J・K・ローリング作品のページ


J.K.Rowling 1965年英国生。エクスター大学にてフランス語と古典を専攻。ポルトガルにて英語教師となり、ジャーナリストと結婚したが離婚。現在エディンバラ居住。シングルマザーで生活保護を受けながら書いた処女作「ハリー・ポッターと賢者の石」がベストセラーとなり、スマーティーズ賞等を受賞。2000年6月には英国女王からO.B.E.勲章を授与される。


1.ハリー・ポッターと賢者の石

2.ハリー・ポッターと秘密の部屋

3.ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

4.ハリー・ポッターと炎のゴブレット

5.ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

6.ハリー・ポッターと謎のプリンス

7.ハリー・ポッターと死の秘宝


    ※ ホグワーツ魔術魔法学校付属 ハリー・ポッター友の会学校

「ハリー・ポッターともうひとりの魔法使い−作家J.K.ローリングの素顔−」

   


  

1.

●「ハリー・ポッターと賢者の石」● ★★☆
原題:"HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE"  訳:松岡佑子


ハリー・ポッターと賢者の石画像
 
1997年発表

1999年12月
静山社刊
(1900円+税)

第26刷
2000年02月

2003年11月
携帯版刊

  

2000/04/24

評判があまりに高いので読んだのですが、とにかく面白く、 かつ楽しい本。予想以上です。まさに、大人も子供も夢中になれる作品。
作者のローリングは、生活保護を受けるような状況下でこの本を書いた、それも処女作だというのですから驚きです。昔“ドリトル先生”シリーズに初めて出会ったときのような感激がありました。
面白さの秘密は、現実的なストーリィと夢物語的なストーリィが見事に溶け合わさっていることにあります。そして、主人公ハリー・ポッターを中心とした、勇気ある少年(少女)たちの物語である、という点が魅力です。

中心ストーリィは、伯父の家で邪魔物扱いされていたハリーの元へ、ホグワーツ魔法魔術学校から入学許可証が届くところから始まります。
ホグワーツの寮に入り、親友を得る一方で、嫌な奴もいる、というのは少年の成長物語ではごく普通の設定。その一方で、箒を使って空を飛ぶ、あるいは魔術を使う方法を皆で学ぶというのは、誰もが一度は抱いたような夢物語です。この魔法魔術学校で次にどんなことが起こるのだろうと、ワクワクしながら頁を繰るのはこのうえない楽しさです。もちろん、一番の興味が、魔法使いの世界の予想もつかない出来事を垣間見ることにあることは、言うまでもありません。
主人公ハリーは、赤ん坊の頃に体験した出来事により、魔法世界の本に載るような有名人物。しかし、本人はといえば、11歳になるまで自分が魔法使いだったことも知らず、ホグワーツ入学時には不安一杯という、ごく普通の新入生なのです。そのアンバランスさもまた、なんとも言えない面白味があります。そして、それからのハリーの活躍がめざましい。

寄宿学校、魔法使いと揃えば、いかにもイギリスらしい世界です。登場人物もそれぞれ個性に溢れ、ディケンズに負けていません。
この面白さなら、新しい巻が刊行されるのを待ち焦がれ、最後まで読まずに済ますものかと思い定めるのは、極めて当然のことでしょう。
全7巻で、既に3巻までが刊行済とのこと。続巻が楽しみです。

1.生き残った男の子/2.消えたガラス/3.知らない人からの手紙/4.鍵の番人/5.ダイアゴン横丁/6.9と3/4番線からの旅/7.組分け帽子/8.魔法薬の先生/9.真夜中の決闘/10.ハロウィーン/11.クィディッチ/12.みぞの鏡/13.ニコラス・フラメル/14.ノルウェー・ドラゴンのノーバート/15.禁じられた森/16.仕掛けられた罠/17.二つの顔をもつ男

 ※映画化 → 「ハリー・ポッターと賢者の石

 

2.

●「ハリー・ポッターと秘密の部屋」● ★★
原題:"HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS"  訳:松岡佑子


ハリー・ポッターと秘密の部屋画像
 
1998年発表

2000年09月
静山社刊
(1900円+税)

第20刷
2000/09/30

  

2000/09/26

第2巻は、第1巻の最後のまま、夏休みから始まります。
ハリーが
伯母ダーズリー家でまたもや厄介もの扱いされている様子。次いで、ロンウィーズリー兄弟にやっと救い出されてウィーズリー家に滞在した様子等々から書き出されています。そして再び新学期が始まり、ハリーたちは再びホグワーツへと向かいます。

前作賢者の石の場合には、こんな本は初めて読んだ!という興奮する面白さがありました。しかし、2作目ともなると、魔法魔術学校のホグワーツも、ロン、ハーマイオニーとの親友トリオ、クィディッチ競技も既知のことであり、期待ほどの面白さが感じられなかったのは、仕方ないことでしょう。
と、思っていたら、最終場面におけるハリーの対決シーンはまさに手に汗握るもの。やっぱり面白い!と、逆転を食らったような満足感で本巻を読み終えました。
ただ、中盤まではなんとなくストーリイが繋がっていくという感じで、面白さとしては今一歩。今回は魔法界での有名人物、とくに女性に人気があるロックハートが新しいホグワーツの先生として登場しますが、この人物のお調子者ぶりにハリーら登場人物だけでなく読者もすっかり振り回されてしまった、という風があります。
漸く終盤に至って、本書の題名ともなっている“秘密の部屋”の謎にハリーらが迫ります。そこからはアッという間! それまでとは一転してスリル満点の中ハリーの奮闘ぶりが見られ、面白さの渦中にすっかりはまり込んでしまいました。第1巻に比してハリーの成長ぶりが感じられるのが、ハリー・ファンとしては嬉しいところです。
第1巻を楽しんだのでしたら、この第2巻もけっして読み逃す手はないでしょう。是非、読み逃しないように!

1.最悪の誕生日/2.ドビーの警告/3.隠れ穴/4.フローリシュ・アンド・フロッツ書店/5.暴れ柳/6.ギルデロイ・ロックハート/7.汚れた血と幽かな声/8.絶命日パーティ/9.壁に書かれた文字/10.狂ったブラッジャー/11.決闘クラブ/12.ポリジュース薬/13.重大秘密の日記/14.コーネリウス・ファッジ/15.アラゴグ/16.秘密の部屋/17.スリザリンの継承者/18.ドビーのごほうび

 ※映画化 → 「ハリー・ポッターと秘密の部屋

   

3.

●「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」● ★★
原題:"HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN"  訳:松岡佑子


ハリー・ポッターとアズカバンの囚人画像
 
1999年発表

2001年07月
静山社刊
(1900円+税)

   

2001/09/02

第3巻にもなると、ストーリィのパターンが見えてきます。
まずは夏休みの間のダーズリー家から始まり、それなりの騒動の後、再びハリー、ロン、ハーマイオニーらは揃ってホグワーツ特急に乗り込み、学校へ向かいます。

前半は新学期らしく、3年生になったハリーらの新しい授業、新しい魔法学の教師たちの様子が語られていきます。この辺りは定例パターン。
ただ、今回異なるのは、ハリーが迎えるべき危機が冒頭から明示されていることです。
アズカバン
の要塞監獄から信じ難いことに囚人が脱走。しかも、その囚人はヴォルデモートの手先となってハリーの両親殺害に手を貸したシリウス・ブラック。そのブラックが、何とハリーを狙っているという。その為、ホグワーツにはアズカバンの看守・ディメンター(吸魂鬼)が常駐し、不気味な雰囲気が漂います。
ハリーたちも3年生となると、勉強、例のクィディッチ競技にも一層拍車がかかります。そんな中、「闇の魔術に対する防衛術」の新任教師リーマス・ルービンが新たに登場、本ストーリィの中心を担う魅力的な人物です。
後半には、いよいよハリーとアズカバンの囚人の対決場面が用意されていますが、ハリーの成長振りに眼を惹かれます。その辺りが本巻の魅力です。面白いと言うより、楽しい一冊。

なお、本シリーズの魅力が、校長ダンブルドアらに温かく見守られつつ、ロンやハーマイオニーとの友情を深めながらハリーが勇敢な少年として成長していく姿にあるのは間違いないところ。英文学の伝統的ビルディング・ロマンスと言えます。したがって、次の巻も大いに楽しみです。

1.ふくろう便/2.マージおばさんの大失敗/3.夜の騎士バス/4.漏れ鍋/5.吸魂鬼/6.鉤爪と茶の葉/7.洋箪笥のまね妖怪/8.「太った夫人」の逃走/9.恐怖の敗北/10.忍びの地図/11.炎の雷/12.守護霊/13.グリフィンドール対レイブンクロー/14.スネイプの恨み/15.クィディッチ優勝戦/16.トレローニー先生の予言/17.猫、ネズミ、犬/18.ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ/19.ヴォルデモート卿の召使い/20吸魂鬼のキス/21.ハーマイオニーの秘密/22.再びふくろう便

 ※映画化 → 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

     

4.

●「ハリー・ポッターと炎のゴブレット(上下)」● ★★
原題:"HARRY POTTER AND THE GOBLET OF FIRE"   訳:松岡佑子

  
ハリー・ポッターと炎のゴブレット画像
    
2000年発表

2002年10月
静山社刊
上下巻セット
(3800円+税)

 

2002/11/01

第4巻目にして初の上下巻。それだけの大作かというと、むしろ散漫にストーリィが続くように思われます。
恒例のホグワーツ行きの前に、まずクィディッチのワールドカップ戦があります。ハリーウィーズリー一家に招かれ、一緒にこの試合観戦に出かけます。事件はすでにそこから伏線がはられているのですけれど、なんとなくストーリィが始まってしまったという観があって、いつものようなワクワクとする出だしは感じられません。

ホグワーツにおける今回の最大の出来事は、3大魔法学校対抗試合の開催。なんと百年ぶりとのこと。その試合に出場する各校の代表選手を選ぶのが、炎のゴブレット。しかし、本来の3選手以外に、炎のゴブレットが4人目の選手を選んでしまいます。言うまでもなく、4人目はハリー・ポッター。
4人の選手が、三つの課題を与えられ、優勝杯を競います。しかし、ハリーが選ばれた裏には、ハリーを亡き者にせんとする陰謀のあることが明らかになります。
過去3巻には、まるで予想もしえない展開という面白さがあったのですが、本巻にそれは見られません。もはや、どんな新しい登場人物、新しい魔法界の生き物が登場しようと、それはもはや馴染みある“ハリー”の世界のものにしか過ぎません。
しかし、それにも拘わらず、ロン、ハーマイオニー、ダンブルドア、ウィーズリー一家らが登場する“ハリ・ポッター”の世界はやはり楽しい。ストーリィ云々を越えてその楽しさに浸る、それに尽きるのです。
しかし、そうした印象を一遍にひっくり返し、緊迫感を一気に盛り上げたのは、本当に最後の部分。おかげで読者は、またもや第5巻を読まないわけにはいかなくなるのです。
この辺りの巧妙さ、作者のローリングに脱帽せざるを得ません。

ロン、ハーマイオニーについては、これまでと違い、彼らの複雑な胸の内が描かれます。それは、彼らの成長の証しでしょう。このシリーズは、決してハリーだけの成長物語ではないのです。

1.リドルの館/2.傷痕/3.招待状/4.再び「隠れ穴」へ/5.ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ/6.移動キー/7.バグマンとクラウチ/8.クィディッチ・ワールドカップ/9.闇の印/10.魔法省スキャンダル/11.ホグワーツ特急に乗って/12.三大魔法学校対抗試合/13.マッド・アイ・ムーディ/14.許されざる呪文/15.ボーバトンとダームストラング/16.炎のゴブレット/17.四人の代表選手/18.杖調べ/19.ハンガリー・ホーンテール/20.第一の課題/21.屋敷しもべ妖精解放戦線/22.予期せぬ課題/23.クリスマス・ダンスパーティ/24.リータ・スキーターの特ダネ/25.玉子と目玉/26.第二の課題/27.パッドフット帰る/28.クラウチ氏の狂気/29.夢/30.ペンシープ/31.第三の課題/32.骨肉そして血/33.死喰い人/34.直前呪文/35.真実薬/36.決別/37.始まり

  ※映画化 → 「ハリー・ポッターと炎のゴブレット

    

5.

●「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(上下)」● ★☆
原題:"HARRY POTTER AND THE ORDER OF THE PHOENIX"   訳:松岡佑子

  
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団画像
    

2003年発表

2004年09月
静山社刊

上下巻セット
(4000円+税)

 

2004/09/26

第5巻を読む前に、先に読んだ人から、暗い、子供向きのストーリィではなくなった、等の感想を聞いていました。
確かに上巻を読んだ限り、これまでのような楽しさが感じられないのは事実です。
ひとつは、ハリーが常に苛立っており、ハーマイオニーロンと言い争う場面が再三あること。それは親友3人の間のみならず、ハリーを守ろうとする人たちの間でも起きること。
もうひとつは、ダンブルドア失脚を策謀する魔法省大臣ファッジの影響下、魔法学校対魔法省の対立構図が影を落し、ホグワーツが楽しい場所ではなくなっているからです。
しかし、「ハリー・ポッター」をひとつの長大な成長物語と理解するなら、彼らが迎えた曲がり角となる時期であり、描かれるべきして描かれたストーリィと解すべきでしょう。ハリーたちも魔法学校の5年生、監督生となる年代に至ったのですから。
特にハリーにおいてはジレンマが大きい。単なる魔法学校の一生徒でしかないにもかかわらず、事実上は常にヴォルデモートの対抗相手となっているのですから。

苛立ってばかりのハリーに対し、ハーマイオニーはぐっと思慮深くなっています。一方のロンは未だ子供っぽく、成長する姿は三者三様です。
また、本巻ではハリーの初恋体験が描かれていたり、ウィズリー家の双生児やジニー、ハリーの同級生ネビルに大きな成長の跡が窺えたりと、少年たちの成長物語という基本線は少しも逸脱していません。
決してこれまでの巻のような楽しい冒険物語ではありませんが、本巻のような展開もあって初めて真の成長物語と言うべきでしょう。先へ進むのなら、越えるべき巻。
なお、下巻も後半に至るとこれまで以上の緊迫感が押し寄せ、目が離せなくなります。その点はやはり本シリーズならではの面白さです。

1.襲われたダドリー/2.ふくろうのつぶて/3.先発護衛隊/4.グリモールド・プレイス十二番地/5.不死鳥の騎士団/6.高貴なる由緒正しきブラック家/7.魔法省/8.尋問/9.ウィーズリーおばさんの嘆き/10.ルーナ・ラブグッド/11.組分け帽子の新しい歌/12.アンブリッジ先生/13.アンブリッジのあくどい罰則/14.パーシーとパッドフット/15.ホグワーツ高等尋問官/16.ホッグズ・ヘッドで/17.教育令第二十四号/18.ダンブルドア軍団/19.ライオンと蛇/20.ハグリッドの物語/21.蛇の目/22.聖マンゴ魔法疾患傷害病院/23.隔離病棟のクリスマス/24.閉心術/25.追い詰められたコガネムシ/26.過去と未来/27.ケンタウルスと密告者/28.スネイプの最悪の記憶/29.進路指導/30.グロウプ/31.ふ・く・ろ・う/32.炎の中から/33.闘争と逃走/34.神秘部/35.ベールの彼方に/36.「あの人」が恐れた唯一の人物/37.失われた予言/38.二度目の戦いへ

 ※映画化 → 「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

   

6.

●「ハリー・ポッターと謎のプリンス(上下)」● ★★
原題:"HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE"   訳:松岡佑子

  
ハリー・ポッターと謎のプリンス画像
  
 
2005年発表

2006年05月
静山社刊
上下巻セット
(3800円+税)

 

2006/06/27

まず言えることは、これまでの巻のようにワクワクする思いで読むことはなかった、ということ。
そして本書第6巻がストーリィとして面白いかというと・・・・う〜ん・・・。
これまでのように独立して楽しめるというようなストーリィではもはやなく、次の最終巻に向けてのヴォルデモートとの前哨戦という巻と言ってよいでしょう。
ヴォルデモートが直接登場する訳ではありません。登場はしないのですけれど、ヴォルデモートの生い立ちから全てが明らかにされ、いよいよハリーとヴォルデモートの対決の舞台が整えられていく、そんな巻です。
その一方で、ハリーという少年の成長物語という要素もちゃんと残されています。
ひとつは、ハリーがダンブルドアから一本立ちしなければならない時を迎えたことを描く部分。そしてもうひとつは、年頃になったハリー、ロン、ハーマイオニーの恋模様を描く部分。

さてストーリィはというと、本巻でダンブルドアはハリーがヴォルデモートと対決するために必要なこととして、幾人もの証言者の記憶を辿ってヴォルデモートの軌跡を辿るという個人授業を施します。
一方、ハリーのスネイプに対する疑念はますます強くなっていきますが、ダンブルドアは断固としてスネイプに対する信頼を揺るがせない。でも、本当にそれは正しいのか。
そしてハリー、ロン、ハーマイオニー3人の恋愛劇。仲の良い3人組も年頃になれば、いずれ2+1にならざるを得ないのは判っていたこと。その問題は本巻でほぼ決着がつくようです。
選択肢は2通り有る訳ですが、この結果にはウ〜ムと思うところが無い訳ではない。でも広く眺めると、最も収まりの良い組み合わせかもしれません。あの3人に付け加わる形の彼女も、このところ急速に存在感、魅力を高めてきたことでもありますし。
私個人としては、彼女の魅力はハーマイオニーに比べて決して劣るものではないし、ハーマイオニーにはない大きくて強い魅力も備えていると思うのです。
なお、表題の「謎のプリンス」にあまり惑わされませんように。それがストーリィの主軸ではないのですから。

本巻の最後には、信じ難い幕切れが待ち構えています。そのためいっそう次の最終巻を待ち焦がれずにはいられない。
ハリー・ポッター物語を満喫するためには、楽しめるかどうかは別として、本書は避けて通れない巻なのです。あぁ早く最終巻が読みたいものです。
それにしても、書き始めた時点で最終決着までの構想をきちんと描いていたというのは凄い。本書でのストーリィは、先立つ巻のストーリィとちゃんと整合性が取れているのですから。 

1.むこうの大臣/2.スピナーズ・エンド/3.遺志と意思/4.ホラス・スラグホーン/5.ヌラーがべっとり/6.ドラコ・マルフォイの回り道/7.ナメクジ・クラブ/8.勝ち誇るスネイプ/9.謎のプリンス/10.ゴーントの家/11.ハーマイオニーの配慮/12.シルバーとオパール/13.リドルの謎/14.フェリックス・フェリシス/15.破れぬ誓い/16.冷え冷えとしたクリスマス/17.ナメクジのろのろの記憶/18.たまげた誕生日/19.しもべ妖精の尾行/20.ヴォルデモート卿の頼み/21.不可知の部屋/22.埋葬のあと/23.ホークラックス/24.セクタムセンプラ/25.盗聴された予見者/26.洞窟/27.稲妻に撃たれた塔/28.プリンスの逃亡/29.不死鳥の嘆き/30.白い墓

 ※映画化 → 「ハリー・ポッターと謎のプリンス

  

7.

●「ハリー・ポッターと死の秘宝(上下)」● ★★
原題:"HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS"   訳:松岡佑子

  
ハリー・ポッターと死の秘宝画像
  
 
2007年発表

2008年07月
静山社刊
上下巻セット
(3800円+税)

 

2008/07/31

 

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10年にわたって刊行された“ハリー・ポッター”、ついに完結。
不死鳥の騎士団以降雰囲気はどんどん暗くなり、ダンブルドア校長も死んでしまうといった具合で、前巻読了後、続きを読みたいという気持ちはかなり薄れていました。
それでも、ここまで読んできたからには今更止められるか、結末を読まずにいられるか、というのが正直な気持ち。

さて、上巻。冒頭から暗闘と死ばかり。そしてヴォルデモートの分霊箱を求めて当てのない探索行に出たハリー、ロン、ハーマイオニー3人の間には、焦燥感と苛立ちが目立ちます。とくにハリーとロンはまるで頑是無い子供に戻ってしまったようで、賢明なハーマイオニーがなんとか宥めているという風。なんか雰囲気悪いなぁ。
しかし、下巻に入ると雰囲気は一転します。いよいよ闘いの幕が開け、中頃に至ってホグワーツを舞台に両陣営の凄惨たる闘いの火蓋が切って落とされるという展開で、もはや読み手は押し寄せる怒涛に一気に押し流されるまま、という感じ。
それを面白いと言って良いのかどうか。どちらにしろ、もう頁を繰る手は止められません。
なお、上巻の冒頭から、繰り返される死闘の中で、ハリーの愛する人たちが次々と命を落としていきます。痛ましさ募り、これ、とても児童向け物語とは思えない、と言いたくなる程。
そしてクライマックスは勿論、ヴォルデモートとハリーの一騎打ちです。

それにしても、何と複雑な物語であることか。最後の最後になって漸く、亡きダンブルドアによって第1巻から始まる長大な物語の全貌と真相が初めて明らかにされます。
余りに込み入っていて自分の頭の中で整理するのもやっと。
全貌を知ってやっと得心がいったと納得する人もいれば、何となく作者に丸め込まれた感じ、と思う人もいるのではないかと思います。
これだけ込み入った底の深いストーリィを、第1巻の始まりから既にしっかり構想していたというのであれば、本当に驚くばかりです。
本巻の最後でついに闘いは終結し、大団円。魔法界に平穏が戻ります。
エピローグというべき「終章.十九年後」は、新たな物語の始まりを示唆していて、安らぎと楽しさ、そして懐かしい気分にさせてくれる、ちょっと心憎い章。

あぁやっと終わったという安堵感と、最後まで読み終えたぞという達成感。そんな気分がまず胸の中に広がります。
全7巻におよぶ壮大な魔法ファンタジー物語。キャラクターの見事さ故に、いつまでも忘れられない物語になりそうです。

1.闇の帝王動く/2.追悼/3.ダーズリー一家去る/4.七人のポッター/5.倒れた戦士/6.パジャマ姿の屋根裏お化け/7.アルバス・ダンブルドアの遺言/8.結婚式/9.隠れ家/10.クリーチャー語る/11.賄賂/12.魔法は力なり/13.マグル生まれ登録委員会/14.盗っ人/15.小鬼の復讐/16.ゴドリックの谷/17.バチルダの秘密/18.アルバス・ダンブルドアの人生と嘘/19.銀色の牝鹿/20.ゼノフィリウス・ラブグッド/21.三人兄弟の物語/22.死の秘宝/23.マルフォイの館/24.杖作り/25.貝殻の家/26.グリンゴッツ/27.最後の隠し場所/28.鏡の片割れ/29.失われた髪飾り/30.セブルス・スネイプ去る/31.ホグワーツの戦い/32.ニワトコの杖/33.プリンスの物語/34.再び森へ/35.キングス・クロス/36.誤算/終章.十九年後

※映画化 → 「ハリー・ポッターと死の秘宝

      


 

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