UPDATE 98/1/2

★映画のページ★
映画のベスト10のページです

[感想に戻る]

1997年の個人的な映画ベスト10を作ってみました

対象は1996年12月から1997年11月に東京で封切られた作品です
[邦画ベスト10] [洋画ベスト10] [各賞]

邦画ベスト10

1.萌の朱雀
 監督 河瀬 直美
 出演 國村 隼  尾野 真千子
 結構収穫が多かった今年の邦画ですが、一番の収穫はこの作品だと言っていいでしょう。セリフや説明が極端に少なくドキュメンタリーのような感じさえする作品ですが、その分観る側の想像力が必要になります。家族関係の説明もあまりないので、舞台となる家庭の環境が普通の親子ではないなぁと思いながら観ていて途中でやっと合点がいきました。炊事場のシーンや部屋のステレオのシーン等何気ないシーンがなかなか余韻を持たせてくれました。今後が期待できる監督です。

2.ラヂオの時間
 監督 三谷 幸喜
 出演 唐沢 寿明  鈴木 京香
 三谷幸喜、監督第一作です。半ばでちょっとだれるところもあるのですが、ラストに向けてのスピード感はなかなかでした。演じている俳優によるところも大きいですね。細川俊之、井上順、藤村俊二、布施明、梶原善、なかなか持ち味を出しています。第一作でこれだけできると立派なものでしょう。昨年の「Shall we ダンス?」に続く娯楽映画の見本とも言える作品です。

3.バウンス ko GALS
 監督 原田 真人
 出演 佐藤 仁美  佐藤 康恵
 原田真人は今まであまり合わなかったのですが、これはなかなか評価できる作品です。援助交際、ブルセラなどちょっときわどいテーマでR指定になったものの取り消しになった映画ですが、なるほどちゃんとした今時の青春映画になっています。主役の3人がとてもいい感じで役柄を演じていて、やくざ役との役所広司とも堂々渡り合っていますが、女子高生同士の会話は意味不明で聞き取れません(笑) 主人公の動機と性格付けがちょっと弱いのと、役所のやくざがいい人過ぎるのがちょっと不満。

4.瀬戸内ムーンライト・セレナーデ
 監督 篠田 正浩
 出演 長塚 京三  岩下 志麻
 阿久 悠原作、篠田正浩監督の瀬戸内シリーズはどれも佳品なのですが、これもいいです。高田純次、火野正平と言った役者がそろっていて、戦争時期というテーマなのですが、「少年H」と同じように少年たちは生き生きとして生きていたのでしょぅ。
 鳥羽潤、吉川ひなのと言ったポッキーの二人が華を飾っていますが、せりふが今一つなのが残念。

5.うなぎ
 監督 今村 昌平
 出演 役所 広司  清水 美砂
 カンヌで賞を取ってえらくはやった映画ですが、そんなに明るい作品ではありません。でも、色々人生や恋愛について考えさせられる作品ではあります。常田富士男、市原悦子の昔話コンビ(笑)に佐藤充、柄本明もなかなかいいです。

6.東京夜曲
 監督 市川 準
 出演 長塚 京三  倍賞 美津子
 市川 準は「トキワ荘の青春」みたいなちゃんとしたストーリーがあるものよりも、この映画のように情景の積み重ねみたいなのがいいようです。せりふもない何気ない風景をロングで撮らせると違ったものに見えてきます。
 上川隆也の演技はいいのですが、あんなに隣人の過去のことを探って回る人が、近所にいるといやです(笑) まあ狂言回し的な役柄なので仕方がないのですが、その分説明過多になってしまっていて、今までの市川作品にあった様な見る側の欲求不満が少なくなってしまいました。

7.もののけ姫
 監督    宮崎 駿
 声の出演  松田 洋次  石田 ゆり子
 うーん、これで本当に最後の作品になるのでしょうか。結構中身のつまった作品ですね。上映時間も2時間13分とかなり長いのですが、子供でもそんなに飽きないように詰まっている感じがします。テーマとしては「ナウシカ」や高畑勲の「平成狸合戦…」に通じる様なものですが、時代設定こそ違え突っ込んだ問題提起をしています。ただ、その手段としては賛否両論あるようです。かなり力が入った作りになっている割には大団円的な結末になっていますが、これも仕方がないかも知れませんねえ。
 ストーリーはさておき、絵はやはりすごいですね。この作品はディズニーを通して海外でも公開されることになると思いますが、その辺の評価は間違いないでしょう。

8.20世紀ノスタルジア
 監督 原 将人
 出演 広末 涼子  圓島 努
 映画の内容どうこうよりも主演の広末のアーティストパワーがすごいです。彼女がメジャーになる前から撮っていた映画なのですが、画面から魅力?があふれています。監督が若い人でなく長く自主映画等を撮っていた原将人ということと作品としての映画と中で使われているビデオの差があまりないというのが、悲しい現実ですが、印象的な作品でした。

9.ひみつの花園
 監督 矢口 史靖
 出演 西田 尚美  利重 剛
 この作品も監督の前の作品、「裸足のピクニック」同様なかなかスピード感があり、キッチュなローラーコースタームービーといった感じです。ちょっと変な主人公ですが、お金のためには俄然がんばっちゃいます。「ビューネ」のCMなんかに出ていた西田がなかなか光っています。人形をつかった特撮?もおかしいし、脇の利重とかも生きています。

10.愛する
 監督 熊井 啓
 出演 酒井 美紀  渡部 篤郎
 新生日活の第一作ですが、はっきり言って時代錯誤な作品です。遠藤周作の原作の設定を現代に持ってきているようですが、連れ込み旅館や町工場などかなり無理があります。相手役の渡部篤郎はともかく、主役の酒井美紀は適役です。はっきり言って彼女しかできない役でしょう。それがかなりもったいない使い方になっています。ストーリーはトントンと進んでいますが、彼女の心情の変化についていけません。岸田今日子や患者役の人々がよかっただけに非常に残念な感じがします。

11.東京日和
 竹中直人監督初の失敗作?でしょう。

12.誘拐
 大規模なロケ等前半はよかったのですが、後半のテーマとの差がちょっと。

13.シャ乱Qの演歌の花道
 なかなか笑える作品でした。陣内とつんくが好演。

14.THE END OF EVANGERION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版
 よくも悪くも今年を象徴する作品でした。

ワースト  香港大夜総会
 アニタ・ユンも形無しの失敗作。何しに香港まで行ったのやら。

 


洋画ベスト10 

1.奇跡の海
 監督 ラース・フォン・トリアー
 出演 エミリー・ワトソン  ステラン・スカルスゲールド
 非常に奥が深い作品です。最初はハンディカメラで画面が不安定で見にくい映画だなと思っていたのですが、段々と吸い込まれていきました。主人公の心情を表したカメラワークだったのかもしれません。お互いが示そうとした愛情?表現が何を意味するか考えるとなかなか深いものがありそうです。主演の女性は初出演だったようですが、すごかったですね。特に神と会話するシーンが印象的でした。
 チャプターごとの始めの風景が印象的でした。CG合成? がちょっと残念でしたが…。音楽がまたエルトン・ジョン、レナード・コーエン、ジェスロ・タルからディープパープル!、デビッド・ボウイまで違和感なくはまっているところが不思議でした。

2.秘密と嘘 "UNHOOK THE STARS"
 監督 マイク・リー
 出演 ブレンダ・ブレッソン ティモシー・スポール
 しばらく登場人物がどういう関係なのだろうと観ていたのですが、思わぬ方向に話が進んでいきます。それぞれの俳優がつぼを押さえたとてもいい演技をしています。特に主演のブレンダ・ブレッシンが心を打ちます。
   タイトルのSECRETS & LIESが観る者の心に響いてきます。みんな多かれ少なかれ抱えているのではないでしょうか。地味な映画ですが是非お勧めの映画です。
 
3.八日目
 監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル
 出演 ダニエル・オートゥイユ  パスカル・ディケンヌ
 心が洗われる様な快作です。ぜひお勧めします。
仕事に熱中しているあまり妻子から愛想をつかされ、別居している子供にもなかなか会えない主人公が、回りになかなか受け入れてもらえないダウン症の青年とともに、共に笑いあるいは泣くことによって、次第に人間性をとり戻していきます。  私たちもこの主人公と同じ感覚、毎日同じ時間に起き、同じモノを食べ、同じ仕事の繰り返しをしているだけにうーん…。 ラストまでほのぼのとしながらしかし、冷たい現実を感じながら観られる作品です。
 青年役が実際にダウン症というのが、ちょっと…ですが、タイトルの「八日目」というのもとても意味が深いものが感じられます。

4.コーカサスの虜
 監督 セルゲイ・ボドロフ
 出演 オレグ・メンシコフ  セルゲイ・ボドロフ・ジュニア
 紛争と言っても何かのんびりした感じで、ロシア軍の駐留地にチェチェンの父親は出入りしているし、その村をロシア軍も積極的に攻めようとしていません。それがまた、この紛争の必要性をあいまいにし、むなしさを感じさせます。まして、これと同じ紛争をトルストイがいた150年前からやっているのかと思うと…。
 山村の風景や生活ぶりもとても印象的で、安達祐実似の少女もかわいかったです。それだけに最後のシーンがとても悲しく、やりきれない感じがしました。

5.マーズ・アタック! 
 監督 ティム・バートン
 出演 ジャック・ニコルソン  グレン・クロース
 さすが、ティム・バートン。ただのSF映画はつくりません。主役級のキャストが次々と殺されて行って意外な人が生き残ります。ははは。残酷な火星人も見ようによってはかわいく見えるのが不思議です。

6.フィフス・エレメント "THE FIFTH ELEMENT"
 監督 リュック・ベッソン
 出演 ブルース・ウィルス  ゲイリー・オールドマン
 結構気に入りました、この映画。確かに大げさな映像の割にはシンプルなストーリー。SF映画とも思えない細かいドタバタなギャグ(笑) しかし、この映画に正統派SF映画を求めるものではないと思います。「マーズアタック」と同じ様にリュック・ベッソン流のSFオマージュだと思います。それでいて、リュック・ベッソンらしさは随所に表れています。特にヒロインが泣きながら戦うし、ゲイリー・オールドマン何かは「レオン」のまんまだし(笑)   それに対してまた映像がすごいです。冒頭のエジプトのシーンからわくわくさせられますし、未来都市がまたすごい。ゴルチエの衣装も強烈だし、歌姫の歌もよかったです。

7.ロミオ&ジュリエット "ROMEO&JULIET"
 監督 バズ・ラーマン
 出演 レオナルド・ディカプリオ  クレア・デーンズ
 結構面白くて気に入りました。冒頭、ほとんど劇画の様なシーンが続き、ずっと続くのかなと思っていたけれど、さすがにそうではなかったです。でもあの名作「ストリート・オブ・ファイヤー」を思い出される様なシーンが続きます。シェークスピアのせりふをそのまま使っていて字幕を見ながら笑いそうになるせりふもありますが、さすが英語は優雅で絵になります。ただ、後半の乱闘やラストのシーンは今一つでした。前半がよかっただけに惜しいです。

8.誘惑のアフロディーテ "MIGHTY APHRODITE"
 監督 ウディ・アレン
 出演 ウディ・アレン ミラ・ソルヴィーノ
 再婚で話題のウディ・アレン、久々自ら出演の映画です。さすが、ウディ・アレン面白いです。この映画のテーマがなんとその養子のこととはさすが、ただでは死にません。自分たちの養子にした子の出来がよかったので、その母親はどんな優秀な人だろうと調べたところ何と売春 婦 だったという話ですが、段々その母親にほれていってしまいます。彼の心の中の声としてギリシャ悲劇の合唱隊が出てきたりしてかなり笑えます。

9.ミルドレッド "UNHOOK THE STARS"
 監督 ニック・カサヴェテス
 出演 ジーナ・ローランズ マリサ・トメイ
 インデペンデント映画の父と言われていた、故ジョン・カサベテスの息子、ニック・カサヴェテスが母親、「グロリア」のジーナ・ローランズの主演で初めて監督した映画ですが、よくできています。ジーナ・ローランズも年取ったなぁと思いますが、お茶目なところも見せてくれます。マリサ・トメイやジェラール・ドパルデューも好演です。

10.イングリッシュ・ペイシェント  "THE ENGLISH PATIENT"
 監督 アンソニー・ミンゲラ
 出演 レイフ・ファインズ ジュリエット・ビノシュ
 冒頭のシーンから凝った画面の作りで観客の注意を引く作品であります。砂漠でのシーンも美しく、せりふもしゃれていて、これぞ映画だ、と思わせるシーンもありなかなかの作品です。
 なのですが、観た後の感想としてはちょっと…、といった感じがしました。というのは、メインストーリーがただの不倫の話で全然感情移入できなかったのです。私はどうもこの手の異邦人物はだめなようです。普段の自分の環境と違った不自由な環境でのラブロマンスというのは、それ自体の設定に自縛されている様で、どうも共感を得ないのです。うーん。主人公も不倫で失敗しているのに関わらず、またビノシュを独占しようとしているやな奴に見えるし…
 ジュリエット・ビノシュとインド人の兵隊とのロマンスとか、ウィレム・デフォーの話とか、サイドストーリーの方が面白い感じがしました。

11.シャイン
 いい作品なのですが、今ひとつのりきれませんでした。

12.スクリーム
 これは久々面白いホラー映画でした。笑えるようなところもあります。

13.ピーター・グリーナウェイの枕草子
 相変わらず独自の路線を走っています。吉田日出子怪演。

14.バウンド
 これから楽しみなウォシャウスキー兄弟の作品です。カメラアングルもなかなかいいです。

15.ロストハイウェイ
 これも相変わらず変な映画です。

16.クラッシュ
 はは、これも変というか、変態ですね。クローネンバーグ。

17.バスキア
 デビッド・ボウイが一見の価値あり。

18.百一夜
 映画百周年。色々てんこ盛りの映画です。

19.ブエノスアイレス
 ウォン・カーウェイ初の?作品。ストーリーがあるとだめなのかな。

20.マイルーム
 役者がなかなかそろっていました。

ワースト レリック
 あまり覚えていません。


各賞です

 最優秀監督
  邦画  篠田 正浩             洋画  ラース・フォン・トリアー
      瀬戸内ムーンライトセレナーデ        奇跡の海

 最優秀男優
  邦画  長塚京三              洋画  ダニエル・オートゥイユ
      瀬戸内ムーンライトセレナーデ 他      八日目 

 最優秀女優
  邦画  該当なし              洋画  エミリー・ワトソン
                            奇跡の海

 特別賞   マルチャン 麺inブラック      ベストタイアップ賞です。笑えました。


[ホームへ] [映画の感想のページへ]
[1996年のベスト10のページへ] [1995年以前のベスト10のページへ]