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旅の話あれこれ 4
イギリスに行ったら何しろB&Bに泊まりたい、と
思っていた。それで、ウォータールー駅から直接、タクシーで、
B&Bが立ち並ぶというベルグレイブ通りに行った。
そこは、ビクトリア・ステーションが近いので、
イザと言う時には、駅の中にあるインフォメーション頼る事も
出来そうだったからだ。

そして、その前に、ロンドンのタクシーは、
頼りになるのだとも信じていた。ロンドンのタクシーの運転手には
試験があって、その難しいテストをパスして、初めて、
タクシー・ドライバーになるので、プライドが高いそうだ・・・等などだ。

だから、私達は、疑わずに、というより、何も考えず
駅前の列に並び、順番がきて、タクシーに乗ったのだった。
と、こういう言い方をすると、まるで、そのタクシーに
騙されたかのようだけれど、騙されたわけではない。



私達は、
「B&Bを探すためにベルグレイヴ通りに行きたい。」と、
老人のタクシーのドライバーに言い、彼は、遠回りしたわけでもなく、
ベルグレイヴ通りに連れていってくれた。
ただ、問題は、それからだった。
ベルグレイヴ通りのちょっと入った辺りで、
かれは、車を止めたので、私達が、下りようとすると、彼は、
「ここで、待っているから、泊まれるかどうか、聞いてきたらいい。」
という。初めは、まあ、それも便利かなと、思って、私達は、
その通りにした。一件目は、どうも気にいらない。
すると、あそこは、どうだと、彼は、少し、先のB&Bを指差す。
2件目も、だめだ。で、もう荷物も下ろして、自分達で、
という仕草をすると、彼は,又、畳み掛けるように、あそこなら、
いいかもしれない。と、又、少し遠くを示す。あれ、と、思いつつも
まあ、私達は、その建物に入り、部屋を見せて、もらう。
やはり、だめだ。と、又、新しい場所を指差す。

さすがの私達も、「どおする?ちょっと、しつこくない?」という
気分になって顔を見合わせたりしていたところに、離れたところから、
どうやらその辺りに慣れているらしい、日本人が、
こちらの様子を見ながら近づいてきた。
通りすがり、という感じだ。彼は、すっと、私達の
所に近づいてきて、「こういうタクシーには、気をつけた方が
いいですよ。」と、言うと、そのまま通りすぎて行った。

「そっか、こういうのも、よくある手だったんだ。」
それで、やっと、
私達は、断固として、その老人のタクシー・ドライバーに
「もうこれでいいから。」と言ったのだった。
彼もまた、私達が、通りすがりの日本人から、何か
言われているのを見ていたからだと思う。
素直に肩をすくめて、わかったの意を表した。
フーウッ。ロンドンに着いていきなりこういうこと、とは。

そして、肝心のB&Bは、というと、、、これが、
「なかなか」のものだった。若い人が、安上がりに旅を楽しむには
いいと思うのだけれど、少なくとも、ロンドンのあそこで、
見たB&Bは、家族で泊まるには、侘しすぎる雰囲気
だった。外は、どこも綺麗にしているのだけれど、いざ、
部屋に案内されて行くと、地下室の窓のない部屋だったり、
中二階で、ベッドと洗面台だけで、一杯で、
荷をほどく場所もなかったり、というわけなのだ。
一年中で一番混んでいる時期で、B&Bでトリプル
というのも難しかったのかもしれない。



そして、帰って来てから、ロンドンに住んでいた友人に
聞くと、イギリスのがいいのは、郊外とか
田舎のことだという。私達は、この時の旅では、ロンドン
郊外に出るゆとりは、なかったのだから、そもそも無理な
注文だったということでもある。こじんまりとしていて、
アット・ホームな雰囲気で、老夫婦が、もてなしてくれる
B&Bは、そこには、なかった。

もっとも、結局、私達が、2日目以降に泊まる事になったところも、
小さなホテルみたいだったのだけれど、
あれでも一応名称は、B&Bだったのだけれど。



そのB&B探しで、一つ、ちょっとした事があった。
私達は、典型的なガイド・ブツクを手に探し歩いていたのだけれど、
その中に、「この辺りでは、有名なB&B。年取った姉妹が、
いつでも暖かいもてなしをしてくれる。」とかなんとかと、
説明があった。それで、私達は、そこを訪ねてみた。

その時は、娘が、道路で荷物の番をし、私と
主人が、行った。玄関の呼び鈴を
鳴らしても、誰も出て来ないので、ドアを押すと、ドアは、
開いた。中の廊下のようなところで、何回も呼びかけると、
やっと、物音がして、中から人が来る気配がした。

そして、現れたのは、やっと歩いているような、
悪いけれど、老婆だった。よく外国映画にあるように、
しわくちゃのまるで「魔法使い」のような感じの・・・。
(ゴメンナサイ。でも、ホントにそんな感じ)
後ろで、主人が、ギョッとしているらしい気配を
感じたけれど、せっかく出てきてくれたのに、何も言わずに、
立ち去るわけには行かず、私は、一応
部屋を探しに来たことを告げた。

ところが、彼女は、耳が遠いらしい。腰を曲げたまま、
何回も、私の言う事を聞き取ろうとするが、
聞えない。私も、この時点で、もうここに泊まるのは、
無理と思ったし、本当は、帰りたかったのだ。
でも、耳をそばだてている老人を放っても行けなかった。
内心、ウロたえていると、彼女は、
「ちょっと、待って、sisterを呼んで来るから・・」と言う。

そうか、良かった。まあ、これで、何かしらは、
通じるだろう、と、思って、しばらく、待っていると、
足音がした。
と、そこに現れたのは、もう一人、同じ、と言うよりは、
もっと、シワくちゃのおばあさんだった。

と、後ろにいた主人が、いきなり逃げ出した
ドタドタっと、私を置いてだ。
ヒドイっ!

悪いけれど、薄暗いホテルの廊下に
「魔法使いのおばあさん」が、二人だった。
それが、又、なんとも、、、、、、
おばあさんが、二人で、今、よく言う「かわいいぃっ。」
なんていう雰囲気では、なくて、、、どう言ったらいいのだろう。

結局、私も、"Thank you!!"と、大声で、
言い残して、逃げてしまっていた。

歳を取るのは、仕方ない事。それなのに、
確かに私達は、悪かったけれど、でもねぇ。
「暖かい」も何もそれ以前に、「もてなし」は、無理じゃないか、
という雰囲気だった。
スゴイねぇ。ロンドンには、スゴイB&Bがあるんだ。

そして、
「このガイド・ブックは、いつの情報を載せてるんだろう。」
私達は、次のホテルに落ち着いてから改めて憤慨したのだった。
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