Marine Blue Serenade
■2日目■
【 朝 / 昼 / 夕 / 夜 】
◆7月22日<朝>◆
『わがままお嬢』
さてさて、今日こそは弘からご教授賜ったナンパテクとやらを実践してみるぞ。
…っという訳で、俺は朝から一人で天乃白浜に来ている。
今は午前11時を回ったところ。
もうけっこう海水浴客は来ている。その中には、ぽつぽつと若い女の子の姿も見受けられた。
ま、上手くいくかどうかは別として、せっかく来たのだからやってみるだけの価値はあるだろう。少なくとも暇つぶしにはなるだろうし…。
それでは…っと。
俺はなげなしの勇気を総動員して何人かの女の子に声をかける。
だか、そう上手くいくものではない。体よく断られて、だんだんと自分が無謀なことをしているのではないかと、思い始めた。
そうだよな…。こういうことに慣れている弘のヤツならいざしらず、ロクに女の子とつきあったことない俺がやっても上手くいくはずがないさね。ひとりっていうのがなぁ。せめて場慣れしているヤツが一緒にいてくれれば、もっとやり易いんだが…おや?
俺は浜辺から少し離れた桟橋の上にひとり座っている麦藁帽の女の子に気がついた。退屈そうに足をぶらぶらしながら海を見ている。
向こうを向いているで顔がいまいち見えないのがチト気がかりだが、チャンスと思い、声をかけてみることにした。
「どうしたの? 一人?」
第一印象、第一印象。
できるだけ自然を装って、後ろから、彼女の顔をのぞき込むように声をかけてみる。
「え?」
彼女は顔をあげてこっちを見る。
「あ!」
「げえっ! 美鈴じゃんっ」
一瞬お互いに固まってしまう。
あちゃぁ、こともあろうか俺は美鈴に声をかけてしまっていた。麦藁帽なんてらしくないものかぶってるから解らなかったぜ。
「げえっ! ってなによ! げえって言うのは! …なに? あんた一人でナンパしてんの? バッカじゃない?」
「やかましい、なんでこんな所にいるんだよお前は。ったく紛らわしい」
「何処にいても私の勝手でしょう? あんたこそ何やってんのよ。あんたがナンパしてひっかかる女なんていると思っているの? もっと自分を知ったらどう?」
「俺に声かけられたとき、嬉しそうに顔を上げた女に言われたくないぜ」
「だぁ〜れが嬉しそうな顔していたって言うの! 馬鹿いわないでよ」
「あ〜あ、なんか勇気出して損した気分だぜ。じゃあな」
「あっ、ちょっと待ちなさいよっ!」
慌てて俺を引き留める美鈴。
「なんだよ。俺のナンパに引っかかってくれるのか?」
もちろん冗談である。
「ば、馬鹿言わないでよ! あのねぇ、そんな不健全なことしている暇があるんならちょっとつきあいなさい」
そういって俺のシャツの裾を引っ張って、ビーチを出ようとする美鈴。
「な、なんだよ、強引に」
「うるさいわね。どうせ暇なんでしょ! 黙ってついてくるの!」
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