水道水質基準の概要と経緯 Water Standard
作成者  BON
更新日  2004/03/14

 水道水質基準項目とその基準値等,各種の基準値に関する情報。水質基準の考え方や経緯などの概要をここで整理します。

水質基準の概要と経緯
 水道水質基準の概要とその経緯
水質基準とは
 水道水質基準の概要とその経緯。
水道水質基準(平成15年度改訂版)
 水質基準に関してとりまとめました。
水道水質基準(平成4年度改訂版)
 水質基準に関してとりまとめました。
水道水質の現状
 水道水質の現状に関する情報を収集,掲載。
有害化学物質の詳細情報
 化学物質の毒性情報を集めたサイトを紹介。

【参考】


水道水質基準の概要と経緯

(1)水質基準の法的根拠

 日本び水質基準は,水道水が備えるべき水質上の用件であり,衛生的安全性の確保(健康に関する項目),基礎的・機能的条件の確保(水道水が有すべき性状に関する項目)について,水道法第四条で「水質基準に関する省令」に規定しており,すべての水道に一律に適用され,水道により供給される水はこの基準に適合しなければならないもの,とされています。

水質基準に関する省令

 水道により供給される水は、次の表の上欄に掲げる事項につき同表の下欄に掲げる方法によって行う検査において、同表の中欄に掲げる基準に適合するものでなければならない。

【参考】
 水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第四条第二項
 水質基準に関する省令(平成四年十二月二十一日)(厚生省令第六十九号)改正 平成一一年六月二九日厚生省令第六八号


(2)水道水質基準の経緯

1)旧水質基準

 昭和32年「水道法」が制定され,水質基準は法制度の中で確立されました。それ以前は,明治期より上水試験法(日本水道協会),飲料水検査法(薬学会),上水試験方法(日本薬局方)などの「水質判定基準」が戦後まで推移したそうです。

 詳しくはいずれまた...

2)平成4年度改定

 平成4年12月1日,水道水質基準は将来にわたって信頼できる安全でおいしい水道水を供給するため拡充強化されました。それまで暫定的に指針値が設けられていた有機塩素系化合物(トリハロメタン類)を取り込んだほか,それまで慎重に審議され,スクリーニングにより選定された農薬などの項目が追加,あわせて46項目(残留塩素をあわせて47項目)になりました。また,このとき,水質基準(健康に関連する項目水道水が有するべき性状に関連する項目)とは別に,快適水質項目監視項目が設定されています。

 平成13年1月現在,監視項目について4回の見直しがおこなわれています。

3)平成15年度改定

 厚生科学審議会生活環境水道部会水質管理専門委員会の水質基準の見直し等について議論が終了し,2003年4月28日,水質管理専門委員会の報告を生活環境審議会水道部会が了承,これを受けて,厚生労働省健康局水道課において水質基準の改定内容が決まりました。6月頃には新基準に関する省令が公布される見通しとのことです。

 新水道水質基準の見直し内容の概要は,報道などによると以下のようになっています。基準項目の体系を見直したことに併せ,明らかに検査不要な項目の省略について規定されたことが大きな特徴で,米国EPAなどの考え方の良いところを取り入れた,ということですかねぇ。(このあたりの経緯はよくわかりません。くわしい人教えてもらえればそれをお知らせします。)

 もう一つ,新聞報道によると,消毒のみの給水ができなくなる可能性があるようですが,現時点(2004/01)では確定はしていません。もしそうなれば,山間の井戸水道などで影響があるかもしれません。ただし,法的対応はそれとして,厚労省としてはクリプトリスクのこともあり,物理的除去措置の設置に前向きに指導しているようです。

 見直しの主たる内容はごく簡単に示すと以下のとおりです。

1)水道水質基準の全面的な見直し

  • 基準項目を46項目から50項目へ拡大(13項目追加,9項目削除)。
  • 監視項目は廃止して必要なものは基準項目にする。
  • 管理目標設定項目を新設(農薬101種など)。基準は設けないが注意を喚起。

2)効率的・合理的な水道水の水質検査

  • 水道事業者の合理的判断のもと,不要な項目の省略を認める。ただし,省略の理由を明記した検査計画を策定。

3)病原性微生物対策の強化

  • ろ過等,病原性微生物の物理除去措置を義務づける(未確認)。

4)その他

  • 水質検査の質を確保する(検査体制の評価システムGLP=Good Laboratory Practiceを導入)。

 検討過程で,対象となった物質の概要が整理されています。

水質基準の見直しにおける検討概要【厚生労働省水道課】
 検討概要がPDF版ですべて公開されています。玄関からはちょっとたどりつきにくいところにありますが,正式発足後は改良されるのではないかなと。

 追加された項目は以下のとおりです。

項目 基準値 単位 備考
大腸菌 不検出   従来の基準の「大腸菌群」とは異なります。
ほう素 1 mg/L 監視項目でした。
1,4ジオキサン 0.05 mg/L 未チェック。
臭素酸 0.01 mg/L オゾン処理とかすると出ます。
クロロ酢酸 0.02 mg/L いわゆるハロ酢酸。
ジクロロ酢酸 0.04 mg/L
トリクロロ酢酸 0.2 mg/L
ホルムアルデヒド 0.08 mg/L シックハウスなどで問題になってますね。監視項目でした。
アルミニウム 0.2 mg/L 凝集剤の入れすぎに注意?
ジェオスミン 0.00001 mg/L 快適項目でした。臭いのモト。
非イオン界面活性剤 0.02 mg/L あわあわ。
2-MIB 0.00001 mg/L 快適項目でした。臭いのモト。
TOC 5 mgC/L 有機物指標としてはこっちの方が確かに優れてます。

 削除されたのは次の項目です。

項目 備考
大腸菌群 大腸菌に引き継がれます。定義が異なるようです。
1,2-ジクロロエタン
1,1,2-トリクロロエタン
1,3-ジクロロプロペン
シマジン 農薬は別途規定。
チウラム
チオベンカルブ
1,1,1-トリクロロエタン
過マンガン酸カリウム消費量 水道だけで使われる伝統の指標でしたがついに...

 このほか,農薬については総農薬方式という新しい考え方が導入されるようなのですが,まだ詳細はつかんでいません。詳細が分かれば紹介します。ただし,詳しくは各種サイトに掲載されているようですので,そちらにのってるかも。

水質基準の見直し等について【厚生労働省水道課】
 水道課は厚生労働省内でも情報公開の動きが進んでいるように感じます。もっとも最新の動きはこちらで追いかけるのがよいかと思います。
水質基準の見直し等について(案)【第8回厚生科学審議会生活環境水道部会水質管理専門委員会】
 結論としてはこちら。案段階ですが,基本的にはこの形になるんでしょう。

【参考】
 見直し関連情報は水道産業新聞,厚生労働省水道課,JWRC水道ホットニュースなどを参考に作成しました。現在,検査頻度や測定方法など各種の通達が詰められている段階です。水質基準が改定になった段階で,水質基準のページはリバイスする必要がありそうです。


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