2001年5月


「トラフィック」- Traffic -

 スティーブン・ソダーバーグ監督、スティーブン・ギャガン脚本、マイケル・ダグラス、ドン・チードル、ベニチオ・デル・トロ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、デニス・クエイド、スティーブン・バウアー。

 メキシコ州警察の警官ハビエール(ベニチオ・デル・トロ)と相棒のマノーロは麻薬カルテル撲滅のためにサラサール将軍に協力する事になる。オハイオ州最高判事ロバート・ウェークフィールド(マイケル・ダグラス)は、大統領命令で麻薬取締連邦最高責任者に任命されるが、自分の娘キャロライン(エリカ・クリステンセン)は成績優秀のエリートでありながら麻薬に手を出している。サンディエゴの刑事モンテル・ゴードン(ドン・チードル)たちはカルロス麻薬密輸容疑で逮捕。その妻のヘレーナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は夫の麻薬を密輸している事を知らなかった…。

 最優秀監督賞、最優秀脚色賞、最優秀助演男優賞、最優秀編集賞のアカデミー賞4冠。
 「セックスと嘘とビデオテープ」のパルムドールでのデビューから「エリン・ブロコビッチ」みたいな硬派に行ったと思ったら、今回は社会性もエンターテイメント性も高い素晴らしい出来だった。
 ベニチオ・デル・トロの存在感は見事。キャサリン・ゼタ=ジョーンズは役的には面白い所で、得をしている。他の役者もいい感じ。
 映像は、ドキュメンタリを意識しながら、見やすい印象的な絵がよい。

「トラフィック」Official Website


「ガンシャイ」 - Gunshy -

 エリック・ブレークニー監督脚本、リーアム・ニーソン、オリバー・プラット、サンドラ・ブロック、ホセ・ズニガ、リチャード・シフ。

  DEA(麻薬取締局)の名捜査官チャーリー(リーアム・ニーソン)は、前回のオトリ捜査の失敗の恐怖が生んだトラウマに悩む毎日。ニューヨークでグループ・セラピーを受けながらも、イタリアン・マフィア、コロンビア・マフィアの仲介役をやる事になる。ストレス性腹痛を治すため浣腸に行った病院で看護婦ジュディ(サンドラ・ブロック)に出会う…。
 
 サンドラ・ブロックが設立した製作会社フォーティス・フィルムズとハリウッド・ピクチャーズの共同製作。潜入捜査官とマフィアとの友情もありがちだし、マフィアのストレスなんてのでは「アナライズ・ミー」もあったし、看護婦との恋なんか山のようにあるし、部分、部分は見た事あるものばかり。あれだけ殺しまくりのマフィアには同情出来ないし、なんか納得出来ない部分が多い。それでも、まあまあ楽しめるけど。

「ガンシャイ」 Official Website


「アタック・ナンバー・ハーフ」

 ヨンユット・トンコントーン監督、チャイチャーン・ニムプーンサワット、エーカチャイ・プーラナパーニット、ジョージョー・マイオークチィ、ゴッゴーン・ベンジャーティグーン、ジェッダーポーン・ポンディー、サハーパープ・ウィーラカーミン、シリタナー・ホンソーポン。
 オカマのためにチームに入れてもらえないジュンとモンは、オナベ(なのか?)のピー監督と共に新たなチーム、サトリーレックを結成、優勝を目指す…。
 実話がベース。連日満席との噂を聞いて、観てみたがそれ程の爆笑モノでも無かった。テンポはいいが、ギャグは結構空回り。最後の一球と、クレジットの背景に映る実物の映像はかなり面白かったけど。まあ、それなりには楽しめたというレベル。

「アタック・ナンバー・ハーフ」Official Websie


「郡上一揆」

 神山征二郎監督、加藤伸代脚本、姫神音楽、緒形直人、岩崎ひろみ、古田新太、前田吟、山本圭、篠田三郎、永島敏行、林隆三、加藤剛、
 江戸時代中期の宝暦年間、美濃国(岐阜県)郡上藩で起った郡上一揆を定次郎(緒形直人)を中心に描く。
 史実そのままで順番に描けば映画になる訳じゃない。何のメリハリも盛り上がりも無く、結局、印象の薄い物語になってしまっている。5年間という歳月、美濃と江戸という距離感、膨大な登場人物を上手く処理出来なかった監督、脚本の力不足。こんな出来では定次郎たちに申し訳ない気がする。

「郡上一揆」 Official Website
「郡上百姓一揆」- 非常に詳しい情報をまとめてある


「メトロポリス」

 りんたろう監督、手塚治虫原作、大友克洋脚本、名倉靖博キャラクターデザイン/総作画監督、平田修一美術監督、本多俊之音楽。

 超高層ビルジグラットが完成間近の巨大都市国家メトロポリス。人造人間開発のロートン博士を追いやってきた、私立探偵伴俊作(ヒゲオヤジ)とケンイチ少年は、ロボット刑事ペロと共に捜査を進める。権力者レッド公、マルドゥク党のロック、レッド公の亡き娘ティマそっくりの人造人間を開発するロートン博士などが絡む…。
 「ロストワールド」、「来るべき世界」と共に手塚治虫の初期SF三部作の一つ「メトロポリス」が原作。フリッツ・ラングの「メトロポリス」を観る前に作られたというが、人造人間という設定や世界観は似ている。

 あまりにCGっぽくてセル画と噛み合ってない所に、まだCGを使いこなせていない日本のレベルを感じてしまうが、映像としては手塚治虫的なレトロな世界と、大友克洋的な混沌とした世界が不思議と上手く混ざり合っているのが気に入った。ストーリは、ちょっとまっすぐ過ぎてヒネリが感じられないけど、まあ嫌いじゃない。ラストの盛り上がり方はなかなかよいし。
 宣伝文句によれば製作期間5年、総作画枚数15万枚、総製作費10億円。

「メトロポリス」Official Website]


「隣のヒットマン」 - The Whole Nine Yards -

 ジョナサン・リン監督、ブルース・ウィリス、マシュー・ペリー、ナスターシャ・ヘンストリッジ、マイケル・クラーク・ダンカン、アマンダ・ピート、ロザンナ・アークェット、ケヴィン・ポラック。

 カナダ、モントリールの開業歯科医のオズ(マシュー・ペリー)の隣に引っ越して来たのは、伝説の殺し屋チューリップことジミー・チュデスキ(ブルース・ウィリス)。ここから起るドタバタにラブ・ロマンスが絡む。ストーリ的には結構面白くなりそうなんだけど、何故かイマイチだった。無意味に殺されるけどブラックなコメディでもなく、妙に真面目な部分も多く、最後はなんかすっきりしない。
 歯医者の助手ジル(アマンダ・ピート)、マフィアのフランキー(マイケル・クラーク・ダンカン)、オズの妻ソフィ(ナスターシャ・ヘンストリッジ)とそれぞれ、いい味が出ているんだけに、残念。

「隣のヒットマン」Official Website


「アタック・ザ・ガス・ステーション」- Attack the Gas Station! -

 キム・サンジン監督、パク・チヨンウ監督、イ・ソンジェ、ユ・オソン、カン・ソンジン、ユ・ジテ。

 元野球少年ノーマーク(イ・ソンジェ)、頭が悪いとバカにされていた怪力のムデポ/無鉄砲(ユ・オソン)、ミュージシャン志望のタンタラ(カン・ソンジン)、画家志望のペイント(ユ・ジテ)の4人がガソリン・スタンドを襲う事から始まる一晩の騒動…。
 テンポの悪い部分などもあるけど、まあ面白かった。予告編からもっとブっとんだスピード感を予想していたが、のんびりとしたテンポ。"過去への情念"という意味での"恨(ハン)"の感情が強いのがいかにも韓国的な印象を感じて、今ひとつ、従来の枠を越えて無い感じもする。
 
→ 「アタック・ザ・ガス・ステーション」Official Website


「ガールファイト」- Girlfight -

 カリン・クサマ監督、ミシェル・ロドリゲス、サンティアゴ・ダグラス、ジェイミー・ティエリ。

 ブルックリンで閉塞感に満ちた生活を送る17歳の少女ダイアナ・グズマン(ミシェル・ロドリゲス)。母を自殺に追いやった父(ポール・カルデロン)、弟(レイ・サンティアゴ)との三人暮らし。弟が通うボクシング・ジムで興味を覚え、こっそりボクシングを始めたダイアナは、ジムのスター選手エイドリアン(サンティアゴ・ダグラス)に出会う…。
 2000年サンダンス映画祭グランプリ受賞作品。全体には粗い作りではあるけど、熱気も勢いもあって、いかにもサンダンスという魅力的な作品。しかし、主演ミシェル・ロドリゲスの三白眼が怖いぞ(^^;)。

「ガールファイト」Official Website


「メキシカン」- The Mexican -

 ゴア・ヴァービンスキー監督、J・H・ワイマン脚本、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、ジェームス・ガンドルフィーニ、ボブ・バラバン、J・K・シモンズ、デビッド・クラムホルツ。

 交通事故のせいで運び屋をやらされているジェリー(ブラッド・ピット)、恋人のサマンサ(ジュリア・ロバーツ)。喧嘩別れしたジェリーは、世界一美しいと言われる伝説の銃「メキシカン」とそれを持つ男を連れてくるためにメキシコへ。ラスベガスへ一人出かけたサマンサは銃争奪戦に巻込まれ組織の人質になってしまう…。

 二大スター共演という事で話題になっているけど、実は二人が一緒の演技をする部分は極めて少ない。二人一緒のシーンでも別撮りをつなげていたりする。恐らくスケジュールを合わせるのが難しく、脚本も妥協しているんだと思うんだけど、そういう影響が映画全体をまったくつまらなくしている。テンポは悪く、ノリも悪い。ジェームス・ガンドルフィーニはなかなか良かったんだけど、役どころは中途半端で残念。

「ザ・メキシカン」 Official Website - 効果音がいちいち邪魔
「The Mexican」Official Website - トップの音声があって邪魔


「タイタンズを忘れない」- Remember the Titans -

 ボアズ・イエーキン監督、ジェリー・ブッラカイマー製作、デンゼル・ワシントン、キップ・パルデュー、ウィル・パットン、ウッド・ハリス、ライアン・ハースト、ドナルド・フェゾン。

 1971年ヴァージニア州アレキサンドリアの実話。公民権運動の中、白人黒人の高校が統合しT.C.ウィリアムス高校が生まれる。統合されたアメリカン・フットボール・チームのコーチに就任したハーマン・ブーン(ゼンゼル・ワシントン)。白人のヘッド・コーチ候補であるビル・ヨースト(ウィル・パットン)と対立しながらもチームをまとめていく…。
 ディズニーのスポーツモノということで外しは無いと思っていた。期待通り、まあまあ面白かった。
 公民権運動という社会性、高校生の友情物語、泣かせ方も上手いし、ゲームとしてのスポーツの盛り上げ方もかなり上手い。単純過ぎるけど、ディズニーが対象としている観客向けでははしょうがない。
 ただ、サンシャイン役のキップ・パルデューを売り出そうという力の入れ方がミエミエなのが気になる。
 製作者ジェリー・ブッラカイマーが作った、テクニカル・ブラック・レーベルの第一回作品。

「タイタンズを忘れない」 Official Website - ディズニー内
→ T.C.Williams High School
→ Remembering Jessica Vought - T.C.Williams高校内
→ Home of the 1971 Original T.C.Williams Titans - ホンモノの1971タイタンズのwebsite


「天使のくれた時間」 - The Family man -

 ブレッド・ラトナー監督、ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ、マッケンジー・ヴェガ、ドン・チードル。

 13年前、恋人のケイト(ティア・レオーニ)に別れを告げ仕事をとったジャック・キャンベル(ニコラス・ケイジ)は、今はウォール街のやり手の社長。ある事件をきっかけに、ケイトと結婚した別の人生に迷いこむ…。
 ファンタジックなラブ・ストーリなはずだけど、なんとも退屈だった。最初、ディケンズの「クリスマス・キャロル」風な話かと思ったが、大きな展開も無く、新鮮さも無くまったく詰まらない。

「天使のくれた時間」 Official Website


「ダブルス」

 井坂聡監督,萩原健一、鈴木一真、河原亜矢子、平愛梨。
 インターネットで知り合った元カギ師Key(萩原健一)と、パソコンおたくGun(鈴木一真)が裏金の強奪を実行するが、エレベーターに閉じ込められてしまう…。
 世代、考え方が違う二人の男の密室劇と言った作りだけど、話にあまり広がりが無かった。もっとひねりが欲しかった。「破線のマリス」、「Focus」と魅力的な映画を続けている井坂聡監督という事で期待は大きかったが、ちょっと残念。

「ダブルス」Official Website


「シーズンチケット」- Purely Belter - ☆

 マーク・ハーマン監督、ジョナサン・タロック原作、クリス・ベアッティ、グレッグ・マクレーン、ロン・ハド、チャーリー・ハードウィック、テイム・ヒーリー、アラン・シアラー。

 15歳のジェリー(クリス・ベアッティ)とスーエル(グレッグ・マクレーン)の夢は地元のサッカーチーム、ニューカッスル・ユナイテッドの試合をスタジアムに観に行く事。一人500ポンドのシーズンチケットをどうにか手に入れようと酒も煙草もクスリも止めて廃品回収などに精を出す…。

 「ブラス!」「リトル・ヴォイス」と連続して見事な作品を作っているマーク・ハーマン監督、さらに原作はジョナサン・タロックのベティ・トラスク賞受賞作というのに、このマイナーな公開は悲しいの一言。
 作品と言えば期待通り面白かった。失業、麻薬の蔓延、家庭暴力と、背景となる英国の現状の中で生きる二人の少年を観る目が暖かいのがいい。ラストの決め方も気持ちよく、後味は素晴らしく心地よい。

 全編スラングとニューカッスル訛り。原題の「Purely Belter」はスラングで"最高に素晴らしい"という意味らしい。

「シーズンチケット」Official Website
→ 原作「シーズンチケット」感想


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