の昔の遺産という気しかなかった。復活第一弾と言われた前作「キッズ・リターン」は地味ながら、ある種、新しい雰囲気を作っていたので面白いとは思ったけど、「HANA-BI」は今までの北野武映画のなぞりでしかないと思う。

 随所に出てくる北野武の絵は、話題性はあっても、非常にあざとい使い方だと思う。最後の北野武の娘のだし方もやはりあざとい。この辺が映画全体の雰囲気を非常に壊している。
 ただ、岸本加世子がいい雰囲気だっとと思う。ラストは余りにあまりに当たり前過ぎて、どうしょうもなかった。


「ミミック」- Mimic -

 疫病を根絶するためにバイオ技術で作られた昆虫が、巨大化して人間を襲う。バイオものとか、遺伝子技術とか、疫病とか、もうちょっと絡ませていいと思うもの全部をすっとばして、単なる怪物モノになっているのは何故だろうか。
 ただ、ひたすらに退屈な展開だった。


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