恩田陸作品のページ No.

 

11.上と外

12.puzzle パズル

13.ライオンハート

14.MAZE

15.ドミノ

16.黒と茶の幻想

17.図書室の海

18.劫尽童女

19.ロミオとロミオは永遠に

20.ねじの回転

 

【作家歴】、六番目の小夜子、球形の季節、不安な童話、三月は深き紅の淵を、光の帝国、象と耳鳴り、木曜組曲、月の裏側、ネバーランド、麦の海に沈む果実

→ 恩田陸作品のページ bP

 
蛇行する川のほとり1〜3、まひるの月を追いかけて、
Q&A、夜のピクニック、夏の名残りの薔薇、「恐怖の報酬」日記、小説以外、蒲公英草紙、エンド・ゲーム、チョコレートコスモス

→ 恩田陸作品のページ bR

 
中庭の出来事、朝日のようにさわやかに、猫と針、不連続の世界、きのうの世界、ブラザー・サン シスター・ムーン、六月の夜と昼のあわいに、私と踊って、蜜蜂と遠雷、祝祭と予感

→ 恩田陸作品のページ bS


ドミノin上海、スキマワラシ

→ 恩田陸作品のページ No.5

  


   

11.

●「上と外」● 


上と外画像

上と外画像

幻冬舎文庫
2000年08月〜
2001年08月刊
(419〜457円+税)

2003年02月
幻冬舎
<単行本化>
(1900円+税)



2000/08/13

スティーヴン・キング「グリーン・マイルにならって、隔月連続刊行、全5巻で完結しようと試みた作品。しかし、結果的に1年を費やし、全6巻にて完結。お世辞にも試みが成功したとは思えません。

1.素晴らしき休日    2000.08
2.緑の底        
2000.10  
3.神々と死者の迷宮(上) 
2000.12
4.神々と死者の迷宮(下) 
2001.02
5.
楔が抜ける時     2001.06
6.みんなの国      2001.08

主人公は、両親が離婚し、現在は祖父宅で暮らす中学生・楢崎練。ストーリィは、夏休みの恒例で練が、今は別に暮す義母・千鶴子、妹・千華子と共に、考古学者である父・のいる中央アメリカへ出掛けることから始まります。密林と遺跡がある一方で、軍事政権の国。その国で、練たち4人は突如起きた軍事クーデターに巻き込まれ、練と千華子は飛んでいるヘリコプターから、眼下の密林に放り出されます。その後、練と千華子が立ち向かうことになった冒険が、本書の中心ストーリィ。
密林の中には古代遺跡のピラミッドが幾つも聳え立っていることに練と千華子は気付きますが、やがて2人は少年たちに捕われ、練はマヤ文明に伝わる“成人の式”に挑戦させられることになります。
第1巻で感じたのは、従来の恩田作品とは異なる外国を舞台にしたサスペンスだけに、果たして恩田さんがきちんと纏め上げることが出来るのか。ストーリィより、そのことの方にスリルを感じていました。
第2巻に入ると、本書は
ダーク・ピットジュニア版という様相を呈してきます。ただ、ストーリィ展開があまりに都合良く、いくら冒険物語とはいえ絵空事過ぎないか、と感じます。
第3巻以降、結局それ以上興に乗る訳でもなく、決着まで長く待たされた為、最終巻に至って「あぁ、やっと終わったか」というのが正直な思い。厳しい言い方をすると、結局子供だましの冒険ストーリィで終わってしまったか、という感想です。隔月刊行というスタイルは、かえって興味も間延びさせてしまったように思います。

   

12.

●「puzzle パズル」●

puzzle画像

 2000年11月
祥伝社文庫刊
(381円+税)

2000/11/08

何だか判らん、というのが正直な感想。通勤の片道、30分程で読み終えた短いストーリィです。
廃虚となったコンクリートの建物が残る無人島。そこで3人の変死体が発見されたということ。そして、その無人島に2人の青年が上陸します。検事同期生である、黒田志土、関根春六番目の小夜子に登場した関根秋の兄)の2人。
何の目的で2人はこの島に来たのか。それさえもはっきりしないまま、関根春の推理が語られます。
この本を読んで何が残ったのだろう、と思わず感じた一冊。まあ、30分程度のことですから、どうってこともないのですが。

pierce/play/picture

   

13

●「ライオンハート」● ★★


ライオンハート画像

2000年12月
新潮社刊
(1700円+税)

2004年02月
新潮文庫化



2001/01/14



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時空を超えて幾度も巡りあう男女を描く、SFラヴ・ストーリィです。
というと、
リプレイとか連想する小説があると思いますが、本書は、恩田さんの着想を幾つも織り込んだ、趣向に富んだ作品です。したがって、SFラブ・ストーリィを楽しむというより、恩田さんの凝りに凝った趣向を楽しむ作品、と言って良いでしょう。
まず、擦れ違いのメロドラマを書きたいという、願望が恩田さんにあったそうです。“時間”をその障害に設定したとのこと。「ライオンハート」という題名は、1978年東京音楽祭でファンとなった歌手ケイト・ブッシュのアルバム名から。物語の始まりが1978年となっているのは、それ故だそうです。また、本作品は、ロバート・ネイサン「ジェニーの肖像」という小説へのオマージュであるとか。
そして、東京都美術館で「エアハート嬢の到着」という絵を見て、SFメロドラマの一場面が見えたそうです。そこから、毎回絵のタイトルから題名を取った連作小説という構想が生まれ、各章の最初には、絵につけるエピソードを模して“プロムナード”という節を付けたのだそうです。

趣向を凝らし過ぎてしまうと後が大変だろうと思うのですが、実際そうであったようです。最初の3篇がすっきりとした緊迫感があるのに対し、後の2篇はどうも苦しそうです。
ただ、毎章、冒頭の絵を見、時間・場所の設定に思いをこらしつつ、エドワードエリザベスの短い逢瀬へのストーリィを追うという趣向は、私には充分楽しめました。
従来の恩田作品とはちょっと趣が異なることから、恩田ファンにはお薦めです。

エアハート嬢の到着(Sickert 1932作)/春(Millet 1963-73作)/イヴァンチッツェの思い出(Mucha 1903作)/天球のハーモニー(Buontalenti 1589作)/記憶(Khnopff 1889作)

※奇しくも本ストーリィは、北村薫「リセット」と共通する部分があります。でも、小説としては全く別もの、という印象。読み比べてみるのも一興だと思います。

    

14.

●「MAZE めいず」● 

 
MAZE画像
 
2001年02月
双葉社刊
(1500円+税)

2003年11月
扶桑文庫化


2001/02/11

恩田陸さんについては、いろいろ面白いことを考え付く人だなあ、と思うのが常なのですけれど、本書もそんなアイデアから生まれたのであろう作品。
今度の舞台は、上と外と異なり、中近東に近い西アジアの僻地。ただ、場所はあまりストーリィに関係ないです。
人里遠く離れた丘の上にある、白い豆腐のような建物。その内部に入り込んだ人が突如消えうせてしまう、ということが幾度も起きています。地元の人は、昔からそれを「存在しない場所」或いは「あり得ぬ場所」と呼んで、恐れています。
その謎解きを昔の級友・神原恵弥から頼まれ、時枝満はその調査に同行します。一行は彼らを含め合計4人。
満の仮説が具体化していくに連れ、不思議さはやがて不気味さに変わっていきます。この辺りのホラー気分は、六番目の小夜子に似通ったものがあり、恩田さんの持ち味が出ていると言えます。
一方、結末の割り切れなさも、やはり私から見て恩田さんらしいところ。読む人の好き好きで、本書への評価は大きく分かれるような気がします。
「MAZE」とは、迷路、迷宮の意味です。

      

15.

●「ドミノ」● ★★


ドミノ画像

2001年07月
角川書店刊
(1400円+税)

2004年01月
角川文庫化



2001/08/19

amazon.co.jp

読み終えた時には、あぁ、面白かった!、の一言。
頭を使う必要など何もありません。ただストーリィを辿ってさえいれば、時に腹を抱えて笑い、そのスピード感に酔いしれ、一気呵成に読みあげる4時間余を存分に楽しめる一冊。

久々に、恩田さんらしい快作を味わった思いがします。
帯の文句は、「迫りくるタイムリミット もつれあう28のマトリクス 必死の思いでかけまわる人々が入り乱れぶつかりあって 倒れ始めたドミノはもう、誰にも止められない!!」というもの。まさにそのまま、本作品の内容を語っています。

7月末日の締めに向って最後の契約成立に一喜一憂する関東生命八重洲支社の面々、劇オーディションを受けた2組の母娘、大学ミステリ連合会の次期幹事長選びを争う学生たち、別れ話がこじれて緊迫事態となる男女、警察OB中心の俳句オフ会に、爆弾をかかえたテロリストたち、おまけに正体不明のペットまで等々。暴風雨近づく東京駅にそれらが一斉に集結し、相互に絡み合い、混乱はとめどもなく大騒ぎになっていきます。

冒頭頁に登場する28人の人物紹介とイラストがあり、それと見比べつつストーリィを追って行くのが、また楽しい。
映画にはわりとあるストーリィですが、小説で読むとまた違った面白さがあります。何と言っても、それがこの作品のすべてである、というところが潔い。快作と思う所以です。

読む場合には、休日を選んで一気に読み上げることをお薦めします。読み出したらきっと止まらなくなりますから。

※小説では、戸梶圭太「溺れる魚」最終章に似た面白さがあります。映画では、“ブルース・ブラザーズ”が思い出されます。

   

16.

●「黒と茶の幻想」● 


黒と茶の幻想画像

2001年12月
講談社刊
(2000円+税)

2006年04月
講談社文庫化
(上下)



2002/01/14

50歳という一区切りの年代を迎えた大学時代の仲間、男女4人が旧交を温める旅に出ます。行き先はY島(屋久島?)。そして、各人が抱えたままの謎めいた思い出について、その真相を解明しようという趣向付。
各部毎、順繰りに主人公を入れ替えて語る4部構成。それ故、各人のことが客観的、あるいは主観的にと、交互に語られていきます。
ミステリとしては日常ミステリに分類すべきものでしょう。それにしても、何故恩田さんはこうも、通常とかけ離れた場所に舞台設定したがるのでしょうか。屋久島であることがはっきりしているのに、わざわざ「Y島」という架空の名前を用いているのもそのひとつ。恩田作品の特徴ともいえることですが、その段取りに手間取り、肝心のストーリィが希薄になる、ということもあります。
本作品では、Y島旅行の様子、島でのハイキングの様子が頁の半分近くを占めています。軽いお試し的な謎解きから、各人の人生の方向を決めた大きな謎解きまで、過去に残していた謎は様々。それらが、紀行ストーリィの中に散りばめられています。
彰彦−その姉の紫織蒔生の間にあった真相などは、思わず絶句してしまうようなものでしたが、渾然とした全体の中に埋没してしまうかのようです。
冒頭では、ごく普通に仲の良かった同級生という雰囲気でしたが、各人それぞれ相手を冷静に観察し、必ずしも心を許していなかったことが次第に明らかになっていきます。
学生時代からの仲間であってもという綾が、謎解きとは別次元で、本書の面白味になっています。そうした奥に秘めた関係が明らかになるのは、孤島への数日間にわたる旅だからでしょう。その点で、本書の舞台をY島旅行に設定したのは、十分に意味あることだったと言えます。
ひとつひとつのストーリィ要素を取り出せば、それなりに面白味のあることばかりですが、全体としてみると、雑然としていて冗長、という印象が残ります。読む人の好みによって、評価が分かれそうな作品です。

1部 利枝子/第2部 彰彦/第3部 蒔生/第4部 節子

   

17.

●「図書室の海」● 


図書室の海画像

2002年02月
新潮社刊
(1400円+税)

2005年07月
新潮文庫化

2002/03/31

これまで恩田さんがあちこちに掲載した短篇を集めた一冊ですので、恩田さん得意のホラーものから、ミステリもの等、様々な傾向の雑多に収録されています。とはいえ、これぞまさしく恩田陸の小説世界。
ですから、恩田ファンにとっては、詰め合わせチョコのように、これ一冊でいろいろな味を楽しめるという、嬉しい一冊です。

ただし、反面、短篇ならではの面白さを感じるものから、中途半端に終わってしまうものまで、その点でも様々。
予告編の如く、次の長篇を期待させる短篇もあります。でも、長篇は書かれるのでしょうか? 光の帝国でも同じように思ったことを思い出します。

六番目の小夜子の番外篇である「図書室の海」に興味惹かれるところですが、私が面白く感じたのは、「春よ、こい」「茶色の小壜」の2篇。

春よ、こい/茶色の小壜/イサオ・オサリヴァンを捜して/睡蓮/ある映画の記憶/ピクニックの準備/国境の南/オデュッセイア/図書室の海/ノスタルジア

      

18.

●「劫尽童女」● 


劫尽童女画像

2002年04月
光文社刊
(1500円+税)

2005年04月
光文社文庫化



2002/06/03

アイデア倒れ、と言わざるを得ない作品。
恩田作品についてはそうした傾向が強いのですが、本作品はそれにしても、と感じます。宮部みゆき「ドリーム・バスターについても同様の印象をもったことを思い出します。
冒頭2章のストーリィは、サスペンス+主人公となる少女にかかるミステリアスな傾向から、その後の展開に期待を持たされました。
ところが中盤では、近未来形超能力者戦争といった様相をみせてきます。背後に「ZOO」という秘密組織があるのですが、その組織の正体も明らかにされないままストーリィはさらに混迷を深める、という感じ。このあたり、「サイボーグ009」のブラックゴーストの方がよっぽど判り易い。
そして最後、舞台はカンボジアに飛ぶのですが、急に現実の国際問題に入り込んでいて、面喰います。
題名の「劫尽童女」は、地獄における世界を焼き尽くす炎という意味の“劫尽火”からきた由。恩田さんとしては、近未来形戦争と劫尽火を掛け合わせた、SFサスペンスを目指したのかもしれませんが、散漫なストーリィ展開に終わった印象がぬぐえません。
火と超能力を掛け合わせたのであれば、宮部みゆき「クロス・ファイアの方がよっぽどすっきりしています。
かなり厳しい書評になりましたが、私の正直な感想です。

化現/化縁/化色(前編)/化色(後編)/化生

     

19.

●「ロミオとロミオは永遠に」● 


ロミオとロミオは永遠に画像

2002年10月
早川書房刊
(1800円+税)

2006年07月
ハヤカワ文庫化



2002/11/23

近未来を舞台にした冒険小説。
大量の廃棄物により地球は荒廃し、人類は既に新地球に移住。しかし、日本人のみが廃棄物処理のため地球に取り残されている。そんな日本人の若者にとって唯一の希望は、エリート高校である大東京学園への入学およびその総代での卒業である、という舞台設定。
主人公たちがその大東京学園に新入学するところから、ストーリィは始まります。新入生全員が大東京学園に初めて踏み込んだ場面、ハリー・ポッターホグワーツ魔術学校に初めてやってきた場面を連想させられますが、本作品はそれと全く異なる、奇妙なもの。
各章名がすべて過去のヒット映画の題名である点はともかくとして、クラス名が東京23区を模していたり、学園の地下に埋もれる廃虚が東京ディズニーランドや新宿繁華街だったりと、本ストーリイ全体がグロテスクなブラック・ユーモア、悪い冗談としか思えません。しかし、一概に冗談とは言っても、笑って済ませられない現実があります。

荒唐無稽なSF小説ですが、次々に繰り出すアイデア、パロディと、久々の恩田陸らしい快作と言えます。
しかし同時に、ストーリィに深堀りがない、結末が呆気ないという点も、恩田さんらしいところ。
ストーリィよりアイデアを楽しむべき、という作品。そしてまた本作品は、恩田さんによる20世紀への賛歌でもあります。

 

20.

●「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT」● 


ねじの回転画像

2002年12月
集英社刊
(1600円+税)

2005年12月
集英社文庫化
上下



2003/01/30

2.26事件の勃発。しかし、本書に描かれるのは、近未来の国連に指示された事件の首謀者たちがもう一度歴史をなぞろうとするストーリィ。
単純に歴史事実を繰り返せば済む筈だったことが、当時国賊扱いされた青年将校たちの無念な思い、国連職員の一部の秘められた意図から、事態は思わぬ方向に走り出すという、歴史SFサスペンス。
着想の独自性に唸らせられる、いかにも恩田さんらしい作品ですが、その後の展開に物足りなさがあるのもまた恩田さんらしいところ。4百頁余という長編の割に、何故歴史をなぞる必要があったのか、という鍵の部分に説得力を欠いている。そのため、読み通すのはシンドかった、というのが正直なところ。
本作品のミソは、歴史の“IF”にあるのだろうと思います。
もしああなっていたら、もしそうでなかったら。歴史についてそれは、何度も繰り返される言葉でしょう。
偶然の差でしかなかったこと、それにも拘らずその結果は、歴史上に大きな違いをもたらしたかもしれない。本作品は、そうした事実、当事者たちのそうした思いを描こうとした作品と言えるでしょう。
ただ、2.26事件は陸軍の自己陶酔的な横暴さを端的に表した事件であって、私としては常に許せない思いがあります。ですから、事件の当事者たちに共感することなどはあり得ません。それ故、本作品に対する見方も厳しいものになったかもしれません。

     

恩田陸作品のページ bP    恩田陸作品のページ bR

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