縮刷版96年10月上旬号


【10月10日】 体育の日を寝て過ごす訳にはいかないと思い、眠い目を無理矢理こじ開けて家を出る。昼御飯を食べて駅前をブラブラしていると、「民主党、鳩山由紀夫きたる」の看板を発見。1度見てみるのも悪くないと、電車に乗って津田沼まで出向き、歩道橋の上で演説が始まるのを待ち受ける。12時をちょっと過ぎて、レイソルの柱谷幸一によく似た髪型(顔の形も少し似てるか)鳩山サンがSPに囲まれて登場。選挙カーの上に乗って勇ましく演説を始めた。開口1番「今日は菅が来れなくて申し訳ない」と謝り、続いて持論をとうとうを述べていく。最初はおだやかに、時折激高する口調を交えての演説は、なかなかの巧みさと評価する。テレビで見ていた2代目(3代目だが)的なひ弱さはあまり感じられず、なるほど人は実物をみないと解らないものだと納得する。

 演説は30分くらいで終了。駅前で「民主党」と書かれたバッチをもらい、100年くらい経ったら価値が出るものなのだろーかと考えながら、駅前にある「本の雑誌」に制服の可愛い本屋として取り上げられた「昭和堂」に向かう。お目当ては「菅」さんの本。といっても「カン」ではなくって「スガ」と読む。そう、菅浩江さんの新刊「鬼女の都」(祥伝社、1800円)を探して昨日からあちこちの本屋をのぞいて歩いていたのであった。

 「本格推理の超新星誕生」という帯の文句に、これまでSFやファンタジーで優れた業績を残して来た菅浩江さんに失礼じゃないかと憤りを覚えたが、SFやファンタジーとミステリーのマーケットの差を考えると、これも仕方がないのかなーと弱気になる。実際中身は優れた本格推理小説で、京都の街に関する各種知識と、同人誌界にうずまく賞賛と羨望と嫉妬と憎悪を織りまぜながら、優れた物語を紬だしてくれている。まちがいなく今年下半期の最高傑作。これで菅浩江さんの名前が満天下に知れ渡ることになるんだと思えば、ミステリーへ行ってしまったことに喜びを表しこそすれ、悲しむべきではないのだろう。でもやっぱり、「センチメンタル・センシティブ」の続きを書いて欲しいなー。

 鳩山さんにちょっと似た柱谷幸一も出場するサッカー「JOMO CUP」をフジテレビで見る。スタート当初から飛ばしまくる外国人チーム。昨日帰国したばかりとゆーストイコビッチの華麗なドリブルやパスを見ていると、万全の体調で出ているのに動きも鈍ければイマジネーションも技術も低い日本人選手との違いを、否が応でも感じさせられてしまう。世界はまだまだ遥かに遠い。後半になって前園が得点したが、時はすでに遅し。外国人チームが2対1で逃げ切って、ドゥンガがMVPを獲得した。

 ストイコビッチがもっと長く出ていたらなーとも思ったが、まあ仕方がない。下手に怪我でもされたら、グランパスエイトのリーグ制覇がオジャンになっちゃうもんね。全日本人にはグランパエイトの選手は1人も入ってないし。優勝を争ってるレイソルは出ずっぱりがたくさん。日本代表にも選手を送り込んでいないグランパスエイトが休養充分でのぞむリーグ終盤は怖いぞー。


【10月9日】 明日(10日)が休日になるため、いつもは木曜日の朝に片づけていた影でコソコソやってる仕事を、水曜日の今日朝起きて片づける。画像と原稿をFDに入れて担当者に渡すと、紙面を刷新するから今月で打ち切りになるとの宣告。始めてから1年が経ち、そろそろネタも尽きていたから頃合だとは思ったけど、月々幾らかになった収入が途絶えるのはちょっと残念。来月からは少し本代をセーブしなくちゃならないかもしれないけれど、身に付いた浪費癖は簡単には抜けそうもないから、結局同じだけ本を買い込んで、結果預金通帳の赤字幅が広がることになるんだろーね。ウチの会社は別にアルバイト禁止じゃないから、新しい口が見つかればいうことなしなんだけど、金融を担当していた時みたいには、今の担当業種じゃそうそう簡単には見つかりそうもない。「アルバイトニュース」を読んでもアルバイト原稿の募集は載ってないし。文学賞でも狙って「公募ガイド」でも読むか。

 しかし読売新聞の夕刊には、最近の文学の傾向が解らなくなったと江藤淳が文藝賞の選考委員を降りたことが記事になっていて、その中に最近の若い人は雑誌の内容も選考委員の傾向もしらずに、ただ「公募ガイド」を見て応募しているんじゃないかとゆーよーな話が書いてあった。なんでも「文藝賞」だったか「海燕賞」だったかに寄せられた応募数が、雑誌の部数と遜色ないってことらしく、まさか雑誌の読者が全員小説を書いて応募しているはずもないから、大半は「公募ガイド」経由じゃないかって言われているんだとか。選考委員の誰々に読んでもらいたくって、小説を書いたってのも今は昔の話なのかなー。

 本屋でコミックの新刊漁り。柴田昌弘さんの「クラダルマ」が18巻で完結。なんだみんな良いヤツじゃん、ってなラストにほっとする。青磁ビブロスからは聖悠紀さんの「超人ロック」の新作が登場。「ミラーリング」(600円)と名付けられたシリーズの第1巻で、ロックは相変わらず緑の髪を逆立てて、宇宙を脅かす陰謀と戦うのであった、ってなストーリーかな。実はまだ読んでいない。

 それにしても、作画グループでの4冊と新書館での1冊を経て、「炎の虎」から始まった「少年キング」での連載及び単行本は、いったい何巻で終了したのだろーか。望月三起也の最高傑作「ワイルド7」が連載された名門雑誌の「少年キング」も、売れ行き不振からやがて隔週刊となり、休刊となってもう5年以上は経っただろー。一時は「少年キング」の看板を背負った「超人ロック」も、ライガー教授が出てきたあたりから話が解らなくなって、結局どんな最後になったのかを確認できなかった。

 キング時代の単行本は、青磁ビブロスから再刊されているけれど、刊行される順番がめちゃくちゃで、初めて読む人はきっと、時系列のどこに位置するエピソードなのか、理解できないと思う。個人的には「コズミックゲーム」と「魔女の世紀」(だったかな、キング・コミックスの第2巻ね)が一番好き。「ロードレオン」も良かったねえ。関係ないけど「超人ロック」によく似た髪型をした「スターシマック」ってな漫画もあったなあ。「ジャスティ」も髪の毛を逆立てていたし、「スーパーサイヤ人」も変身すると髪の毛が立つ。超能力者の髪型の系譜のなかで、「超人ロック」ってのは結構重要な位置を占めるのかもしれない。

 宮部みゆきさんの「蒲生邸事件」(毎日新聞社、1700円)の感想文にタグの誤りがあったので手直し。改行のタグを閉じていなかったため、文章が1段落、すっぽりと抜け落ちていた。未だにHTMLを満足に書けない自分が情けない。


【10月8日】 三菱総合研究所の発表会。環境庁の認可法人から委託されて開発したとゆー「地球環境学習ソフト」を見せてもらう。ウィンドウズ全盛の世にあって、PC98シリーズ、それもDOS環境でしか稼働しないってところがすごいけど、地方公共団体などにソフトを配布するときに調査したら、PC98シリーズでウィンドウズなんか入っていないパソコンを使っているところが圧倒的に多くって、この仕様になったとか。マウスを使わなくてもカーソルキーとリターンキーだけで操作できるのが特徴。カラーは16色で画像も静止画ばかりだけど、CGがグリングリンと動いたり、画像や音声がばんばん飛び出すソフトばかりの世の中で、こんなシンプルなソフトってなんか良い。2枚のFDに、地球温暖化に関するクイズが700問、用語解説が600題も入って2000円。サンプルを貰ったけど、PC98用だから見られない。

 会社の下にあるファーマシーで森永の「牛乳プリン」を買って食べる。吉野朔実さんの漫画「恋愛的瞬間 第1巻」(集英社、400円)に出てくるキャラクター、如月遊馬(女性だよ)が好きで食べているとゆーデザート。フタをあけると一見ヨーグルトっぽいまっ白なプリン様がご登場。スプーンですくって食べるとやっぱりプリンだった。姉妹品の「珈琲牛乳プリン」も結構なお味。そーいえば、果物がまるごと入ったヨーグルトが何年か前に流行った時にも、周囲の醒めた目を気にすることなくOLたちに混じってヨーグルト買って食べてたなー。やっぱり影響されやすい。

 フジサンケイグループ(FCG)がグループ社員向けに配っているニューズレターが届く。2面から4ページにわたって特集されているのが10月25日に授賞式が開かれることになっている「高松宮殿下記念世界文化賞」。「もはやトップの売名イベントではない 世界文化賞の真実99%を話そう」とゆー勇ましい見出しで、産経新聞の羽佐間社長が、他社の媒体はおろかグループ内でも同賞への関心が低いことに大爆発している。世界文化賞がトップ、つまりは鹿内家の売名イベントだったかどうかは知らないが、少なくとも第1回目の受賞者を見ると、売名行為にしてはあまりにも渋いセレクトだなーと思えてくる。

 たとえば絵画ではウィレム・デ・クーニングとデイビッド・ホックニー、彫刻ではウンベルト・マストロヤンニ、演劇・映像ではマルセル・カルネに賞が贈られている。知ってる人は知ってるけれど、誰でも知ってる有名人では決してない。ただの売名行為だったら、もっと有名な人に賞をあげて、賞自体への注目をもっと集めてもよかったのにと思えてくるけど、賞は賞としてしっかり選考したんだとゆーことなのか。だからこ世界での同賞への評価が、だんだんと高まって来ているんだろー(と手前味噌)。ちなみに今年の受賞者は絵画がサイ・トゥオンブリー、彫刻がセザール、建築が安藤忠雄、音楽がルチアーノ・ベリオ、演劇・映像がアンジェイ・ワイダ。ワイダと安藤忠雄はともかく、他は相当に渋い(とゆーか知らない)。

 1点、「絵画、彫刻など受賞者が一般になじみが薄く、候補者難になっているものもある。だから、絵画、彫刻を1部門にして、隔年に表彰したらどうか」というコメントには異論がある。なじみのあるなしで選んでいたら、かえって賞の価値を落とすことになると思うがいかがだろーか。世界中にアーティストはいるんだから、候補者難とゆーことは絶対にない。一般に知られていない人物ならば、この賞を与えることで満天下に知らしめればいーではないか。世界文化賞を功労賞に、あるいは人気ランキングにしては絶対にならないと、マジに思う。

 「開運なんでも鑑定団」は特番でも特別な演出はほとんどなし。出演しているのがカール・ルイスを筆頭にコロンビア大使にスウェーデン公使、ペリーの子孫、ガーナの王様と、錚々たる人たちになっているくらいで、お宝を見せて値段を付ける、いつもどーりの展開で3時間が過ぎていく。日本代表はよりによってダチョウ倶楽部と岡本夏生。どーしてなんだろーか。


【10月7日】 ドゥイングとゆー会社から届いた資料をもとに記事を書く。アーティストやクリエーターを支援するホームページを開設するとゆー話。フォトグラファーにイラストレーターにデザイナーにコピーライターといった、あらゆるアーティストの名前を登録できるコーナーを作ったり、デジタルデータを持っているアーティストには、作品を公開するコーナーを提供するって具合。そんなんでお金になるのかというと、直接はお金にならないけれど、アーティストの名簿や作品を見に来る人が、ついでに自分たちの会社の案内や自分たちの会社で作った作品を見てもらえれば、ちょっとしたピーアールになるってことなんだと思う。

 記事を書いていると、富士通の人が「エーベルージュ」のマック版のサンプルを持って登場。今週木曜日から始まる実質的な4連休を過ごす、これで格好の材料ができた。新紀元社から発売中の攻略本も付いていたから、ゲームに疎い自分でも、なんとか4日以内にそれなりの結果を出せるんじゃないだろーか。しかし秋晴れの休日を家でしこしこ育てゲーやってる姿って、恥ずかしくってとても親には見せられやしない。こーゆー時にひとり暮らしっていいなって思う。ひとり暮らしの30男が家でしこしこ育てゲーやってる姿って、傍目には相当にブキミなんだろーけ、誰かに見られてる訳でもないからいいか。

 夕方から目白のアルコタワー内にあるブエナ・ビスタ・ホームエンターテインメントへ。ローパーテーションで区切られた個人個人の座席に、ミッキーマウスやドナルドダックやダンボや白雪姫やら7人の小人やらのフィギュアが置かれていたのが目についた。先週行った会社には、セーラーマーキュリーや水野亜美ちゃんのフィギュアやグッズが置かれていたけど、全社的って訳じゃなかったから、やっぱりさすがにブエナ・ビスタ、愛社精神じゃなくって愛ディズニー精神に溢れた社員が集まってるなーと関心する。トトロの縫いぐるみの姿もあちことで見掛けたけどね。

 笠井潔さんの新刊「群衆の悪魔」を読む参考にしよーと、エドガー・アラン・ポオの「モルグ街の殺人事件」(新潮文庫、360円)を買って電車の中で読む。電車が駅に着いたので、上着のポケットに文庫本を突っ込んでホームに降り、改札を抜けてからポケットに手をやると文庫がない。もしやすられたかなんて思ったが、尻ポケットの財布(カラに近いけど)は無事だったし、胸ポケットの小銭入れも残っていたから、たぶんポケットに入れたと思って、地べたに落としてしまったのだろー。雑誌だったら300円が500円でも平気でごみ箱に捨てるのに、文庫本だと360円でも惜しいよーな気がするのは、本好きだからなのかそれともケチなだけなのか。

 本といえばトーハンから、マスコミ人に「本をどれだけ読みますか」と聞いたアンケートの結果が届いていた。新聞記者よりは編集者の方が本を読むって結果が出ていたり、編集者は3割が月に10冊以上本を読むって結果が出ていたりと、おおむね「マスコミ人は本を読む」って内容だったよーに覚えているが、読んでいる本の内容とか、雑誌のジャンルだとかは聞いてなかったみたい。本はともかく雑誌のほとんどは、きっと漫画だと思うんだが、「ニッポン人は大人が電車で漫画を読む」とゆーだけで話題になっているとゆーのに、「ニッポンのジャーナリストは電車で漫画しか読まない」なんて結果が出た日には、どれだけの衝撃を世界に巻き起こすことだろー。


【10月6日】 目白ギャラリーで開催中の作場知生さんの個展に行く。護国寺からトコトコトコと歩いて鬼子母神そばにあるギャラリーに入ると、一昨日キノトロープでお目にかかった作場さんが店番をしていた。印刷されたタロットカードを見たときにも感じたけれど、原画を見るとあらためてその仕事の緻密さに驚かされる。1本1本をロットリングでひいた線ということで、原画には幾分修正の後が見られるのではと思ったけれど、実物にはそんな痕跡は微塵もなく、さすがにプロの画家なんだなあと感心する。

 面白かったのが椅子の作品。鉄線を溶接して組み上げたものに、木製の座面や背当てを付け、肘掛けの部分には鉄板で作ったちょっとしたテーブルを付けてある。電気スタンドまで付けられていて、ポットと煙草と灰皿を左のテーブル、読み残しの本を右のテーブルに置いておけば、それで1日過ごせそうな気がしてくる。作場さんが知り合いの人と話しているのを横で聞きながら、2時間くらい会場にいたけど、場所が場所だけに来場者は自分とその知り合いの人をのぞくと女の子の2人組だけ。ちょっと寂しい。

 前に「ポオの館」(村神淳、1300円)というひどい本を出版していた鳥影社から、今度は「メタモルフォシス(変態)」(弥生南、1400円)という本が出ていたので性懲りもなく買い込む。「超実相界と古事記の合体世界、凄惨かつ清浄な古代からの因縁をめぐり、選ばれた美しき戦士の過酷な運命・・・・」。こんな帯のアオリを見ると、そうか今度はマトモかなとゆー気になるじゃない。ところがどっこいやはやなんとも。「ポオの館」ほどではないにしても、どこか素人くささというか同人誌くささが抜けておらず、居心地の悪い思いを味わいながら、なんとか読了へと持ち込む。

 こうゆー作品を喜んで出版する鳥影社って、いったいどんな出版社なんだろーかと、かえって興味が涌いてくるし、次に出る作品も、怖い物見たさで買って読んでみたくなる。地方出版社ならではの大らかさと言えば言えるんだろーけど、最近は別に地方の出版社でなくたって、各方面から「同人誌レベル」と糾弾される作品を刊行している出版社があるからなー。護国寺にある老舗の総合出版社のことね。

 それにしても上記で言わんとしている作品に対する、プロの作家の人たちの反応にはすさまじいものがあって、これを誉める評論家の見識を疑い、これを誉める評論家を起用する編集者の見識を疑うような厳しい意見も出てきている。どうせだったら「こんな作品が入っているノベルズに、自分の作品が入っているのは遺憾である」とかなんとか言って、版権を引き上げるなり絶縁を宣言するなり、何らかの行動を起こせばカッコいいのにと思う。平井和正さんなんてその昔、団鬼六さんの「花と蛇」がいっしょの文庫に入ったからと言って、時の角川春樹社長に手紙まで送って、取りやめを要請したんだから。


【10月5日】 「オズの魔女記」を読了。「ブラック・ファンタジー」を帯にあるから、さぞや毒に満ちた「アンチ・オズ」もしくは「メタ・オズ」かと思っていたら、実はドロシーに水をぶっかけられて融けてしまう「悪い西の魔女」ことエルファバの、細腕緑肌一代記であった。もちろん今年のベスト10入りという評価は変わらない。当たると幸い誉め倒す性格だから、今ならベスト3といってしまいそー。訳文が切れ味するどく読み心地がいい。それにしても一切の解説もあとがきもなく、作者の作家としての履歴もないから、どういう経緯で書かれた作品で、どういう評価を受けているのかがまったく解らない。どこかに詳しい人はいないだろーか。

 どうせだからこの際「オズの魔法使い」を読み返してみよーと本屋で探すが、早川だったかの文庫から出ていたバージョンはすでに本屋に見あたらない。仕方がないので子供向けのバージョンを探すが、岩波少年文庫からは出ている様子がなく、「先生がすすめる名作4年生」と帯に書かれたポプラ社版(文・守屋陽一)を購入する。平仮名が多くて漢字に読み仮名の振ってある子供向けの本は読みやすい。しかしドロシーが魔女を家ごと踏みつぶしたり、オズの魔法使いが詐欺師だったりって残酷さと滑稽さに満ちた話を、子供心ながらドロシーによる夢と冒険のファンタジーと読んでいたなんて。シェリー(だったかな)が主演してたテレビの連続ドラマも毎週嬉々として見てたしなあ。提供はホンダだった。

 しかしタネ本のある小説は読むのが疲れる。元の本を読んでいなかったり、読んでも覚えていなかったりで、小説の楽しみが減殺されているよーで気になって仕方がない。かといってもー1度読み返すのは難儀だし。「オズの魔法使い」のよーに30分もあれば読み返せるのならいーんだけど、笠井潔さんの新刊「群衆の悪魔」のよーに、エドガー・アラン・ポーの生み出した名探偵、オーギュスト・デュパンが再登場する小説だと、難解なポーの小説を読み直しているだけで、何日もかかってしまってなかなか笠井さんの方に移れない。大昔に「モルグ街」を読んだくらいの生半可な知識で、果たして「群衆の悪魔」の面白さが理解できるかちょっと心配。笠井さんのことだから、それでも楽しませてくれるだろーと思うけど。

 ヴェルディ川崎はアビスパ福岡にVゴール負け。名古屋グランパスエイトは横浜マリノスに先行逃げ切り。テレビ放映のあった2つのJリーグ中継は、どちらも期待(予想)どうりの結果に終わった。マグロンが吹っ飛んだヴェルディが、パス主体のチームに復帰できるかと思ったら、なかなかうまくボールが回らない。責めきれずに最後、マラドーナのゴールで負けてしまった。選手のモチベーションが相当下がっている。レオンはいよいよ首の皮1枚か。グランパスは出だしこそ快調に岡山、平野あたりが頑張って点をポポンととったが、あとは攻めても攻めても点が入らず、後半は中盤までマリノスが押していた。岡山は凄みが出てきた。平野もどえりゃー速いし巧い。どーして日本代表にならないんだこの2人が。


【10月4日】 グレゴリー・マグワイアの「オズの魔女記」(大栄出版、2575円)を読み継ぐ。いやー凄い、これは凄い、とにかく凄い。あまりの凄さに、ずるずると物語に引きずり込まれてしまって、そのまま抜け出せずにいる。間違いなく今年のベスト10に入る本だと、途中まで読んだだけなのにはや断言してしまう(いいのか? いいのだ!)。内容はといえば、「オズの魔法使い」でドロシーがやってくる、その何10年も前の時代について書かれた本らしーとゆーことはよーやく解ったが、実際の「オズの魔法使い」がどんな話で、ドロシーご一行様以外にどんな出演者がいたのか覚えていなくて、「オズの魔女記」に主要な登場人物、例えばエルファバとか、あるいはグリンダとかいった女性たちが、「オズの魔法使い」でどんな役割だったのかを知らずに読んでいる。それでも充分に面白い。ようやく300ページ、あと370ページ。1日かかるか、2日かかるか。うーん楽しみ楽しみ。

 マルチメディア・タイトル制作者連盟(AMD)に寄る。表参道から脇に入った場所にあると覚えていても、いつも1度で辿りつけない。この辺りだろーと当たりを付けて進んでいくと、袋小路に入ってしまって引き返し、さっき曲がった途中の交差点を曲がらずに真っ直ぐすすんで、ようやく見覚えのある建物にたどり着く。ドアを開けると、オフィスのレイアウトが替わっていて、人の数も増えていた。エライ美人が働いていて、事務局長の布施さんウラヤマシイと心の底で冷やかす。当人は来月のイベント「デジタル・コンテンツ・フェスティバル」の準備でそれどころじゃなさそー。雑談している間にも、オラシオンの菊地哲榮社長からガンガンと電話が入って来たりしてた。菊地さんのことだから、電話口からあの大きな声が聞こえてこないかと耳をそばだててみたが、さすがに聞こえてこなかった。

 夕方になって大日本印刷が銀座で運営しているギンザ・グラフィック・ギャラリーに行く。今日から「チェコ・アヴァンギャルド・ブックデザイン 1920’s−30’s」のオープニングレセプション。展示してある本の表紙やら中身と見ていて、うーんこれは平野甲賀さんのデザインにどこか似ているなーと思って、階段をおりて地下に行く途中に貼ってあった展覧会のポスターを見て吃驚。平野甲賀さんがデザインしているではないか。ポスターをよく読むと、展覧会の企画に平野さん自身が参画していて、なるほどこれなら似ているのも道理だと納得する。元広報室長の津野さんが、そっくりな人を連れて歩いていたので訪ねると兄だという。「もしかして晶文社の津野海太郎さんですか。『本とコンピューター』なんかを書いた」と聞くと「そうです」とのこと。名字を見てもしかしてとずーっと思っていたが、的中するとやっぱり驚く。早速名刺を渡してご挨拶。声までそっくりだった。

 途中で抜け出して地下鉄千代田線で代々木上原へ。キノトロープの新オフィス移転を記念するレセプションに顔を出す。これまで2度お邪魔してついぞお目にかかれなかった女王様のご尊顔を拝見。御拝謁を賜る。机はやっぱりセーラーマーキュリー&水野亜美ちゃんだらけだった。さてキノトロープ、最近NECクリエイティブとゆー会社のホームページにオープンした「タロット占い」のコーナーを制作したとか。実際にのぞいてみると、まるで銅版画のよーな綺麗なデザインのタロットカードがホームページ上に現れた。

 「不思議の国のアリス」の挿し絵とも、あるいはハンス・ベルメールの猥雑なデッサンとも、さらには金子國義の耽美な絵画ともとれるよーな奇妙な味と雰囲気を持ったタロットカード。もともとホームページで公開するためだけに描いてもらったこのカードを、なんとキノトロープでは印刷して本当のタロットカードにしてしまった。箱入り謹製限定1000部。絵を描いたのは作場知生さんとゆー方で、会場にいたので尋ねてみると、銅版画と思えた細い細い線描は、実はロットリングで細かく細かく描かれているのだそーな。早速1部購入して、目の前で作場さんにサインしてもらう。20年後に「開運なんでも鑑定団」に出品すると、とてつもない値段がついているかも。ちなみに作場さんは10月31日まで豊島区高田1−38−12−106の目白ギャラリーで個展を開催中。タロットの原画も飾ってあるとかで、タロットに興味のある人や、こっち系のイラストに興味のある人はぜひのぞいてみてください。感動します。


【10月3日】 グレゴリー・マグワイアとゆー知らない人が書いた、「オズの魔女記」(2575円)とゆー知らない本を買う。出版社も大栄出版とゆー知らない会社。知らないづくしなのに買ってしまったその理由は、ひとえにこの本が「オズの魔法使い」を下敷きにしたファンタジーだったからに他ならない。「独裁者オズ大王、小さな刺客泥シー、そして魔女に仕立て上げられた哀しい女−善と悪、常識と非常識がいりみだれるブラック・ファンタジー」とゆー帯の文句を読んで、どーして心惹かれずにいられよー。

 別に「オズの魔法使い」の熱烈なファンというわけではなく、ライマン・フランク・バウムの原作も少年少女向けのバージョンを10年以上昔に数度読んだだけ、ジュディー・ガーランドの映画も見たことがなければ、最近まで放映されていたアニメ「オズ・キッズ」など鼻も引っかけなかった人間なのに、「オズ」という素材にはどこか人を惹きつけずにはおかれないところがある。ブリキのきこりにかかしにライオン。そしてドロシーのパーティーが天竺にお経を、じゃなかった黄色のレンガの道を通って魔女のところに向かうという(そうだったっけ?)ストーリーは、子供の心に冒険の楽しみと仲間とふれあう喜びを教え、後々までも影響を与え続けるものらしい。

 いわば「"裏"オズの魔法使い」ともいえる「オズの魔女記」がどんなストーリーなのか、100ページあまりを読んだ段階ではまたく解らない。なにせ670ページに及ぶ大著。途中で挫折する恐れもこれありで、読了にはしばらくどころか相当の時間がかかりそーな予感がする。とりあえず今月の講談社ノベルズに惹かれる作品がなかったのが幸いだけど、すでに笠井潔さんの新刊は並んでいるし、それにグインサーガの新刊もまだ読んでいない。週末、あるいは来週の中休みなどが一気読了の狙い目か。金も尽きるころだし。

 童話のパロディという意味では、古本屋で150円で買った坂田靖子さんの「ビーストテイル」も同様のテイストを持っていた。「フェアリーテイル(妖精譚)」ならぬ「ビーストテイル(野獣譚)」。とはいえ「ジャックと豆の木」や「カエルの王子」や「ヘンゼルとグレーテル」といった元ネタを、まったく裏返しにて善玉を悪玉にしたり、残酷な結末を持たせるようなことはしておらず、むしろ元ネタの善意の部分をふくらませて、心地よく後味のよい作品に仕立て上げている。もとよりほんわかほのぼのとした絵柄に特徴の坂田さんのこと。おかしくも哀しい珠玉のストーリーを枕に、秋の夜長を1人(あーあ)過ごす。

 名古屋に本拠地を置くプロのスポーツチームは、サッカーのグランパスエイトが3位、野球のドラゴンズが2位で、ともに優勝争いの渦中にある。名古屋の方ではいったいどんな騒ぎとなっていることやら。プロじゃないけどラグビーでトヨタ自動車が優勝でもした日には、名古屋の天下ここに極まれりってことになるんだろーけど、世の中そううまくいくはずがない。ドラゴンズは決戦を前にコロリと負け、グランパスはケイロス就任前に足並みが乱れて総崩れになるよーな気がしてならない。それにしても、仮に千葉で柏レイソルなりジェフユナイテッド市原がトップにいて、おまけに千葉ロッテマリーンズが優勝していたとしても、名古屋ほどには地元意識で喜んでくれるファンがどれだけいるだろーか。レイソルに優勝の可能性があるだけに、しばし成りゆきを見守っていきたい。


【10月2日】 エレクトロニクスショーに行く。去年までは晴海だったから、今年は東京ビッグサイトだろーと思っていたら、何のことはない幕張メッセに開場を移していたではないか。昨日確認しておいてよかった。間違えたまんまで東京ビッグサイトに行ったら、大たわけを見るところだった。実はエレクトロニクスショーに関しては、一昨年、開幕の1日前に間違えて晴海まで行ってしまい、搬入される機材を呆然とながめていた哀しい悲しい経験がある。大たわけを見るのは1度でいいからね。

 家から1番近い幕張メッセだから、9時に出ても9時40分には着いてしまう。しばらく時間を潰して10時ちょうどにプレス受け付けを済ませて入場。正面ゲートはとっても込むから、早く入りたい人はプリンスホテル側の入り口から入るのがいいよ。一番手前のホールがお目当てのDVDが並んでいるコーナー。さぞや派手にやっているかと思ったら、どのブースもCDプレーヤーが巨大化した、とゆーか初期のCDプレーヤーによく似た大きな箱のDVDプレーヤーが並べられているくらいで、音楽ガンガンとか映像をバンバンとかいった、目立つデモンストレーションは少なかった。

 モニターに映し出されているDVDの映像も、おーっと思わせるようなクリアさはあまり感じられない。これはひとえに自分の見る目の無さだとしても、ビデオCDやLDやハイビジョンを今も売ってる会社が、DVDの「優秀さ」をアピールするよーな「比較展示」はさすがに出来んと見た。銀のコスチュームの2人組が踊っていたのはカシオのブースだったかな。パイオニアのブースのコンパニオンにちょっと惹かれたなあ。LDコンパチが10万切ったら買ってもいいかな。アニメ見たいし。(ビデオ買えよおtoオレ)

 届いていたリリースの処理。昨日発表のあった占いCD−ROMソフトは富士通パソコンシステムズの製品。かの偉大なる占星術師(なのかな)の「ルネ様」ことルネ・ヴァン・ダール・ワタナベ先生が監修しているソフト。一定回数を使うとクイズが出て来て、正解すると先着100人にルネ様の直筆サイン入り自分だけのホロスコープがもらえるとか。うーん、ちょっと欲しいぞ。ほかには電通ギャラリーでIR(インベスターズ・リレーションズ)の展示会が始まった話とか、日本IBMが手話のCD−ROMを発売するとゆー話とかを適当に。そうこうしているうちに日が暮れる。秋の日は釣瓶落とし。仕事をしてもしなくても夜は来る。

 夕刊フジに連載された大傑作にして今やマボロシと化した「赤富士」で大ファンになった、唐沢なをき大先生の「電脳なをさん」(アスペクト、1600円)が出ていた。カラーだらか仕方がないけど、1600円ってーのはちょと高くないかアスペクト。再建途上の会社だからしゃーないっちゃーしゃーないけど。それにしても。ねえ。さて「電脳なをきさん」のほうの印象は、マックユーザーを励ましているのか、それともおとしめているのか、見るときの気分次第でがらりと替わる。エラーが出てきて画面が動かなくなった瞬間は、怒髪天で「くぬやろマック」と思っているから後者。最近そっちの方が多くなってるのがちょっと気になる。メモリー買い足そうかな。それともHDを増設しよーかな。(ウィンドウズ買えよおtoオレ)


【10月1日】 明け方に寒さで目が覚める。布団1枚かけているだけではもう我慢ができないくらいに、部屋のなかが冷え込んできた。背中がぞくぞくとして妙な寒気がある。顔に血が上がっていなくて眩暈でふらふらする。買い置きのエスファイトを2錠ばかり水で流し込んで、もう1度寝る。手足が多少暖まってきたうよだ。そのまま目覚ましをセットした時間まで眠り続ける。今晩は毛布を出して上にかけよう。

 ジョン・クロウリーの「ナイチンゲールは夜に歌う」(早川書房)を途中まで読む。SFともファンタジーとも幻想文学とも、どれとも言えてどれとも言えないような不思議な話が詰まってる。まだ表題作と、第2話の「時の偉業」の途中までを読んだだけなので、ほかの話がどんな雰囲気を持っているのか即断はできないけれど、手触りは結構心地よい。こういう作風の人なのかと再認識したついでに、買ったままでずーっと棚に飾ってあった「エンジン・サマー」(福武書店)でも読んでみよーかとゆー気になった。「エヂプト」は来年まで出そうもないし。

 週末にギンザ・グラフィック・ギャラリーで「チェコ・アヴァンギャルド ブックデザイン」とゆー展覧会が始まるので、下勉強にと思って亀山郁夫さんの「ロシア・アヴァンギャルド」(岩波書店)を買う。チェコとロシアのアヴァンギャルドが関係あるのか関係ないのか、たぶんあんまり関係なさそーなんだけど、とにかくまあ1930年前後の芸術運動を知っておくことは悪くない。ちなみにロシア・アヴァンギャルドに連なるアーティスト、ロトチェンコの展覧会を青山のワタリウムで見たことがあるけど、正直よく解らなかった。限定生産のマグカップを買っとけばよかったかなーと、今になって思っている程度。よけいに新書で勉強して、週末の展覧会にも行って、あれこれながめて来よーと思ってる。

 ソフトバンクと電通が作ったインターネット広告代理店のサイバー・コミュニケーションズが、「ヤフー! ジャパン」に続いて新しく7つのサイトの広告仲介を受け持つことになったとか。「ウェザーニューズ」とか「ジャムジャム」とかいったメジャーなサイトに混じって、「ネットシティ おたくウイークリー」とかいった名前のサイトが入ってた。オタキングこと岡田斗司夫さんが週刊で情報を発信するサイトってことになるのかな。いったいどんな広告が入るのかとっても楽しみ。読者層が極めて限定されるだろーから、アニメ、コミック、ヤング・アダルト、同人誌とかいった関係の広告とか、ガレキ関係やギャザ関係やコスプレ関係(って何だ?)の広告とかを入れておけば訴求力は抜群。特定の対象にならば、持てる財力のすべてを投入するおたくの消費性向に、強く訴えかけることができるだろー。

 夜になって赤坂のインターネットスポット「サーフスケープ・トーキョー」に。テレビ埼玉とCSの「キッズステーション」でテレビ番組「インターネット天国」が始まるってゆー内容の発表をのぞく。これまでもときどき記者発表会の会場として使われていた「サーフスケープ・トーキョー」だったけど、今日はいつにも増して大勢の女性インストラクターが揃っていた。会見には「サーフスケープトーキョー」を運営しているスキャンテクノロジーの人と、「インターネット天国」で司会を務めるエイガアルの伊藤淳子さんが出席。インストラクターのお姉さんたちを交えて、番組の見所なんかを説明していた。

 それにしても推定××歳(検閲済み)の伊藤淳子さん。そうとは思えないほどの馬力で会見後のちょっとした懇親会の開場を、来場者の合間を縫って飛び回っている。1度お目にかかった程度の新参者ではとりつく島もないので、なぜか会見場にいた漫画家の寺沢武一さんなんかが歓談している懇親会のフロアを、ヤキソバを食べながら遠巻きにして見ていた。パーティーは苦手だ。ちなみに番組はテレビ埼玉が毎週日曜日の午後6時半から30分、キッズステーションが毎週午後0時半から30分。「キッズステーション」は、ほかにアニメとか幼児向け教育番組ばっかを流している局なのに、日曜日だけは「銀河戦国群雄伝ライ」と「みゆき」の合間に「インターネット天国」が挟まっている。ちょとと不思議。

 あと「キッズステーション」の番組表を見ていて、そのままCSアンテナとチューナーを買いに走りたい衝動に駆られた。どんな番組が放映されているかを少し例示すると、「花の魔法使いマリーベル」「俺はあばれはっちゃく」「宇宙船サジタリウス」「紅三四郎」「タイムパトロール隊オタスケマン」「美しきチャレンジャー」「アテンションプリーズ」等など。おっと「セーラー服反逆同盟」もあった。まるで「懐かし番組大集合」。しかもフル放送。見ているひとはきっときっと濃い人に違いない。血中おたく濃度が、だよ。


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