第6部 そして、最強の女王へ


クイーン・アナスタシア(二代目アナスタシア)

実に長い道のりだった。ようやく完成にこぎつけた*1。このキャラクターを育てるために、私は、2カ月以上にわたってほぼ全精力を注いだ。このキャラクターを育てるために2学期の大半をつぶしたような気がする。今となっては、このキャラクターは、最強の女王ではない。しかし、このキャラクターは、このゲームにおける完成された女王の姿を見せてくれた。最強の女王の影は、すでにこのキャラクターの中に見ることができる。
*1 この部分を書いているのは、このキャラクターを完成させた直後である。満足感に浸りながら、この文を記した。

彼女の基本構想は、「二代目オクサーナと同様の剣士仕様で、スペルマスター・アナスタシアと同様に武者修行で能力値を上げまくる」ということである。そのかわり、途中経過と称号にはこだわらないことにした。つまり、初年度の収穫祭は何もしなくていいし、2年度の収穫祭くらいまでは結果を求めないから、とにかく最初は、ひたすら金を稼いでよい装備を買うと同時に、しっかりと体力と腕力を養成すること。また、称号をとるために余分な金と時間を使わずに、能力値を上げることに集中しなさい、ということである。

もう一つ、このキャラクターの重要な目標は、「身長180センチにする」ということである。狂気の沙汰にも近いと思われるかもしれないが、誕生日を3月に設定し、15歳の誕生日までの間、年5.5センチ程度の身長の伸びを確保すれば不可能ではない。しかし、文に書くのは簡単だけれども、1ヶ月の身長の上昇は最大0.5センチだから、毎年5.5センチ身長を伸ばすのは決して楽ではない。

前記の必勝法では、色気を上げるのにバイトに全く頼らないから、バイトを早く始めるために誕生日を早く設定する必要はない。宿屋と木こりのバイトは、10歳から始められるから、誕生日を遅くしても何ら関係はない。むしろ、誕生日を早く設定すると、身長がのびにくくなる期間(15歳の誕生日より後)が長くなるから、不利である。したがって、このキャラクターの誕生日は、3月3日に設定された。バイトばかりしている最初の1年のうちに、身長をぐんと伸ばし、それと同時にプロポーションを落とすことは、何もこのような無茶な目標設定をしなくても、重要であろう。15歳を過ぎてから、月20日の武者修行をしながらやり直ししまくるよりは、この段階でやり直ししまくった方が、はるかに楽なのだから。

武者修行を始めたのは2年度の5月である。これはスペルマスター・アナスタシア二代目オクサーナとほぼ同じである。しかし、このキャラクターは、2年度9月末の時点ですでに6レベルになっている。これは、二代目オクサーナの3年度の収穫祭の時点のレベルと同じである。さらに驚くべきなのは、2年度の9月、武者修行を始めてわずか4カ月後に「本物の武者修行(前述した最強の日程)」を開始したことである。これは、スペルマスター・アナスタシアに比べればおよそ1年半も早く、正直言って私自身もこれほど早く始められるとは思ってもいなかった。ただし、切り抜けるためにはまだ薬草を大量に必要とする、ドラゴンを倒すにはまだ力不足である*2という二つの理由で、著しい財政難であった。この後、このキャラクターについていろいろ文句をたれることもあるが、これらのことは、このキャラクターが、アーキテクチャそのものから、以前のキャラクターよりはるかに優秀であることの何よりの証拠である。そして、その優秀さは、初年度に、武者修行の準備をみっちり行ったことに由来する。結局、初年度の教育の内容で、そのキャラクターの到達する能力(の上限)が決まってしまうのである。この段階がいかに大切かわかる。
*2 ドラゴンを一頭倒すと250ゴールド手に入る。だから、毎月一頭倒すだけで赤字は回避できる。しかし、アイテムを取りに遠出すると、倒したときにめぼしいお金の入る敵がドラゴン以外にいないので、ドラゴンを一頭も倒せないと収入がほとんどゼロになってしまう。

しかし、しばらくすると、武者修行そのものが苦しくなってきた。敵が強くなっているのに全然追いついていなかったのだ。戦闘特性も、スペルマスター・アナスタシアと全く同じである。剣で攻撃しているにもかかわらず、2発目以降は極端にダメージが落ちるうえ、敵の残りHPが40点以上あると一発で倒せない(会心の一撃が出たときを除く。)。スタートしたときは、強いような気がしたが、全然強くない。レベルの数値と体力だけは上がっているが、その実感は全くない。結局は、トラやドラゴンのように強い敵を倒すのは、防具を買い換えないと苦しいということなのだ。しかし、防具を買い換える費用を出すためには、ドラゴンを倒さなくてはならない。ジレンマである。

かなり苦しめられ、金はなかなかたまらなかったものの、3年度末から4年度始めにかけて、鎧と兜を買い換えることができた。さらに、4年度末には、武器も買い換えて、最強の装備をそろえることが完了した。これで戦闘はずいぶん楽になり、敵に敗れることは滅多になくなった。

2年度の収穫祭では、このキャラクターは、武闘会に出場する予定だった。順調にいけば、3年度以降は当然ミスコンテストのほうに出ることになるので、このキャラクターは、私の育てたキャラクターとしては唯一、武闘会とミスコンテストの両方に出場したキャラクターとなるはずだった。このとき、武闘会で優勝できる確率は半分かもう少し大きいくらいだった。収穫祭の月は、できる限り身長をのばすと同時に、プロポーションを減らす(つまり、身長+0.5cm、体重+0.1kg)を目指した。しかし、武闘会に優勝して、しかもそうなることはなかなかできなかった。そのようなときに、少し気分を変えて、この娘をミスコンテストに出場させてみようという考えが浮かんだ。すると、総合優勝してしまった。しかも、身長ののびは0.5cm、体重ののびは0.1kg!ということで、このデータで次の月に進むことになってしまった。このキャラクターを武闘会とミスコンテストの両方に出すという計画は果たせなかった。

このキャラクターは、身長を伸ばすなどというあほなことにこだわっているから、スペルマスター・アナスタシアと同程度まで能力値が上がれば上出来だ、と当初は思っていた。ところが、結果的には、スペルマスター・アナスタシアを大きく上回る能力値に到達した。それは、本物の武者修行をずっと早くから始めていることに加えて、武者修行そのものの内容もスペルマスター・アナスタシアのときよりはるかに濃くなっているからである。武者修行の技術のさらなる向上により、30日・31日の月を問わず(ただし2月だけは別)、能力値を上げるアイテム4種類すべてを2つずつ手に入れることができるようになった。これに初めて成功したのは3年度の6月だったけれども、まもなくそれが当然となった。

その結果、3年度の収穫祭では、気品875、色気550に達し、この2つの能力値の単純合計で、早くもプリンセス・アナスタシアの最終データを上回った(ただし、調和平均では下回っているが。)。3年度のデータが残っていない*3ので、断定はできないが、2年度の収穫祭直前と4年度の収穫祭直前の評価の値から推定すると、3年度のミスコンテストでの得票はおよそ800票となる。3年度のミスコンテストにおいて、他の出場者の気品・色気の平均が60〜80程度であることを考えれば、この推定は妥当だろう。4年度は大して得票がのびなかったが、5年度にさらに飛躍的に得票数を増やし、4桁の大台に乗せた。そして、それ以降、最終年度まで4桁の得票を続けた。このキャラクターも、相手の組み合わせが悪いと、得票が大幅に落ちるという現象が5年度以降見られた。しかし、このキャラクターの場合、それが起こっても、800〜900票程度は確保できる。つまり、女王といえる最低限度のラインには、十分達している。
*3 それではなぜ3年度の収穫祭の時の気品と色気の値がわかるのかというと、気品と色気だけは、毎年収穫祭直前の値を記録に(つまり、紙の上に)残しているからである。また、身長・体重の値は毎月紙の上に記録されている。それは、もともと、最終年度のミスコンテストで優勝するためにはどの程度のペースでそれらの値を上げていかなくてはならないのか見当をつけるためのもので、その記録を始めたのは、初代アナスタシア・バージョン1のときである。武者修行で鍛えたキャラクターの場合は、能力値が桁違いに高いのだから、もはやあまり必要はないのだが、習慣上、そのようなキャラクターのときも行われた。

このキャラクターは、称号にはこだわらないことにしていたが、二級学士の称号だけは比較的早い時期(3年度1月)にとった*4。だから、このキャラクターは、攻撃魔法を使うこともできる(二級学士の称号をとったのは、言うまでもなく、それが目的である。)。本当の意味で武器と魔法の両方で攻撃ができるキャラクターは、このキャラクターが初めてである。攻撃の手段が2通りあることは、いろいろな意味で非常に有効である。ドラゴンやおいはぎなどが相手のときには、魔法攻撃を適度に利用することによって、相手に逃げられたり自分が逃げ出したりする前に相手を倒す確率が上がる*5。また、悪いパターンにはまったときに、武器攻撃と魔法攻撃の組み合わせをいろいろ変えてみることで、脱出をはかることができる。
*4 二級学士の称号をとった他のキャラクターは、プリンセス・エカチェリーナおよびクイーン・マルティナを除いて、全て、2年度のうちにその称号をとったのに比べると、これでも極端に遅い。
*5 きちんと数えたわけではないので、どの程度正確かはわからないが、スペルマスター・アナスタシアの場合、強くなってからも、ドラゴンを倒せるのは4回に1回くらいだったと思う。というのは、決着がつく前に、たいてい、相手か自分かが逃げだしてしまうからだ。それに比べて、クイーン・アナスタシアの場合は、半分近くまでその割合が高くなっていたと思う。もちろん、それは、経験に基づく勘による部分も大きい。

前にも述べた通り、このキャラクターは、5年度までにできる限り身長を伸ばすことによってプロポーションを減らす方法をとった。5年度が終了した時点で、このキャラクターのプロポーションはおよそ89パーセントだった。6年度以降、毎月の体重増加が一様乱数に従う(つまり、0.1キロ〜1キロの増加が等確率で出る、ということ)と仮定すると、最終的にはプロポーションがほぼ100パーセントになるはずだった。しかし、その仮定は誤りだったようである。武者修行と礼法の稽古を組み合わせる日程は、体をしぼる効果が大きいようである(少なくとも、このキャラクターの場合は、効果てきめんだった。何度やり直しても、ミスコンテストの月を除いて、0.7キロ以上の体重増加は全くと言っていいほど起こらなかった。ミスコンテストの月だけは、体重がやたらと増えて、何もしないことがいかに娘が太らせてしまうかと感じさせられたものだが。)。6・7年度は、1カ月におよそ0.4キロ体重が増えるというペース(しかも安定的に)だった。ただ、7年度収穫祭の前後は、そのペースは上がり気味だった(そのため、このキャラクターを育てている途中では、完成時の体重をかなり大きく予想していた。)。

しかし、最終年度に入ると、もともと予想より少ない体重増加にさらに急ブレーキがかかった。0.1キロしか増えない月も珍しくなくなった(最終年度の12カ月のうち、6カ月は0.1キロしか体重が増えていない。)。体重増加が少ないと、武者修行や礼法の稽古の成績がやや悪くても次の月に進んでしまう傾向があったことは否定できないものの、武者修行や礼法の成績がよく、身長も伸びているときに、体重が増えすぎたからといってやり直ししたことは一度もない。やり直しは、すべて、成績が悪いか、身長が伸びなかったかのどちらかが理由である。どうやら、最終年度に入ると、一般的に体重の伸びは鈍るようだ(この傾向は、アマゾネス・オクサーナと後述のアナスタシア・ザ・グレートを除くほとんどのキャラクターでみられた。)。最終年度の体重の増加はわずか2.4キロ。年度ごとの体重の増加としては、長らく最低記録だった*6。体重の増加にほとんど歯止めをかけていないとは信じられない数値である。この結果として、このキャラクターの最終的なプロポーションは、93.0パーセントと、予想を大幅に下回る値となった。しかし、プロポーションが100パーセントを大幅に下回ったことについて、私は不満は感じていない。このキャラクターの体格は、女子スポーツ選手(バスケ、バレー、テニス etc.)をモデルにしている。この身長で、プロポーションが100.0パーセントとなると、体重は73.9kgにもなる。これは、私の構想からいえば、明らかに太り過ぎである。むしろ、この程度か、もう少し体重が少ないくらいでちょうどよい。
*6 現在では、この記録は、もちろんクイーン・マルティナが持っている。また、年度の切れ目でない月から起算した1年間の体重増加ということなら、このキャラクター以前にももっと少ない記録があった。

このキャラクターは、7年度の7月から、いつ終わるとも知れないスランプに突入した。わずか1時間にもならないプレイで5月・6月を突破し*7、気持ちも軽く7月に入った。武者修行や礼法の稽古の成績はそこそこよいのだが、身長がのびないということが何度か繰り返された。そして、その間に、完全にリズムが狂った。何度繰り返してもよい成績が出ず、たまに成績がよいときには身長がのびず、頭にきたあげくの果てにプレイを打ち切るという日が続いた。まさに泥沼である。その結果が、1ヶ月進むのに丸1週間という想像を絶するような記録である。この間にプレイした時間の合計は定かではないが、15時間を下らないことは確実だろう(ただし、この記録は、ノートパソコンを買った直後だったので、そちらのほうに時間をとられていたという事情はある。)。その次の月はすぐに通過したが、それから1カ月進むのにはまた3日かかった。
*7 今から振り返ってみれば、1ヶ月を1時間以下のプレイで突破したのは、このときが最後だった。

7年度の収穫祭以降は、礼法の稽古については、スランプの症状は軽くなった(しかし、最後まで本調子に戻ることはなかった。)。気が狂いそうになるほど腹の立つことは少なくなった。しかし、いつの間にか、1ヶ月進むのに3、4日というペースは定着していた。冬休み直前の時点で、運命の日までは、まだ15カ月も残していた。このキャラクターが完成するのは、いったいいつのことになるのだろうか、と思うと、気が遠くなった。期末試験への突入さえ覚悟していた*8。しかし、冬休み中のがんばり(ほぼ毎日1ヶ月、時には朝から晩までプレイして2ヶ月進んだ。)と、最終日の徹夜プレイ(これで3ヶ月か4ヶ月を一気に終わらせた。)によって、奇跡的にも、センター試験前後の3連休の中日(1月14日)の午前5時50分頃に終わらせることができた*9
*8 何年前からか、ゲームを始めると試験の時期に突入するのがいつものことになっている。試験が近づくと新しいゲームを始めるというほうが妥当かもしれない。95年度夏学期の必修科目の試験のときは、「ファーランドストーリー神々の遺産(シリーズ第6作である。しかし、私がプレイした順番では、シリーズの中で最初である。)」をクリアしたのが試験のおよそ1週間前で、そのゲームの分析をしていたら試験に突入したような気がする。しかも、試験の最中に新しいゲームを始めている(ファーランドストーリー大地の絆(シリーズ第5作))。冬学期も、期末試験のまっただ中だというのに、やりかけのゲームを再開し、さらに、新しいゲームを始めた(やりかけになっていたのは、ファーランドストーリー天使の涙(シリーズ第3作)である。これがやりかけになっていたのは、プリンセスメーカーにはまったからだ。そもそも、プリンセスメーカーは、ファーランドストーリーの合間に、少し気分を変えてやってみよう、というくらいのつもりだったのだ。その後に始めたのは、ファーランドストーリー白銀の翼(シリーズ第4作)である。)。なんか悪いパターンだ。これでは試験が壊滅するのも当たり前だ。
*9 そして、その直後から、この文章の大改訂も始まったのである。したがって、このあたりの文のほとんどは、96年1月14日の午前中から昼間にかけて書き加えられたものである。もちろん、それからLaTeX版の完成(97年2月)にいたるまでの間に、さまざまな修正や追加が行われている。

プリンセス・アナスタシアを育てるのも、当時の私にとっては様々な困難があった。そして、スペルマスター・アナスタシアを育てるのには、それとは比較にならないほどの困難を乗り越えなくてはならなかった。しかし、プリンセス・アナスタシアを育てるのに要したのはわずか3日程度*10、スペルマスター・アナスタシアもおよそ2週間で完成した。それに対し、このキャラクターを完成させるのに要した期間は2カ月以上である*11。このキャラクターを育てるのには、スペルマスター・アナスタシアのときと比べてもけた違いの苦労をしている。このキャラクターを育てるのにかかった時間は、それ以前のプレイ時間をすべて合計したよりもはるかに長い。
*10 ただし、休日も含む。また、自分の部屋に帰っている時間は、大半をプリンセスメーカーに費やしていたような気がする。
*11 そのうち半分以上にあたる40日あまりは、7年度7月以降の2年弱に費やしている。

しかしながら、この節の前半を読んでいただければおわかりだと思うが、このキャラクターは、5年度末くらいまでは、ずっと、スペルマスター・アナスタシアと比較しながら育てていた。スペルマスター・アナスタシアを上回ればよいという考え方をしていた。つまり、このキャラクターの素質が、スペルマスター・アナスタシアを大幅に上回ることに気が付いていなかったのである。ひょっとしたらいままで思っていたよりもずっと高いところに到達できるのではないかと考えるようになったのは、ようやく6年度の前半のことである。そのころ、武者修行で、それまででは考えられなかったようなよい成績を出したのである*12。気品6000、知力4000という目標が決まったのは、そのときだった。しかし、そのためには、そのころ2、3カ月の「奇跡的な成績(当時はそう思われた)」を少し下回るだけの成績を、あと2年半にわたって続けていかなくてはならなかった。そのようなことは不可能であると、当時は思われた。結果的には、この目標はこえたわけだが、そのためには途方もない時間を要した。現段階からみれば、5年度以前のやり直しが不十分だったために、時間ばかりかかった割に、素質を十分に生かしきれないまま終わったという気がする。
*12 とはいっても、ドラゴンを倒した数にして1カ月に3〜4頭に過ぎない。この後述べるアナスタシア・ザ・グレートなら、問答無用でやり直しになる程度の成績である。

少し余談。このキャラクターを育てるのが午前5時50分頃に終わったので、私は、お気に入りの*13 NHKの休日の早朝の天気予報を聞きながら、このキャラクターが女王になるのを見るつもりだった。しかし、「父も倒せなかった魔王を、その娘が倒したのだ」の後に出てきたものは、「VMM386 ERROR」。なんじゃ、こりゃ・・・。何度も繰り返してみたが、同じところでエラーが出る。しかたなく、CONFIG.SYSからVMM386.EXEを追放して、もう一度やってみた。しかし、またしても同じところでハングって*14しまった(しかもエラーメッセージもなしに)。結局、ジャネットにデータをコピーし*15、CanBeのCONFIG.SYSからVMM386.EXEを削って、やっとこのキャラクターのエンディングを見ることができた。
*13 BGMが気に入っているのである。したがって、「見ながら」ではなく、「聞きながら」になる。
*14 プログラムの実行が止まり、キーボードやマウスなどからの入力をいっさい受け付けない状態になること。こうなるとリセットするより他に手はない。
*15 このキャラクターを完成させたときは、オクサーナでプレイしていた。



このキャラクターは、本当にぶっ殺したくなるほど意気地なしで怠慢だが*16、戦闘能力でも過去のキャラクターをはるかに上回っていることは間違いない。まず、スペルマスター・アナスタシアと比べると、ふつうの敵を相手にしているのならさほど違いは感じないが、トラやドラゴンが相手となると実力の差は歴然である。スペルマスター・アナスタシアは、6年度や7年度でも、一つ間違うとすぐに危なくなる。痛恨の一撃でも食らおうものなら、即負けか、命からがら逃げ出すかである。それに対し、クイーン・アナスタシアは、よほど何度も攻撃をかわされたり逃げ出すのに失敗したりしない限り、危なくはならない。痛恨の一撃を食らっても、戦闘の序盤ならまだ余裕がある。それに、魔法使いに比べて、剣士は、プレイヤーの指にかかる負担も少なくてすむ(キーボードを使う場合)。実際に戦闘が始まってからは、剣士の場合、リターンキーを連打していればすむ(ノートパソコンの場合、ポインティングデバイスの左クリックを連発する。)。それに対し、魔法使いの場合は、カーソルを一つ下げて「魔法」にあわせ、それからカーソルを一つ上げて「攻撃魔法」にあわせてから、リターンキーを押すことになる。1回の動作としてはささいなことであるが、これを途方もない回数、しかも高速で繰り返すのだから、その負担の差はばかにはならない。やはり、武者修行をするなら、最初の1年じっくり準備して、体力と腕力をつけ、装備を整えた上で、剣士にするべきだ。魔法使いでの武者修行はつらすぎる。
*16 しばらく続けてプレイしていると、あまりにも腹が立って、たいていぶち切れた。

アマゾネス・オクサーナと比べた場合はどうか。一発の威力という点では、アマゾネス・オクサーナに劣る。しかし、アマゾネス・オクサーナは、トラに痛恨の一撃でも食らおうものなら、すぐに負けの危険に直面である。また、レベルが低いため、戦闘技術や素早さが低い。そのために、敵に攻撃をかわされやすいし、逆に、敵の攻撃はなかなかかわせない。つまり、敵を倒すのは早いが、もろさがあるということである。それに対して、クイーン・アナスタシアは、敵を倒すのに時間はかかるものの、安定感ということでは抜群である。戦闘技術・素早さが高く、しかも体力もあるので、負けることなど滅多にないし、危ない場面も非常に少ない。

クイーン・アナスタシアの戦闘面での重大な弱点と言えば、前にも述べた通り、相手の生命力が40点以上残っていると、会心の一撃が出た場合を除いて、一撃で倒すことができないことである。また、ゲーム中の時間が進行するにつれて、武者修行で出てくるモンスターの生命力が上がってくるので、トラとドラゴンに対しては、腕力の不足もしだいに感じられるようになった。したがって、最終年度には、最初の一撃は魔法に頼る割合が増えた。



この段落は、プリンセスメーカーとは全く関係のない余談になる。読み飛ばしてくれてもかまわない。この文を書いているのは、1996年1月14日の午前10時である。そういえば、今からちょうど1年前、私はセンター試験を受けていたのだ。時間の過ぎるのは早いものである。しかし、それと同時に、それははるか昔のことになってしまったとも感じる。そのときの気持ち、頭の中にあったことは、もはやあまり記憶にない。しかし、私の高校時代の友人の何人かは、センター試験という最初の関門に再び挑戦しているところのはずである。それと同じ時、私はすっかりぶち壊れてしまい、このようなぶち壊れた文章を書いている。その対比を不思議に思っただけである。大学に入学してここまで壊れるとは、1年前にはとうてい想像のつかなかったことだ。



総花的で一貫しない話を続けてきたが、そろそろまとめに入ろう。私は、このゲームを始める前、次のような理想像を描いていた。超美人(気品と色気がとびぬけて高い)。頭がよく、魔法の能力も非常に高い。背が高くて細身である。腕力はそんなに高くはないものの、抜群に素早い身のこなしで、きわめて高い武器戦闘能力もある。しかし、当初は、このようなキャラクターを作ることはできないだろうと考えていた。少なくとも、「美人で頭がよい」という特徴と、「戦闘能力が高い」という特徴は同時には持ちえないと思っていた。そこで、前者を持っているキャラクターがプリンセス・アナスタシア、後者を持っているのが二代目オクサーナというつもりだった。しかし、今となってみればどうか。クイーン・アナスタシアは、先ほどあげた特徴はすべて兼ね備えているではないか!まさにその理想像そのものといってよい。

このキャラクターを育てることによって、最強のキャラクターへの方法論はほぼ確立された。また、私の描いていた理想も、すべて体現された。そして、私は、長い間、このキャラクターが最強の女王だと思っていた。このキャラクターを上回るキャラクターを作ることは、理論的には可能だとしても、私にはもはやできないと思っていた。

彼女を育てている途中は、「怠慢で意気地なし」だとか、「真面目にやる気がないのならぶっ殺すぞ」とか、罵詈雑言の類しか言わなかったような気がする。しかし、送り出すときには、次のような言葉を贈りたい。



「7年間もの厳しい修行と稽古に、よくぞ耐えた。おまえは必ず立派な女王様になれる。そして、おまえは、私の描いていた理想の全てを実現してくれた。そのことに心から感謝しているし、本当に誇りに思っている。」

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