「冗談じゃないぜ。なんでお前につきあわないといけないんだ」
「あたしがそう決めたから」
「…ったく、また始まったか。お嬢様のわがままが」
「どうせあんたも暇してるんじゃない。いい暇つぶしを提供してあげようっていう、あたしの心使いを踏みにじろうって言うわけ？」
「だから俺は忙しいって…」
「ナンパにでしょ？ そんなの無駄、無駄。あんた自分自身をもっと理解して行動しなさい」
「なに言ってンだい。俺が本気になればひっかかる女の子のひとりやふたり」
「無理ね」
きっぱりと断言する美鈴。俺はその言葉に顔をひきつらせる。
「無理かどうかやってみなきゃ解らないだろ？」
「女のあたしが言っているんだから間違いないわよ。とっとと観念してあたしにつきあいなさい」
「性格に問題ありのお前が言っても説得力ないな」
「なんですって！ いいから来なさい！」
「おいおい！ ひっぱるなよっ。行くなんて一言も」
「うるさい。あたしを怒らせたあんたが悪いんだからね」
そんなこんなで美鈴に強引にシャツを引っ張られて連れて行かれる俺。
連れて行かれた先は駐車場。そこには優紀さんがベンツの運転席に待機していた。
「深川！ 帰るわよ」
「はい。…あの、お嬢様？」
優紀さんは俺の方を見て眉をひそめる。
「コイツの事はいいんだって」
ぜんぜんよくないぞ。
そう言おうとした俺を美鈴はベンツの後部座席に押し込めた。そうして俺は美鈴に拉致されてしまったのだった。
|
