第1部 古きよき愛すべきプリンセスたち


初代オクサーナ

私がこのゲームで最初に育てたキャラクターである。オクサーナというネーミングの由来に関しては、二代目オクサーナの節で述べることにする。

当初、私の構想としては、知力と気品を思い切り高くするということがあり、彼女はそのガイドラインに沿って制作が開始されたキャラクターである。初年度*1の収穫祭では何もしなかった。というより、何もできなかった。まあ、わけもわからずに、ありとあらゆるバイトをやらせ、教育を受けさせていた*2(つまり、やることに筋が通っていない)のだから、それは仕方がない。2年度のはじめだったと思うが、学問をさせていると、昇級試験を受けますかと尋ねてきたので、受けることにした。常識通りに答えを選んだら正解で、このキャラクターに二級学士の称号が与えられた。プリンセスメーカーにおいて、初めてとった称号である。当時は、このようなささいなことでひどく喜んだりしたものである。
*1 初年度とは、ゲームが始まってから最初の1年間、つまり、王国歴1670年4月から1671年3月を指す。2年度は、初年度の次の1年間、つまり、王国歴1671年4月から1672年3月までである。3年度以降も同様である。
*2 ただし、武者修行とあやしいバイトはしたことがない。

彼女が初めてミスコンテストに出たのは、2年度だった。私としては、ミスコンテストとはどのようなものか雰囲気をつかむだけのつもりで、とうてい歯が立たないだろうと思っていた。しかし、いきなり「太陽の神賞」*3で「対抗」にあげられていたので、そのときは、ミスコンテストの賞などそうそうとれるものではないと思って、審査員を買収するという手を使ってとった。しかし、3年度以降は、買収などしなくても太陽の神賞はとれるようになった。
*3 ミスコンテストで、もっとも気品のある出場者に与えられる賞。ついでに、もっともプロポーションのよい出場者に与えられるのは「月の神賞」、もっとも色気のある出場者に与えられるのは「星の神賞」という。これらの賞の名前は以下の文中でも時折出てくるので、この文章を読んでいる間は覚えておいてほしい。

4年度の収穫祭で、太陽の神賞を3年連続受賞となった。こうなると欲が出てくるもので、ほかの部門賞とか、総合優勝をねらいたいと考え始めた。しかし、太陽の神賞は簡単にとれるようになっていたものの、プロポーションの値も低く、しかも、色気がゼロ(泣)!ということで、総合優勝などとうていおぼつかない状態が3年間続いていた。そのときになって、ようやく色気をあげるバイトができるようになった*4。そこで、それを時折やって、色気を上げはじめた。しかし、そのバイトは、副作用として気品が下がる*5ので、気品が命のこのキャラクターにとって、ぶっ続けでやるわけにはいかなかった。だから、色気の上昇速度は大したことはなかった。次の年度の収穫祭を迎えた時点で、色気はせいぜい60程度だった。これでは前年度と事態は大して変わらないように思われた。ところが、

なんと総合優勝!

してしまったのである。
*4 新しいバイトができるようになるのは、誕生日の次の月からである。ただし、誕生日が9月の場合は、次の月が収穫祭だから、当然収穫祭の後の11月になる。初代オクサーナの誕生日は9月24日だった。
*5 あやしいバイトは考えていない。私は、基本的に、キャラクターにあやしいバイトは絶対にやらせないことにしている。エンディングを調査するために制作したテストデータは別として、正式の最終データとして認めている7人のキャラクターは、いずれも、あやしいバイトをしたことはない。

今から考えてみれば、これは、まさにとんでもない幸運のたまものであったとしか言いようがない(強いライバルが一人も出てこなかったということ。)。ところが、当時は、これで完全に図に乗ってしまった。そして、残る目標は3部門の完全制覇のみと、大それたことを考えたのだった。そして、最終年度における3部門完全制覇を目指して、気品と色気を適当にあげはじめた。その途中に当たる6年度、気品は400台を維持し、色気もほかの部門の足を引っ張らないように3桁に到達、これで総合優勝は万全のつもりであった。ところが、万全どころか、

100票以上の差をつけられての大惨敗!

だったのである。太陽の神賞を僅差でとるのがやっとという有様だった。そのとき優勝した相手の能力値は、気品と色気が両方とも350台だった*6 。当時は、まさに化け物かと感じられたものである。
*6 確かナスタナーラという名前だったと思う。ゲーム中のグラフィックでは、オレンジ色と黄色とそのほかあわせて何色かの絵の具をべとーっとこぼしたような顔をしている。そのくせにめちゃくちゃ強い。キャラクターが違うと、ライバルのうち誰が強いかも異なってくる(乱数により変動する)ようだが、ナスタナーラとリベのどちらか(または両方)は相当に強い。ナスタナーラは人間のようだが、リベは、プロポーションの値が極端に低いことと、耳がとがったイラストから考えあわせて、人間ではなくエルフだと思われる。

かくして、この化け物を上回る(特に色気)にはどうしたらよいのかと、対策が練られることになった。しかし、当時、色気をあげる手段はバイトしかないようなものだった*7。そうなると、疲労回復のためにかなり時間をとられることと、副作用として気品が下がる分を取り戻さなくてはならないことから、どうがんばっても色気の上昇速度は高が知れている。
*7 色気をあげるアイテムはあるが、非常に値段が高くてそうそう手が出るものではない。

しかし、とりあえず、7年度の収穫祭までさらに1年間やってみた。無理をしてアイテムを買って使っても、この1年で色気は150くらいしか上がらなかったような気がする。1年たてば、相手の出場者もそれなりに能力値が上がっているのだから、とうてい追いつくはずはない。その上、色気をあげるのに無理をして気品がおざなりにされているので、太陽の神賞すら今度は本当に危ない。のみならず、さらに新しい問題が発生した。プロポーションが6年度あたりから一気に上がって、ついに100パーセントを大きくオーバーしてしまったのである。これでは月の神賞もとれない。かくして、次のような結論が下された。

最終年度の3部門総合制覇をねらうには、初年度の最初の日から、それに向けて、1日の無駄もなく鍛えなくてはならない。*8
*8 なんか受験産業みたいなセリフだな

かくして、新しいキャラクターを作ることが決定。このキャラクターは、それ以降、このゲームの解析のためのデータとして何度か使っただけで、2ヶ月半以上にわたって手をつけなかった。

なお、この間に、このキャラクターを試しに城に行かせてみた。そのときの気品は350くらいだったと記憶している。当時は、それほど位の高い人にお目通りが許されるとは期待していなかったけれども、実際に行ってみると、どんどん位の高い人物と面会できてしまうので驚いた。このときは、王妃に面会した時点で終わりになった。国王に面会できる(王妃から許しをもらえる)基準は、気品400なので、これもまもなく越えることができた。しかし、国王からお褒めの言葉をたまわることはなかなかできなかった*9。結局、それを最初に達成したのは、このキャラクターではなく、この次の、プリンセス・アナスタシアだった。
*9 城に行くと、衛兵、衛兵隊長、侍従、侍従長、王妃、国王の順でお目通りが認められる。国王からお褒めの言葉をいただくと、最終段階を通ったことになる。一段階通るごとに、評価が8上昇する。したがって、国王からお褒めの言葉をいただいたときの評価の上昇は、8×6 = 48である。

この最初のキャラクターを、エンディングまで育ててみようという気になったのは、私の描いていた理想像が一人のキャラクターとして完成してから、しばらく後だった。この中間経過で、最終的にはどこまでいけるのか、試してみたかったのである。なお、ここからは、プレイした順序と文の順序が前後するので、後述のプリンセス・アナスタシアの節、あるいはクイーン・アナスタシアの節の最後まで一読してから、もう一度この節のこの段落以降を読み直していただくと、より理解が深まることと思う。

前記のデータでは、6年度をかなり無駄づかいしたので(「博士」の称号をとらせるために、2度も「学問・上級」を受けさせた。)、5年度の収穫祭の後からやり直した。しかし、このやり直しは、このキャラクターの本来のコンセプトからはかなりはずれるものである。このキャラクターは、本来は、知力を上げることにかなり重点が置かれていた。それに対し、このやり直しは、完全にミスコンテストで優勝することをターゲットにしたものである。そのため、博士号の獲得は後回しにされた。しかも、後述の通り、最終年度の収穫祭前に著しく散財してしまったために「学問・上級」および卒業試験に必要なだけの金をためることがなかなかできず、最後の月の下旬でようやく博士号獲得にこぎつけた。しかも、最後の月の上旬・中旬にはバイトを入れていたのだが、そのうち2日失敗すれば卒業試験の受験料は出ないという状況だった。最後の所持金はわずか8ゴールドだった*10
*10 以後、この文の中では、この世界の通貨の単位はゴールドと呼ぶことにする。

詳しいデータは付表に記すが、最終結果は「上級貴族夫人(バージョン1.0)」*11または「国王側室(バージョン1.1)」だった(バージョン1.0と1.1の違いは後で述べる。)。やはりプリンセスは無理だった。しかし、このキャラクターが、最終年度にミスコンテスト3部門制覇を達成するとは夢にも思わなかった。5年度の収穫祭終了直後、やり直しを始めた時点では、気品が400台前半、色気は60にも達していなかった。それが、最終年度の収穫祭には、気品700強、色気500強まで到達し、この2部門の賞は相手に誰が出てきても確実に獲得できるようになっていた*12。また、プロポーションも100パーセントにあわせた*13。この3年間の追い込みは、このキャラクターのそれまでのスペックからいえば、まさに奇跡といってもよいものである。後述のプリンセス・アナスタシアは完全に上回るペースである。これができたのは、特に7年度の収穫祭が終わった後の1年間に、それまでにためた金を少しずつ食いつぶして、毎月ティーカップやぬいぐるみを買って使ったからである。プリンセス・アナスタシアのときにも、最終年度の収穫祭の前にお金が余ったので、それを能力値を上げるアイテム(ティーカップやドレスなど)に使うということはした。しかし、それらのアイテムには、疲労を回復する効果もある。最終年度の収穫祭の前に一気にお金を使ってアイテムを買いまくって使いまくるというやり方では、それらのアイテムの能力値を上げる効果を利用しているだけで、疲労回復の効果は無駄にしていることになる。毎月少しずつアイテムを買っては使うようにすれば、バイトによって気品が下がる分を補うだけでなく、そのバイトによる疲労を回復する役にも立つ。私は、この方法(を実行している状態)を「バーストモード」と呼ぶことにした。この「バーストモード」を発見したことにより、1年間で色気をおよそ200上昇させる(しかも、気品と評価を下げないで)という驚異的な追い上げを達成した。しかし、バーストモードを実行すると、毎月大変な赤字が出る。1年間で蓄えはほぼ完全に使い果たしてしまった。7年度の収穫祭の後には2000ゴールド以上あった所持金は、この1年後には2桁になっていた。
*11 バージョンとは、あるキャラクターの途中のセーブデータからやり直しをしたことを表す。それに対し、初代・二代目とは、キャラクターの名前は同じでも最初から全く別のキャラクターとして作られたことを示す。なお、これ以降、バージョンはVerと記すこともある。
*12 色気500というのは、やや微妙な数字である。最終年度の収穫祭に、色気が500を超えるライバルが出ることはあるのだ。最終年度の収穫祭において、誰が出てきてもこの部門の賞はとれると確実にいえる数字は、気品700、色気600である。しかし、このキャラクターのときは、色気が500以上というライバルは出現しなかった。
*13 しかし、他にもプロポーション100パーセントの出場者がいるので、運が悪いとプロポーションの部門はとれない。プロポーションについては、最終年度の収穫祭に100パーセントにあわせたとしても、他にもプロポーションが100パーセントの出場者が現れる可能性があるので、必ず賞がとれるというわけにはいかない。なお、この後、この文章中では、プロポーションを小数点以下第1位まで話題にすることがときどきあるけれども、それは、私が自分の発見した公式にしたがって勝手に計算しているだけである。小数点以下はミスコンテストの得票には影響しない。

さらにつけ加えると、このキャラクター(Ver1.0)は、それまではほかのどのキャラクターも成しえなかった(後に、別のキャラクターも達成している)ことを一つだけ達成した。それは、「最終時点でのプロポーション100.0パーセント」である。注意してほしいのは、100パーセントではなく、100.0パーセントということである。次回述べる私の発見した公式によれば、プロポーションを小数点以下第1位まで求めることができる。そこまで考慮してぴったり100パーセントということである(小数点以下を四捨五入しての最終時点での100パーセントなら、このキャラクターが完成する前に完成したキャラクター2人もあてはまる。)。ただし、ほとんど意味はないが。

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初代アナスタシア・バージョン1

前に述べた決定により、制作が開始されたキャラクターである。名前は適当にそのあたりからパチってきた(ある有名な音楽コンクールの出場者の名前だったような覚えが・・・。)しかし、私はこのネーミングが非常に気に入っているので、この後制作を開始したキャラクターに対しても、この名前をつけている。また、各世界の設定に流用している。

最終年度のミスコンテスト3部門完全制覇を目指して、私が最初に立てた計画は、13歳までは気品をできる限りあげて、14歳になったら気品と色気を交互にあげる、ということだった。ただ、交互にあげるといっても、色気をあげるバイトをすると気品が下がるので、結果としては、14歳以降はほとんど色気だけが上がっていくということになる。

気品は、基本的には、「礼法」の稽古によって上げる。礼法の稽古は、費用は1日あたり10ゴールドと、比較的安い。しかも、1日の稽古がうまくいけば気品が5も上昇する。したがって、費用対効果、あるいは、時間対効果は非常に高いといえる。しかし、疲労対効果は、ほかの教育と同じ(武者修行は別にして)で、能力値が1上昇するごとに疲労+1である。したがって、礼法の稽古を入れた場合、疲労が一気に上昇する。疲労が極度にたまった状態で月を越すと、病気にかかる可能性がある*1。また、疲労回復は、通常、「休息」によって行うが、休息した場合、モラルが一気に落ちる*2。モラルが極度に低下した状態で月を越すと、非行化するおそれがある。だから、礼法の稽古はタイミングが難しいのである。
*1 ふつうのキャラクター(体力100程度)なら、疲労が70前後になると危険である。
*2 休息した場合、たまっている疲労を休息期間の日数で割り(通常は10日だが、下旬に休息した場合は月によって異なる)、端数を切り上げる。休息期間の最初の日から、1日にその値だけ疲労が回復していき、その値の半分(端数切り捨て)だけモラルが低下する。最後に残ったあまりの疲労は1日で回復する。この日も、モラルの低下は、回復した疲労の半分(端数切り捨て)である。例えば、疲労が61のときに10日間の休息をとった場合を考えよう。8日目までは、疲労が7ずつ回復し、モラルが3ずつ低下する。9日目は、疲労が5回復し、モラルが2低下する。10日目は何も起きない。したがって、この間のモラルの低下は26となる。

礼法の稽古と休息の合間に、バイトをする。主なバイトは、メイド(気品が上がる)、医者(知力が上がり、体力が下がる)、宿屋(体力が上がる)といったところである(サブミッションとして、初代アナスタシアには、博士号をとる*3ことを課した。そのためには、当然かなりの知力が必要である。そこで、知力を上げるために、医者と宿屋のバイトを組にして入れるわけである。医者のバイトを入れると、体力が下がるため、宿屋のバイトでその分を補う。武器戦闘を全くしないキャラクターでも、ある程度の体力*4は必要である。体力が極度に低いと、少しの疲労でも病気になってしまう*5,6ので、少しバイトや教育をさせただけで休息をとらなくてはならなくなるからである。)。これらのバイトは、能力値を直接上げるためだけではなく、礼法の稽古を適切なときにずらすため、あるいは、礼法の稽古や休息にかかる費用を出すためにも、非常に重要である。礼法の稽古を入れると、たいていその直後に休息が必要となる。休息すると、その直前にたまっていた疲労の値と同じだけの費用がかかるので、礼法の稽古にかかる費用そのものはさほど高くないが、実際には礼法の稽古を入れるとかなり所持金が減少することになる。
*3 二級学士、一級学士、博士の称号をとるためには、知力が一定水準に達した後、学問所で教育を受けて、試験を受け、それに合格する必要がある。問題に答えるのはプレイヤー自身である。いずれの場合も、試験は、三択問題2問で、両方に正解すれば合格である。二級学士・一級学士の試験は常識通りなので楽勝。博士の試験は常識ではわからないが、試験問題はいつも同じなので、何度も繰り返せば必ず正解は発見できる。
*4 私は100を目安とした。
*5 病気にかかると、ほとんど全ての能力値が毎日1ずつ落ちるので、キャラクターを育てるのに致命的なダメージを受けることになる。
*6 疲労に耐えられる限界と、体力の値との関係を調べるため、私はベンチマークテストを行った。内容は、「礼法の稽古をひたすらやらせて、何ヶ月で病気になるか調べる」というものである。ふつうのキャラクターでは1ヶ月ももたないハードなベンチマークである。テストに使ったキャラクターはアマゾネス・オクサーナ、8年度の9月から行った。そのときの体力は1090である。間に収穫祭がはさまるけれども、それによって疲労が回復することはないので、このテストの結果には関係ないものと思われる。結果は、3ヶ月でダウンということだった。そのときの疲労は335である。プリンセスメーカー2とちがって、体力とほぼ同じ値までというように簡単にはいかないものの、耐えられる疲労の限度と体力の値には密接に関係があることが証明された。

14歳の誕生日より後は、酒屋のバイト(これが色気を上げるのだ)が中心となり、礼法の稽古は、そのバイトによって気品が下がる分を埋め合わせる程度になる。ただし、この時期でも前にあげたようなバイトは続行される。

博士号を獲得しながら、最終年度にミスコンテストを完全制覇することを目指して、私は、上のような過程で各能力値を上げていく計画を立てた。この計画を実行するため、初代アナスタシアの誕生日は4月に設定した。誕生日が早い方が、この計画で必要なバイトが早くからできるため、有利だと思われたからである*7。そして初代アナスタシアの最初のバージョンはこの計画通りに育てられた。しかし、予想もしない問題が発生し、最初の計画は挫折したのである。
*7 医者のバイトは11歳、メイドのバイトは12歳、酒屋のバイトは14歳の、それぞれ誕生日の次の月からしかできない。

初代アナスタシア(Ver1)は、初代オクサーナに比べ、プロポーションが異常なほど早くから上昇した。3年度の収穫祭終了後で98パーセント、4年度の収穫祭の後にはすでに100パーセントに達していた(初代オクサーナはこの時点で96パーセント)。そして、5年度の収穫祭には早くも100パーセントをオーバーしてしまった。このペースでは、最終年度のミスコンテストで、3部門制覇などできるはずはない。 何がプロポーションの異常な上昇を招いたのか、(初代)オクサーナにあって(初代)アナスタシア(Ver1)に欠けていたものは何なのかと、私は考えた。そこで浮かび上がってきたのが、「野外労働」(木こり、人足、狩人のことを、まとめて野外労働と呼ぶことにする)だった。初代オクサーナは、実験キャラクターという意味合いもあったので、ほとんどの種類のバイトをやらせたことがある。それに対し、初代アナスタシアは、最初から大目標が決まっていたので、その妨げとなるようなことは当然やらせていない。気品や色気を下げる効果のある野外労働はその最たるものである。しかし、「体をしぼる」(以下、プロポーションを低い値に維持することを、このように表現する)ためには、野外労働が必要とは、何とも皮肉なことである(しかし、不合理とはいえないと思う)。

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プリンセス・アナスタシア(初代アナスタシア・バージョン2)

上の考えが正しいかどうか確かめるために、初年度の収穫祭直後からやり直すことにした。そのキャラクターがプリンセス・アナスタシアである。なお、今後、アナスタシアという名前のキャラクターは、最後までいったキャラクターだけで4人登場する。初代とか、二代目とか、バージョンいくつとか言っても、どのキャラクターのことを指しているのかとっさにわかりにくいこともあるだろう。したがって、これ以降、原則として下のような表現でこの4人を区別する*1
プリンセス・アナスタシア = 初代アナスタシア・バージョン2
スペルマスター・アナスタシア = 初代アナスタシア・バージョン3
クイーン・アナスタシア = 二代目アナスタシア
アナスタシア・ザ・グレート = 三代目アナスタシア
*1 初代アナスタシアのバージョン1・2・3は、初年度の収穫祭終了後からのやり直しであり、スペックも互いに全く違うので、別のキャラクターとみなしてさしつかえない。

野外労働全くなしでも、礼法の稽古、さまざまなバイト、休息を組み合わせて、最適の日程を考えることは簡単ではない。時折の野外労働を入れながら、バージョン1並みの割合(1年間におよそ+200)で気品を上げようというのは、さらに難しい。しかし、このキャラクターは、その課題を見事にこなしながら成長していった。そして、肝心のプロポーションの方も、初代オクサーナ以上に低い値におさえることができた。かくして、「野外労働と、礼法の稽古(または気品を上げるバイト)を組み合わせることは、体をしぼる効果がある」という仮説は実証された*2
*2 あくまで、この二つを組み合わせた場合である。野外労働しかしない場合、野外労働を全くしない場合よりもさらに急速にプロポーションが上昇することが、二代目オクサーナのバージョン1・2で実証されている。 。

しかし、15歳からは、さらに難題が待ちかまえていた。今までも出てきたプロポーションの問題である。プロポーションは、次の式で求められる。単位の全く違う数値を足し引きしても、学問の世界では意味をなさないが、プリンセスメーカーでは重要な意味を持つのだ。

プロポーション(%): P、 身長(cm単位): H、体重(kg単位): Wとして、

P = 209.5 - (H - W) *3
ここで覚えておいてほしいのは、H - Wの値が小さくなった分だけPは上がるということである。つまり、△H△Wが上回った分だけPは上昇するのである。
*3 この式は、発見した当時のすべてのセーブデータで確認し、また、その後のデータでもこの式通りにならなかったことはないので、間違いはないと思う。

15歳の誕生日を迎える月からは、身長は最大でも1ヶ月に0.2センチしかのびなくなる。しかし、体重は、それまでと同じように、最大で1ヶ月に1キロの割合で増える。したがって、15歳の誕生日を過ぎると、プロポーションは急速に上がることになる。

最終年度の収穫祭で、プロポーションを100パーセントにもっていくことは、いくら15歳になる前に体をしぼっていても、体重増加をランダムにまかせておいたのでは不可能である。体重増加を完全にランダムにまかせた場合、最終的な体重は、体をしぼる効果のある日程を続けた場合でおそらく68〜69キロ、太りやすい日程を続けた場合にはおよそ75キロにもなる。一方、身長の伸びを完全にランダムにまかせた場合には、最終的な身長は165センチ前後になると推定される(プリンセス・アナスタシア、あるいはスペルマスター・アナスタシアの場合でもわずかながら、身長を伸ばすことに気を配っている。)。したがって、両方を全くランダムにまかせたのでは、娘はぶくぶくに太ってしまう。それを避ける方法としてまず思いつくのは、体重増加をおさえることである。そのためには、当然、毎月データをセーブして、体重が増えすぎたら前の月のデータをロードしてやり直すことが必要である*4。もう一つの方法は、その体重増加に見合うだけ身長を伸ばすことである。15歳になってからは、身長は毎月最大でも0.2センチしか伸びなくなるから、その方法をとる場合は、その前にできる限り身長を伸ばしておく必要がある。そのためには、毎月データをセーブして、身長が十分に伸びなければ、前の月のデータをロードしてやり直すことになる。だから、かなりのやり直しが必要なことには変わりはない。クイーン・アナスタシアアナスタシア・ザ・グレートはこの方針をとったキャラクターである。
*4 邪道だという人もいるかもしれないが、私はプリンセスメーカーはそのようなゲームであると心得ているので、あしからず。

実は、私は、7年度が最終年度だと当初思いこんでいて、最初は、7年度の収穫祭の時にプロポーションが100パーセントになるように育てた。そのときは、3部門総合制覇はできたが、まだ完璧ではなかった。というのは、他の出場者によって勝敗が左右されたからである。要するに、強いライバルが出てくると、色気では負けた、ということである。とにかく、大目標を達成したので、ぼうっと5ヶ月を過ごして7年度を終えたそのとき、「明日から4月か」というメッセージが出てきた。なんと、まだ1年あるのか。これは驚いた。よし、それならと、より完璧な形で目標を達成すべく、7年度8月からやり直した。6年度の収穫祭の直後からやり直せると、プロポーションをおさえるのがもう少しは楽だった*5 のだが、6年度の収穫祭直後のデータは誤って消去されていたのだ*6
*5 私は、1年ごとに、データを上書きせずに保存しておくことにしている。これは、当初は、やり直しが必要となるという事態に備えるためだった。現在では、この記録文書の作成のため、あるいは、このゲームの解析のためという意義が大きい。
*6 これは、セーブをする瞬間にマウスが少しずれたからである。マウスを使っていると、その程度のミスはよくある。もっと致命的なものとして、あるデータをロードするつもりで、実はセーブになっていた(あるいはその逆)というのがある。

次から次へと出てくる問題をのりこえて、プリンセス・アナスタシアは、最終年度に見事にミスコンテスト3部門制覇を達成した。そのとき、気品は703、色気は632、プロポーションは見事に100.0パーセント(前の式を用いれば、小数点以下第一位まで求められる。)。相手の出場者に誰が出てこようとも、完全制覇は揺らがない。当時としては、彼女は、最強のミスコンテストの女王、と思われたものだった。

それにしても、前に述べたような方法で、ミスコンテスト3部門制覇を達成することは、容易ではない。5年度までは、総合優勝すら、強いライバルが出てくるとかなわない状態だった。初年度・2年度のうちは、ほかの出場者の能力値が全体に低い中で気品が飛び抜けて高いから、最強のライバルに対してもかなり食い下がれる(10〜20票差)けれども、3〜5年度は完敗と言ってよい。この原因は、14歳の誕生日を迎えるまでは、色気をあげる手段が事実上ないことである。3年度あたりからは、いくら気品だけずば抜けて高くても、色気がゼロ同然では、強いライバルにはとうてい歯が立たなくなってしまった*7。6年度になってようやく、誰が出てきても総合優勝はできるだろうという程度になった。しかし、色気がまだまだ低く、星の神賞はとれない可能性が大きかった。7年度になると、3部門制覇の可能性はだいぶ高まってきた。しかし、色気が高いライバルが出ると、やはりまだかなわなかった。誰が出てきても、というわけにはいかなかったのである。
*7 このキャラクター程度の気品ではそうである。また、このキャラクターのときには、ライバルの中にやたらと強くなったのがいたという不運もあって、このキャラクターを育ててからずっと、私はそう思い込んでいた。しかし、第5部で述べるプリンセス・エカチェリーナは、この思い込みを見事に打ち破った。彼女は、3年度までは色気は30しかなく、プロポーションも極度に低いにもかかわらず、誰が出てきてもどの年度も総合優勝できる。

このように、文句のつけようのない形で7年半越しの大目標を達成してしまうと、後にやってきたのは妙な空虚さだった。別れの日まであと5ヶ月という寂しさと、目標を達成しなすべきことを見失った脱力感、それが一度におそいかかってきた。結局、最後の5ヶ月の間も、それまでと同じような日々を送った。ただ、最後の3月には、必ず彼女をバカンスに連れていくと決心し、それを実行した。最初は、最後の5ヶ月を、本当にどうでもよいと思ってプレイしたので、一気に体重が2.5キロも増えてしまい、プロポーションも2パーセント上がった。さすがにこれではよくないなと思ったので、もう一度最後の5ヶ月をやり直し、プロポーションを100パーセントに保った。最高の状態で送り出そうと思ったのである。したがって、7年度8月からのやり直しとあわせて、このキャラクターの最終のデータは、正式には、初代アナスタシア・バージョン2.11*8である。
*8 なんかMS-DOSみたいだな

そして、別れの日が来た。そのときの寂しさは、私には表現できない。ただ、言えることは、それはこのゲームをやった人にしかわからないものだし、また、私自身も追体験することはもはや不可能なものなのだろう、ということだ。これ以降も、私は何人かのキャラクターを最後まで育てた(彼女らについては、この後で詳しく述べる)。彼女たちは、1、2人を除いて、このキャラクターよりもはるかに手がかかっている。しかし、このキャラクターを育てているときのような愛情を感じることはなかったし、別れの日が近づいても寂しさを感じることもなかった。ただ、ゲーム終了までに抱いていた気持ちと、ゲームが終わってから抱いている気持ちとは、また別物だから不思議なものである。このキャラクターを誇りに思う気持ちは、完成させたときはあったかもしれないが、今はない。それに対し、最後に述べる女王の場合は、この全く逆で、育てている途中には愛情のようなものは感じなかったけれども、現在ではこれだけのキャラクターを完成させたことを誇りに思っている(大げさな表現だが)。

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