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旅の話あれこれ 6 | |
ロンドンの本物のタクシー・ドライバーの心意気 この後、ホテル近くで、タクシーを降りたのだけれど、 そこで、私達は、初めて、ロンドンのホントの タクシー・ドライバーの心意気に触れることになった。 金額を最初に聞いて乗った事は、最初に書いた。ところが、ウェストミンスターを まわった辺りから、何だか、道路は、やたらややこしくなり、 ものすごく、細かい道をちょこちょこと、曲がって進んだ。 そういうロンドンの道路事情については、もう4日目でもあり、わかっては いたのだけれど、あまりにも細かく曲がり、おまけに金額も 最初に聞いたものより、結構増えそうな感じなので、私達は、 つい、少々、猜疑心にかられ、 日本語で、「随分、道が混み入っているねぇー。」と話していた。 多分、かの運転手氏は、その雰囲気を感じていたのだろう。 ホテルの近くで、タクシーを止めて、料金を払おうとした時、 初老で端整な顔立ちのその運転手氏は、 「さっき、(自分が)言った金額だけで、いいです。」と、言う。 私は、ちょっとでも、怪しんだ気配を感じとられて しまったことがすごく恥ずかしくて、焦って、 「聞いたのは、もともと、おおよその金額だと思っていますから、 構わないんです。」と、料金分を渡そうとした。 でも彼は、言う。 「自分の予測が、随分ずれてしまって、迷惑をかけたから、 それは、もらえない。」と。 私達の何となくの雰囲気が、きっと、彼のプライドを 傷つけてしまったのだ。困った。どうしよう。 しばし、押し問答の後、主人と、相談して、運転手氏の言った 金額をその通りに払い、チップとして、正規の料金になる分 プラス・アルファを渡すことにした。これで、彼も納得してくれた。 「有難うございます。ロンドン最後の日に、近くからウェストミンスター寺院と ビック・ベンが近くで見れて、いい思い出になりました。」 私は、自分達のその前の気持ちを取り消したくもあり、 今の気持ちも伝えたくて、急いで言った。 運転手氏は、微笑んで頷いてくれた。 英語が、流暢だったら、もっと言い足したかったところだ。 でも、気持ちは、きっとわかってもらえたと思う。 そして、このことは、 ちょっと、心痛くて、ちょっと嬉しい思い出になった。 思えば、 ロンドン到着早々に、あやしげな、くずれた雰囲気の タクシーにつかまって、連れまわされ、 ロンドンを明日離れるという日に今度は、 これこそ、ロンドンのタクシー・ドライバーと思える タクシーに出会ったことになる。この順番でよかったと思う。 |
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