■美鈴編■
2日目【7月22日】


 
 

◆7月22日<夜>◆
『美鈴の悩み』



 夜。

 夕食を食べた後、暇を持て余していた俺は、散歩がてら天乃白浜海岸に涼みにやって来た。
 あれれ? 意外に人が少ないな。
 いつもは花火をやってる連中とかで賑わっているらしいのに。

 辺りは波の音と虫の音が静かに夜の海を演出していた。
 月の光と街灯の明かりでけっこう明るい。
 俺は海岸に沿って敷いてある遊歩道をゆっくり歩いた。

 おや? あそこにいるのは…。

「よっ! 美鈴」

 美鈴は砂浜の階段状になったコンクリートの上で頬杖をついて海を見つめていた。
 俺の声にチラッと、こちらを見たが、関心なさそうに海へ視線を戻す。

「…なによ、馬鹿男」
「なんだよ、元気ないな。隣、座っていいか?」
「駄目よ。どっかよそ行きなさい。あんたと話してる気分じゃないの」

 こちらを振り向きもせず答える美鈴。
 だが彼女の言葉にはいつもの覇気が感じられない。
 やっぱり昼間の事で落ち込んでいるんだな。