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 クラブアリストのフレンドディーラーであるネッツトヨタ東京(ハブポート若林)が専用に開発したクラブバージョン ブレーキパッド SPORTSは、アリスト純正ブレーキキャリパー用とTRDハイパフォーマンスブレーキキット装着車用がリリースされました。開発テスト車両の一台としてその開発状況を見守ってきたNo.1のワタルが開発サイドストーリーをご紹介いたします。


VOL.339 ネッツトヨタ東京「Club version ブレーキパッド SPORTS」開発サイドストーリー
<作成:'03年2月17日>
 フレンドディーラーとして関東エリアだけでなく関西、東北方面からも多くのアリストオーナーが来店するネッツトヨタ東京(ハブポート若林)から2002年11月末に「Club version ブレーキパッド SPORTS」アリスト純正キャリパー用が、2003年2月1日にはアリスト TRDハイパフォーマンスブレーキキット装着車用(スープラ純正17インチブレーキ装着車用)がリリースされました。これまで同社を訪れる多くのオーナーの皆さんがノーマルブレーキの制動力が車両重量や車の運動性能からして100%満足しているわけではないという状況が伝わっていたそうです。
 そうした状況の中、多くのオーナーの皆さんが市販のスポーツタイプのブレーキパッドに交換したり、JZA80スープラ用のブレーキキャリパーをボルトオン装着しそれに対応するスポーツパッドを装着することにより制動性能への安心感や満足度を向上させているものの、ブレーキダストの大幅な増加や鳴きの発生には悩まされることが多いこと、さらにこれらを高次元で満たすアフターパーツが無かったりあっても非常に高価であることから、コストパフォーマンスに優れながらも要求される性能を満たす商品の誕生が望まれていることも同時に伝わっていたそうです。
 それならオーナーの皆さんの声に応えるために、求められている性能やクオリティを持ったブレーキパッドをオリジナルで作ってしまおうというところからネッツトヨタ東京さんの「Club version ブレーキパッド SPORTS」開発がスタートしました。
 ここでは約8カ月間にわたる開発の模様の一部の紹介について「Club version リアスポイラー」開発時と同様に許可を頂きましたのでレポートさせて頂きます。私自身スープラ純正17インチブレーキキャリパーを装着していることもあり、アリスト純正キャリパー用についてはあまり細かな写真等のデータが手元に無く、またすでに以下の通り装着されたメンバーさんのレポートがいくつか紹介されおりますので、主にアリストTRDハイパフォーマンスブレーキキット装着車用(スープラ純正17インチブレーキ装着車用) についてレポートいたします。なお、こうした商品の開発の実際のところはなかなか情報の開示がなされないのが今までの開発だったと思いますが、あくまで私の方で関わった範囲内でのレポートでありこれが開発の全てではないことをご了承ください。

<アリスト純正キャリパー用ブレーキパッドのレポート>

ネッツトヨタ東京さんの「クラブバージョン」のウェブサイトにも商品の情報が掲載されておりますが、昨年の5月にリリースされたリアスポイラーも含めた「クラブバージョン」ブランドの商品コンセプトは以下のように謳われておりますので、まず最初にこのコンセプトに沿ったブレーキパッドにしようという基本的な開発の方向性が据えられ、細かな部分まで要求する性能等が商品の開発コンセプトとして決定され、こちらも紹介されておりますね。
ネッツさんの社内の開発車両アリスト2〜3台(もっと?)と私の他数台のオーナーのアリストによって以下のコンセプトを重視して開発が進められました。

   <「クラブバージョン」のコンセプト> (ネッツトヨタ東京さんの「クラブバージョン」のウェブサイトより)

  • ハイクオリティな商品をユーザーフレンドリーな価格でご提供すること
  • ユーザーの皆様との良好な双方向関係から生まれたネッツクオリティを追及した商品

   <開発コンセプト> (ネッツトヨタ東京さんの「クラブバージョン」のウェブサイトより)

  • ブレーキのレスポンスを高めるとともに、コントロール性・制動力を向上
  • ブレーキダストのホイールへの付着が、純正品と同等以下
  • ブレーキの鳴きの発生が、純正品と同等以下
  • 環境へも配慮し、ノンアスベスト材を採用
  • 迷い無くチョイスできる純正品プラスアルファの低価格

アリスト純正キャリパー用、アリストTRDハイパフォーマンスブレーキキット装着車用(スープラ純正17インチブレーキ装着車用) で摩材(というそうです)の配合等を同じにする、あるいは数パーセント程度の調整で開発を完了するという通常の商品開発とは違い、同じ車種・車重でありながらそれぞれ専用に最適化が図られているのが大きな特徴だとのことで、ブレーキの効き、レスポンス、コントロール性の向上はもちろん、さらにオーナーとして気になるブレーキダストや鳴きの抑制もハイレベルで実現されているのが、実際に出来上がったパッドを装着して確かに感じられるところです。

< 純正品や他の製品との比較 >

アリスト純正キャリパー用の開発時には大きく分けましてタイプ0〜2までのテスト品が最終的に作られ、ノーマルパッドや他の市販パッドとの比較テストが繰り返され市販バージョンが完成しました。左のデータシートが市販されたアリスト純正キャリパー用のもので温度特性で冷間時から全域において高い制動力を発生しているのが見てとれると思います。また特性のレーダーチャートを見ても耐摩耗性でわずかに純正に劣る程度であとは全ての特性に優れ、特に制動性能とレスポンスが高まったいるのが見てとれます。

アリスト TRDハイパフォーマンスブレーキキット装着車用(スープラ純正17インチブレーキ装着車用)の開発にあたってはまずこのアリスト純正キャリパー用と同配合品についてのテストから開発がスタートされました。スープラ純正品や他の市販品との比較テストが繰り返されました。

その後、強化キャリパーの制動力に合わせて摩材そのものの変更を行った試作品が大きく分けて2種類作られました。それがタイプA、タイプBです。タイプAはオーナーからの高いニーズがあるダストを抑制するタイプの摩材をベースとして制動力を最大限に発生するような配合としたもの、タイプBは制動力を最大限に発生するような摩材でダストをある程度抑えたものでした。

アリスト純正キャリパー用の特性資料

詳細は以下の評価表をご覧頂きたいと思いますが、結果的にタイプAとタイプBのダスト発生量がほぼ同等であり、制動力はタイプBが優れた結果でした。しかしダスト量がコンセプトで狙った量よりもまだ多かったこと、そして冷間時に時折鳴きの発生が確認されたことから、このままではオーナーの皆さんの評価が得られないだろうということで、タイプB系の摩材をベースにしてタイプCが作られまたテストが繰り返されました。しかし詳しくはわからないのですが、なんでもタイプB系の摩材としてはタイプBで既に出来る限りのものを作っていたとかで、このタイプBに近くこれらの性能を引き上げたタイプCを作るのは非常に難しい要求だったそうで、納得できるものが出来なければ市販は見合わせようという拘りようでした。

タイプCとしての市販化バージョンが出来上がる最後の段階まで拘って開発された点は、カックン感を出さずに素直なタッチでありながら冷間時までを含めて踏込み初期からのレスポンスをいかに高めるかということでした。これは軽いタッチ、一気に最大制動まで持っていく場合(フルブレーキング・パニック等)も含めてのレスポンスです。他の性能を落とさずにこの点だけを満足いくものにするためだけに作られたテスト品までありました。これは開発スタッフのほとんどが満足している中で「さらに」ということで拘られた部分でした。それだけに開発期間自体もかなりの長期に及びましたが、ネッツさんのリリースにもありましたようにレース用でもない限り普通ではあまり考えられないことだそうですが、車種別のといいますかキャリパー別の摩材の専用配合等の変更までを行い要求する性能が確認され開発が完了しました。

テストされた摩材の配合等はアリスト純正キャリパー用から数えると6〜7種類にもなり、さらにスープラの純正品など比較されたスポーツパッドも合わせるとテストされたパッドは10種類を優に越えていました。クラブバージョンの試作品自体のテストだけでも総走行距離は2〜3000kmにはなっていたものと思われます。


評 価 タイプA タイプB タイプC
(市販バージョン)
スープラ純正品D コンセプトに最も近かった優れた他社製品E
制 動 性 能 冷間時の踏込み初期からのレスポンスにわずか甘さが残る。奥まで踏込めば必要な制動力を得られる。絶対的な制動力も十分のレベル。 冷間時も含め踏込み初期からのレスポンスが良くまた制動力も高い。奥まで食い付きが良いため扱い易く制動力も高い。 冷間時も含め踏込み初期からのレスポンスが良くまた制動力も高い。奥まで食い付きが良いため扱い易く制動力も高い。 踏込み初期に甘さがある。奥まで踏込めば必要な制動力を得られるが絶対的な制動力は高くない。 初期制動レスポンス
D<A<E<B<C
奥まで踏込み時
D<A<E≒B≒C
と市販品として評価の高いEよりも優れる。
ブレーキダスト ダストを抑制するタイプの摩材がベースだが制動力を最大限に発生するような配合としたためダスト量が想定したよりも多い。ダストの色合いはグレーっぽい。水で洗い流しやすい。 タイプAよりも制動力の高い摩材がベースだがダスト量はタイプAと同等のレベルであった。ただしダスト量はコンセプトで狙った量よりもまだ多い。ダストの色合いは若干黒っぽい。水で洗い流しやすい。 制動力をタイプBと同等レベルに維持しながらダストの発生量をコンセプトで狙ったレベルで実現した。ダストの色合いは黒というよりはグレーっぽい。水で洗い流しやすい。 タイプA〜CおよびEよりも多くのダストの量がはるかに多い。ダストの色合いは黒っぽく洗い流しにくい。 ダスト発生量
C<A≒E≦B<Dと若干タイプBが多い傾向にある。3品ともに純正品よりも水で洗い流しやすい。
鳴     き 冷間時を含め鳴きの発生は確認されなかった。 冷間時に鳴きが発生することがまれにあった。 冷間時を含め鳴きの発生は確認されなかった。 冷間時に鳴きが発生することがあった。 冷間時を含め鳴きの発生は確認されなかった。

< 比較テストに供したブレーキパッドの一部 >
(上左)タイプA    (上右)タイプB 
(下左)スープラ純正  (下右)比較品の一つ
(上左)タイプA    (上右)タイプB
(下左)スープラ純正  (下右)比較品の一つ
< ダスト発生状況の比較 >
タイプB テスト途中約400km走行時点でのダスト状況。写真になるとホイール全景ではわかりにくいですね。この時点で既にわかる製品もありましたが、そのレベルになると実物でのダストは凄い状態になっています。 タイプB テスト途中約400km走行時点でのアップ。タイプA400kmの時点でもほぼ同等の発生状況でした。
スープラ純正品での同等のダスト発生状況はわずか走行1/4の約100kmの時点で訪れました。 スープラ純正品のダストはかなり黒いですね。パッド材質のアップの写真でも摩材自体の黒さが目立っていますね。
市販バージョンとなったタイプCでの同等のダスト発生状況は約600km走行時点でした。ダスト発生量はおおまかにいってタイプBよりも2/3に減少し、スープラ純正品からは1/6になった計算になります。 市販バージョンとなったタイプCのダストはスープラ純正と比較するとかなりグレーっぽい色合いですね。
※デジカメの違いで画質に違いがあることをご了承下さい。スミマセン。。。
アリストTRDハイパフォーマンスブレーキキット装着車用(スープラ純正17インチブレーキ装着車用) 開発時の主要な摩材 タイプA〜Cの性状表とデータチャート

タイプCが商品化されたものです

<TRDハイパフォーマンスブレーキキット装着車用>
(スープラ純正17インチブレーキ装着車用)
<アリスト純正キャリパー用>

最後に開発責任者であるIマネージャーの妥協を許さない献身的な努力の結果としてこのような価格も含めた素晴らしいパフォーマンスを発揮する商品が生み出されたのを垣間見て本当に頭が下がりました。そして同時にクラブアリストが少しでも開発に参加することができたことをたいへん嬉しく思います。


クラブアリストisland
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