サボテンの花 ★★☆
(Cactus Flower)

1969 US
監督:ジーン・サックス
出演:ウォルター・マッソー、ゴールディ・ホーンイングリッド・バーグマン、ジャック・ウエストン

左:ゴールディ・ホーン、右:ウォルター・マッソー

「サボテンの花」は、ゴールディ・ホーンの実質的なデビュー作であるにも関わらず、いきなりアカデミー助演女優賞に輝くという離れ業を演じています。小生が子供の頃、すなわち60年代後半から70年代前半にかけて、ガキンチョにとってのスターというと、男優であればブルース・リーとジュリアーノ・ジェンマに、女優であればゴールディ・ホーンに人気が集中していたように記憶しています。この中で21世紀に入ってもなお健在なのはゴールディ・ホーンだけでしょう。当時、たとえばスーザン・ジョージファラ・フォーセット(・メジャース)ゲイル・ハニカットなどのゴールディ・ホーンの柳の下の二匹目のどぜうを狙った亜流のようなブロンド女優さんが続々と出現しましたが、皆長持ちしませんでした。のみならず、70年代前半に活躍した他のキャンディス・バーゲンジャクリーン・ビセットなどの有力な女優さん達も活躍の舞台を映画以外に移してしまいましたので、この年代の女優さんはゴールディ・ホーンとたまに顔を出すフェイ・ダナウエイを除くとメインはきれいにごっそり抜け落ちたような感があります。ゴールディ・ホーンがメジャーになった頃は、いわばブロンドカワイコちゃんの一過性の女優さんであろうと見られていたように覚えていますが、ここまで長持ちするとは当時は誰も予想していなかったのではないでしょうか。彼女は50も半ばを過ぎた今日でも、アップにしさえしなければあまり昔と容姿が変わっていないと言われることもあるようですが、さすがに「サボテンの花」での彼女は恐ろしく若い。顔中をほとんど目玉だらけにして演技する様を見ているとこっちの目玉も飛び出しそうですが、そのような愛敬のあるキャラクターが当時は受けたのでしょう。しかし、作品そのものは、彼女を目玉商品として売りだそうとしたというよりも、恐らくウォルター・マッソーの映画として製作されたのでしょうが、そうであれば意外な副産物が飛び出してきたということになります。かくして、ゴールディ・ホーンが当時「新」を代表する女優さんだったとすると、「旧」を代表する女優さんとしてイングリッド・バーグマンが出演しています。不思議なもので、イングリッド・バーグマンはあれだけ美女であると崇め奉られながら、必ずしも老いたといえるほどの年齢に達していない内からオールドミスを演じていることが多く、「サボテンの花」ではよりにもよって醜男度ではアーネスト・ボーグナインと横綱の座を争うだけの実力を持つジャック・ウエストンに「でかいバンドエイドのようだ(バーグマンの白衣姿がバンドエイドのように見えたという意味しょう)」と評されてしまうのはご愛嬌の域を通り越えているような気がします。いずれにせよ、若いゴールディ・ホーンにうつつを抜かしていたウォルター・マッソーが、最後には目が醒めてイングリッド・バーグマンと目出度し目出度しになりジエンドを迎えるので、やはりウォルター・マッソー+ゴールディ・ホーンではなく、ウォルター・マッソー+イングリッド・バーグマンの映画が最初は意図されていたということでしょう。60年代後半、悪役転じてコメディアンになり水を得た魚と化したウォルター・マッソーのとぼけた妙味が楽しく、またクインシー・ジョーンズの音楽も洒落ています。ウォルター・マッソーの歯医者は歯医者らしくないなどという、どうでもよさそうな(プロの)評をどこかで見掛けましたが、個人的には歯医者に行ったことがあまりないので何とも判断のしようがないところで、そんな評が書けた人はきっと総入れ歯になっているに違いありません。監督は、「裸足で散歩」(1967)、「おかしな二人」(1968)、「Last of the Red Hot Lovers」(1972)などのニール・サイモンの戯曲の映画化作品の監督を数多く手掛けているジーン・サックスです。「サボテンの花」はニール・サイモン戯曲の映画化ではありませんが、似たところのあるライトコメディなので、彼にとってはお手のものでしょう。尚、彼は俳優でもあり比較的最近ではポール・ニューマンの出演した「ノーバディーズ・フール」(1994)で見かけました。


2001/09/24 by 雷小僧
(2008/11/10 revised by Hiroshi Iruma)
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