「空に浮かぶ棺桶」「レモンハート」「ハッピー・バースデイ」の三部からなる。
最初の「空に浮かぶ棺桶」は初出は新潮社「七つの怖い扉」の中の一作で、もともとは独立した中編。
それぞれ、「らせん」の舞、「リング」の貞子、「ループ」の礼子が主人公となり、タイトル通り、生命の誕生をテーマにしている。全体にホラー色は薄い。「リング」的なホラー色を求めて読むと期待外れになるだろう。
鈴木光司は父性の作家。つまり、これは男から女へ視線を変え、母性を強く意識した作品作りになっている。
物語的には、「レモンハート」は面白かったけど、他のはイマイチ。「リング」の一連の世界観としても、特に目新しい感じはない。
ギル・アメリオがアップルの再建を目指しCEOになり、やがてジョブスに追い出されるまで物語。アメリオについては、好きな所も悪い所もあると思うけど、まあ、読んでみても同じ様な印象。
数々のプロジェクトが消えていく様は同じ開発者としては涙無しには読めないけど、今のアップルがあるのはアメリオの大胆な改革に負う所が多い事は理解出来る。最後になるほど、何とも負け惜しみ臭い話ばかりでイマイチ。
ともかく、CEOは楽な商売では無いのは判る。
著者はサンタフェ研究所のジョン・L・キャスティ。
世界の知を代表する5人、物理学者のC・P・スノウ、哲学者ヴィトゲンシュタイン、遺伝子学者ホールデイン、ノーベル物理学賞のシュレディンガー、数学者のチューリング。1949年、スノウが集めたこのメンバーが母校ケンブリッジ大学のクライスト・コレッジに集まり、いかにも英国的なディーナーと共に進む、人工知能の可能性についての議論。内容は初心者向けに判りやすく出来ているけど、名著「ゲーテル、エッシャー、バッハ」をちょっと思い出させる凝った演出で楽しめる。
ほとんどは、チューリングの人工知能に対する考え方に対して、ヴィトゲンシュタインが感情的に噛み付いていく。ヴィドゲンシュタインは道化師役でちょっと可哀想(^^;)。
自分としては自明と思っていたチューリング・テストについて、結構反論があるのは意外だった。
2/13にNKH教育TV「未来潮流」で特集が組まれたので、この本を知った。
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チューリングマシン
- M.Tsunoda氏のwebsite
1976年「もう一つの最終レース」(ごま書房)の改題、文庫本化。
クーンツの競馬ミステリー。競馬ミステリと言えば、ディック・フランシスしか思いつかなかったけど、あのクーンツが競馬ミステリを書いていたとは何とも意外。翻訳は、ディック・フランシスの競馬シリーズと同じ菊池光がしている。
ディック・フランシス的、まっすぐな主人公とは違い、競馬場の金を狙う元調教師をリーダーとする強盗団、アルコール中毒の競馬場センチュリ・オークスの支配人、偽造馬券の犯罪者、放火魔が絡み合う。展開自体は平凡ではあるけど、一癖ある登場人物の書き込みはさすがにクーンツの上手さを感じる。
「狂った追走」の改題。
車でフィラデルフィアからサンフランシスコに向かう、商業デザイナーのアレックス・ドイルと、11歳の義理のマセた弟のコリン。そして二人を追う、黒いヴァンの謎の男。
スピルバーグの「激突」を代表とするように、米国にはインターステート道路における恐怖モノってのが多い。これは、謎の追跡者に追われる大陸横断の6日間の恐怖を描く。
プロットは平凡で先は読めるし、人物像も平凡。ただ、クーンツらしい読みやすい文章と展開で、それなりには楽しめる。
長い間ベストセラーの10位ぐらいに入っていて、気になっていたので読んでみる。 タイトル通りの化学手品。最近は珍しいかもしれないけど、古くは「学研の科学」なんかでよく見たネタで、自分としてはそれほど新鮮さは無かった。ただ、学校でも理科系離れが言われている現在、こういうのがベストセラーになるのは嬉しい。
→ 未来科学技術情報館ホームページ
→ 学研の科学
- 学研
→ 不思議キッズ 科学マジックの部屋
林巧の本は多分、初めて。
台北の萬華のストリップ劇場の老人を初め、台北、香港、マカオでのさまざまな出会いの話…って、大抵の旅行エッセイはそういう話だっけど(^^;)。
他の人よりイマイチ面白く感じないのだけど、多分、旅というものの臨場感が感じられないのが致命的。
「リング」、「らせん」、「十三番目の人格<ペルソナ> -ISOLA-」、「黒い家」などなど、最近は角川ホラー文庫が結構面白いなと思っていた。「二重螺旋の悪魔」もバイオものだし、勢いで読んでしまったが…これは失敗。
バイオものなんてのは、ホントに表面上の設定だけ。ゾンビもの+超人ヒーローものを組み合わせた様な安直なストーリ。展開しているようで似たようなパターンの繰り返しと、底の浅いキャラクタで、なんともお粗末。
「レフトハンド」とこれは、角川ホラー文庫の中でもつまらなかった。
「奪取」以来、真保裕一はお気に入り。オタクなネタものの作家だと思っていたけど、最近は、どんどんと一般小説に進み、また文章力もついてきいていて驚く。一部のジャンルにはまってしまう日本の作家の中では非常に珍しいだと思う。
妻を事故で失い、現実から逃避するように北海道の奥地で森林作業員になっている主人公。偶然に助けた女性から、自衛隊に絡む不可思議な事件を追いかける様になる。
森林作業員というのが斬新な設定。主人公はごく平凡で弱い男でありながら、真っ当な性格でハードボイルドっぽくてかっこいい。なかなか面白かった。
サンデー毎日に1995年6月〜1997年10月まで連載した作品。去年は単行本化されてベストセラーになっていたけど、やっと読む。
簡単に言えば、「グリコ・森永事件」をベースに架空の会社、日之出麦酒に置き換えた犯罪小説。前半は犯人側を描き、後半は警察や対応する会社側を描く。
高村薫が力を入れて書いているだけあって、量も質もかなり高く、読む方もそれなりに大変(^^;)。長いけど、面白かった。
内容的には、それほど驚くべき展開は無いんだけど、それぞれの描写の細かさが上手く引き込まれてしまう。そういえば「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」なんてのを昔読んだけど、しかし、この事件どうなったんだろう?
97年第4回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
バイオ・ホラーのジャンルに分類されるだろうけど、サイエンス色は薄い。
感染すると右腕だけが抜け落ちて、生き物の様に活動するレフトハンド・ウィルス(LHV)。まあ、この設定だけ斬新で、後はバイオハザード+ゾンビもので、工夫はイマイチ足りない。
ストーリ自体も竜頭蛇尾で、ラストはなんとも訳判らないままに終わってしまった。
映画「死国」の原作。映画よりは原作の方が面白かった。
20年ぶりに故郷の高知、矢狗村に帰った比奈子が主人公。幼なじみの莎代里が18年前に事故死していた事を知るが、莎代里の母は娘を生き返らせようとしていた。さらに初恋の文也との恋物語が絡んでいく。
四国(死国)、逆打、八十八カ所の霊場、石鎚山、謎の修験者、こういう古代伝承を基にした舞台設定がなんとも上手い。映画では、愛情関係を重要視して物語を作っていたが、原作ではどちらかというとあっさりしていた気がする。
→ 四国八十八カ所巡り
- かがわネットホームページ(香川情報化推進機構)
→ 四国八十八カ所
- NHKハイビジョン映像で巡る、四国八十八か所の旅
→ 石鎚山
- なべちゃんの「自然の中へ出かけよう!」内
1996年7月5日午後5時、スコットランドのロスリン研究所で、52歳の発生学者 イアン・ウィルムットによってクローンの羊ドリーが生まれた。表題から、ドリーについての物語が中心と思っていたが、実際はクローンの基礎である発生学の初歩から説明してあるのがいい。
また、肯定派否定派、科学者や他の識者と倫理的な問題について広く意見を聞いているので、ジャーナリストとしては正しい態度で好感が持てる。
特に最終章の人間のクローニングについては、倫理的に色々と考えさせる物がある。
クローニング以前の遺伝子操作に関する考察も豊富。例えば、遺伝子の欠陥を調べる事は受け入れられるが、これは「完璧な子供症候群」を拡大させると言う。確かに映画の「ガタカ」が描く未来を見てもうなづける。すでに、今でも蒼茫にある遺伝子情報の191種を検査して、赤ん坊が順調に育つか見極める事が出来るらしい。
Infomation
on Cloning and Nuclear transfer - ロスリン研究所のクローン情報
「クローンって何?」-
科学技術庁
クローン技術に関する基本的考え方について(中間報告)-
科学技術会議生命倫理委員会クローン小委員会
環境ホルモンで話題になった一冊。
漠然としてしか判って居なかった知識が体系だって読めてよかった。合成化学物質の大量に生産し散まいてきた、いや今だに散まき続けている社会の問題がよく判る。
行動異常、性発達障害、生殖異常、奇形の増加、オス化現象、胎児への影響、生物濃縮によりPCBが2500万倍に濃縮される話などなど、恐い物ばかり。
レイチェル・カールソンの「沈黙の春」が1962年。しかし、状況は悪くなるだけの様に思える。
環境ホルモン、ダイオキシ、化学物質ブックリスト
- ABC青山ブックセンター
「人類を蝕む環境ホルモンの恐怖」
- 立花隆講演集
環境ホルモン情報
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