News >「仕事日記」2008年2月


2月1日(金)
いやよく働いた。先月いっぱいはエレクトーンの書き下ろしに集中すべく色んなことを後回しにしたら、なかなかいいのができた。大好きな読書と数独を禁じたのが功を奏したが、そんな詰めた仕事のしっぷりはあまりしたくないものだ。天才になると早死にするしね。
KBM(キーボードマガジン)追悼記事3000字プラスディスコグラフィ解説2000字、書き下ろし曲コメント400字、西脇コンサート案内用原稿1200字を今日午後からのDUSTツアー中に仕上げるべく資料を聞いたり準備をしていたら興が乗ったので出来るところまで、と始めてみたらなんと午前中に全部終わったではないか。7時から11時。やはり手書きは早い。ツアー中はパソコン清書に明けくれよう。
DUST 三軒茶屋・チャド
終演後何気なくJust The Way You Areを弾いたら場内大合唱。そういう世代の集まりだったのねぇ〜、とばかりに次から次へ20曲ほども歌っただろうか。しまいには伝兵衛出て来て“落陽”の大合唱のところへ上の階から苦情がきてお開き。
2月2日(土) DUST 浜松・伝兵衛堂
ママになった愛ちゃん。パパになったエイちゃんは相変わらず口が重い。もくもくと薪をくべるのがこれほど似合う男も珍しい。別府青海の久保さんも堂に入ってるが、あちらをヨーロッパ風だとすると、こちらはロシア風というか、よりプリミティブな行為に見える。
2月3日(日) DUST 福岡、、、の隣の、、、
サウンドインで会った山本さんの自宅ライブ、を伝兵衛は何度かやっているのだが今回はそのお隣の森さん宅のピアノを使わせていただいてのサロンライブ。尼崎・伊丹・川西など兵庫最東南部の寄り合いの如し。在九関西人というべきか。しかも両家のご主人と僕の3人がまるで同い年。芸能から社会まで話題がピンポイントで合致していく。エリアとエイジの共通とはかくも楽しいものとは初めて知った。
打ち上げで物理学者と知り合う。数学の勉強法を聞こうとしたら「世の中は物理なのである」と見事な美学。ひも理論までいくと、、、と水を向けると「数学を使わなくてはその先へ行けないから模索しているだけで、物理はあくまで現象の裏付けがあるから素晴らしいのだ」。甲斐さんにいただいたビデオの中の学者と同じことをおっしゃるのが面白い。好きな音楽の話をしているような興趣深さとインテリジェンスが楽しめる。じゃぁ、数学じゃなくて物理の勉強ならばどこから?「微積分がすべての基本ですね。」なぁんだ。入口を見てみようとする者の立っている地点は、物理・数学の分かれ目の随分手前であることは、考えてみれば当たり前のことである。
2月4日(月) DUST 大野町、、、の隣の、、、
甲斐さんと青海へ。今日は栄太郎という海鮮のほうのレストランでお昼を頂いてからの露天風呂。のんびりコーヒーを飲んでから山道ドライブ。

本田さんというドラマー参加。オーソドックスで耳の良い素晴らしいプレイヤー。年齢も僕と近く、東京で働いていた頃の仲間が随分かぶる。渡辺雅介・遠山晃司といった懐かしい先輩たちの話に花。この本田さんのような堅実で地道なドラマーというのがこの15年ほど東京で仕事がしにくくなっているのだ。これからはますます地方の時代。生演奏の需要。いいお仲間も多い様子そのままに、音楽を提供し続けてくれることだろう。
2月5日(火) DUST 新城
急遽お願いしたのを受けて川久保さんは新年会を開き、そのパーティバンドとしてDUSTを呼ぶ、というテを考えたのだった。なんとしても伝兵衛の要望に応えようとしてくれる、その熱意に感謝。結果はどうあれ。
2月6日(水) 国音ジャズ 新宿ピットイン
去年のこの時期が第一回、とは言わず第0回。今年が国音ジャズコース初の卒業生が出るので“国音ジャズ第一回”。昼の部は生徒の組み合わせ。10バンド。夜の部は卒業生の組み合わせによる5グループ。これが豪華でユニーク、それでいてある種の統一感があるから不思議。

その1:佐山雅弘ピアノソロ
国音卒業生の作品をメドレーで
ぐがん(山下洋輔<テーマのみ=2小節)
T , T , C & T(本田竹広)
EMI(古沢良治朗)
グッド・バイ(板橋文夫)
Sayamambo(佐山雅弘)

その2:本田・池田クインテット
本田雅人(As)
池田篤(As)
椎名豊(PF)
金子健(B)
高橋徹(Dr)本田、池田、椎名、金子、ほかには五十嵐一生などがある一時期国音にいたというのだから、やはり才能は“ダマ”になって生まれ育つのかもしれない。高橋は新潟大学出身ながら、今度の春から国立の非常勤講師。

その3:梅津和時・原田依幸DUO
これが素晴らしかった。若い時に聞いたのとまったく同じ熱っぽい感動を味わう上に、積み重なった理解力も手伝うのだから天にも昇る心持。(僕が)失ったものもある。へそから下にかけて重いものが走るような体験を何度もしたものだが、それが今はない。あくまで脳髄の奥が痺れる。その度合いは若い時とは比べ物にならないから、合わせてチャラだろうけれど、得体のしれないあの何かはやはり“リビドー”に(直接的ではないが間接的でもなくいわば螺旋状に)繋がる何かだったのだと確認した。

その4:松風鉱一・金子健・山下洋輔
松風さんの曲を3曲。この人も不思議な人で、あの時期の国音(梅津・原田、津田俊二などと同期=1970年前後)らしくフリーの様相はあるのだが、実はかなりの緻密なロジックがバックボーンにあるのだ。わかるのに僕は2年ほどかかった。彼のグループに属していたにも拘らず、である。そう、僕のライブデビューは梅津・原田の渡米に伴い、松風が留守の間名乗っていたバンド“生活向上委員会”略称“生向委”だったのだった。

その5:
山下洋輔(PF)
梅津和時(As)
川口(Vln)
北(Accordion)
金子健
古沢良治朗
梅津さんの連れて来たバイオリンとアコが素晴らしかった。すでに業界で売れっ子の二人はやはり国音出身で、フリージャズは初めてだということだったが、実に素晴らしい演奏だった。フリージャズでも音程やリズムがピシリピシリと決まっていくのは如実に現われて、小気味良い緊張感の漲りに果たす役割はとても大きいということを発見した。それは原田さんのピアノからも学んだ。全ての音は恣意的に出されるべきなのである。フリージャズの自宅練習というのは有り得るナ、と思った。
2月7日(木) 南佳孝 目黒・ブルースアレイ
バカボンと鶴谷のほかにペッカー(Perc)、佐野(Tbほか)参加。しっとりもするし熱くもなる。いや温かくなる。休憩時間に「ペッカーさんのコンガはあたたかいですね」と言うと「いやぁ、冬はコンガに限るね」
2月8日(金) マスタリング ビクター202川崎ルーム。
レコーディングエンジニアの松岡氏も加えての念入りな最終音チェック。録音時より冷静になっているので、悪くない出来だと思えたのが良。久々のオリジナル曲集なので、発売に関していつもと違う緊張がある。
2月10日(日) お忍びライブ
 
2月11日(月) 吉祥寺ストリングス
浜崎航(Ts)
井上陽介(B)
大坂昌彦(Dr)
ほぼ全曲僕のオリジナル。ほぼ全曲全員(大坂以外)初見。というわがままなセッションに皆さんよく応えてくれて、とても上質なライブ。自分の曲に自信がもてた。
2月12日(火) エレクトーン書き下ろし曲打ち合わせ
アヤキが僕の曲をおさらいしてきてくれてみたら、随分見事に弾くので驚いた。オーケストレイションはしたものの、やりくりの付かないところは適当に、とお願いしてあったのだが、どうしてどうして、完全にオケどおりに弾けるものなんであるな。左手が弦楽を弾きながら右手の中でピアノソロと木管の交錯が見事に成立している。なんでやろ?
2月19日(火) 落語鑑賞 紀尾井ホール
林家正蔵“冬の正蔵”。このシリーズは新レパートリィの噺しおろし、と聞いていたのだが、すっかりこなれた古典に思えた。仁助さんが来ていた。
2月20日(水) CM録音 乃木坂ソニー
片岡(Tb)はいるわ本田(As)が来るわ、ストリングスは20人ほどいるわで、近頃では珍しい大編成の同時録音。ボーカルがギラ(ジルカ)とはこれまた懐かしい。フライミー・トゥ・ザ・ムーン。アレンジが“1ポンドの福音”のナントカ君。売れている様子。

[管理人注釈]これは全日空の企業CM「夢見るヒコーキ。ANA/あこがれのJAZZ CLUB」篇かと思われます。全日空公式サイト内「ANA Fan」のCMページにて映像を見ることが出来ます。
2月21日(木) 新妻由佳子 南青山・マンダラ
一部が僕のピアノと歌のDUO。二部は大坪君(ピアノ)の率いるトリオ(ベースとギター)による伴奏。お披露目ライブとしては上々の客の入りと暖かい見守り系の拍手。
2月22日(金) アヤキ音合わせ 渋谷エレクトーンシティ
エレクトーン書き下ろし曲(タイトルは「輪郭」に決定)のホールお試しアンド打ち込み確認。ドラム・パーカッション部分を松山修にお願いしたら実に丁寧に(彼の持ち味ともいえる)作り込んでいてくれて嬉。演奏上でのアドバイスも懇切丁寧に誠意溢れるもので、これは通常の授業でもいい先生だろうと思われる。
2月23日(土) M’s 久留米
All The Things You Are
MC(佐山)スイングとアドリブ エリーゼのために
Swingin’ On A Star
MC(小井) ベーシストの楽しみと悲哀
Yesterdays
MC(大坂) ドラムの役割。バッキングとソロ
Spain
枯葉
Extended Play
Blue Keys
Chase The Shade
But Beautiful
Ladies In Mercedez
――――――――――――――――――――――――――
The Song Is Ended

当地はジャズファンのレベルが高いのでジャズ講座もどうかと思ったが、楽しく聞いてくれていた様子で吉。この日のうちに熊本へ移動するので、久留米ジャズファンクラブの人々と飲めなかったのが残念。山本京介とよく遊んでいた頃の友達、大石まゆみ嬢と25年ぶりほどの再会。武田和命さんのボーヤだった安本君とも25年ぶり。皆さん、もすこしマメに見に来てくださいね〜。
熊本では郷土料理。トマトが異常にうまい。桂花じゃないラーメンを、とリクエストしたら商店街脇の“天和”。こってりあっさり絶品。
2月24日(日) M’s 熊本
Creopatra’s Dream
Floatin’ Time
Swingin’ On A Star
Extended Play
My Favorite Things
イパネマの娘
All Blues
My Shining Hour
But Beautiful
I’m Old Fashioned
Blue Keys
Harvest
Spain

ホルン四重奏(一曲だけ五重奏)を聴く。昼間の商店街でのイベント。BGMを消してあげればいいのに、と思いつつも熱演に拍手。
2月25日(月) ジャケット入稿
素晴らしいジャケット。「季節で、、、屏風絵みたいなのも、、、」などいろいろ散文的に希望をお伝えしてはいたのだが、とりとめのないイメージをしっかり掬いあげてくれた上に想像を絶するアイデアと質の高さ。感激です。
2月26日(火) 名古屋音楽大学
夜、黒田君紹介のお店でライブ。島田剛声が出ず悲惨。プレイは最高。
2月27日(水) 名古屋音楽大学
エンペリアルアイルスでのカンタロープアイランドにおけるト二―ウイリアムスのドラミングの妙について黒田氏より解説を受け、感動する。
2月28日(木) 名古屋音楽大学
黒田君の友達、山下佳孝君が来てサンバスクールをしてくれた。国音でもそうだったが、とても有意義だし、生徒も嬉しそう。
ラテンパターンをみんなでやってみたのもよかった。
マラカトゥのパターン、サンバアンサンブルの始まりのフレーズ、終わらせるきっかけのフレーズなど習う。以下用語集。
バイーヤ マラカトゥ アフォシェ フォホー コヨ(スーク) フレーボ ショーロ バイヨン サンバ サンバカンソン ボサノバ パルチド・アルト

帰りがけに学務課より質問あり。来年度も就業可能なりや、と。当方その意思大いにありと答える。この度東京を出る時に確かめた名古屋音楽大学よりの郵便の返送締切が1月末であったを以て中身を見ずにシュレッダーしたそれが来期就業伺いの書類であった由。危ういところであった。社会人になったら郵便物はマメにチェックしましょう。
DUSTライブ ランプ
移転後のランプで初ライブ。山下君も終わるころには登場してセッション。カホンひとつで世界を作る。
2月29日(金) ソロ 函館・ビーズビー
Martha
Mind Talk
Tough
Concrete
Sayamambo
Tears Of Nature
Sand Castle
In The Velvet
You And The Night And The Music
Tea For Two
Creopatra’s Dream
My One And Only Love
It Don’t Mean A Thing If It Ain’t Got A Swing
Three Views Of A Secret
Love Goes Marching On
Matador
Sand Witch
Pooh Song
Dream A While
Misty
Rhapsody In Blue
第一変奏とアリア(ゴールドベルク変奏曲より)

名古屋から函館の電車移動が愉。9時間半の自由時間はとても充実。乗り換えが以外と短く、立ち食いそばを二口ですませてもたばこは吸う。車窓を眺める快感も、北へ向かうというのは何故さびしさが伴うか不思議。マリー・アントワネットの物語を読むがなかなか進まぬ。文体との相性が悪いのだと諦めて飛ばし読み。新書でフランス革命を読みなおそう。

ビーズビーはみんなで歓迎の様子が甚だ嬉しい。ゴトウケンの石田さんがひょうひょうと良い味。憲ちゃんは断固としてアンコールが終わるまで飲ませてくれない。それもそのはず、アンコールの最後にラプソディ・イン・ブルーを弾けというのだった。終演後のブルゴーニュワインと自家製生ハム。これさえあるなら明日もコンサートしたいくらい。

< Last Month▲page topNext Month >


2008年