第5部 最強のプリンセスから最弱の女王へ


プリンセス・エカチェリーナ

最初に注意しておくが、またしても、文の順序と育てた順序が前後する。このキャラクターは、後述の女王クイーン・アナスタシアよりも育てた順序では後であり、プリンセス規格のキャラクター(武者修行をしないキャラクターを、以降の文中ではこう呼ぶこともある。)では2番目に新しいキャラクターである。育てたときは、このキャラクターがこのゲームで最後のキャラクターというつもりだった。しかし、実際には、このキャラクターが完成した後に、最強の女王を育て始めたのだった。

いままで、武者修行をしないキャラクターの場合、知力を上げるのは主に「医者」のバイトで行ってきた。しかし、医者のバイトは、体力が下がるという副作用が生じる。前述の通り、体力が下がった場合、その悪影響は重大である。そのため、従来は、医者のバイトと宿屋のバイトを組にしなければならなかった。しかし、知力を上げるのは、「代筆屋」のバイトでも可能である。代筆屋のバイトは、副作用として、腕力が下がる。しかし、このキャラクターは、武闘会に出るわけでもなし、武者修行をするわけでもなし、力仕事をするわけでもないのだから、腕力が下がったところで何ら不都合があるとは思えない*1。しかも、医者のバイトに比べて、代筆屋のバイトは軽い。医者のバイトが1日につき疲労が2増えるのに対し、代筆屋のバイトは1日につき1しか疲労は増えない。そこで、医者のバイトの代わりに、代筆屋のバイトをした方が、優れたプリンセスができるのではないかと考えたわけである。それを確かめるために、新しいキャラクターを育てることを考えていたのだが、英語の試験が終わったその日に、それを決行した。
*1 今となっては、なぜ腕力が下がるのを避けたのか(代筆屋のバイトをしなかった理由は、それしか考えられない)、自分でもわからない。

このキャラクターはこうして生まれた。ネーミングの由来は・・・世界史で受験をした人なら、わからなくてはならない*2
*2 わからない人は、高校の世界史の教科書を読もう。

医者のバイトが代筆屋のバイトに変わった以外は、このキャラクターを育てた過程は、プリンセス・アナスタシアと大差ない。したがって、細かい説明を繰り返すことはしない*3。必要なバイトを早く始めるために、4月生まれにした点も、プリンセス・アナスタシアと同じである。ただ、武者修行をしないキャラクターは、育てた順が後になればなるほどミスコンテスト一本にターゲットを絞ったキャラクターになっているようである。初代オクサーナを育て始めたときは、気品を上げるのと同様に知力を上げることにウェートがおかれていた。プリンセス・アナスタシアは、5年度末に博士の称号をとった(これは、実は、初代オクサーナより早くとることを目標にした結果である。)。ところが、初代オクサーナの再開以降は、完全にミスコンテスト優勝のみを目標とした育て方をした。そして、プリンセス・エカチェリーナは、7年半の間ほぼミスコンテスト一本やりであった。最終年度の収穫祭が終わったらすぐに博士の称号までとれるように、代筆屋のバイトである程度知力は上げておいたけれども、称号は全くとらなかった。
*3 また、このキャラクターは、一晩で一気に育て上げたので、細部は私自身覚えていないということもある。

ただし、プロポーションの問題に対しては、プリンセス・アナスタシアと違い、最初のうちから意図的にプロポーションを下げる方法をとった。その月のプロポーションの増加を計算して、増えすぎていたらその月をやり直すという方法である(ただし、増えすぎかどうかの判断には、先月や先々月のプロポーションの増減、さらには、その時点のプロポーションの値、過去のプロポーションの全体的な増減のペースも考慮する。)。これを毎月適用する。この方法は、比較的楽にプロポーションを抑えられるので、おすすめである。最初4年なり5年なりを、身長も体重も増加を全くランダムにまかせておくと、後半でプロポーションを抑えるのが相当きつくなる。かといって、最初のうちに身長を伸ばしまくるというのも、それはそれで大変である。プリンセス・エカチェリーナの場合、これによって、15歳の誕生日の直前にはプロポーションを約90パーセントにおさえることができた。しかし、それによってプロポーションのコントロールが楽になったかというと、残念ながらそうではなかった。プロポーションが上がりすぎたからではない。その逆である(このキャラクターは、どうも太りにくい体質だったと思われるのだが、気のせいかもしれない。)。最終年度に突入した時点で、プロポーションはまだ96.6パーセントだった。最後の収穫祭でプロポーションを100パーセントにもっていくためには、残り6カ月で3パーセントも上げなくてはならなかった。しかもこのようなときに限ってプロポーションはなかなか上がらない。結果として、体重を上げるのに四苦八苦するという皮肉な事態が発生してしまった。それでも、最後の収穫祭をプロポーション99.5パーセント(四捨五入で100パーセントになる)というベストの状態で迎えた。さらに、これは完全におまけだが、最終時点にはプロポーションを100.0パーセントにあわせた。

最後にある表の通り、最終結果では、このキャラクターは、プリンセス・アナスタシアに大きく水をあけた。正直言って、プリンセス・アナスタシアをこれほど大きく上回るとは予想外だったし、武者修行をせずにこれだけのキャラクターができるとは思っていなかった。ほかの知識の増加・技術の向上などもいくぶんかは寄与しているのだろうが、この大差を作った最も大きな原因が、医者のバイトを代筆屋に変えたことなのは間違いない。腕力は、下がっても埋め合わせる必要がないので、従来医者のバイトで体力が下がった分を埋め合わせるのに費やしていた時間を、礼法の稽古、あるいは酒屋やメイドのバイトに使うことができる。この時間の使い方の差が、能力値の大差につながったのである。このゲームは、娘を育てる時間が8年間と限られているのだから、結局、時間をいかに有効に使うか、いかに無駄遣いしないかが、ポイントである。また、このキャラクターは、体力の値がプリンセス・アナスタシアより高いので、過重な疲労にも耐えられる。体力の差は16だが、このレベルでの16点はかなり大きな意味を持つようだ。耐えられる疲労の限度が10ほど違うと感じられる。もう一つ、このキャラクターがプリンセス・アナスタシアを大きく上回った理由は、根性の値が大幅に向上したことである。根性の値が高いと、疲労がたまっても、教育やバイトの効率が落ちにくくなるのである。疲労が50〜60たまった状態で月末を迎え、翌月の上旬にさらに礼法の稽古を入れ、疲労が100近くになってようやく休息するという強引な日程を、このキャラクターはしばしばこなした。これは、このキャラクターでなければ、この根性がなければとうてい耐えられない(従来のプリンセス規格のキャラクターでは、能率が悪すぎるので無意味)ものであろう。また、このキャラクターの場合、やり直しを繰り返してプロポーションを下げたので、プリンセス・アナスタシアとは違い、気品や色気の下がる野外労働の必要はなかった。

なお、根性が過去のキャラクターに比べて大幅に上昇した理由は、次の通りである。毎月、会話をする前にデータをセーブしておき、リセットして再度プリンセスメーカーを起動して、その直後に会話し、前にセーブしたデータをロードして(つまり最初の会話のデータは消去される)、再度会話すると、+10の効果が出ることがわかった。しかもこの現象は毎月起こる(同じ行動をする限り結果が同じで、しかも、それが毎月再現されるという現象については、第3部で詳しく述べた通りである。)さらに、この現象は、違うキャラクターでも起こる。この方法は、もともとは、このキャラクターより前に育てた女王、クイーン・アナスタシアのときに発見したものである。それ以降のプレイでは、すべてこの方法を使っている。こんなに楽に+10の効果が出るのなら、これをしない手はない。

その結果、このキャラクターは、気品を1年間で最高320上げた。プリンセス・アナスタシアのときは年間200くらいしか上がらなかったから、大変な速度の上昇である。また、最後の収穫祭の前1年間のバーストモード実行により、色気を240以上上げることができた。これも、初代オクサーナやプリンセス・アナスタシアを大幅に上回る速度である。なお、気品の上昇320は、礼法の稽古64日分、回数にすれば7クールに相当する。礼法の稽古は、1年間に7クールが限界というのが、今までの経験から得た結論である。疲労回復の時間、あるいは、バイトによる収入とのバランスから、これ以上はできないのである。最後のキャラクタークイーン・マルティナも、1年間の礼法の稽古の回数は7クールまでである。収支を考える際には、疲労回復をすべて「休息」で行うとすれば、「休息」の際には疲労と同じ額のおこづかいが必要だから、次のような考え方で計算ができる。つまり、バイトの収入からそのバイトをすることによってたまる疲労を差し引き、教育による支出には、それによってたまる疲労を加えるのである。この考え方によれば、バイトの実質的な収入は、酒屋、代筆屋のバイトとも、1日につき8ゴールドとなる。一方、礼法の稽古の実質的な支出は、1日につき15ゴールドである。つまり、バイト2クールに対し礼法の稽古1クールを行うという日程で、ほぼバランスがとれることになる。バイト2クールと礼法の稽古1クールを行うと、疲労がかなり増加するから、休息をとらせる必要がある。休息をとらせると、その次には教会のバイトでモラルを回復する必要がある。このように考えると、5クールに1クール礼法の稽古を入れるのが限度ということになる。1年間は33クールだから、33÷5 = 6.6となる。年間7クールが上限というのは、このような計算とも合致する。

こうして、プリンセス・エカチェリーナは、最終的には、「どれかの能力値を4桁にする(このキャラクターの場合、気品)」ことを達成した。本当に他の能力値を全く無視して気品ばかり上げ続けたならともかく、ある程度バランスのとれたキャラクターを作るという条件のもとでは、これは武者修行をしなければ不可能と思っていた。また、評価の値も4桁にせまっている。ミスコンテストでうまくいけば、評価の値も4桁に到達したかもしれない。また、このキャラクターは、ミスコンテストで、相手に誰が出てきても8年連続総合優勝できる*4 。しかも、多いときで得票は650票を超えた。武者修行で鍛えたキャラクターなら、 武者修行が軌道にのって十分に時間がたてば、得票は最低でも800票に達するし、4桁の得票も珍しくない。しかし、武者修行をしないキャラクターでは、500票強(プリンセス・アナスタシアの最終年度のミスコンテストにおける得票)が限界で、550以上の得票は不可能だろうと思っていた。しかし、このキャラクターは、その思い込みを打ち破ってくれた。最終年度には、当然のことながら、3部門完全制覇を果たした*5
*4 これを達成したのは、私の育てたキャラクターの中でも、このキャラクターと後述のクイーン・マルティナだけである。ライバルのうち極端に強くなったのが一人もいなかったという幸運はあったものの、まさに快挙というべきである。}
*5 ただし、このキャラクターも、めぐり合わせが悪いと月の神賞がとれない。この原因については、スペルマスター・アナスタシアの節で述べたので、そちらも参照していただきたい。

このキャラクターは、まさに、武者修行をしないキャラクターにおけるブレイクスルー(突破)であった。

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クイーン(プリンセス)・マルティナ

このキャラクターは、最強の女王の完成した後に制作が開始された。最も新しいキャラクターである。プリンセス規格とはいえ、このキャラクターも、数々の新発見・新技術が投入されている。このキャラクターが育て始められたきっかけは、武者修行をせずにどれほどの評価が達成できるのかという疑問、もっと具体的に言えば、評価4桁は可能なのかということである。当初は、プリンセス・エカチェリーナのデータを使っていろいろ試していた。このキャラクターの場合、気品の出場者平均の期待値が、2年度において100と少し、5年度・6年度において200と少しになることがわかった。だから、 これらの年度の収穫祭では、気品の低い出場者しか出てこないと、気品の平均が100または200を下回り、その結果、得票が200票以上増加する。ミスコンテストにおいては、得票が350票を超える5票につき評価が+1されるから、得票が200票増加すれば、評価の上昇は40大きくなる。つまり、評価4桁を達成するのはさほど難しくなさそうだという結論に達した。

その後、まず、プリンセス・エカチェリーナの2年度の収穫祭からやり直すことにした。言ってみれば、プリンセス・エカチェリーナ・バージョン2計画である。気品部門で500票を超える得票を出して、先へ進んだ。ところが、3年度収穫祭で大変な事態が発生していた。ライバルの中に、気品が200を超えるキャラクターが3、4人も出たのである。他の出場者17人全員の平均をとっても100を超えている。これは4年度に相当する水準である。このままでは4年度以降のミスコンテストの計画に大変な狂いが生じる。2年度収穫祭終了直後のデータは保存されていない。ということで、2年度収穫祭からやり直さなければならない。それも、他の出場者の気品に注意しながらである。そのためには、他の出場者の気品が記録されている位置を調べなくてはならない。この方法については、エンディングの部で説明した通りである。そうやって、ミスコンテストのライバル17人全員の気品、色気、身長、体重が記録されている位置を解明した。こうして、プリンセス・エカチェリーナ・バージョン2計画は再スタートを切った。

この計画の中で判明したことはまだある。体力が130程度あると、それまで思っていたよりも多くの疲労に耐えられるのである。疲労80〜90で月末を迎えても、そう簡単に病気にはかからないし、疲労がかなりたまった状態でも、教育やバイトの能率もそれほど落ちない。疲労76の状態から、代筆屋のバイトを3クール入れて、失敗が1日もなかったこともあるほどである。それらの成果を取り入れながら、プリンセス・エカチェリーナ・バージョン2計画は進行していった。しかし、そうしている中で、次のような疑問が心の中に浮かんできた。
「これだけの新機軸を投入するのなら、いっそのこと初年度から新しいキャラクターを制作したほうがよいのではないか?」
かくして、全く新しいキャラクターの制作が決定した。新しいキャラクターの名前は「マルティナ」にした。当初は、名前も姓も誕生日も血液型も何もかもプリンセス・エカチェリーナと同じにするつもりだった。ところが、そうなると、エカチェリーナという名前のプリンセスが二人誕生することになる、と思われた。すると、区別が面倒になる。したがって新しいキャラクターに別の名前を考えようとしたわけである。結果から言えば、このような心配は不要だったわけだが。ちなみに、誕生日は、プリンセス・エカチェリーナに比べ1週間早い4月5日である。誕生日をその日にするつもりだったのではない。4月12日にするつもりで、あまりにもあせってポインティングデバイスのカーソルを動かしたため、カレンダーの1行分上にずれて、4月5日生まれになってしまったのである(爆)。それにしても、今までの方針*1と違い、マルティナとはずいぶんダメ度の高い*2名前である。
*1 今までの方針とは、普通の人はあまり知らないような人物から元ネタを持ってくることである。しかし、オクサーナならともかく、エカチェリーナとは、世界史選択の受験生なら誰でも知っている。「エカテリーナ」なら、ロシア語圏ではごく普通の名前だから誰に由来するのか特定すること自体が難しいのだが。アナスタシアといったら、ふつうは、「ロシア革命で処刑された(はずの)皇女様」しか思い浮かばないだろう。
*2 ここでダメ度が高いとは、その名前から特定の人物が連想され、しかもその人物の知名度が非常に高いということである。その名前の元ネタが誰にでも簡単にわかると言い換えてもよい。マルティナ以外では、アントワネット、シュテフィあたりが、これに該当する代表例であろう。
マルティナとは、女子テニス選手に由来する。この名前から連想される選手は二人いるけれども、元ネタはどちらとも言えるし、そもそも1の選手の「マルティナ」とは2の選手からとったものなので、どちらにせよ、両方にリンクしていると言える。

  1. マルティナ・ヒンギス(スイス)。言わずと知れたテニスの「女王」。最年少記録のついて回る選手であり、主なところで下のような最年少記録を保持している。
  2. マルティナ・ナブラチロワ(アメリカ)。女子テニスにおけるサーブ・アンド・ボレーの開祖かつ大成者であり、シュテフィ・グラフと並びテニス史上最強の女王、さらに女子スポーツ全体でも史上最高の選手の一人とみなされる。全盛時代は1980年代初頭〜半ば(上記マルティナ・ヒンギスが1980年生まれだから、そのころの女王だったのがこの選手である、ということは理解できるだろう。)。ウィンブルドン選手権のシングルス最多優勝回数の記録を持つ。ダブルスでも数々のタイトルを獲得した。

本題に戻ろう。このキャラクター「マルティナ・セブリア」の目標は、武者修行をせずに、できる限り評価を上げることである。ところが、能力値の面では、プリンセス・エカチェリーナでほぼ限界に達している、と当時は思われた。そうならば、自分の評価を上げるためには相手の能力値を下げるしかないということは、難しい理屈はぬきに直感で考えても、すぐにおわかりいただけるであろう。つまり、ミスコンテストの他の出場者の能力値を低く抑えることによって評価を上げることが、このキャラクターの最大の要点である。このキャラクターを育て始めた当初の計画では、プリンセス・エカチェリーナなみの能力値の上昇を予定していた。そして、それを前提として、

を具体的な数値目標とした。プリンセス・エカチェリーナは、最終年度収穫祭において、気品1111、色気768であった。したがって、この目標を達成するためには、最終年度において、相手の出場者の気品の平均を100弱、色気の平均を約135に抑える必要がある。最終年度には、普通、ライバルの気品の平均は200を超え、色気の平均は約250に達する。だから、この計画は、普通に考えたら無茶そのものである。ところが、今までのキャラクターすべてでそうであったように、私は、たてたときはどんなに無茶と思われる計画も、徹底したやり直しによって結局実現させてしまった。そして、このキャラクターもそうであった。

このキャラクターは、日程の効率も大幅に改善されている。その一つは、従来よりも多くの疲労を耐えさせて、休息の回数を減らしたことである。月末を疲労50〜60で越えた後、さらに礼法の稽古を1クール入れ、疲労が100前後になってから休息をとる、という日程は、プリンセス・エカチェリーナでも行われた。しかし、このキャラクターの、特に4年度くらいからは、疲労100前後で月を越えるのが当然のごとく行われた。最も厳しいときは、月末の疲労110以上ということも何度もあった。このキャラクターを育てている途中、疲労120以上(または、120を超えて、という可能性もある)ためてから休息をとらせると、そのときの娘の言葉が変わるということを発見した。これまでこのことに気がつかなかったのは、正式の日程で疲労120ためるということがそもそもなかったからである。かつて、体力の値と耐えられる疲労との相関関係を確かめるために、アマゾネス・オクサーナに病気になるまでひたすら礼法の稽古を続けさせたことがあったけれども、これはテストだから、後で休息をとらせることなどしていないし、当然セーブもしていない。マルティナが疲労120以上になったのは、疲労80前後で月を越え、次の月の上旬に礼法の稽古を入れた場合である。ところが、このキャラクターより前は、疲労80で月を越えること自体がほとんどなかったのである。また、今までのキャラクターの場合、最終年度に入ると、それまで貯めたお金を使ってアイテムを買っては使い、疲労回復の時間を節約しながら急速に能力値を上げる、ということが行われ、これを「バーストモード」と称した。しかし、このキャラクターの場合、そのようなことはしなかった。このキャラクターは、言ってみれば、毎年少しずつバーストしていたのである。つまり、毎年少しずつアイテムを買って使っていたのである。直感的に考えれば、どの時点でバーストしても、最終時点で到達する能力値の値は等しくなるはずである。しかし、評価の値を考えればそうはいかない。評価の値は、能力値の何らかの関数をゲームスタートから8年間にわたって積分したもの、という性格を持っている。その関数は、単調増加でない部分もあるけれども、基本的には、能力値が大きくなれば、その関数の値も大きくなる。つまり、一概にはいえないけれども、基本的には、途中経過の能力値が高いほうが、最終到達能力値は同じでも、評価の値が高くなるのである。また、アイテムは、日程の調整にも利用できる。日程の調整とは、平日が8日以下しかないクール(日曜日が2回あるクール、2月の下旬など)に休みや教会のバイトを持ってきて、9日以上のクールはなるべく酒屋のバイトまたは礼法の稽古に当てることである。特に、31日ある月の下旬で、平日が10日ある時は、極力礼法の稽古に当てるようにした。

これらの日程の効率化と、やり直しを多くして成功率を上げることを求めたことにより*4、このキャラクターは、能力値自体もプリンセス・エカチェリーナに比べてかなりの上昇を達成した。プリンセス・アナスタシアプリンセス・エカチェリーナ、そしてこのキャラクターと、ミスコンテストに関係する気品と色気の合計をとってみると、大幅な上昇を続けている。しかし、その上昇は、ほとんどは気品の上昇に由来するものである。最終年度の収穫祭時点の値をとってみると、気品は、703→1111→1378と、ほぼ倍近い上昇である。ところが、色気は、632→768→790と、意外と上昇幅は大きくない。というのは、これらの能力値の上昇は、元をただせば、礼法の稽古に由来する。酒屋のバイトは、言ってみれば気品を色気に変えているようなもので、両方の合計は変化しない(気品と色気を合計するという考え方が出てきたのは、そもそもこの性質があったからである。)。だから、このバイトの回数を増やし過ぎると、礼法の稽古ができる時間が少なくなってしまい、結局、両方の能力値の合計でみると上がらなくなってしまうのである。
*4 おそらく、このキャラクターは、礼法の稽古を失敗したことは一度もないはずである。

プリンセス・エカチェリーナに比べて気品が大幅に上昇したということは、ミスコンテストの他の出場者の気品を、当初の計画以上に抑え込まなくてはならないということである。そして、それを達成しながら、このキャラクターは育てられた。もっとも、それが達成できたから、プリンセス・エカチェリーナを超える速度で気品を上げたのだが。4年度800票→5年度990票→6年度1010票→7年度1120票と、年を追うごとに、このキャラクターのミスコンテストでの得票は劇的に増加した。最終年度には、1200票以上という、プリンセス規格としては驚異的な得票を達成した。これまでに述べたキャラクターの中には、1200票を得たことのあるキャラクターはいない。最強の女王アナスタシア・ザ・グレートは、さすがにこの点でも「グレート」であり、6年度の1380票を最高として、1200票以上の得票を2度達成した。しかし、それ以外では、クイーン・アナスタシアが最終年度に達成しただけである。1200票とは、本来は、一級の女王でなければ到底手の届かない数字なのである。このような驚異的な得票に支えられて、評価も急速に上昇した。最終年度の収穫祭を待たずに女王のラインを突破、最終的には1532に達した。武者修行以外で得た評価の値を計算すると、このキャラクターは、最強の女王アナスタシア・ザ・グレートとほぼ並び、あるいは私の育てたキャラクターの中で最高の可能性もある。

このキャラクターは、もう一つミスコンテストで大きな記録を打ち立てた。従来、私の育てたキャラクターの中で、部門賞ののべ獲得数の最多記録は14だった。この記録を保持していたのは、スペルマスター・アナスタシアと、後述の最強の女王アナスタシア・ザ・グレートである。スペルマスター・アナスタシアの場合は、太陽の神賞8回、月の神賞1回、星の神賞5回、アナスタシア・ザ・グレートは、太陽の神賞と星の神賞をそれぞれ7回ずつである。ところが、クイーン・マルティナは、のべ15の部門賞を獲得し、記録を更新した。内訳は、太陽の神賞8回、月の神賞2回、星の神賞5回。月の神賞を2回獲得するのは非常に難しく、このキャラクターより前にそれを達成したのは、プリンセス・アナスタシアだけである。その難しさは、結局は、月の神賞を獲得できるような完璧なプロポーション(このゲームの基準で)を1年間維持することが非常に難しいことに帰着する。「女性のプロポーションとは月の満ち欠けに似て定まらぬもの*5」とは、このゲームの世界では間違いなく真実なのだ。このキャラクターは、7年度で98.5%、8年度で99.5%のプロポーションを目標にした。小数点以下の値は、得票には関係しない。しかし、最終時点で100.0%に合わせることを考えれば、小数点以下は極めて重要になってくる。しかし、そこまで思うとおりにはいかなかった。7年度、8年度とも、目標の値にはわずかに足らず、7年度はプロポーション98%、8年度は99%でミスコンテストを迎えた。特に、7年度は、ミスコンテストの数カ月前の時点で、プロポーション99%〜101%の間にライバル4人がひしめき、99%のプロポーションがなければ月の神賞は絶望かとも思われた。ここで幸運だったのは、収穫祭の時点で、ライバルの中にプロポーション100%のキャラクターがいなかったことである。前にも述べたように、プロポーション1%差は、運に恵まれれば逆転が起こる。2%差がつくとそれはできない。7年度のミスコンテストは、何度もやりなおして、3部門賞と1100票を獲得して進んだ。最終年度も、確実な月の神賞ではなかった。他の出場者の中にプロポーション100%のキャラクターがいるうえ、98%または102%のキャラクターに逆転される可能性もあった。ちなみに、このキャラクターも、最終時点のプロポーションは予定通りぴったり100.0%に合わせた。これは、もはやプリンセス規格のキャラクターのお約束という感がある。もちろんほとんど意味はないが。
*5 これは、ゲーム中、ミスコンテストで「月の神賞」を決める際に出てくるせりふである。

このキャラクターの大きな成果はもう一つある。このキャラクターは、私の育てたキャラクターの中では初めての「小さなキャラクター」である。前にも述べたとおり、このゲームでは、体重増加を全くランダムにした場合、体重は70キロ前後にもなってしまう。それに比べ10キロ以上も低く抑え込もうとすれば、それだけで大変な苦労を要することは想像に難くないであろう。このキャラクター以前は、私の育てた中で体重が最も少ないのは、プリンセス・アナスタシアの58.6kgである。このキャラクターまで、「小さくてかわいいキャラクター」を志向しなかったのは、私自身の好みが女子スポーツ選手(バスケ、バレー、テニスなどの球技、あるいは陸上短距離ないし跳躍)をモデルにした「背が高く手足が長くスタイルのいいキャラクター*6」にあったことに加え、小さな身長に見合うだけ体重増加を抑制する方法がなかったことも原因である。
*6 ここで「スタイルがいい」とは、プロポーション100%という意味ではない。スポーツ選手をモデルにするのだから、プロポーション100%では明らかに太り過ぎである。プロポーション90%かそこらでちょうどいいくらいである。
つまり、このキャラクターを育てている途中で、ようやく、体重増加を抑制する決定的な方法を発見し、それによって、小さなキャラクターが実現可能となったのである。その原理自体は実に単純明解である。

月を終了したときの疲労が少なければ少ないほど体重は増加しやすく、
多ければ多いほど体重は増加しにくい。
もっと具体的には、月を終えたときの疲労が3〜4段階程度に分かれており、軽い疲労の場合、0.8kgとか1kgとかいった大きな体重増加が起こる可能性があるが、中程度の疲労(おそらく30〜69)の場合は体重増加は0.6kgまでになる。そして、これが最も重要なのであるが、重い疲労(推定70以上)のときは、体重増加は最大でも0.2kgになるのである。したがって、この性質を利用すれば、体重増加を確実にしかも極めて強力に抑制することができる。これによって、マルティナは、最も少なかった年度で、体重増加をなんと+1.5kgにおさえこんだ。最終時点での体重も、54.1kgと、従来の常識をはるかに超える値である。このキャラクターになって、重い疲労で月を越すことが非常に多くなったのは、体重増加を抑制するためでもある。さて、従来、体重増加を抑制したり促進したりする因子としては、いろいろなものが考えられてきた。しかし、その多くが、実はこの単純な法則に帰着できるものであることがわかった。しかし、従来の説がこの発見によりすべて否定されたのかというと、そうではない。この法則では説明できない例も数多くある。例えば、この後説明するクイーン・アナスタシアの体重増加が、最終年度になって+2.4kgと突然落ち込んだ理由は、この法則では説明できない。そのキャラクターの場合、4キロ台の体重増加を記録した6年度・7年度と比べて、最終年度の日程に特に変化はない。また、第1部で説明した初代アナスタシアのバージョン12の体重増加のペースの違いも、説明がつかない。バージョン1と2で、月末の疲労の平均値が大きく違うとは考えられない。このような例を説明するには、やはり、日程そのものあるいはその組み合わせによって、体重増加が抑制されたり促進されたりするとか、あるいは、生まれつきの血液型によって体重の経年変化に差が出てくると考えざるをえない。このテーマについては、いまだによくわからないことが多い。読者諸氏の追究を期待する。

さて、武者修行によって相手の能力値を抑え込むという方法をとったことによって、楽に女王様を育てることができたのだろうか。答は否である。これだけ驚異的な数値を達成するには、それ相応の時間がかかり、苦労があったのである。バイトや礼法の稽古を完璧にこなしたときに限って、やたらと病気になったり、身長や体重がこちらの思うような値にならなかったりしたことが多かった。さらに、表向き完璧に見えるときに限って、相手の能力値を調べてみると、やたらと上がっている場合がほとんどだった。このプログラムには、そのように、嫌がらせをするルーチンがあると考えるしかないほどだった。あるいは、このプログラムはこちらの考えていることを読めるのではないか、とさえ思ったことも何度もあった。このキャラクターは、実は、年度によって、あるいは同じ年度でさえ、プロポーションを増加させようとしたり抑制しようとしたりと、かなり方針の変動が激しかった。それにもかかわらず、まさに私の目指しているところが完璧に読めているかのように、キャラクターがその月の日程をうまくこなしたときに限り、私の望むのと全く逆の値を出すのである。このキャラクターを完成するには、およそ80〜100時間と、プリンセス規格のキャラクターの中では圧倒的に長い時間を要している。それどころか、この時間は、スペルマスター・アナスタシアと比べても倍近い。そして、それで達成できた数値はと言えば、スペルマスター・アナスタシアと比べて、色気は3分の1強、気品と評価は3分の1弱である。実に効率の悪いアプローチと言わざるを得ない。単純に能力値を上げたいのなら、武者修行の腕を磨くべきである。

ただし、このキャラクターの作成を通じていえることが一つある。スペルマスター・アナスタシアの節でミスコンテストの得票の算出法を説明したとき、「すこぶる手抜き」と評した。この法則は、大きな矛盾を生み出すことは間違いない。しかし、その法則が手抜きであることが、逆に深さを生み出しているのである。まさにあばたもえくぼと言うべきか。つまり、能力値が低くとも、その法則を知っていることで、多くの得票を得ることができることがあり、逆に、この法則を知らずに能力値ばかりを上げても、必ずしも多くの得票にはつながらないのである。そのような失敗例もこの後に説明する。武者修行もそのような面が大いにある。それは、このゲームを通じて言えることかもしれない。そして、このゲームが名作と言えるゆえんも、そのあたりにあるのかもしれない。

ところで、このキャラクターが完成した後、意図的に相手の能力値を抑え込むことをしなかったらどの程度まで評価を上げることができるかを検証した。相手の能力値が通常各年度のミスコンテストでどのくらいの値になるかは、他のキャラクターのデータを調べればわかる。そのデータを利用して、主人公の各年度のミスコンテスト時点の能力値はマルティナと同じとして、各年度のミスコンテストでの得票を求め、その数値をマルティナの得票と比較して、その差に相当する分だけ評価を引いたわけである。なお、月の神賞は、マルティナと同じ2回(7・8年度)、星の神賞は、マルティナより1回少ない4回(5〜8年度)とした。プリンセス・エカチェリーナの経験に基づいて、ミスコンテストに出場したキャラクターの気品の平均を、2年度は100ぎりぎり、5年度は200ぎりぎりで抑えられるとした。そのような仮定で出てきた値は、およそ1180である。思ったよりも女王のラインに近い。さらに、後半の能力値の上げ方を考え直してみる。6年度収穫祭から7年度収穫祭の間に、色気をあまり上げなければ、7年度の収穫祭で、うまくいけばミスコンテストに出場したキャラクターの色気の平均を200ぎりぎりに抑えることができる。それによって、気品の上昇は大きくなるから、気品部門の得票もさらに増える。さらに、7年度から最終年度の収穫祭にかけても、色気を無理に上げず、礼法の稽古をできる限り多く入れる。最終年度は、気品・色気とも4点で1票の換算率になるから、両方の単純合計をできる限りのばすことが、そのまま得票数をのばすことにつながる。そう考えれば、武者修行をせず、しかも相手の能力値を意図的に抑え込むことすらしなくても、女王になる可能性は、ないとは言いきれないのである。しかし、たとえ相手の能力値に気を使わなかったとしても、武者修行をせずにマルティナ並のキャラクターを育てるためには、それなりの時間を要する。おそらく20〜30時間は必要だろう。また、上記の計算が成り立つためには、いくらかの運も必要である。結局は、確実に女王様を育てるためには、武者修行に出したほうが楽、ということである。

それにしても、いったいどうやってマルティナが魔王を倒したというのだろうか。体力131、腕力0、レベル1、経験値0、戦闘技術30、素早さ30のマルティナがである。魔王は、トラどころか、山猫や人さらいよりもはるかに弱いようである。すると、この魔王にとどめを刺すことができなかった父親は、もっと弱いということになるのだろうか。実は父親は勇者でも何でもなかったのだろうか。・・・こうなると、もう笑うしかない。

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