'98年9月


「ムーラン」

 ディズニー始めてのアジアを舞台にしたアニメ。4〜6世紀、フン族と戦う中国、その中の男装の少女の戦士が主人公。中国では有名なストーリらしいが、まったく内容は知らなかった。
 主人公のムーランを始め、脇役、敵役それぞれ魅力的だし、ストーリも凄く上手い。屋根の上の対決など、見せ場の作り方はさすがと思わせる。こういう部分でも、「アナスタシア」とは技量の違いを感じる。
 また、セル画と3D CGの融合の上手さはさらに磨きがかかってきた。違和感はほとんど感じられない。CGを使ったフン族の騎馬軍団の迫力の出し方などもゾクゾクくる凄みがあった。

 ただ、ミュージカル部分など、中国を舞台にしたためかステレオタイプな音楽の作り方なのが気になった。

→ 「Mulan」 Official Website(Disney)


「愛を乞う人」

 平山秀幸監督、原作は下田治美の同名小説。原田美枝子、中井貴一、野波麻帆。「学校の怪談」1、2の平山秀幸監督であるが、今回はジャンルとしてはまったく違う。
 モントリオール世界映画祭にて国際批評家連盟賞受賞。

 この映画についての感想を読むと、母親の虐待シーンの凄さばかり注目されている気がする。でも、私はそれほどは酷くは感じなかった。そこに捕らわれてしまうと、親子関係のメンタルな部分に目が行かなくなってしまう。アダルト・チルドレンものの解説によくある様に、いくら虐待されても子供は親に対して愛情を感じ、求めるものである。そういう部分が理解出来ないと全体を見失ってしまう。
 ラストは緊張感はあったけど、あれで解決とは思えなかった。

→ 「愛を乞う人」 Offical Website


「BEAT」

 宮本亜門監督脚本。真木蔵人、内田有紀、永澤俊矢、川原亜矢子。

 ひどく詰らない訳ではないのだけど、いい部分がまるで無い映画。
 役柄的に、内田友紀は体当たりの演技って感じだけど、あんまり大した事なかった。キレが無くて、今風の女、のほほんとした感じしかしない。子供を抱えた必死に生きている女という感じが伝わって来ない。

 沖縄映画と言えば、舞台は利根川裕の「喜屋武マリーの青春」を原作にした「Aサインデイズ」と時代背景が似ている。あの時代の沖縄の雰囲気出し方、日本と米国と沖縄の混ざり合った猥雑な時代の表現は、「Aサインデイズ」の方がずっと上手かった。

 目立たないけど、川原亜矢子が出ている。活躍しないので残念だった。


「シティ・オブ・エンジェル」

 ブラッド・シルバーリング監督、ニコラス・ケイジ、メグ・ライアン。
 ヴィム・ベンダースの「ベルリン天使の詩」のリメイク。ヒロインのメグ・ライアンを外科医にして、舞台はL.A.。「ベルリン天使の詩」に比べれば、ずっと判りやすいけど、物足りない部分が多い。メグ・ライアンの熱演は判るけど、ニコラス・ケイジの天使役はどうも頂けなかった。個人的には志村けんに見えてしょうがない。

 ラブ・ストーリとしてはいいんだけど、やはり「ベルリン天使の詩」と比べると単純過ぎる構成が、全体の雰囲気を軽くしている。結局、「ベルリン天使の詩」のリメイクを作る意義ってのが、全然感じられないのがこの映画の欠点か。
 単体で観れば、けっして詰らない映画じゃないし、結構感動出来るけど。

→ 「City of Angels」 Official Website
→ 「シティ・オブ・エンジェル」Official Website(ワーナー)


「しあわせになろうね」

 村橋明郎監督脚本、渡瀬恒彦、風間杜夫、哀川翔、有森也実、伊武雅刀。

 借金苦で解散を決めた山室組、解散の前日。一本の電話から巻き起こる騒動。親分と姐さん、組間の抗争、組内の派閥争い、地域住民、チンピラなどなど、それぞれの役割も面白い。場所はわずかに二部屋の演劇的空間。設定が如何にも演劇的で、展開も演劇的な面白さはある。でも、それがこじんまりしていて、どこか飛び抜けた所が無いので、いかにも地味な感じがする。
 まあ、それなりには面白いんだけど。

→ 「しあわせになろうね」Official Website


「TAXi」 - TAXI -

 リュック・ベッソン製作脚本、ジェラール・ピレス監督、サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル。

 スピード狂のダニアルがタクシー運転手になるが、その腕をみこんで、強盗団逮捕に協力させられるというストーリ…。なんか、面白そうな設定ではあるんだけど、非常に詰らなかった。リュック・ベッソンというブランドに騙された感じがする。実際はベッソンが部分的に監督しているらしいんだけど。

 そもそも、スピードが命のはずの映画なのに、まるでスピード感が感じられなかった。これは映像的なセンスの無さか。この映画では致命的な欠陥。

 また、ストーリ的には、まるで練りが足りないと思う。特に、強盗団逮捕あたりはまったくのベタな感じで、どこが面白いのかまるで判らない。

→ 「TAXI」Official Website
→ 「TAXi」Official Website
→ 「TAXi2」感想


「スプリガン」

 川崎博彌監監督脚本、大友克洋総監修。
 川崎博彌は、「MEMORIES」の中の「最臭兵器」の監督。たかしげ宙、皆川亮二の漫画の「スプリガン」が原作。

 原作の第二巻に載っているノアの箱舟の部分がメイン。
 原作の映像化としては、いいと思う。主人公御神苗優やジャン・ジャクモンド、敵役のファットマン、リトルボーイのキャラクタイメージは嫌いじゃない。

 ただ超古代文明を巡る人類の存亡をかけた戦い、と言った割には結構地味な戦い方で、展開がまどろっこしい。まあ、原作と同じなんだけど、どうも迫力に欠けてしまうのは何故だろう。映画的な趣向が足りないのだと思う。

→ 「スプリガン」Official Website


「フラッド」- The Hard Rain -

 「スピード」の脚本家グラハム・ヨストのシナリオを映画化。 監督ミカエル・ソロモン、モーガン・フリーマン、クリスチャン・スレーター、ランディ・クエイド。

 スピード感あふれるアクション映画…なはずなんだけど、そういう部分では荒さが残る。敵、味方の入り乱れ方なんかはちょっと面白いのだけど。中盤はちょっとダルさがあった。「スピード」の様な一気呵成の展開を期待していたせいかもしれないけど。

 舞台はインディアナ州、ダムの下流の街。大洪水の中での、現金3000万ドルを巡る争い。彗星、竜巻、火山と天災パニックものをが流行っていて、今度は洪水かと思っていたけど、洪水は単なる設定で、メインは金の争い。

 水のパニックは、「タイタニック」や「アビス」や古くは「ポセイドン・アドベンチャー」で究極まで行っているので、あんまり新鮮さは無かった。撮影にはもの凄い苦労が有る事が判るだけに、ちょっと可哀想だった。

→ 「The Hard Rain」Official Website
→ 「フラッド」Official Website (東宝)


「キスト」 - Kissed - ☆

 カナダ映画。監督製作脚本リン・ストップケウィッチ、主演モーリー・パーカー。
 1966年トロント国際映画祭審査員特別賞。1997年カンヌ国際映画祭監督週間出品。

 主人公は死姦趣味の斎場で働くサンドラ。そして医学生マットとの恋愛関係。
 展開は見えている、その点ちょっと意外性が足りなかったけど、異常な世界に見えるんだけど、それがすべて美しい映像で展開するだけに、なんか怖い感じがした。
 でも、妙な魅力がある映画で好き。


「アナスタシア」- Anastasia -

 監督製作ドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマン、声の出演がメグ・ライアン、ジョン・キューザック。

 ロマノフ家の皇女アナスタシア、詐欺師ディミトリの恋と陰謀。対する敵役は怪僧ラスプーチン。「追想」 - Anastasia - '56年の映画(G・ボルトン原作、マルセル・モウレットが戯曲化したものの映画化)、ユル・ブリンナー、イングリッド・バーグマン主演をアニメーション化したもの…らしい。これは残念ながら未見。

 アナスタシアとディミトリのヒーロー像とヒロイン像、ラスプーチンのステレオタイプな敵役。脇役の子犬のプーカ、コウモリのバルトークなどの使い方がそのままディズニー的。まあ、懐かしい感じがして、それほど悪くは無いけど。
 展開まで、古いディズニー映画的。

 CGとロトスコープによるアニメーションの組み合わせがなんともテレビゲームみたいな感じがする。最近のディズニーのCGはセルアニメとの融合が非常に巧みなだけに、こういう技術的な稚拙さが気になる。
 最初に出てくるオルゴールみたいな、いかにもCGですって映像は、もう勘弁して欲しい。

→ 「アナスタシア」Official Website(FOX)
→ 「アナスタシア」Official Website(東宝)


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