(かがやくみどり つちとみず 21せいきのみぬまたんぼ)






3.訂正 土地利用 主導権どこに

 「県土地政策課長から『公有地化要綱を見直したい』旨の答弁があり」「県は要綱見直しを約束しました」。見沼田圃(たんぼ)保全市民連絡会のホームページ(HP)を見た土地政策課の職員は驚いた。「見直すなんて言ってない」
 公有地化事業の実施要綱第2項は、公共事業の予定地は公有地化の対象から外すと定めている。昨年10月の見沼田圃土地利用審査会で、この規定の見直しを求める要望が出ていた。
 議事録によると、実際の県答弁は「今後の公有地化について(中略)検討させていただきたい」だった。県は「事実と異なり誤解を招く」と訂正を申し入れ、保全連ほ議事録通りにHPを直した。「『検討』とは見直す意思があることだと解釈した」と保全連は釈明する。
 訂正騒ぎの背景には要綱をめぐる県と浦和、大宮、川口の3市間の意見の食い違いがある。見直しを求める3市の言い分はこうだ。公共事業は構想から用地買収までに時間がかかる。その間に予定地の地権者に相続が発生すると地権者が困る。そこで公有地化の基金で予定地を買ったり借りたりしてほしい−。

基金めぐり不協和音

 基金は県と3市が積み立ててきた。3市には「基金は公共事業の先行投資」と見ていた側面もある。基金の使途や土地利用は県が主導してきたため、「市も金を出した。市の意見もいれて要綱を柔軟に解釈してほしい」との思いが3市には強い。
 加藤孝夫土地政策課長は「公有地化事業はあくまで見沼の厳しい開発規制の代償措置。その基金を公共事業には使えない」と突っぱねる。この一線を守らないと基金はいくらあっても足りないからだ。県庁内には「公共事業は市が自分の予算でやるべきだ。虫が良すぎる」との声もある。
 これに対して3市側は「どの段階で予定地と呼ぶのか定義があいまいだ」とこぼす。ある市が公共事業予定地近くの土地を公有地化し、公園を造りたいと県に申し入れたところ、一部は公有地化され、一部は退けられたという。
市の担当者の1人は「構想段階で予定地とみられてしまう可能性もある。うかつに公共事業の構想も話せない』と県の姿勢を批判する。
 そして、さいたま市になる浦和と大宮には『政令指定都市になれぱ県と対等の立場。見沼についても県と対等にやっていきたい」という気持ちもある。
 武田茂夫副知事は「基金は公共事業の金ではない」と強調し、「見沼は県のリーダーシップでやっていく」と断言している。

朝日新聞埼玉版(2001年(平成13年)4月10日 火曜日)から転載

 




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