2001年9月


「ロンドン・ドックス」 - Love,Honour and Obey -

 ドミニク・アンシアーノ&レイ・バーディス監督、ジョニー・リー・ミラー、ジュード・ロウ、レイ・ウィンストン、リス・エヴァンス。
 元郵便配達のジョニー(ジョニー・リー・ミラー)は、ノース・ロンドンのギャングの顔役レイを叔父に持つ親友ジュード(ジュード・ロウ)に頼み自分もギャングの一員となる。ジョニーの計画したクレクジット・カード詐欺で名を上げるが、サウス・ロンドンのギャングと対立する事になる。

 「スナッチ 」、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」と最近のロンドンのギャングものは面白い。独特の構成で面白いテンポと雰囲気を出していて、それが役者たちと上手く合い、いい映画になっている。即興の演出スタイルらしいが、そのノリの良さがスクリーンから伝わってくる。役名と役者の名前が同じトコなんか、そういう理由から来ているんだろう。
 ギャグは下ネタが多いし、英国のキュウリはでかいけど、このノリは最高。

「ロンドン・ドックス」Official Website


「蝶の舌」- La Lengua De Las Mariposas -

ホセ・ルイス・クエルダ監督、マヌエル・リバス原作、フェルナンド・フェルナン・ゴメス
、マヌエル・ロサノ、ウシア・ブランコ、ゴンサロ・ウリアルテ

 1936年、スペインのガリシア地方の村、父ラモン、母ローサの子供、8歳の少年モンチョは喘息で入学が遅れていた。モンチョは先生の体罰を恐れ学校を怖がっていたが、ドン・グレゴリオ先生は優しく彼を迎えた…。
 大人気でなかなか見られなかった一本であるが、確かに面白かった。主人公たちやスペイン内戦という時代背景からも「さよなら子供たち」を連想させた。テーマを押しつけず、あくまでも子供の視点から淡々とストーリを展開させる様が気持ちよかった。

「蝶の舌」 Official Website


「大河の一滴」

 神山征二郎監督、新藤兼人脚本、五木寛之原作原案、安田成美、安田成美、安田成美、セルゲイ・ナカリャコフ、三國連太郎、倍賞美津子。
 小椋雪子(安田成美)は、ロシアの旅行ツアーのガイドだったニコライ(セルゲイ・ナカリャコフ)が来日しトランペットのオーデションをするのを助ける。ある日、金沢で特定郵便局を営む雪子の父伸一郎(三國連太郎)が倒れる…。

 原作はそれなりに面白かったけど、原案というか、実際ほとんど関係ない気がする。新藤兼人の脚本は何とも古くさく、エピソードはバラバラ。幼なじみの郵便局員昌治(渡部篤郎)も、なんか意味の無い存在だし、全体的にまるで筋が通った所が感じられない。
 ストーリとはあまり関係ないのだけど、主人公の家が高祖憲治衆議院議員の選挙違反事件で話題になっている特定郵便局で、世襲が当然のごとく話されているので、そーいうモンなのかと改めて思った。

「大河の一滴」 Official Website
原作/原案(?)「大河の一滴」感想


「ドリヴン」- Driven -

 レニー・ハーリン監督、シルベスター・スタローン、バート・レイノルズ、キップ・パルデュー、ティル・シュワイガー、ジーナ・ガーション、エステラ・ウォーレン、クリスチャン・デ・ラ・フュエンテ。
 事故により引退同然だったジョー・タント(シルベスター・スタローン)。プレッシャーに悩む若手天才レーサーのジミー(キップ・パルデュー)を助けるべく、タントはチームのオーナーオーのカール・ヘンリー(バート・レイノルズ)に呼び出される…。

 本物の映像の迫力と、CGによる合成の巧みさが上手い。ストーリは単純だが、クラッシュ・シーンを始め盛り上がりを上手くつけている。スタローンが一歩引いた役どころでいい味が出ていたが、「タイタンズを忘れない」に続く売り出し中のキップ・パルデューはイマイチ花が無い気がするんだけど。まあ、全体では単純ではあるが手応えのある映画になっている。
 女優陣は、花を添えているだけで可哀想。

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「親分はイエス様」

 斉藤耕一監督脚本、渡瀬恒彦、ナ・ヨンヒ、奥田瑛二、渡辺裕之、渡辺哲、ガッツ石松。
 山政会若頭補佐の木原勇次(渡瀬恒彦)、中森組若頭補佐の島俊夫(奥田瑛二)、抗争を続ける組の二人は、ほとぼりをさますために姿を消す。助けられた教会で、偶然、元ヤクザ志田(渡辺裕之)のスピーチを聴いた勇次は自分も十字架を背負おうと、十字架行進を始める…。

 ミッション・バラバという元極道の伝導グループの夫婦たちがモモデル。「誰だって人生をやり直せる」というメッセージは受け入れられるし、それなりに感動的な部分もあるのだけど、ヤクザの親分を信じていたのが、そのままキリストを信じる様になったいう、なんとも単純に信じてしまう、信じやすさという本質が変わっていないのが非常に気になってしまった。
 日韓共同製作。「ホタル」もそうだけど、韓国親善の色合いが強いのは、来年のワールドカップに向けたもの?

「親分はイエス様」 Official Website


「ファイナルファンタジー」- Final Fantasy -

 坂口博信監督、声の出演:ミン・ナ、アレック・ボールドウィン、スティーブ・ブシェミ。
 ファントムと呼ばれる地球外生命体により、人類滅亡寸前の2065年。強行にファントム絶滅をもくろむハイン将軍と対立しながらも、科学者アキは、師である科学者のシド、恋人でディープ・アイズの一員のグレイとともに別の解決策を模索する…。

 全編CGI、確かに実写とほとんど変わらない。TVのサイズのCFを見ているより大画面で見た方が、より実写っぽかった。しかし実写に近づくほどCGIでやるのが無意味だと確認出来る。「トイ・ストーリー2」で人形が動いたり、「ジュラシックパークIII」で恐竜が動いたりするのとは違う、映像的な面白みがまるでない。さらに人間像にまるで厚みがなく、脚本がダメな映画は所詮ダメという再確認映画でもあった。

 この映画の不振でスクウェアは2002年3月期決算で130億円余りの特別損失を計上。1120万株の第三者割当増資を実施し、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が約149億円で全株取得という事態になり、歴史的な失敗作の映画として記憶されそう。

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「キス・オブ・ザ・ドラゴン」- Kiss of the Dragon -

 クリス・ナオン監督、リュック・ベッソン製作脚本、コーリー・ユエン アクション監督、ジェット・リー、ブリジット・フォンダ、チェッキー・カリョ。
 麻薬密売人逮捕のために中国からやってきた秘密捜査官リュウ(ジェット・リー)。指揮をとるフランス警察のリチャード警部(チェッキー・カリョ)の罠にはまりに追われる身になる。麻薬中毒のジェシカ(ブリジット・フォンダ)も事件に巻き込まれる…。

 ベッソン絡みという事で期待も大きかったけど、「TAXi」みたいな詰まらないのもあるので不安半分。しかし雑な面もありながら、面白かった。「リーサル・ウェポン4」と共にアクション監督をコーリー・ユエンにまかせているせいかジェット・リーの動きもよく、香港のアクションとフランスのスタイリッシュな映像が上手く融合している。
 最後は「レオン」か、って雰囲気で新鮮さは無いんだけど、後味はいい。
 ところでジェット・リーよりは、リー・リンチェイ(李連杰)の方がかっこいいと思うんだけど。

「キス・オブ・ザ・ドラゴン」 Official Website


「ジュラシックパークIII」- Jurassic Park III -

 ジョー・ジョンストン監督、サム・ニール、ウィリアム・H・メイシー、ティア・レオーニ。
 ジュラシックパークのサイトCでパラセイリング中に事故に遭ってしまった12歳のエリック(トレヴァー・モーガン)。その両親ポール・カービン(ウィリアム.H.メイシー)、アマンダ(ティア・レオーニ)はなんとかグラント博士(サム・ニール)を連れ、救出に向かう…。

 まったく予告編通りの印象。それほど期待がなかったが、短くまとめて、スピード感をあげているので細かいアラは目立たない。2よりもずっと面白く感じた。グラント博士の活躍は少ないが脇役がみんな頑張っている。ポール役のメイシーいいアクセントになっている。
 CGIの出来はまったく文句ない。恐竜という未知の映像を見せてくれるという意味でのCGIは意味深いが、実写でいいのをわざわざCGIにして大赤字にしてしまった「ファイナル・ファンタジー」は反省すべき。
 ところでUSJの「ジュラシックパーク・ライド」は恐竜が少なすぎ。ユネスコ村大恐竜探検館の方が多いぞ。

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「PLANET OF THE APES/猿の惑星」- Planet of the Apes -

 ティム・バートン監督、マーク・ウォルバーグ、ティム・ロス、ヘレナ・ボナム=カーター、エステラ・ウォーレン。
 2029年、宇宙探索中のオベロン号は磁気嵐を発見、遺伝操作により高い知能を持ったチンパンジーに探索に向かわせるが交信が断絶、宇宙飛行士レオ(マーク・ウォルバーグ)はそれを追い未知の惑星に不時着。そこはセード将軍(ティム・ロス)などの猿に支配された世界だった…。

 オリジナルから随分と変えられているが、かなり上手い変更だと思う。映像技術の進歩による表現力向上に、ティム・バートンらしいいい加減さと、ノリが上手くマッチしている。まあ、リメイクする意味は余り感じられないけど。
 ラストは、色々と考えられると思うけど…単なるパート2への複線なのだろうか?

「PLANET OF THE APES/猿の惑星」Official Website


「ジターノ」 - Gitano -

 マヌエル・パラシオス監督、ホアキン・コルテス、レティシア・カスタ、マルタ・ベラウステギ。
 ジプシーでフラメンコ・ミュージシャンのアンドレ(ホアキン・コルテス)が出所すると、親友ペケは羽振りはいいが酒におぼれ、従兄弟のロメロは対立する一族に殺され、妻ルシアは音楽プロデューサーの愛人となっていた。変わらずにいるのはペケの妻でルシアの姉のロラだけ。様々な人間関係が絡みあう…。

 人間関係は判りにくかったが、ジプシーの掟、一族、故郷、音楽、踊りとリズムが上手い世界を作り上げている。単調かと思ったストーリも、入り乱れた人間関係の中にミステリーがあったりして上手いエンターテイメントに仕上がっていると思う。ホアキン・コルテスのダンスが無いのが何とも寂しいが。

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「反則王」

 キム・ジウン監督脚本、ソン・ガンホ、チャン・ジニョン、チョン・ウンイン、オ・デサン、パク・サンミョン。

 「シュリ」「JSA」人気でついでのソン・ガンホ映画の公開だろうと思っていたけど、まあ面白かった。彼の初主演映画。
 成績最下位の銀行員イヌ・デホ(ソン・ガンホ)は、上司にいじめられる毎日。あるプロレスジムで子供の頃ファンだった反則王ウルトラ・タイガーマスクを見つけ、入門する事になるが、やがて大舞台に立つ事になる…。
 ソン・ガンホが体を張って迫力ある画になっている。最後の試合など、かなり見せてくれて迫力も完動も満点。笑いあり、感動ありと映画の原点を思わせる。やはり韓国映画はパワーがあってよい。

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「テルミン」- Theremin : An Electronic Odyssey - ☆

 スティーブン.M.マーティン監督脚本製作、レオン・テルミン、クララ・ロックモア。
 電子楽器を発明した科学者テルミンの生涯の記録映画。1993年に完成したが翌年テルミンは97歳で死去。1994年にサンダンスのドキュメンタリー部門フィルムメーカー賞を受賞。

 1938年のテルミンの失踪(映画では拉致と断定)以来初のインタビューを1990年にロシアで行う。さらに1991年に米国へ招き、クララとの再会を果たすシーンは感動的。ニューヨークの町を歩くシーンも印象深い。
 単なる電子楽器の発明者の生涯に留まらず、社会主義が生まれて崩壊するまでのロシアの歴史や、テルミンを取り巻く人間関係まで深く、巧みに描き出している。面白かった。

フレンズ・オブ・テルミン
竹内正実 公式ホームページ


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