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11.シネマと書店とスタジアム 12.激しく倒れよ 13.一号線を北上せよ 14.無名 15.冠(コロナ)(文庫化改題:廃墟の光、新潮文庫:オリンピア1996 冠<廃墟の光>) 16.杯(カップ) 17.1960 18.凍 |
【著者歴】、テロルの決算、深夜特急・第一便黄金宮殿、同・第ニ便ペルシャの風、同・第三便飛光よ飛光よ、象が空を、檀、オリンピア、贅沢だけど貧乏、血の味、イルカと墜落 |
ポーカー・フェース、キャパの十字架、旅の窓、流星ひとつ、銀河を渡る、旅のつばくろ 、天路の旅人 |
あなたがいる場所、月の少年、ホーキのララ、波の音が消えるまで、春に散る |
●「シネマと書店とスタジアム」● ★☆ |
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2005年07月
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新聞に掲載した映画評と書評、スポーツ観戦記を集めたというエッセイ集。 映画、本、スポーツ観戦という中では、やはりスポーツ観戦に沢木さんならでは鋭い視点、切り込みがあり、何といっても魅力。とくにモハメド・アリを語った篇は秀逸です。 Cinema銀の森へ/Booksいつだって本はある/Games冬のサーカス/Booksいつだって本はある/Gamesピッチのざわめき/Cinema銀の森へ |
●「激しく倒れよ−沢木耕太郎ノンフィクション1−」● ★★★ |
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ノンフィクション全9巻の第1巻。本巻は、スポーツ選手を中心にした一冊です。 本巻に収録されているのは、ノンフィクション12篇+回想1篇。そのどの篇をとっても、1篇だけで十分1冊の本に匹敵するだけの中身があります。そんな作品を1冊で味わえるのですから、これはもう何という贅沢か、と思わざるを得ません。 まずゴルフでは、尾崎将司。野球では、長嶋と同じ有望新人として巨人に入団しながら及ばなかった難波三塁手、毎日オリオンズ・ミサイル打線の一人だった榎本喜八。マラソンでは、東京オリンビックで銅メダルを取った後自殺した円谷幸吉。同様に過大な期待を負わされた瀬古利彦は、何故惨敗したのか、何故自殺することなかったのか。 儀式/イシノヒカル、おまえは走った!/三人の三塁手/さらば宝石/長距離ランナーの遺書/ドランカー<酔いどれ>/ジム/コホーネス<肝っ玉>/王であれ、道化であれ/ガリヴァー漂流/普通の一日/砂漠の十字架/暗い廊下(ナイン・メモリーズ1) |
●「一号線を北上せよ」● ★★ |
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2006年05月
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紀行文4篇+αというエッセイ集。 題名にある「一号線」とは、ヴェトナムのホーチミンとハノイを結ぶ幹線道路とのこと。ヒッチコック映画「北北西に進路を取れ」に似た、是が非でも北上したいという衝動が沢木さんを駆り立てたそうです。 したがって、本書の中心にあるのはヴェトナム紀行と言って良いでしょう。「メコンの光」と「ヴェトナム縦断」の2篇。ホーチミンから途中のフエまで、一号線をバスで旅する一切は「深夜特急」の番外編を読むような楽しさ。沢木さんの旅は、いつも一人旅の魅力を甦らせてくれます。 「鬼火」は、ご本人曰く、沢木さん初の紀行文。「檀」の檀一雄が晩年暮らしたポルトガルのサンタクルスを訪ねる旅です。 また、「記憶の樽」は「深夜特急」の最後を飾るスペインのマラガを再訪する旅。 「象が飛んだ」は、28歳のホリーフィールドに今や42歳のジョージ・フォアマンが挑む、ヘビー級ボクシングのタイトルマッチ。「激しく倒れよ」でアリ、フォアマン、フレイジャーというチャンピオン争奪の流れを読んだ後だけに、感慨深いものがあります。 いずれも、これまでの沢木さんの著書と何らか繋がっているエッセイばかり。その割に、沢木作品としては比較的気軽に楽しめる一冊であるところが魅力です。 なお、ヴェトナム紀行は「サイゴンから来た妻と娘」等の著者・近藤紘一さんとの関わりが発端となっていますが、田口ランディ「忘れないよ!ヴェトナム」といい、ヴェトナムは如何にも良さそうなところです。是非行ってみたいと、心誘われます。 一号線はどこにある?/メコンの光/キャパのパリ、あるいは長い一日/象が飛んだ(アトランティック・シティからの手紙)/鬼火/ヴェトナム縦断/落下と逸脱(アルプスだより)/記憶の樽 |
●「無 名」● ★★ |
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2006年08月
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89歳になる父親の最期を看取った日々を語る一冊。
いずれ私も、自分の親、そして自分自身において迎える究極の日々です。ですから、決して他人事ではなく、私自身も沢木さんの立場に身を置きながら読み進んだ一冊です。 祖父は戦前の逓信省を取引先とする通信機器会社の経営者。したがって、父は幼少時代を裕福な家の次男として過ごしますが、会社が疑獄事件に巻き込まれてすべてを失い、戦後の父は不似合いな工場勤めをしたといいます。 |
●「冠(コロナ)
OLYMPIC GAMES」● ★★ |
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2008年06月 2021年06月
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雑誌「ナンバー」に、「廃墟の光」というタイトルで連載された1996年アトランタ・オリンピック取材記の単行本化。 冒頭、沢木さんはオリンピック発祥の地、ギリシャのオリンピアを訪ね、また近代オリンピック生みの親となったクーベルタンを偲びます。オリンピックの取材に先立ち、原点に遡って考えようとするあたり、如何にも沢木さんらしい。 もうひとつ本書に惹かれる点は、華やかな面、勝者のみに視点が当てられるという一辺倒な取材記でないこと。勝者になり得なかった選手たちの後ろ姿、合い間に洩らす本音こそ、まさに人間ドラマとして興味尽きないものがあります。 冬のオリンピア/ささやかな助走/始めようぜ!/普通の国のジャンヌ/ストーン・マウンテンまで/華と爆弾/スターのいる風景/カーニバル、カーニバル/祭りは終わった |
●「杯(カップ) WORLD CUP」● ★★★ |
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2006年05月
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2002年、日韓共催となったワールドカップ・サッカーの取材記です。本書の元になっているのは、雑誌「アエラ」に連載された沢木さんの「コリア・ジャパン漂流記」。 沢木さん冒頭に曰く、「ワールドカップには、自国の代表チームを応援する楽しみと最高のものに触れる楽しみ」があるが、「もうひとつ、思いもかけないものに遭遇する楽しみ」があると。 緑の海へ/得ることと失うことと/曙光/トラベラーズ・ハイ/巨艦の沈没/冷たい雨の中で/赤い歓喜/杯<カップ>の行方/春のソウル |
●「1960−沢木耕太郎ノンフィクション7−」● ★★ |
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「危機の宰相」は、1977年の「文藝春秋」に一挙掲載されて以来、未刊行になっていた長編。元々は、「テロルの決算」および「未完の六月」と併せて“1960年三部作”の構想だったそうです。 本書の中心的内容は、“所得倍増”という強烈なキャッチフレーズが誕生した経緯と、それを唱えた池田勇人という人物を追及したもの。必然的に経済論、経済数値が度々登場し、何故沢木さんがこの作品を書いたのか、不思議な気がします。 現在からすると、1960年もその発言ももはや歴史の中の出来事になっていると言うべきでしょう。当時には、敗戦という苦難を土台にしての希望、熱意があったと感じます。それが今では政治も官僚も何故あれ程の体たらくを示しているのかというと、高度成長時の既得権に固執している所為だと思い至ります。 危機の宰相/テロルの決算/未完の六月(ナイン・メモリーズ7) |
●「 凍 」● ★★★ |
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2008年11月
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ヒマラヤの高峰ギャチュンカン(7,952m)北壁に挑んだクライマー、山野井夫妻を描くノンフィクション。 登山に全く知識がなかった所為か、高峰へのクライミングというと登山隊を組んで幾つものベースキャンプを設置して段階的に登っていくものとばかり思っていたのですが、それとは全く違った登山方法があるというのを本書で初めて知りました。 前半では山野井泰史さん、9歳年上の奥さんである妙子さん各々の、これまでのクライマーとしてのきっかけ、経歴が語られています。実力あるソロ・クライマー、稀に見る強さをもった女性クライマーとして評価の高い2人の日常生活は、山に登ることに集中して極端なまでに質素なもの。ただし、この辺りでは単にふ〜んという思いで読んだ部分。 本書に隙のなさを感じるのは、沢木さんが“闘い”という視点から2人を見ているからだと思います。まさに沢木ノンフィクションの真骨頂でしょう。闘いであるが故に緊張感、闘志、判断力・決断力、実行力がすべて発揮され、かつ試される。読み手はその姿に感動を覚えるのです。 ギャチュンカン/谷の奥へ/彼らの山/壁/ダブルアックス/雪煙/クライムダウン<下降>/朝の光/橋を渡る/喪失と獲得/ギャチュンカン、ふたたび/後記 |
●「「愛」という言葉を口にできなかった二人のために」● ★★ |
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2010年04月
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本書は「世界は「使われなかった人生」であふれてる」に続く2冊目となる映画エッセイとのこと。31編を収録しています。 本書に書かれている映画の中で私が観たことのある、あるいは知っていた作品は僅かです。雑誌に映画評を連載しているということですから、沢木さんの観た作品が多いのは当然のことでしょうが、それにしても、と思う。 なお、本書で取上げられた映画の内私が観たことのある作品は僅かに次のものだけ。 |
●「旅する力−深夜特急ノート−」● ★★★ |
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2011年05月
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「深夜特急」の前後、裏側を書いた、ファン必読の最終巻。 副題に「深夜特急ノート」とあるものの、最初は旅に関するエッセイ集と軽く考えていました。 まず冒頭は、沢木さんが初めて経験した“旅”、そして高校生の頃に経験した本格的な旅のこと。 あのような旅ができたのは、そして、そうした旅をする力があったのは、若い時だからこそと改めて思います。 旅を作る/旅という病/旅の始まり/旅を生きる/旅の行方/旅の記憶/旅する力 |
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