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1998年の個人的な映画ベスト10を作ってみました

対象は1997年12月から1998年11月に東京で封切られた作品です
[邦画ベスト10] [洋画ベスト10] [各賞]

邦画ベスト10

1.愛を乞う人
監督  平山 秀幸
出演  原田 美枝子  野波 麻帆
 虐待シーンの理由の説明があまりなく、観客サイドでか解釈するしかないのですが、かと言って凄惨な映画かといいますとそうでもありません。意外とユーモアがあるシーンも含まれています。特に継父を演じる國村 隼がいいですね。最近、彼や大杉 蓮、寺島 進等が脇を固める映画は必見です。
 時代設定から言えば「泥の河」を彷彿させる風景なのですが、CG使わないと俯瞰で撮せない時代になってしまったのはつらいです。でも無理に風景を俯瞰で撮る必要もない気もしますが…。都電の扱いなどは結構うまく、時代性は窺えると感じました。


2.がんばっていきまっしょい
監督 磯村 一路
出演 田中 麗奈  中嶋 朋子
 ストーリーが平板でちょっと波乱がなさすぎな感じがします。導入とエンデイングが決まっていなかったし…。主人公やコーチ役の中嶋朋子の心情も突っ込み不足です。男友達や下級生の扱いもちょっと疑問です。
 とはいうものの、それらを上回るものも感じます。田中"なっちゃん"麗奈やコックス等のクルーがなかなかキャラクターが生きているし、リーチェの音楽もいいです。最初に主人公が海岸に飛び降りるシーン、入学式のシーン等も印象的です。


3.HANA−BI
監督 北野 武
出演 北野 武 岸本 加世子
 北野監督の作品を何本何本か見ている私たちにはあまり目新しさがなく、過去の作品の延長線の作品でしかないような気がします。相変わらずの暴力男が実はこんなに優しいところもあるんですよっ、と言われても…。絵や娘も悪くはないのですが、再三でてくるとちょっと…。映画の出来は評価しますが、彼のこの辺へのこだわりはちょっと理解できません。
4.カンゾー先生
監督 今村 昌平
出演 柄本 明  麻生 久美子
 「うなぎ」に続く今村監督の新作です。年齢を考えると頭が下がる思いです。ややオーソドックスだった前作と違い、従来の今村ワールドが戻ってきています。戦時中でありながらどこかおおらかな瀬戸内の町が舞台です。主演の柄本が走っていますねぇ。新人の麻生久美子も体当たりの演技という感じでがんばっています。ただ、最後のクジラのシーンはどうかなぁ(笑) 軍人役の伊武雅刀や田口トモロヲも笑えます。

5.風の歌が聴きたい
監督 大林 宣彦
出演 天宮 良  中江 有理
2時間41分でありながら長さを感じさせず、オーソドックスな作り方でありながらこの作品、なかなか見せてくれます。
 テーマは実在の主人公に基づく単純なストーリーです。主役の天宮良や中江有理が中学生(笑)から演じているのですが、そんなに違和感がないのがすごいです。特に中 江有理はなかなかがんばった演技をしていると思います。 とはいうものの、この様なテーマを健常者である俳優が演技することによって評価されることには疑問に残りますね。うまく演技しているということで、評価していいのでしょうか。

6.学校3
監督 山田 洋次
出演 大竹 しのぶ 小林 稔侍
 寅さん以外の山田監督の作品は好きで割と見ています。この学校の一作目は幻の企画と言われていて毎年実現しなかったのですが、一作目ができるとコンスタントに進み、はや三作目です。こあいう話が嫌いな人もいるでしょうが、私はこういう映画も必要だと思います。毎作、社会の角の細かいところを確認させてくれます。今回は失業者を対象としたビルメンテナンスの訓練校が舞台となって、大竹しのぶが奮戦しています。子供役の黒田勇樹やリストラされた部長役の小林 稔侍も好演でした。
なぜ故に邦画なのに「スリー」というのかな? 外字で出ないぞ(笑)

7.CURE
監督 黒沢 清
出演 役所 広司  うじきつよし
 日本版のサイコ・ホラーなのですが、なかなか怖くてよくできています。直接ではなく間接的に怖がらせてくれます。脱水機の音とかノイズとか…。殺人シーンも引いて撮っていたり、レストランのシーンも変なところからのカメラアングルだったりしているし。
 萩原聖人はちょっとイライラさせられましたが、うじきつよしが好演。役所広司は相変わらず乗っていますね。

8.中国の鳥人
監督 三池 崇史
出演 本木 雅弘  石橋 蓮司
 今一番乗っていると言っていいらしい?三池 崇史作品です。と言っても私 は初見です。
 椎名誠の原作は読んでいないのですが、映画は映画としてまとまっていて、評価できます。なぜ雲南なのかという理不尽さはあるにしろ、そこまで行って撮ったスタッフの熱意とキャストのよさが感じさせられる作品です。本木はいつもながらうまいのかどうかわからない演技ですが、石橋 蓮司とマコ・イワマツとのトリオは絶妙です。キャスティングの勝利ですね。また風景もなかなか飽きさせません。終盤ちょっと説教くさくなったところが?ですが、観る価値がある作品だと言えるでしょう。

9.アンラッキー・モンキー
監督 サブ
出演 堤 真一  清水 宏
 好評、サブ監督の作品ですが、私はこの作品で初見です。銀行強盗をしようとした男が次々と騒動に巻き込まれていく話ですが、結構笑えました。二つの話が平行して進んでいますが、結構練った脚本ですね。もちろん大杉漣や田口トモロヲ、寺島進と言った豪華脇役もいいですね。今年、この辺が出ていた作品はどれも高品質です(笑)

10.四月物語
監督 岩井俊二
出演 松 たか子  田辺 誠一
 岩井俊二というのは不思議な監督ですね。「LOVE LETTER」や「打ち上げ花火…」みたいな正統的?な作品をいい感じで表現してみたり、「Picnic」や「スワロウテイル」みたいにちょっと異次元的な作品を作ったりとらえどころがありません。この「四月物語」は前者の方でして、「スワロウテイル」に違和感を感じていた私としては落ち着ける作品でした。

11.絆
監督 根岸 吉太郎
出演 役所 公司  渡辺 謙
 原作のせいか、荒井晴彦の脚本のせいかなかなか力が入った作品です。言うなれば平成版「砂の器」ですね。文字通り、家族や仲間という絆について描かれています。でも、「砂の器」ほど重くはありません。ということは、逆にもうちょっと踏み込んだ方がいい映画だつたかも知れません。ちょっとテーマの割にはあっさりしている感じもしました。

12.サムライ・フィクション
監督 中野 裕之
出演 風間 杜夫  吹越 満
 好き嫌いが分かれる映画の様ですが、私は割と交換が持てました。もっとはちゃめちゃな映画かと思ったのですが、割とまともな映画だったし…。映像も割と考えていて、本当にこういうのが好きなんだなぁというのが表れている感じがします。
ストーリーは陳腐と言えばそうですが、出演者が割とキャラにはまっていて楽しめた感じがします。

13.リング
監督 中田秀夫
出演 松嶋菜々子  真田広之
 これは結構面白かったです。割と正統的な攻め方でじわじわと怖がらせてくれます。
写真とかビデオの使い方とかがうまいですねぇ。「CURE」も結構怖かったですが、これもいい出来で邦画もなかなかがんばっています

14.ラブレター
監督 森崎 東
出演 中井 貴一  コウ・チュウ
 肝心の手紙のシーンで私は泣けませんでした。彼女の朗読と中井の描写だけで泣かそうとは、ちょっと芸がなさ過ぎます。もうちょっと工夫できたらと思います。とはいうものの、大体1回(正しくは2回)しか会っていないのですから回想もできないし、難しいですね。
 彼女が一目惚れしたのは分かるにしても、中井の心情が今ひとつ分かりませんねえ。必要ないかも知れませんが、前の奥さんと分かれた理由あたりをはっきり出した方が、まだよかった気がします。前妻との娘も普通の娘だし、わざわざ出してきた意味があまりなかった様に思います。

15.ラブ&ポップ
監督 庵野 秀明
出演 三輪 明日美  希良梨
 最近、コギャルが主人公の映画が増えていますが、なかなかどうして出来がいいです。好き嫌いは分かれる映画だと思いますが…。

ワーストの該当なしです。パチパチ(笑) 上位三作の差はあまりありません。北野武監督のうまさより鄭義信、平山秀幸のチャレンジぶり、磯村一路の清新さを買います。


洋画ベスト10 

1.恋愛小説家
監督 ジェームズ・L・ブルックス
出演 ジャック・ニコルソン  ヘレン・ハント
 ウッディ・アレン並の神経症の主人公とニール・サイモンばりのウィットに 富んだ台詞がとても小気味いいです。ジャック・ニコルソンの意外?な演技も いいし、うまくいきかけて、壊れるところも笑えます。脚本と役者だけでもいい映画ができるお手本です。

2.L.A. コンフィデンシャル
監督 カーティス・ハンソン
出演 ケビン・スペイシー  ラッセル・クロウ
 原作がいいのか、脚本がいいのか、いい具合に観客に応え、いい具合に裏切 ってくれる気持ちがいい作品です。(テーマはちょっと重いけれど)
 儲け役のケビン・スペイシーをはじめ、ラッセル・クロウ、ガイ・ピアース 等々、地味目なキャストもいいですね。逆にキム・ベイシンガーはこれで助演 女優賞取ったの?という感じですが、見栄えがいいと言えばいいです(笑)

3.ボクサー
監督 ジム・シェルダン
出演 ダニエル・デイ=ルイス  エミリー・ワトソン
 「マイ・レフト・フット」「父の祈りを」に続く監督、主演のコンビですが、IRAにここまでこだわると頭が下がるばかりです。しかも、ニュースだけではわからないことも色々勉強になります。ベルファストにあんなベルリンみたいな壁や検問がある とは知りませんでした。ダニエル・デイ=ルイスの役作りはさすがですね。デ・ニーロみたいです。エミリー・ワトソンは「奇跡の海」の印象が強くてちょっと怖いです。

4.グッドウィルハンティング  旅立ち
監督 ガス・ヴァン・サント
出演 マット・デイモン ベン・アフレック
 この映画、主演の若手二人で脚本を書いて、アカデミー賞の脚本賞を取ったのですが、脱帽物ですね。無理がなくもないのですが、割合素直に見て取ることができて、破綻がありません。マット・デイモン、ベン・アフレックもいずれも買いですね。ミニー・ドライバーは今ひとつですが、ロビン・ウィリアムスもさすが。一位同様タイタニックみたいに金かけなくても良い作品ができる見本です。

5.プライベート・ライアン
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 トム・ハンクス  マット・デイモン
 ちょっと長いかなぁという気もしますが、スピルバーグが嫌いな方も一応観ておいてよい作品ではないでしょうか。ネタは色々つきません。
 冒頭の戦闘シーンの迫力はなかなかのものです。DTS以上の音響のいい劇場での鑑賞をおすすめします。トム・ハンクスがメインではありますが、アバムという伍長の行動、心情を追いかけてみるのもいいかと思います。

6.この森で、天使はバスを降りた
監督 リー・デビッド・ズロートフ
出演 アリソン・エリオット  エレン・バースティン
 ヨーロッバ映画っぽい邦題ですが、アメリカ映画でした。内容はタイトルそのままです(笑) 田舎の小さな町にやってきた女性の周りでおこる出来事を淡々と描いていくのですが、導入のカメラワークから話にひきずり込まれます。キャストの演技もな かなかいいです。特にエレン・バーンスタイン。主人公はちょっとジョデイー・フォスターに似ていますが…。監督自身の脚本でのこれが1本目の監督作のようです。

7.ビヨンド・サイレンス
監督 カロリーヌ・リンク
出演 タティアーナ・トゥリープ  シルビー・テステュー
 聾の両親を持つ少女の成長を描く作品ですが、テーマ的にはあまり新しいものでは無くなっていますね。この作品は96年製作のようですが、「シャイン」なども連想させるし。少女期の女の子はなかなかよかったのですが、成長した後の娘役が普通っぽくて、今ひとつ存在感がなかったのが理由かも知れません。導入の部分などの撮り方はなかなか期待させたのですが…。

8.地球は女で回っている
監督 ウッディ・アレン
出演 ウッディ・アレン  デミ・ムーア
 ウッディ・アレン映画の集大成みたいなテーマですね。自分や周囲で起こる 出来事を小説にしている作家を主人公にしている話ですが、「女の都」や「81/2」 を連想させられました。アレン自身のことかなぁと思うくらい茶化しまくっています。例によってキャストがすごいですが、中でもロビン・ウィリアムスが大笑いです。よくあんな役引き受けたと思うようなボケた役です(笑) 

9.桜桃の味
監督 アッバス・キアロスタミ
出演 ホマユン・エルシャディ  アブドル・ホセイン・バゲリ
 うーむ。深い話ですね。穴の中で睡眠薬を飲み自殺をしたがっている主人公 が翌朝、その死を確認してくれ土をかけてくれる人を探してまわる話です。
 撮り方がすごくユニークです。主人公は車からほとんど出てきません。会話は大抵車の中で相手の姿は写さず声だけ聞こえてきます。郊外の土砂置き場?がメインなのですが、そこのジグザグ道を例によって一回一回丹念に撮っています。出演者が皆素人ってのも相変わらずすごいですね。途中とても眠かったのと最後の映像の意味が分からなかったのが残念。

10.オースティンパワーズ
監督 ジェイ・リーチ
出演 マイク・マイヤーズ  エリザベス・ハーレー
 今年最高のおバカ映画です。「ネタは「カジノロワイヤル」が主の007だと思うのですが、ちょっと元を忘れてしまっているのがおおいですね。また見直さないと…。  異常なサイケさが逆に今様でいいですね。時代錯誤ネタや悪役の部下の家族までの細かい心配りはニクイほどです(笑)
 最近、バート・バカラックがよく映画に使われていますがまさか本人が…。そして意外な人がチョコチョコと出てきますので、見落とし無きよう。

11.ポネット
監督 ジャック・ドワイヨン
出演 ヴィクトワール・ティヴィゾル  グザヴィエ・ボーヴォワ
 4才の女の子が突然の母親の死によって受ける衝撃と悲しみを描いた作品。
 死生観や宗教が違うのでストーリーや死の取り扱い方には、ちょっと違和感もありますが、この映画、そんなものは問題ではありません。主演の4才の女の子。演技なのか地なのかわかりませんが、一見の価値があります。

12.ダークシティ
監督 アレックス・プロヤス
出演 ルーファス・シーウェル  ジェニファー・コネリー
 今年一番の怪作です。この監督の前作「クロウ」も独特の雰囲気を持った映画でしたが、この映画も印象的でカルトになる要素を持っています。一言で言うと「ブ レードランナー」や「ロストチルドレン」に似た感じの映画です。「トゥルーマンショー」の裏版SFとも言えます。

13.タイタニック
監督 ジェームズ・キャメロン
出演 レオナルド・ディカプリオ  ケイト・ウィンスレット
 上映時間も3時間以上ありますが、日頃映画を見ない方にもおすすめできる作品というのがすごいです(笑) 実際にセットで船を作ったというのもすごいですが、沈没シーンでのスタントもすごいです。それに恋愛映画としてもひれだけで成り立つ話なので一本で二本分楽しめます。ストーリーも伏線がバリバリ効いていて気持ちがいい位です。キャシー・ベイツや楽団の人等脇役もいいので人間ドラマとしても味わえるようになっています。ただ、ちょっとストーリーテリングが今ひとつなせいか肝心なシーンでの泣かせ方が甘いのがご愛敬です。

14.ムトゥ・踊るマハラジャ
監督 K・S・ラヴィクマール
出演 ラジニカーント  ミーナ
 3時間弱、なかなか楽しめる作品でした。恋愛あり、歌あり、踊りあり、アクションあり。主役のオッサンはあまりカッコよくないけれど、ミーナはいいですねぇ(笑) でも、考え方変えれば「オースティン・パワーズ」真っ青のおバカ映画です。

15.始皇帝暗殺
監督 チェン・カイコー
出演 コン・リー  チャン・フォン・イー
 今世紀最後のローテク映画とのことですが、すごいセットですね。コン・リーを始めキャストの演技もそれれぞれいいのですが、中でもびっくりなのが、監督自身が宰相を演じていることですね。なかなか堂々としたものです。六国と秦の関係等は地図の一枚も入れて説明して欲しかったのですが、これは邦画的発想でしょうか。

ワースト フラッド
監督 ミカエル・ソロモン
出演 クリスチャン・スレーター モーガン・フリーマン
 顔ぶれの割にはトホホなストーリーでした。ヒロインのミニー・ドライバーも魅力無し。

 こちらも一位、二位、三位の差はあまりありません。「イヤー・オブ・ザ・ホース」と「河」は見逃しちゃいました。残念。「宋家の三姉妹」は今年封切りです(笑)


各賞です

邦画洋画
主演男優賞 柄本 明 (カンゾー先生) ジャック・ニコルソン (恋愛小説家)
主演女優賞 原田美枝子 (愛を乞う人) ミーナ (ムトゥ・踊るマハラジャ)
助演男優賞 大杉 漣 (HANA−BI、アンラッキー・モンキー) ラッセル・クロウ (L.A. コンフィデンシャル)
助演女優賞 中江 有理 (風の歌が聴きたい) エミリー・ワトソン (ボクサー)
最優秀監督賞 平山 秀幸 (愛を乞う人) カーティス・ハンソン (L.A. コンフィデンシャル)
最優秀脚本賞 鄭 義信 (愛を乞う人) マット・デイモン、ベン・アフレック (グッドウィルハンティング  旅立ち)
最優秀音楽賞 久石 譲 (HANA−BI) ジェームズ・ホーナー (タイタニック・この森で、天使はバスを降りた)
最優秀新人賞 田中 麗奈 (がんばっていきまっしょい) リソン・エリオット (この森で、天使はバスを降りた)



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