UPDATE 2002/3/10

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映画のベスト10のページです

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2001年の個人的な映画ベスト10を作ってみました

対象は2000年12月から2001年11月に東京で封切られた作品です
[邦画ベスト10] [洋画ベスト10] [各賞]

邦画ベスト10

1.かあちゃん
(映像京都・日活他/東宝 96分  2001年 DOLBY)
監督 今村 昌平
出演 岸 恵子  原田 龍二
 今さら市川監督には失礼でしょうが、脱帽ものです。まず話がすごくいいです。人情喜劇と言うよりは落語の世界ですね。不況の中でも明るくみんながんばっている感じで、同じく不況で暗い話が多い現在との対比という意味もあるでしょう。配役がまた絶妙です。四人並んで酒飲んでいたり、セリフ回しも棒読みみたいで不自然なところが多いのですが、それが逆に効果的になっているのが不思議です。部屋の間取りなんかもうまいし、飲み屋の赤提灯の赤だけが強烈な印象の銀残しの映像も効果的です。このような地味な題材で、こんなに見た後の気持ちがいい作品が撮れるとはさすがです。 


2.EUREKA
(電通・IMAGICA・サンセントシネマワークス・東京テアトル 217分 2000年 )
監督 青山 真治
出演 役所 広司   宮崎 あおい
 上映時間が長い作品ですが、そんなに時間が気になったり、退屈したりすることはありませんでした。話もいいのですが、撮り方がとてもうまいです。静かな情景での繰り返しのシーンも良いですね。実家での運転手の部屋から見える夜景、兄妹の家での玄関の光景等、工務店で働くようになった男を毎朝出迎えに来る同僚。これらの風景がとても効果的です。なにげなく毎日繰り返される日常の中で、心に傷を負ってしまった彼らの表に出ない苦悶。事件から二年後の一夏の出来事を追っているのですが、そんなに大事件が起こるでもなく、極めて時間の経過が遅い感じで映画が進んでいきます。殺人事件が絡んだのが、ちょっとどうかと思うし、旅行に出るシーン終わるのかと思ったらそれからもう一山あるし、見所も盛りだくさんで脚本もよい出来だと思います。


3.GO
(東映他/東映 122分  2001年 DR)
監督 行定 勲
出演 窪塚 洋介  柴咲 コウ
 オープニングのスピード感がとても爽快です。タイトルバックの間に主人公の交友関係、親子関係などを見事に説明し終えています。出てくるキャラクターが何れも個性的で強烈です。モチーフとなっているのは、在日朝鮮人、韓国人の問題ですが、そんなに固い話にならずに、若い世代の話に落としているのが好感が持てます。国籍を替えたりして、割と自由な考えを持っている様な父親に対しても、国や人種にこだわっている時代ではないと言い切ってしまうところも良いです。そういう自我に対する感情は国籍を問わないものなのでしよう。 冒頭のスピード感が中盤になると薄れてきて、後半はオーソドックスなドラマになってしまっていることに気が付きますが、ずっと早いスピードで走られても観る側が疲れてしまいますから、これでいいのかも…。脚本の宮藤官九郎、監督の行定勲と何れも今後、注目の価値があるようです。


4.ウォーターボーイズ
(フジテレビジョン・アルタミラピクチャーズ・東宝・電通/東宝 91分 2001年 DOLBY)
監督 矢口 史靖
出演 妻夫木 聡   平山 綾
 こういう内容の作品は久しぶりでいい感じです。青春ものの映画自体が減ってしまい、たまにあっても変に屈折した作品が目に付く昨今ですが、ストレートな作品と言えます。時代がさかのぼっているものではなく、設定も現在なのもいいですね。最もこんな直球な連中が今もいるかどうかは分かりませんが…。 ストーリーはかなり強引、ベタなギャグもありますが、終わりよければすべてよし、ラストのシンクロシーンを見て満足いたしましょう。そこで使われている曲がちょっと古いのもご愛敬。矢口監督の作品、「裸足のピクニック」「ひみつの花園」辺りともちょっと違いますね。


5.リリィシュシュのすべて
(ロックウェルアイズ/日本へラルド映画 146分  2001年 DTS)
監督 岩井 俊二
出演 市原 隼人  忍足 修吾
 見た後、ちょっと心が痛くなる映画でしょうか。好き嫌いがはっきり分かれる映画で、万人に勧められる作品ではない気がします。中学生のイジメや援助交際などを描いていて、ある種現実を直視し、描写した作品でしょうが、解決策は示されてないので、観客にその答えが求められているのでしょうか。イジメとかは昔もあったのはあったけれど…。北関東の乾いた空気と真っ青な空が、中学生達の心の中との対比となり効果的に使われています。主人公が母親を自転車に乗せるシーンやポスターにも使われている鉄塔のシーンも印象的です。
 音楽も前作のYentown Bandと同様に盟友、小林武史と「リリィ・シュシュ」という架空のアーティストを持ち出してきて効果的に使っています。どう見ても中学生に見えない忍足修吾や伊藤歩を使っているのも彼の常套手段?ですね。長尺だけれどうまい作品で、悪くはないのですが、監督独特の世界を確信犯的に描き過ぎていて、ちょっと面白くない気がします。


6.千と千尋の神隠し
  (徳間書店他/東宝 124分 2001年)
監督 宮崎 駿
声の出演 柊 瑠美  入野 自由
 さすが宮崎駿。ストーリーはともかく、登場するキャラクターの造形の面白さだけでも圧倒される感じです。小さな登場人物についても細かな愛情を持って作られている感じを受けます。また、娯楽性とメッセージ性が両立させた作品になっています。
 キャラクターでは特に湯屋の女主人などはたまりませんね。背景の画像の方もデジタル処理が主と言うこともあって、水関係の描写も美しいですね。ちょっと導入や結末、主人公の気持ちの動き、活劇などに不満な点がありますが、誰もが楽しめるいかにも日本的なファンタジーあふれるアニメ作品として世界に誇れる作品だと思います。


7.アカシアの道
  (ユーロスペース 90分 2000年)
監督 松岡 錠司
出演 夏川 結衣  渡辺 美佐子
 ちょっと見ていてつらくなる映画です。単なる老人介護の話ではなく、家を離れてしまう原因となった母親との葛藤がもう一つのテーマになっています。生別した父親の顔も知らない主人公は、教師である母親に厳しく育てられました。そういった反発から実家に寄りつかなくなったと思われますが、年を経て母親の看病をしていてもどうしても、お互いぶつかり合ってしまいます。呆けが始まっているから余計に母親が言うことが押さえが利かずにきつくなってしまいます。娘の方もそれに耐えられなくなるのですが…。様々なシーンで観ている自分の立場と比較しながら見てしまいます。


8.バトルロワイアル
  (東映 113分 2000年 SRD)
監督 深作 欣二
出演 藤原 竜也  ビートたけし
 説明はあるのですが、BR法の意図が全然理解できなかったのですが、この作品は意外と立派な「青春映画」の体をなしています。各生徒の設定がうまくて、一匹オオカミ的なもの、人殺しはせず、体制破壊を企てるもの、仲良しグループでまとまって乗り越えようとしているもの、中学生時代などは遠くになりつつありますが、なるほどいたいたああいう子と言った感じで‥。そういった連中が死を目前にしたせっぱ詰まった局面でどういう対応をしていくかというのが割ときちんと描写されています。一クラス全員を対象にしているので、どう整理するのかなと思っていますが、結構うまい脚本で、重点となる生徒はある程度引っ張り、そうでなと生徒はバッサリと切って、わかりやすくしています。脚本は監督の息子の深作健太なのですが、うまいです。


9.連弾
  (松竹・東京放送他/松竹 104分 2000年)
監督 竹中 直人
出演 竹中 直人  天海 祐希
 夫婦、家族の危機を描いた作品ですが、さすが竹中作品。それほど悲惨さはなく、かなりユーモア溢れた作品になっています。ストーリー的には悲劇になりうるテーマだと思いますが、悲劇を悲劇に見せないことも一つの表現方法としてあるのかも知れません。
 妻の役を演じているのが天海祐希。どうも今までの作品では、どうも…、と言った感じでしたが、この作品では割といいですね。やはり生活感はないですが、キャリアウーマンの役なので、その辺りは中和された感じです。子役の二人もなかなかいいです。両親のゴタゴタをクールな感じで見ています。この作品の中心は竹中直人より天海祐希になっている感じですね。


10.DISTANCE
(テレビマンユニオン他/ディスタンス製作委員会 132分 2001年)
監督 是枝 裕和
出演 ARATA  伊勢谷 友介
 是枝裕和の前二作はいずれも気に入りましたが、今回はちょっと辛い気がします。登場人物のせりふがとぎれたり、二人が同時にしゃべってゆずりあったりしていて、変だなと思っていて見たけれど、せりふをちゃんと決めずに撮っているなというのに気が付きました。その意図は理解できるし、ARATAや伊勢谷友介、りょうと言った本職が俳優ではない人が多いので、効果的でもあります。しかし、そうは言ってもストーリーはあるわけで、色々疑問がてできます。一番の疑問は元信者役の浅野忠信をみんなすんなり受け入れてしまっていることです。信者でも下っ端という設定みたいですが、もっと反発があってもいい気がします。ドキュメンタリータッチもいいのですが、善し悪しですね。ハンディカメラもここまでこの手の作品が多くなると目新しさがなく、どうかと思うし…


11.クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
(東宝 89分 2001年)
監督 原 恵一
声の出演 矢島 晶子  ならはし みき
 とても子ども向けとは思えない内容です。大人を対象にしている映画といえるでしょう。逆に子どもには分からない話題で難しいのではないかと思える位です。回顧主義を描いた作品ですが、妙に感傷的になるだけでなく、そのことに警鐘を鳴らしている様なところがシニカルな作品です。ラストで一件落着したあと、家族愛の話にもっていったところがちょっと…ですが、そんなにおしつけがましい話でもなかったのでよかったです。


12.ターン
(アスミックエース 111分  2000年 DR)
監督 平山 秀幸
出演 牧瀬 里穂  中村 勘太郎
 小品ですが、よくできている感じです。牧瀬里穂は一人芝居のシーンが多いので、ちょっと大袈裟ですが好演。相手役を年下にしているところが効果的で、演じている中村勘太郎もいいかも…。何故電話が繋がったかとか、結末がちょっと安易と言ったところがありますが、まあ可としましょう。


13.BROTHER
 (オフィス北野・英/オフィス北野・松竹 114分 2000年) 監督 北野 武
出演 ビートたけし  オマー・エプス
 実際に渡哲也も出演しているし、北野流解釈のヤクザ映画と言った感じもあるが、ある意味で北野監督の集大成とも言える作品でしょう。彼の作品の特徴であるクールな暴力性。生を求めるよりも死に場所を求める男達。舞台がロスでも相変わらずと言えば、相変わらずですが、彼独特の世界がこの作品でも描かれています。せっかく米国に逃れたのにそんなにしなくても…、と主人公達を思ってしまいますが、そんなことはお構いないのでしょう。これまた独特の醒めたユーモアも交えながらある意味淡々と言った感じでストーリーは続いていきます。


14.東京マリーゴールド
  (オメガ・エンタテイメント 97分 2001年)
監督 市川 準
出演 田中 麗奈  小澤 征悦
  市川準の作品にしてはちょっと台詞が多く饒舌な感じです。いつもは風景だけで済ませる様なシーンに台詞が入っていたりしています。そのせいか、ちょっと違和感があります。ストーリー自身もいかにも林真理子っぽい話ではありますが、期間限定恋愛というシチュエーションが、難しいところです。この作品、実はどんでん返しがあるのですが、相手役の小澤征悦をどう見るかで全然解釈が違ってくると思います。


15.三文役者
 (近代映画協会 126分 99年)
監督 新藤 兼人
出演 竹中 直人  荻野目 慶子
 演じる役柄にも独特なものがありましたが、人生そのものがドラマだった人ですね。脇役に誇りを持って一生懸命やっていた気がします。竹中直人ははまり役でした。声色や下から見た顔などはそっくりに見えたシーンもありました。笑えるシーンも多いのですが、新藤監督、87才まだまだ健在という感想です。この作品がそのまま、自身の軌跡を辿ったものになっているという気がします。


ワーストの該当は特にないのてずが、ビデオで観た「DEAD OR LIVE」を上げておきましょうか。絶好調、三池崇史の作品ですが、ちょっとやりすぎ、反則技のラストと言った感じてす。ああいうことをヤルとそれまでのストーリーを否定することにならないのかなぁ。今年の方がのレベルは今一つでしょうか。「独立少年合唱団」、「スリ」等は選考時は福岡未公開のため除外しています。


ワーストは「ELECTRIC DRAGON 80000V」です。


洋画ベスト10 

1.ヤンヤン夏の想い出
原題 A ONE AND A TWO (台、日/オメガ・エンターテイメント、KUZUIエンタープライズ 173分 2000年)
監督 エドワード・ヤン
出演 ウー・ニエンジェン  エレン・ジン
 邦題は小学生のヤンヤンの名前をかぶっていますが、彼を取り巻く家族、親族や近所の人を描いた群像劇と言った感じです。連続したエピソードの積み重ねと言った感じで、全部で3時間近くの尺ではありますが、飽きずに見ることが出来ます。家族間に亀裂がある家族ではないのですが、相互の関係を描いているシーンは少ない気がします。叔父とヤンヤンが道化的な役割を持っていますが、このヤンヤンが可愛くてとてもいいです。普段、学校でいじめられている女の子をふとしたきっかけから逆に関心を持ってしまう辺りの話の持って行き方はうまいですね。また、学生時代の恋人と日本で再会した父親の光景と、その父親の留守中に初デートすることになった娘の光景を交互にカットバックでつなげていく辺りも印象的です。日本人プログラマー役で出演のイッセー尾形も好演。


2.山の郵便配達
原題 那山 那人 那狗   (中国/東宝東和 93分 99年)
監督 フォ・ジェンチイ
出演 トン・ルゥジュン  リィウ・イェ
 ふとした偶然で父親と一緒に郵便配達の旅に出ることになったおかげで、息子は父親が何年間も歩き続けた山道を歩くことにより、父親の仕事、思い、人生を感じ取ることができ、父親の方も息子と話をしながら歩くことにより、その成長ぶりを感じることができました。村々に住んでいる人たちとのやりとりも凄くいい感じですね。エビソードや回想シーンに持っていく経緯がうまくて違和感がないところがいいですね。背景になっている風景もとてもいいです。山や水田の緑の色使いが印象的。途中の村での踊りのシーンの赤が生きています。二人に同行している犬の存在も効果的。


3.彼女を見ればわかること
原題 THINGS YOU CAN TELL JUST BY LOOKING AT HER (米/ギャガ 110分 99年)
監督 ロドリゴ・ガルシア
出演 グレン・クローズ  ホリー・ハンター
 5つの短編形式のストーリーからなるオムニバス形式のドラマですが、とてもうまくできています。それぞれが完全に独立している訳ではなく、相互に繋がった存在になっています。全員が全員と顔見知りというわけではなく、女医と患者。その部下と知り合う女性、女医の家を訪れる占い師等々、多彩な環境の女性が描かれています。そして分かりにくいのですが、5話全部に出てくる人物がキーパーソンになっています。出演がとても豪華な顔ぶれです。全編を通して見ると、あまり深いエピソードがなく、えっ、これでお終い?と感じるところもありますが、それぞれのエピソードを見ると一見幸せそうなキャリアウーマンや主婦が実は孤独で、それぞれ他人に救いを求めているところが伺えます。どこの国でも一緒ですねぇ。しかし、その辺をどう取るかによって観客を選ぶ作品になると思われます。


4.ムーラン・ルージュ
原題 MOULIN ROUGE (20世紀フォックス 128分  2001年 SDDS)
監督 バズ・ラーマン
出演 ユアン・マクレガー  ニコール・キッドマン

 バズ・ラーマンの新作と聞いて、期待させるもの、十分で鑑賞したのですが、冒頭の20世紀フォックスのタイトルのシーンから笑わせながら映像に引き込まれていきます。ちょうど100年前の20世紀に変わりつつある時代の話というのも意味深ですね。その後に続く、タイトルからパリの光景に続く映像感覚もいいですねぇ。映像はとにかく飛ばしまくるので、ついていくのが大変です。その後、ちょっと撮り方を替えている気がします。ミュージカルの仕立てになっているのですが、使われている曲も面白いです。古い曲から新しい曲まで、うまく使われています。エルトン・ジョンのユア・ソングはまともな使われ型として、ライク・ア・バージンとかロクサーヌなどが印象的でした。特にライク・ア・バージンの演出ぶりは大受けしました。あと、キッドマンの部屋で公爵の目をごまかして、出し物のネタを作り上げるシーンも最高。自分で歌も歌っているキッドマンにこういうコメディ的な才能があるとは知りませんでした。


5.初恋のきた道
原題 我的父親母親/THE ROAD HOME  (米国・中国/ソニー 89分 2000年 SRD)
監督 チャン・イーモウ(張芸謀)
出演 チャン・ツィイー(章子怡)  スン・ホンレイ
 現代のシーンがモノクロで過去のシーンがカラーと言った作りになっていますが、その過去のカラーのシーンの色の具合がとてもいいです。冬は雪深い中国北部の寒村といった感じなのですが、四季の情景がとても豊かです。それとこの作品の特徴はなんと言っても主役のチャン・ツィイーですね。ちょっと顔つきが現代っぽいのが気になりますが、体型(失礼)とか走り方とかが純朴な田舎の娘と言った感じでかわいいです。恋と言っても当初は彼女の一方的な一目惚れで、下手すると今で言うとストーカーっぽいところもありますが、みんなどことなく似た経験があるのではないでしょうか。


6.花様年華
原題 花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE (香港/松竹 98分 2000年)
監督 王家衛(ウォン・カーウァイ)
出演 梁朝偉(トニー・レオン)  張曼玉(マギー・チャン)
 仕掛けは不倫の話になっていますが、その中身は実にプラトニック。現実的ではないかも知れませんが、設定を60年代にしているせいでかなり雰囲気がでています。主役二人の実年齢と近い役柄でしょう。その辺りも効果的になっています。従来のウォン・カーウァイ、撮影のクリストファー・ドイル、コンビのタッチとちょっと違う気もしますが、これはこれでなかなか見応えがあります。もう一人カメラにリー・ピンピンがクレジットされていますが、その辺りの影響でしょうか。


7.あの頃ペニーレインと
原題  ALMOST FAMOUS  (コロンビア・ドリームワークス/ソニー 123分 2000年 )
監督 キャメロン・クロウ
出演 パトリック・フュジット  フランシス・マクドーマンド
 70年代からロックを聴いていた人たちには感涙ものの映画です。作品のテーマに合った感じの手書き文字のタイトル、そしてチップマンクスの音楽で映画が始まります。少年が取材することになったバンドは「スティルウォーター」という架空のものになっていますが、実際の話に近いもののようで、モデルはどうやらオールマンブラザーズバンド。彼らの曲はオリジナルですが、ピーター・フランプトンがサポートしていて、出演もしているようです。その他の音楽は実際の曲で、有名な曲も使われていますが、The WhoやLed Zeppelinなどは結構渋い曲が使われています。グルーピーやドラッグの話も出てきますが、メインは少年のちょと背伸びした青春ドラマになっています。


8.アメリ
原題 AMERIE/LE FABULEVY DESTIN D'AMELIE POULAIN (フランス/アルバトロス・フィルム 121分  2001年 )
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 オドレイ・トトウ  マチュー・カソヴィッツ

 とてもほのぼのとしたファンタジーな作品です。ちょっと子ども向けといいう訳にはいきませんが…。想像力豊かなシーンが多いのですが、その辺はCGやデジタル処理などを効果的に使われています。 主人公を演じるオドレイ・トトウがいいですね。当初の主役はエミリー・ワトソンが想定されていたと言うのですが、そうなると全然違った作品になっていたでしょう。ジュネ監督の「エイリアン4」の足なし男等、ジュネ作品、常連のドミニク・ピノンは出ていますが、いつものデコボココンビ、ロン・パールマンのが出ていないのが残念です。 時々、犯罪まがいの行為があるところが気になりますが、全体としてとてもハッピーな気分にさせてくれる作品です。


9.ただいま
原題 過年回家 Seventeen Years (中国、伊/K2エンターテイメント 89分 2000年)
監督 チャン・ユアン
出演 リウ・リン  リー・ピンピン
 普通、この手の映画では回想シーンを入れたりして、時間を上下させることが多いのですが、この作品は出来事を順序通りに追いかける構成になっています。また結末も予想通りできわめてオーソドックスです。上映時間も短いのでちょっと物足りなさも感じますが、昨今のギミックの多い作品の中では、これがまた何かいい感じになっています。中心に描かれているのはやはり家族愛だと思われます。  




10.蝶の舌
原題 LA LENGUA DE LAS MARIPOSAS (スペイン/アスミック・エース 95分 99年)
監督 ホセ・ルイス・クエルダ
出演 フエルナンド・フェルナン・ゴメス  マヌエル・ロサノ

 この作品もスペイン内戦前夜の村を描いていた「ミツバチのささやき」と同じく子どもが主人公になって歴史が揺れ動いていく様を描いています。そう言った意味では、「マレーナ」とか「ライフ・イズ・ビューティフル」などに通じるものがある気がします。ということはある種、国や時代が違っていても描かれたテーマであるとも言えます。そうした目で見てみるとこの作品、悪い作品ではないですが、今さらなぁ、と思えないこともありません。エビソードの積み重ねでエピローグへと繋がっていくのですが、そのエピソードが欲張り杉なのか、中途半端なのかちょっと弱い気がします。とは言え、ことさら作り上げて面白おかしくするのも嫌らしいので、素直に描かれている方が好感が持てることもありますから、その辺が非常に微妙なところですね。


11.ギター弾きの恋
原題 SWEET AND LOWDOWN (米/ギャガ 95分 99年)
監督 ウディ・アレン
出演 ショーン・ペン  サマンサ・モートン
 監督自身や著名なジャズ評論家などのインタビューを挟んでギタリストの半生について描いていくスタイルはいかにもウディ・アレンらしい作りになっています。ギタリストを演じているのはショーン・ペンですが、なかなかいい味を出しています。女性やお金にだらしなく、盗癖はあるし仕事に平気で穴をあけたりする男ですが、自分は芸術家だからそうしているのだからいいのだという独特の哲学はそれなりの説得力があり、そんなに嫌みではありません。演奏シーンはちょっと音とギターを弾く手が合ってはいないけれど、それなりにうまく見せています。彼が唯一惚れ込む女性を演じているのがサマンサ・モートンですが、彼女がまたいい演技です。


12.ギャラクシークエスト
原題 GALAXY QUEST (ドリームワークス/UIP 102分 99年 SDDS)
監督 ディーン・パリソット
出演 ティム・アレン シガーニー・ウィーバー
 「スタートレック」のパロディという売り文句ですが、シチュエーションコメディの体裁を成していて、そういう意味では宇宙版「サボテンブラザース」とも言えます感覚的には「オースティンパワーズ・デラックス」に近い所もなくはないですが、こちらは下ネタはほとんどないし、ちょっと系統が違いますね。「スター・トレック」や「スターゲイト」「宇宙大作戦」(笑)、SF映画あるいはコメディ映画に興味がない人でも十分楽しめる作品です。ただ、笑えるばかりでなく、ホロリとくる所もあるし、宇宙でのシーンもちゃちなものではなく、ILMやスタン・ウィンストンなどが本気になって手がけているところも良いです。


13.夏至
原題 A LA VERTICALE DE L'ETE (フランス=ベトナム/アスミック・エース、日本ビクター 112分 2000年)
監督 トラン・アン・ユン
  出演 トラン・ヌー・イエン・ケー  グェン・ニュー・クイン

 三人姉妹の周囲で起こる出来事を綴っている作品です。不倫や妊娠騒動等はありますが、はっきり言って大きな事件は起こりません。淡々とその情景を写し取っていく様は、まるで小津安二郎か成瀬巳喜男の様な昔日の邦画を見ている様な感じです。母の命日から父の命日までの一ヶ月の話なのですが、のんびりと時間が流れていく感じです。屋外のシーンはあまりなく、室内のシーンが多いのですが、なんとなくベトナムの夏の気怠い雰囲気をかもしだして好感が持てます。またこの三人姉妹を通して女性の人生の変化をうまく表現している気もします。この辺をどう取るかでこの作品への評価がガラリと変わってしまうでしょうね。


14.オーブラザー
原題 O BROTHER, WHERE ARE THOU? (米国/ギャガ 108分  2001年 DRS)
監督 ジョエル・コーエン
出演 ジョージ・クルーニー  ジョン・タトゥーロ

 謳い文句は構想3000年。紀元前8世紀の詩人ホメロスの「オデュッセイア」がヒントになっているとのことです。なるほどそれらしいエピソードが次々と出てきます。しかし、私の感想では、「ブルースブラザース」のカントリーミュージック版と言った感じでしょうか。音楽の使い方もそれらしいところがありますね。クロスロードのエピソードが出て来たところもかなり印象的でした。あと元祖ベビーフェイス?なども出てきます。ストーリーの方はちょっとふざけ過ぎた気がします。従来のコーエン兄弟の作品に比べるとストレートでおバカなギャグが多い感じで、ブラックさが少なく逆に物足りなさも感じてしまいます。


15.ダンサー・インザ・ダーク
原題 DANCER IN THE DARK  (デンマーク/松竹=アスミック・エース 140分 2000年 SRD)
監督 ラース・フォン・トリアー
出演 ビョーク  カトリーヌ・ドヌーブ
 うーん。暗いですねぇ。不幸な女性がどんどん不幸になっていくと映画で、あまり救いがある映画ではありません。しかし、この映画の見所はなんと言っても主演のビョークと音楽です。彼女は演じているというより主人公セルマになりきっているという感じです。また、音楽についても然りで、この作品の中でもっとも雄弁なセリフはこの音楽の中の歌詞に込められてしまっています。ポイントとなる画面でミュージカルになるのですが、見応えがあります。特に貨物列車のシーンがすこいです。デジタルカメラで撮ったということですが、どうやって撮ったのかという面も含めて見応えがありました。


16.レクイエム・フォー・ドリーム
原題 REQUIEM FOR A DREAM (米/ザナドゥー 102分 2000年)
監督 ダーレン・アロノフスキー
出演 エレン・バースティン  ジャレッド・レト

 暗い、あまりに暗い。まあ、どうしようもないほどのやりきれなさでもないですが…。定職を持っていないけれど、やる気がない訳ではないんですよね。それなりの上昇志向はあるのです。母親にしてもそうでしょう。ほんのちょっとテレビにでたくて、地元の有名人になりたかっただけでしょう。ただ、それがちょっとずれてしまったり、うまくいかなくなってしまった時の脆さがあるんでしょうね。また、行く道の取り方に二種類の方法が可能な場合、クスリに頼る方が楽に思えてしまうんでしょうね。このことに議か付いていたとしても、そこで、どう踏みとどまるかの方の選択の方がとても難しいんでしょう。


17.ショコラ
原題 CHOCOLAT (米/松竹=アスミック・エース 121分 2000年)
監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ジュリエット・ビノシュ  ヴィクトワール・ティヴィソル
 主演はジュリエット・ビノシュ。こう言った非凡で個性的な主人公をさせるとピカ一ですね。このキャラクターを受け入れられるかどうかが、この作品の評価に大きくかかわってきます。私は程々ですね。そんなに鼻につく嫌らしい役ではなかったので、ある程度受け入れられました。娘役はヴィクトワール・ティヴィソル。あの「ボネット」の女の子です。うーん。かわいい。彼女だけ見ているのもいいですね。


18.A.I.
原題 A.I. ARTIFICIAL INTELLIGENCE  (米/ワーナー 146分 2001年)
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 ハーレイ・ジョエル・オスメント  ジュード・ロウ
 ちょっと評判がよくない様ですが、私はそんなに否定的にはとらえませんでした。見ているとキューブリック的な面とスピルバーグ的な面が両方手できている様な作品で、その辺をどうとらえるかによってかなり捉え方が変わります。ファン層が重なるとはそんなに思えないので、お互いに影響されている面を否定的にとらえるのではないでしょうか。脚本を珍しくスピルバーグが書いていますが、その分、彼の意図が明白に出ているのかと言えば、ちょっと疑問な気もします。


19.JSA
原題 JSA(Joint Security Area) (韓国/シネ・カノン=アミューズ 110分 2000年)
監督 パク・チャヌク
出演 イ・ヨンエ   イ・ビョンホン
 場面、撮影や編集などは非常にうまいと思いました。銃撃事件自体は冒頭で映してしまっていて、そのシーンが証言や推理の進展に従って再三出て来ます。その展開の仕方もうまく、撮影も微妙に違っていて、矛盾がない様に撮っています。また、死体の検死のシーンなども良くできていて、リアリティがある気がします。しかし、底辺にあるストーリーの流れがどうもちょっと浅い感じがします。事件の原因にしても、結末にしても意外性があまりありません。そういうことを求める映画ではないのかも知れませんが、ちょっと不満です。キーパーソンになっているスイス軍の女性将校の設定もどうかと思います。登場人物が男性ばかりになるのを防ぎ、謎解きをさせるための設定でしょうが、どうも登場シーンから不自然さが目立ちます。


20.スリーピー・ホロウ
原題 SLLEPY HOLLOW   (米・マンダレイ/ヘラルド 106分 99年 SRD) 
監督 ティム・バートン
出演 ジヨニー・デップ  クリスティーナ・リッチ
 さすがティム・バートン。彼らしい暗い色彩でちょっとドロドロした話が進んでいくのがたまりません。現代劇でなく200年位前の話というのも効いています。終盤は少しすんなり行き過ぎて、アレッという感じですが、原作がそうなのでしょうか。バートン独特の悲哀を感じられなかったのはコッポラが製作というのが影響していたのでしょうか。


21.17歳のカルテ
原題 GIRL, INTERRUPTED (米/ソニー 127分 99年)
監督 ジェームズ・マンゴールド
出演 ウィノナ・ライダー  アンジェリーナ・ジョリー
 時代は60年代後半ですが、現代に通じるところもあるようです。しかし、「17歳のカルテ」という邦題は最近のキーワードである「17歳」が使われているが、やり過ぎかも知れません。主人公は18歳以上だというやり取りが冒頭に出てきています。演じているのは最近、絶好調のウィノナ・ライダーで、彼女自身が製作総指揮も務めています。しかし、30間際の彼女が演じるのはちょっと無理があったかな。





ワーストは「ミリオンダラーホテル」です。



各賞です

邦画洋画
主演男優賞 役所 広司 「雨あがる」 梁朝偉 (トニー・レオン) 「花様年華」
主演女優賞 岸 恵子 「かあちゃん」 章子怡( チャン・ツィイー)「初恋のきた道」
助演男優賞 山崎 努 「GO」 マヌエル・ロサノ 「蝶の舌」
助演女優賞 柴咲 コウ 「バトル・ロワイヤル」「GO」 ニコール・キッドマン 「ムーランルージュ」
最優秀監督賞 市川 昆 「かあちゃん」 霍建起 (フォ・ジェンツィ) 「山の郵便配達」
最優秀脚本賞 宮藤 官太郎 「GO」 楊徳昌 (エドワード・ヤン) 「ヤンヤン・夏の想い出」
最優秀音楽賞 久石 譲 「BROTHER」「千と千尋の神隠し」 T・ボーン・バーネット 「オー!・ブラザー」
最優秀新人賞 窪塚 洋介「GO」 オドレイ・トトゥ「アメリ」



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