1999年06月

前日島(ウンベルト・エーコ) 英国庭園の謎(有栖川有栖)
ストリート・キッズ(ドン・ウィンズロウ) 刹那の街角(香納諒一)
葬儀よ、永久(とわ)につづけ(ディヴィット・プリル) 放浪探偵と七つの殺人(歌野晶午)
ペルシャ猫の謎(有栖川有栖) ボビーZの気怠く優雅な生活(ドン・ウィンズロウ)
赤目-ジャックリーの乱-(佐藤賢一) うつくしい子ども(石田衣良)
推定相続人(ヘンリー・ウエイド) 仏陀の鏡への道(ドン・ウィンズロウ)
イベリアの雷鳴(逢坂剛) そして二人だけになった(森博嗣)
高く孤独な道を行け(ドン・ウィンズロウ) 俺はどしゃぶり(須藤靖貴)
特派員が死んだ夏(立原伸行) Miss You(柴田よしき)
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前日島

著者ウンベルト・エーコ
出版(判型)文藝春秋
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-16-318500-3(\2286)【amazon】【bk1
評価★★★★

1643年の夏、ロベルトは波間を漂っていた。乗っていた船が難破し、海に投げ出されたのだ。もうだめだと思ったとき、ある入り江に停泊した一隻の船にたどり着いた。そしてその船が停泊している位置は、すぐそこから昨日になる不思議な場所だった。

目の前に見える島と、たどり着いた船・ダフネとの間に横たわる「時間」の大きな壁と、それにまつわるお話。最初のロベルトの回想はちょっと退屈なのですが、ダフネの中の話の辺りから俄然面白くなり、あとは一気読みでした。ロベルトが見ていた「線」は、今で言う日付変更線(現在の日付変更線は便宜上曲がっている場所もありますが)。いつも思うのですが、この線すごく不思議ですよね。目の前の島は昨日だから・・・と考えるロベルトの混乱もよくわかるのです。アメリカから日本へ飛ぶと1日失うわけですが、その1日はどこへ行ってしまうのでしょう。エーコらしい難しい小説ではありますが、ただひたすら難解というのでもなく、面白い本です。

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英国庭園の謎

著者有栖川有栖
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月1997.6
ISBN(価格)4-06-181965-8(\760)【amazon】【bk1
評価★★★☆

標題作を含む6編収録の短編集。今回のお気に入りは、「完璧な遺書」。誤って殺してしまったガールフレンドを自殺に見せかけるため、「完璧な遺書」を作成するお話。アイディア的にも、話的にもこれが私は一番だなと思いました。あと「三つの日付」のミス(?)は、私もよくやるので親近感を覚えました。あんまり言ってしまうと、ネタバレになってしまいますね。やめておきましょう。どういうミスをしたのか知りたい方は、メールで(^^) (<誰も知りたくないって)。有栖川さんの本、短編もなかなかいいですね。今まであえて短編は読んでこなかったのですが、あと残り1冊なのがちょっと残念。

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ストリート・キッズ

著者ドン・ウィンズロウ
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1993.11
ISBN(価格)4-488-28801-4(\800)【amazon】【bk1
評価★★★★☆

1976年5月。8月の民主党全国大会で副大統領候補に推されるはずの上院議員から、「朋友会」に党大会までに家出した娘を捜して欲しいという依頼があった。子供の頃に「朋友会」に拾われ、今では探偵としても腕利きのニールは、「朋友会」幹部からの命令を受け、イギリスに上院議員の令嬢・アリーを捜しに行く。

登場人物も良いですし、ストーリーも面白い。アリーを捜してイギリスで四苦八苦し、なんとか見つけたアリーと、今度はとんでもない逃避行。ニール君の活躍がとっても楽しい1冊です。東京創元社、こういう面白い本を文庫で出してくれるから、偉いなあと思います。さてさて、この依頼の裏側を知るニールは、どうするでしょうか。面白いシリーズを知って、楽しみが増えました。

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刹那の街角

著者香納諒一
出版(判型)角川書店
出版年月1999.5
ISBN(価格)4-04-873162-9(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★

警視庁捜査一課強行班。その中の1班である、通称中本軍団が出会う事件を集めた連作短編集。撃ち合いがあったりとか、外国人マフィアが絡んでいたりとか、警察内の汚職があったりとかなんていう派手な事件ではなく、本当に地道な捜査で犯人を割り出していく、どちらかというと人間ドラマ的な短編集です。中でも標題作の「刹那の街角」はうるうるきてしまいました。日本で働くことができるように、入籍だけさせた中国人女性が行方不明になっている。そうタレコミ屋の「ガンさん」から聞いた堀江刑事達が、その女の行方を追うお話。普段は本当にどうしようもない男なのに、ふと心優しいところを見せるっていう話に、私は弱いんですよね。どの短編も良い話でした。それほど長くないので、ちょっと読みたいときにおすすめです。

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葬儀よ、永久(とわ)につづけ

著者ディヴィット・プリル
出版(判型)東京創元社
出版年月1998.1
ISBN(価格)4-488-01618-9(\2300)【amazon】【bk1
評価★★★☆

田舎で暮らすアンディは、少年の頃から、遺体処理数で世界一の記録をもつモーディカイに憧れ、自分も将来は遺体防腐処理人(エンバーマー)になるんだと夢見ていた。月日が経って、高校を卒業しようとしているアンディの家に、大手葬儀社の人間がスカウトに来る。スカウトマンに気に入られ、葬儀社の金で葬儀大学に通うことになったアンディだが・・・

今月、このプリルの翻訳が出るという話が創元社のホームページに出ていて、それが面白そうだったので、既刊の本を読んでみました。なんともすごい話です。葬儀をスポーツにし、遺体処理競技なんてものもある大学に通うアンディ。よく考えると、人間誰しも死ぬのですから、病院よりも需要の多い産業かもしれませんが、やっぱり「葬儀」をここまで茶化してしまうところに、居心地の悪さを感じてしまいました。設定は面白いですし、すごく人の生き方を考えさせるラストで、良い話ではあるのですが・・・(^^;。全然関係ないのですが、某予備校は、第2次ベビーブーム世代の年齢上昇に合わせて、予備校から結婚式場、最後は葬祭場としてやっていけるようになってるんだ、なんていう悪口を思い出しました。

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放浪探偵と七つの殺人

著者歌野晶午
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-06-182075-3(\880)【amazon】【bk1
評価★★★★

標題作を含む7編の短編集。解決編が袋とじになっていて、問題編を読んで読者が探偵をすることができる趣向。この袋とじになっているのに惹かれて、もうずっと読んでいなかった歌野さんの本を買ってきました。ちなみに私の結果は2勝5敗。雑誌「メフィスト」で、犯人当てクイズになっていた「有罪としての不在」にいたっては、はやとちりをする森本君と同じ答えを出して、信濃探偵に馬鹿にされる始末(^^)。寮の平面図や行動表まで書いたのに・・・。よく見ると、読者への挑戦にも「誉め殺しではない、忠告である」って書いてあるではないですか。あーあ。あ、そうそう、この寮、私の高校の寮とそっくりなんですよ。寮の作りってどこも同じ感じなんでしょうか。
ちなみに私の出した解答が合っていたのは、「幽霊病棟」と「水難の夜」でした。こういう本は、考えて読まないとやっぱり面白くない気がします。袋とじにするっていうのは、正解ですね。

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ペルシャ猫の謎

著者有栖川有栖
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月1999.5
ISBN(価格)4-06-182071-0(\780)【amazon】【bk1
評価★★★☆

標題作を含む7作の短編集。私は「わらう月」が一番好きです。大元はよくあるトリックながら、地球と月を使うある意味大胆なトリックで面白かったです。つらいトリックですが「暗号を撒く男」は別の意味で面白いと思います。通天閣にそんな「暗号」があったとは、とびっくりです。日ごろ何気なく見ているものの中にも、知っていれば意味を成すものが案外多いのかもしれません。「悲劇的」は決定的な落ちでした(^^)。こういうレポート、私ならAをつけるけどなあ。

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ボビーZの気怠く優雅な生活

著者ドン・ウィンズロウ
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1999.5
ISBN(価格)4-04-282301-7(\780)【amazon】【bk1
評価★★★★

いっつも失敗ばかりの泥棒、ティム・カーニーは、現在もまた服役中。ところがその刑務所で、ヘルズエンジェルの男を殺してしまい、刑務所のどこにいても命を狙われる運命になってしまった。そこへ麻薬取締官が取引を持ちかける。伝説の麻薬王・ボビーZになりすまして、メキシコの麻薬王ウェルテーロとの人質交換に応じろというのだ。

何をやってもいまいちのティム。誇れるのは海兵隊の時にもらった海軍殊勲賞ぐらい。でも実は良い人だったりするのです。どちらにせよ命を狙われるなら、少なくとも外に出られる可能性の高いほうへ、と取引に応じるティムですが、さてさてどうなるのでしょう。読んで損はありません。薄いですし、シリーズ物ではないので、ニールシリーズを読もうか迷っている方は、これから読んでみてはどうでしょう。どちらも面白いですよ。

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赤目-ジャックリーの乱-

著者佐藤賢一
出版(判型)マガジン・ハウス
出版年月1999.3
ISBN(価格)4-8387-0854-8(\1400)【amazon】【bk1
評価★★★☆

百年戦争で一時的に雇われていた傭兵たちが解雇され、フランスの農村で大暴れをしていた。ただただ嵐が過ぎるのを待つしかない農民達の不満はつのるばかり。そんな中、ひとりの乞食坊主が「悪いのは貴族である」と言い出し、農民たちをけしかける。

「ジャックリーの乱」と呼ばれる農民蜂起のお話。この本は佐藤賢一にしては、かなり薄いという珍しいものですが、出来もちょっと他と比べてしまうと落ちるかなという気がしました。自分達にやられたことを貴族に仕返しするという考え方についていけず、悩みまくった青年が主人公。なのですが、感情移入できないままに終わってしまいました。うーん、ちょっと残念。

■入手情報: 集英社文庫(2001.5)

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うつくしい子ども

著者石田衣良
出版(判型)文藝春秋
出版年月1999.5
ISBN(価格)4-16-318450-3(\1524)【amazon】【bk1
評価★★★★

近所の9歳の女の子が行方不明になった。妹と同い年、しかも仲がよかったらしいその子は、幹生の通う中学校の裏山で発見される。遺体のそばには、学校でも話題になっていた「夜の王子」のサイン。ところが数日後つかまった犯人は、ひとつ年下の弟、カズシだった。

13歳の弟が、どうして人を殺してしまったのか、その疑問を解こうとする14歳の少年のお話。いろいろと少年犯罪の話題の多いこの頃ですが、それに対して説教臭い社会派小説ではなく、少年の目から見た素朴な疑問という形をとっているために、すんなり読めたなと思います。少年とそれを助ける学級委員の男の子と図書委員の女の子。3人で悩みながらも、いろいろと話し合っていくという進め方も、私は好きですね。
ただ、ひとつ疑問。図書館の貸出し記録は、コンピュータで管理しているなら普通残らないと思うのです。じゃないと、ハードディスクが持たないでしょう。利用者の秘密を守るというのは、「図書館の自由に関する宣言」の中にある重要な条文ですが、それを守るなら数値データはともかく、個人の貸出し記録なんか残さないほうが良いのです。昔はよく図書に挟まっている利用カードを見て、「あ、あの人が借りてるー」なんて事もありましたが・・・(^^)。

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推定相続人

著者ヘンリー・ウエイド
出版(判型)国書刊行会
出版年月1999.3
ISBN(価格)4-336-03843-0(\2400)【amazon】【bk1
評価★★★☆

ユースタスは、医師免許を持ちながらも、開業したのはわずか、その後は遊び人として気ままな生活を送っていた。借金だらけの生活がそろそろ本格的に苦しくなってきた時、遠い親戚であるハワードとハロルドが事故死したことを知る。莫大な財産と男爵位相続のための邪魔はあと2人。ユースタスは一族殺害を試みるが・・・

1935年刊の推理小説。現代的なエンターテイメントに限りなく近いおもしろ本です。こういう古い本で面白い本に出会うといつも惜しいと思うのは、こちらがオリジナルなのに、それをさらに応用して面白くした本を既に読んでしまっていることですね。これもひねりがいまいち足りないように感じてしまいました。ユースタスが、一体どうやって親戚たちを殺害しようとするのか・・・読んでのお楽しみなんですが、そればかりじゃないんですよ。国書刊行会のこの世界探偵小説集、面白い本多いですよね。

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仏陀の鏡への道

著者ドン・ウィンズロウ
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1997.3
ISBN(価格)4-488-28802-2(\880)【amazon】【bk1
評価★★★★

前作でヨークシャーの小屋に隠棲してしまったニール。そこへ飛行機嫌いのグレアムがわざわざ訪ねてくる。鶏糞から驚異的な成長剤を作り出す技術を持つ博士が、ある女性に心を奪われ仕事に戻ってこないらしい。それを連れ戻してくれという会社の依頼だった。博士と女を追って、香港・そして中国大陸をさまようはめになったニールだが。

この前読んだ「インヴィジブル・ワールド」と合わせて、ますます中国に行きたくなりました。ニール君、ボロボロになりながら、皮肉屋な口調は全然直りません。人物も面白いのですが、ストーリーもなかなか。ニール君は、無事博士を連れ戻すことができるのでしょうか・・・、と単純にいかないところがウィンズロウ。さてさて今回のお話にはどんな裏があるのでしょう。個人的には「ストリート・キッズ」の方が好きですが、どちらも甲乙つけがたい作品です。おすすめ。

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イベリアの雷鳴

著者逢坂剛
出版(判型)講談社
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-06-209488-6(\2200)【amazon】【bk1
評価★★★★

第2次世界大戦前夜のヨーロッパ。宝石商として内戦直後のスペインに入っていた北都は、宝石を売り歩きながら、さまざまな情報を手に入れている。やがて彼を取り巻く人々が、国際的な駆け引きに巻き込まれ・・・

宝石商北都と、聯盟通信の尾形という二人の日本人が巻き込まれる情報戦のお話。ストーリーとしては面白いのですが、最後はこれで終わりなのでしょうか。納得できない。ラストがものすごく哀しくて、私はああ逢坂剛っぽいなあ、と思いました。でも、同じ時期を扱った話でしたら、「ヒトラーの防具」の方がよかったですね。

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そして二人だけになった

著者森博嗣
出版(判型)新潮社
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-10-602761-5(\2000)【amazon】【bk1
評価★★★★☆

僕は、僕の2つ上の兄、天才数学者・物理学者である勅使河原潤の影武者として時々テレビなどに出演していた。今回は、用事のある兄の代わりに、A海峡大橋のアンカレイジ内にできたシェルタ、<<バルブ>>に滞在するために、科学者5人と出かける。

出ることのできないアンカレイジの中で、ひとり、ひとりと殺されていく。こういう嵐の山荘系の設定は、登場人物を限定して、警察権力の介入を防ぐという点で、スリル満点・面白さ倍増という利点はあるものの、「そして二人だけにな」ってしまったとき、犯人をどう暴くかにものすごく作家の力量が問われるような気がします。私はこういう話では、やはり綾辻行人の「十角館の殺人」を思い出すのですが、こちらは綾辻氏とは全く違った森氏らしい解決方法。森氏だからできる?解決方法かもしれません。私的には、「すべてがFになる」以来の傑作です。

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高く孤独な道を行け

著者ドン・ウィンズロウ
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-488-28803-0(\740)【amazon】【bk1
評価★★★★★

前作で、中国の僧坊に半ば軟禁状態になってしまったニール。そこへまたグレアムがたずねてきた。自由とひきかえに、行方不明になった2歳の赤ん坊を連れて帰れという。赤ん坊を追ってネヴァダの平原へ行くニールだったが・・・

世界のどこかへ閉じ込められたニールが、グレアムに「自由」とか「復学」という飴を与えられて、再び捜索に乗り出すという、ワンパターンな展開は、ファンにとっては嬉しいもの。ふと思い出したのですが、こういうワンパターンに事件に巻き込まれるシリーズと言えば、私の中では藤本ひとみのマリナシリーズなんです。いつもお金が無くて、なんとか連載を取ろうと苦労するうちに、事件に巻き込まれて・・・そして最後は「かくてマリナの現状は」で終わる。そう言えば、あのシリーズはもう終わっているのでしょうか。う、話がそれてしまいました。ニール君ですね。そのたびに傷だらけになって仕事をしなくてはならないニール君、とっても哀れです。今回もまた・・・・なのでしょうか。赤ん坊は無事なのか、それとも・・・。今回は、スピード感と、グレアムとのやりとりがすごーく良かったので、★★★★★にしてしまいました(^^)。でも、今までの2冊も面白いです。またこのシリーズは、最初から読むことをおすすめいたします。

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俺はどしゃぶり

著者須藤靖貴
出版(判型)新潮社
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-10-430301-1(\1400)【amazon】【bk1
評価★★★★

飲めばいつも大酒・・・大学時代はアメリカンフットボールに明け暮れる毎日を送っていた「俺」。現在高校教師である「俺」は、母校でもある職場に、アメリカンフットボール同好会を設立した。肥満児、秀才・・・運動に不向きな人間が集まった同好会だったが・・・。

標題作の中編「俺はどしゃぶり」と、その「俺」の大学時代を描いた「俺はキャプテン」、「NG 胸を張れ」の3作を収録。大学時代はアメフト部に明け暮れて、女には振られっぱなし、そんな「俺」の青春小説。すごくいい話です。「俺はどしゃぶり」に出てくる高校生とか、絶対に主流にはなれないようなやつばっかりで、それがまた面白いんです。部長をやってくれている山縣先生もいい味出してます。読み終わってから、表紙のイラストを見ると、結構笑えます。アメフトを知っていれば、もっと面白いのかもしれないのですが、あいにく私の高校にはラグビー部しかありませんでした・・・残念。

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特派員が死んだ夏

著者立原伸行
出版(判型)講談社
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-06-209342-1(\1800)【amazon】【bk1
評価★★★

東西新聞の中東特派員、滝岡が刺殺された。すごい特ダネをつかんできたと聞いていた秋沢は、彼の死の真相を突き止めようとあちこちを取材する。

もっと中東紛争なんかのからんだ話か(つまり戦争ものかと)と思っていたのですが、拍子抜け。舞台は日本です。私の勘違いのせいもあってか、いまいちノレないまま終わってしまいました。その特ダネもなあ・・・。うーん。新聞記者さんって、本当に仕事の鬼じゃないとできないですね、っていうのが正直な感想です。

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Miss You

著者柴田よしき
出版(判型)文芸春秋
出版年月1999.6
ISBN(価格)4-16-318520-8(\1905)【amazon】【bk1
評価★★★★☆

江口有美。東大卒。編集者4年目。美人だけど、ちょっと鈍感。いままで憎まれることなんて一度もなかったのに、婚約者の元に悪質なイタズラをされ、彼の母親から婚約を破棄したいと言われるはめに。一体誰がこんなことを? 誰かが、あたしを憎んでる?

遙都」のドタバタとは打って変わって内省的な作品。私はどちらかというと、こういう雰囲気の柴田よしきの方が好きです。先輩が殺され、しかも自分も誰かに嫌がらせをされている。自分も先輩みたいに殺されるのか、という恐怖。一方で、誰ともぶつかったことなどないし、誰にも憎まれるようなことをした覚えも無い、一体誰が・・・という焦燥感。ストーリーも面白かったですし、脇役(?)陣もそれぞれが良い味だしてて、あっという間に読めてしまいました。編集者のお仕事という別のストーリーも楽しめます。小説というと、その著者ばかりが目立ちますけど、実は編集者の力というのも大きいのかもしれないですね。

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