2000年09月

闇迷路(宝生茜) ゴールデンフリース(ロバート・J・ソウヤー)
フォー・ユア・プレジャー(柴田よしき) 新宿鮫 風化水脈(大沢在昌)
もう君を探さない(新野剛志) 病の世紀(牧野修)
さようならダイノサウルス(ロバート・J・ソウヤー) 陽炎(今野敏)
少年たちの密室(古処誠二) 火蛾(古泉迦十)
悪魔の涙(ジェフリー・ディーヴァー) たたり(雨宮町子)
光源(桐野夏生) 翼ある蛇(今邑彩)
八月の降霊会(若竹七海) 大いなる聴衆(永井するみ)
秋と黄昏の殺人(司城志朗) 海底密室(三雲岳斗)
ハリー・ポッターと秘密の部屋(J.K.ローリング) ジャンプ(佐藤正午)
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闇迷路

著者宝生茜
出版(判型)河出書房新社
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-309-01366-X(\1900)【amazon】【bk1
評価★★☆

完全犯罪で殺す。時間は今夜午後11時半。いじめを受けていた少年は、そんな書き置きを書いていた。両親に宛てるつもりだった。そして彼は・・・。

うーん。この本長すぎ。しかも完全犯罪をこういう結末に持っていきますか。まあなんとなく予測はついたのですが・・・。要らないところを削れば半分以下になるような気がするんです。雰囲気づくりには良いのかもしれませんが、あまりに長いとだれますよね。主人公が5人になっているのも、話を拡散させてしまった原因かもしれません。主人公が5人でも十分面白い本もありますけど、5人の話にした意味があまり感じられませんでした。。。

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ゴールデンフリース

著者ロバート・J・ソウヤー
出版(判型)ハヤカワ文庫
出版年月1992.11
ISBN(価格)4-15-010991-5(\600)【amazon】【bk1
評価★★★★

地球から47光年彼方のコルキスへ向かう宇宙船アルゴで、初めての死人が出た。着陸船である「オルフェウス」でアルゴを飛び出してしまったダイアナ。強烈な放射線を浴びて即死状態だった彼女は、事故死なのか、それとも自殺なのか、あるいは・・・。

遠い宇宙への調査船を舞台にしたミステリ。犯人は最初からわかっている。でも何故彼女は死ななければならなかったのか・・・。それがこの本のテーマ。どこに行ってもIT革命とか言われている昨今、こんな世界がくるのもそれほど先の話ではないのかも、と思うとぞっとします。この手の話は結構多くて、途中で私も結末がなんとなくわかってしまったのですが、あくまでホワイダニットに拘ったところが面白く読めました。さて、真相はいかに。

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フォー・ユア・プレジャー

著者柴田よしき
出版(判型)講談社
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-06-209797-4(\1800)【amazon】【bk1
評価★★★★

フォー・ディア・ライフ』に続く、シリーズ第2作。無許可保育園の園長で探偵の花咲は、借金を返すために某探偵事務所からの危険な仕事を請け負わなければならない。ところが今回は一見楽なように見えた。一度会った男が忘れられない女性からの捜索願い。しかも女性はカタギだ。裏がありそうに思いながらも、捜査を始める花咲だったが。

前の本も思ったのですが、柴田よしきの女性主人公に慣れてしまっているせいか、男の人のセリフがなんとも上滑りな気がしてしまうのです。それさえ気にしなければ、ストーリーは面白いですし、保育園の園長だからこそ直面する問題や、どろどろした人間関係もなかなか良いのですが、だからこそその欠点が残念。何が違うんだろう。前作の感想にもちらっと書いたのですが、まだそのころは柴田よしきを男性だと(確信的に)思っていたのに、読みながら「あれ、これってもしかして著者女性?」と感じたのです。ということは、やっぱり何かが違うんだと思うのです。こういう言い方をすると語弊がありそうですが、良くも悪くも「女性の書いたハードボイルド」ですね。なんて女の私が言うのは変ですか?

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新宿鮫 風化水脈

著者大沢在昌
出版(判型)毎日新聞社
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-620-10615-1(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★★

鮫島は自動車の盗難事件を追っていた。昼夜を選ばずの大胆な犯行、Nシステムの監視も全く効果が無く、捜査は難航していた。そんな中、出所した真壁に偶然出会う。

シリーズ第7作。今回の敵は車泥棒。なのですが、ちょっと番外編風に『新宿鮫』以来の登場である鮫島の宿敵・真壁を中心にしたストーリーになっています。シリーズで追ってきた方はもちろん、そうでない方も十分楽しめるでしょう。ここから読んで、真壁が出てくる『新宿鮫』を読み返しても面白いかもしれません。

シリーズ最長でもある(たぶん)この作品。最近鮫島の活躍が初期の頃に比べて精彩を欠いているように思っていたのですが、今回は動く動く。前半、捜査によって明らかになる話と平行する登場人物たちのエピソードが中盤から徐々に交錯し、最後の畳みかけるような大団円へ。ふと第1作の『新宿鮫』を思いだしました。やはり新宿鮫はこうでなくては。第1巻の発売が1990年。このシリーズも既に10年が経過しています。登場人物を取り巻く環境も変わってますし、世間と同様新宿も様変わりしてきて、やくざが幅をきかす時代でもなくなってしまいましたが、中国人マフィアと新宿署という新たな対立構造で、再び新宿鮫が息を吹き返したかな、とファンとしては嬉しい1作でした。難しいことは考えずに、楽しんで読む本です。おすすめ。

いや、もちろん新宿が『不夜城』みたいになってしまうのは嫌ですけど。

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もう君を探さない

著者新野剛志
出版(判型)講談社
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-06-210190-4(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★☆

夏休み、高校教師の高梨は学校へ呼び出された。生徒の一人が家出をしてしまったという。その直後、かつての教え子で友人づきあいをしていたヤクザ、本間が殺されたと聞く。生徒を探すうちに、本間の殺人事件と生徒が関わりがあることに気づいた高梨は、ヤクザよりも先に生徒を見つけだそうとやっきになるが。

前作もだったかと思うのですが、どうもストーリーが平坦な気がしてしまうのです。登場人物が描きわけられてないと言ったらよいのでしょうか。私の読み方に問題があるのかもしれませんが、高梨の必死さというか真剣さが中途半端な感じがしてしまいました。

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病の世紀

著者牧野修
出版(判型)徳間書店
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-19-861222-6(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★☆

突然燃え上がったような死体が相次いで発見されていた。上司のすすめで国立予防医学研究所を訪れた小淵沢刑事は、そこでその原因が「炎上疥癬」という黴であることを知る。しかし、次々と別の細菌が原因と思われる事件が次々起こり始め。。

うー気持ち悪い。本を読んでいて、これは気持ち悪いなあと思ったのは結構久しぶりかもしれません。描写がものすごくグロい。でも、それだけという感じもしなくもないですね。この人の書く本、やっぱり怖くないというか。前のも同じように感想が書いてありますが、ちょっと現実感が薄いのが難点。どことなくグロいと思いながらも、滑稽なんですよね。いや、もしそれを狙っているなら、すごい作家かも。文章の流れは嫌いではないのですが、それだけどうにかならないかなあ。

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さようならダイノサウルス

著者ロバート・J・ソウヤー
出版(判型)ハヤカワ文庫
出版年月1996.10
ISBN(価格)4-15-011164-2(\640)【amazon】【bk1
評価★★★★

タイムマシンが完成した。そのタイムマシンに乗り、恐竜が何故滅んだのかを調査に6500万年の過去へ向かった2人の古生物学者。ところが、彼らが見たモノは。

なるほど〜。なぜ恐竜が滅びたか語る本は多いですが、これはまた斬新な仮説。いや私が知らないだけで斬新じゃないのかもしれませんが、面白いですね。地球上を支配していたと思われる恐竜が、ある時期を最後に完全にいなくなる。一瞬にして滅んだかのように思える恐竜は、今地球上を支配しているように思える人間にとって、自分たちの最後を予言するようなイメージがあるのでしょう。だから何故恐竜が滅んだかという話題は、どこでも興味を持たれるんでしょうね。実際のところ、恐竜は何故滅んだのでしょう。私も隕石説が一番有力だと思っていたのですが、どうも学会では「有力」というわけではないようですね。いくら議論をしても、このお話のようにその時代に行かなくては、結局その理由は判明しないのかもしれません。

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陽炎

著者今野敏
出版(判型)角川春樹事務所
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-89456-901-9(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★

お台場を主な管轄とする臨海署、通称「ベイエリア分署」。安積警部補率いる刑事課強行犯係が活躍する連作短編集。

本当は、これシリーズものだったらしく、「残照」でもこのベイエリア分署は活躍しているそうです。でもこれだけ読んでも全然平気。重大犯罪が起きて、それを刑事たちが解決するという「はぐれ刑事系」というよりも、このベイエリア分署内の内輪もめだの、刑事たちの噂話だのといった刑事自身が中心となった短編集。須賀君いいなあ。結構交通課の速水君も笑えます。キャラがたってて楽しめる刑事モノ。なかなかおすすめ。

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少年たちの密室

著者古処誠二
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-06-182147-4(\820)【amazon】【bk1
評価★★★★☆

突然大地震で、地下駐車場に閉じこめられた少年少女5人とその担任。真っ暗闇の中で一人の少年が死んだ。事故か、それとも誰かが・・・。

大震災によって地下に閉じこめられてしまった6人。その6人が元々様々な因縁があったために起きる悲劇。外界からの干渉のない地下駐車場というあまりに古典的な設定から、これだけの作品を生み出した著者に拍手です。動機は全員にある。でも、この暗闇の中で人を殺せるのか?やっぱり事故か。こんな風な話かな、と途中何度も思い、その度に訂正を迫られた面白本でした。単なる犯人当てでもなく、単なるサバイバルゲームでもなく・・・本当、中身の話ができないのがもどかしい。恩田陸さんが帯に「下手くそな推理小説にうんざりしている人に。」と書いていますが、確かに巧い!という本でした。おすすめ。

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火蛾

著者古泉迦十
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-06-182149-0(\880)【amazon】【bk1
評価★★★☆

聖者たちの列伝編纂を試みるファリードは、評判に聞いたアリーという行者を訪ねる。そのアリーが語ったのは、奇妙な殺人の物語だった。

この本は、どう言ったらよいのでしょう。常に二元論的考え方をする私には、ここまで「一」にこだわることはできないです。。。是か非か、生か死か、、といった考え方ではないこの物語。どことなく森博嗣的なモノを感じてしまったのですが、どうでしょうか。宗教の問題というのは、それを聞くだけでも面白いものですが、面白いと感じる時点で宗教がわかってないのかもしれないですね。

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悪魔の涙

著者ジェフリー・ディーヴァー
出版(判型)文春文庫
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-16-721871-2(\848)【amazon】【bk1
評価★★★☆

FBIを退職し、今は民間の筆跡鑑定をしているパーカー・キンケイドは、ある時かつての同僚の訪問をうけた。無差別殺人で政府を脅迫している犯人が、どうも事故で死んでしまったらしい。しかも無差別殺人犯は別にいる。犯人の脅迫状から何か割り出せないか・・・という依頼。しぶしぶ引き受けたキンケイドだったが。

さすがディーヴァー。やっぱり面白いんですよね。話の運び方や、それぞれの登場人物の意味ありげな過去、そして文書鑑定という目新しい小道具。でもちょっと今回は長すぎたという感じがしなくもありません。特に最後は無理矢理だなあという印象を受けてしまいました。いや、もちろんそれが面白いと言えるのかもしれないのですが、私としては、え?そうなっちゃうの?という感じでした。シリーズ化の予定ありということで、次回作に期待。

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たたり

著者雨宮町子
出版(判型)双葉社
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-575-23395-1(\1800)【amazon】【bk1
評価★★★

家の事情で、友人の別荘を借りることになった高橋夫妻。夫はSF作家で妻は翻訳家のこの二人は、元男爵家であったその別荘で生活を始める。ところが、次々と奇妙なことがおきて・・・・。

家が怖いという話って、作りによってはものすごく怖いと思うんですよ。なんとなくその気持ちはわかります。幽霊ってなんとなく「人」よりも「土地」につくような気がしませんか?特に古い家には怨念がこもっていそう。。。。そんな雰囲気が伝わってくる最初のあたりは、お、なかなか良さそうと思ったのですが、そのメインテーマだけがひたすら繰り返されるので、途中で飽きてしまいました(^^;。もう少し事件が起きるとか、あってもよかったんじゃないかなあ。

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光源

著者桐野夏生
出版(判型)文藝春秋
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-16-319480-0(\1619)【amazon】【bk1
評価★★★★☆

しばらく映画界を離れていた玉置優子。再び返り咲きをはかろうと、ある映画のプロデュースを手がける。新人監督を起用、その監督の書いた脚本を使ったこの映画。監督を助けるために、昔恋人だった有能撮影監督有村に撮影を依頼する。

日記にもちょこっと書いたのですが、たぶん賛否両論になるような気が。ある意味ころころと場面が変わり、ラストも唐突なイメージがあるのですが、それでも私はおすすめ。こういう人間の描き方は、桐野夏生ならではという気がします。また中心となる脚本がめちゃめちゃ寂しく美しい物語なのです。私は読んでいて鬱になりました。その寂しい且つ美しい脚本に、集まる面々はしかし、かなり癖のある人々。よく「映像で見ていいなあ、と思って行ったところって、大抵がっかりするんだよね」っていいますけれども、こんな風にそれぞれの出演者や撮影者の想念がどろどろと交じり合って、それが映像という作品になるからこそ、ああいう現実を撮りながらも現実には無い映像ができていくのかもしれません。男の身勝手や、女のわがままがそのまま現れた現場で、さてこの映画はどうなっていくのでしょうか。

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翼ある蛇

著者今邑彩
出版(判型)角川ホラー文庫
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-04-196203-X(\762)【amazon】【bk1
評価★★★☆

編集者・喜屋武蛍子は、大学時代の恩師、沢地逸子にホームページを本にしてくれないかと相談を持ちかけられる。面白い企画に乗り気な蛍子。しかしその直後、逸子のページの掲示板に漢字カナ交じりの書き込みがなされ、それと相対するような事件が発生した。

前作『蛇神』の続編。蛇と女性との関わりを下敷きにしたミステリー。続編というので楽しみにしていたのですが、『蛇神』の面白さでもあった宗教カルトの不気味さが消えてしまったのが残念。ホームページや掲示板、ネットといった新しいモノを取り入れた形になっているのが、逆に興ざめなイメージでした。ただ、気になるのは終わり方。。。これで終わりなのでしょうか。というか、このまま蛇神シリーズになりそうな予感。だとすれば、これだけで結論を出すのもなんとなくはばかられますし、今後に期待ですね。作者があとがきに書いているように、これだけで一話完結形態になっているため、これだけよんでも十分楽しめますが、やっぱり前のから読んだ方がいいと思います。

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八月の降霊会

著者若竹七海
出版(判型)角川文庫
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-04-352802-7(\762)【amazon】【bk1
評価★★★☆

「降霊会を催します」という招待状によって水屋家の別荘に集められた人々。ところがインチキだとみなが思っていた「降霊会」が思わぬ波紋を呼んで・・・。

黄泉の国の人々と交信したいかなあ。私はあまり・・・(^^;。本の中で「そういうものに頼る人は、何か後ろ暗いところがあるんだ」という部分が出てきますが、確かにそのとおりなのかも。あの時こうしてればあの人は死ななかったのでは・・・という後ろめたさをこうして霊に慰めてもらおうということなのかもしれません。でもどうなんでしょう、実際霊というものはいるのでしょうか。こっくりさんとか小学生の頃流行りましたけど、不信心な私はどうもだめでした。しかも、この本後味悪い〜。こういう終わりにしますか。思っていた方向性とかなりずれていたので、そういう意味では面白かったのですが、逆に物足りなさも感じました。さて、皆さんはどっち(^^)。

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大いなる聴衆

著者永井するみ
出版(判型)新潮社
出版年月2000.8
ISBN(価格)4-10-602765-8(\1800)【amazon】【bk1
評価★★★★

世界でも認められている一流ピアニストの安積界。札幌の音楽祭で比較的ポピュラーなベートーベンのピアノ・ソナタを弾くことになっていたが、直前になって曲目を変更したいと言い出す。しかも愛娘の死以来、彼の中でタブーとなっていた「ハンマークラヴィーア」に。曲の出来と共に彼の行動を不審に思った音楽祭の責任者であり、同級生である千堂紫は彼を問い詰める。

芸術を商売にするというのは、難しいことだと思うのです。結局「売れる」ものが「良い」ものとは限らないわけですが、でも「売れない」ものは商売にはできない。プロとしてやっていくのであれば、消費者を考えなければならないわけです。その消費者が信用できない芸術家たちは、どうやって折り合いをつけていくのでしょう。この本を読んでそんなことを考えてしまいました。婚約者を救うため、無理矢理「ハンマークラヴィーア」を弾くことになった安積。しかし、完璧には程遠い出来にいらつく耳の良い批評家や、主催者たち。本当に安積が「ハンマークラヴィーア」を弾けるようになるのか、という緊張感はもちろん、なぜ安積の婚約者が誘拐されなければならなかったのか、というミステリ部分もなかなか良くて、面白かったです。音楽好きな方におすすめ。というわけで、今日のBGMはベートーベンのソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」(^^)。

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秋と黄昏の殺人

著者司城志朗
出版(判型)講談社
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-06-210316-8(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★

別れた妻から電話があった。「人が死んだの。」と言った彼女、今までそこにいたことにしてくれと言い、これから行くからと言い残したまま行方がわからなくなった。心配になった岩城は、彼女の行方を探そうとするが・・・。

ある事件で人生が変わってしまった男の話。元々この作家さん、放送作家だっただけあって、テレビ局の話を書くと詳細な描写で楽しめます。人間関係の面白さも手伝って、読みやすい本でしたが、事件の方は可もなく不可もなく。もう少しあっと驚く結末を用意してくれてもよかったかな、と思います。

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海底密室

著者三雲岳斗
出版(判型)徳間デュアル文庫
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-19-905012-4(\762)【amazon】【bk1
評価★★★☆

<<バブル>>という海底にできた実験施設を取材に来た鷲見崎遊は、少し前に研究者が自殺するという事件が起きていたことを知る。自殺で片のついたその事件だったが、遊が<<バブル>>滞在中に次々と不可解な事件が起きる。

簡単には逃げることのできない海底施設という密室の中にできた密室。不自然な状況で起こる事件。謎を謎のままにしておけない遊は、様々な仮説を立ててその事件の真相にたどりつこうとするわけですが。様々な仮説をあげて実証していこうという姿勢が、古典的なミステリを思わせて懐かしいというか。今回はちょっと仕掛けが地味だった所為で「MGH」ほどの面白さを感じられなかったのですが、人工知能という「MGH」でも出てきた小道具が登場、今後に続くような終わり方で続きが楽しみともいえます。

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ハリー・ポッターと秘密の部屋

著者J.K.ローリング
出版(判型)静山社
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-915512-39-8(\1900)【amazon】【bk1
評価★★★★

夏休みが終わり、2年生としてホグワーツに戻るポッターたち。ところが、ポッターには他の子に聞こえない無気味な声が聞こえるようになっていた。

1年分を1冊にまとめているポッターシリーズ。第2巻である秘密の部屋はハリー・ポッターが2年生の時のお話です。なんとなく昔寝る前に読んでもらった本があまりに面白くて、寝られなくなってしまったときのような懐かしい感覚をおぼえました。どこをどうとってもやはり児童書なのですが、そうした懐かしさだけで読んでも良いかもしれません。いずれにせよ安心して読めるという点では折り紙つき。続きが読みたい〜って夜中に並ぶ人の気持ちがわからなくもないというか・・・です(^^)。

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ジャンプ

著者佐藤正午
出版(判型)光文社
出版年月2000.9
ISBN(価格)4-334-92324-0(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★

半年付き合っていた恋人が突然失踪した。「リンゴを買って5分で戻ってくる」と言ったのに、そのまま帰ってこなかったのだ。あの時、リンゴを買ってきてなんて言わなければ、いや、あの日あんなに強いお酒を飲まなければ。。。自責の念に駆られる三谷は、彼女を捜しだそうとする。

日々のちょっとした選択って、実は後で考えるとものすごく大きな分岐点だったりすることってありますよね。でも私は、あの時こうしていれば、あの時こうしなければ、もしかしたら全然別の人生になったかもしれない、なんていう選択は未だしてないかも、と思うのです。というより、どう選択しても結局今と同じような感じなんじゃないかなあ(笑)。そういう意味では、私はどちらかというと運命論者なのかもしれません。

でもこの女性の失踪した理由、なんとなくわかるなあ。私も急にどこかへ行きたくなるときってありますね。特に私が毎日のように使っている東京駅では、ものすごく遠くに行く電車が出るときもあるわけです。きっと7万人の失踪者の中には、あの東京駅にかかる大きな電光掲示板を見ていてどこかへ行きたくなってしまった人もいるんじゃないか、とそう思うんですね。ここから逃げるんじゃなくて、別の人生を選び取る、その差は微妙なところだと思うのですが、本当にいなくなってしまう人は後者の傾向が強いのでしょうね。

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