1998年02月

敵対水域(ピーター・ハクソーゼン) 真・天狼星 1(栗本薫)
骸の誘惑(雨宮町子) 天使の爪(ジョン・ウェッセル)
スキャンダル(ジョアンナ・エルム) メビウス・レター(北森鴻)
記憶の果て(浦賀和宏) 昏い部屋(ミネット・ウォルターズ)
闇に浮かぶ絵(ロバート・ゴダード)
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敵対水域

著者ピーター・ハクソーゼン
出版(判型)文藝春秋
出版年月1998.1
ISBN(価格)4-16-353740-6(\1714)【amazon】【bk1
評価★★★★★

この本は、原書を図書館で整理して、ああ面白そうだなあと思っていたんです。そう思っていたら、本屋で大量に平積みされていたので、思わず手にとってしまいました。
この話は、ノンフィクションです。でもそんな風に思えないほど次々と襲ってくる困難や、感動的な結末。確か原書のほうには、「レッド・オクトーバーはフィクションだが、これはすべて真実である」といったような宣伝文句がついていた気がするのですが、まさに「レッド・オクトーバーを追え」状態です。「これはすべて真実である」という帯に、ノンフィクションかあ、と思った方、絶対損はしません。読んでみてください。

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真・天狼星 1

著者栗本薫
出版(判型)講談社
出版年月1989.7
ISBN(価格)4-06-208990-4(\540)【amazon】【bk1
評価★★★

天狼星シリーズの6巻になります。この「真・天狼星」は、毎月発行だそうなので、毎月現れるでしょう。
この本は、
「新・天狼星」2巻を読んでいなくても、読むことはできます。ちょうど、「新・天狼星」と表裏一体というのでしょうか。平行した時間設定がされており、いっしょに読むと面白いでしょう。
こちらの本は、「新・天狼星」の中でもでてきた「東京ヴァンパイア殺人事件」に主眼が置かれています。なんとなく伊集院さんも、最初に出てきたときに比べると、おじいさんという感じになってきてしまって、寂しいなあと思うのは、私だけでしょうか。(→「天狼星2」に続く)

■入手情報: 講談社文庫(2001.3)

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骸の誘惑

著者雨宮町子
出版(判型)新潮社
出版年月1998.1
ISBN(価格)4-10-602753-4(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★★

新潮ミステリー倶楽部から新刊が出ていると、つい手に取ってしまう私ですが、この本もまさにそういう本でした。枯れ蔵に続く新潮ミステリー倶楽部賞受賞作です。
弟の事故死にどうしても納得できない可那子という女性が主人公。最後でどの選評にも書いてありましたが、出てくるどの人物も魅力的です。ただ、少し最後がいまいちだったかな。でも全体としては、すっかり嵌まって読んだ本でした。
「自己啓発セミナー」という少し怪しい団体(?)に対する批判というのが、随所に現れて、社会派ミステリーに近い趣を持ちながらも、そればかりにはならないところが、いいかなとも思いました。

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天使の爪

著者ジョン・ウェッセル
出版(判型)DHC
出版年月1998.1
ISBN(価格)4-88724-108-9(\1900)【amazon】【bk1
評価

この本、どう思います?といきなり言ってみたくなりました。本当にこの人、「期待の大型新人」なのでしょうか。とてもそうは思えないのですが。私が今週疲れていたからでしょうか。
なんだか、全然ストーリーが頭に入ってこないんです。何でだろう、と思っていたら、主人公が全然魅力的じゃない。しかも、どの人がどの人だか忘れてしまうほど、キャラクターの個性がないんですね。しかも動機がいまいち。なんでこの人たち、こんなことで一生懸命になってるの?という感想が出てしまうほど。しかも、章ごとにぶつぶつ切れている感じで、あんまりストーリーに入り込んでいけませんでした。この長さで、この退屈さは、はっきり言って金返せ状態でした。
ここまで書いて、あまりにひどい感想を書いてしまったと思ったので、ちょっと一言。この感想はあくまで私の主観で、著者は、スー・グラフトン(彼女の本も私は好きではないのですが)が発掘し、ニューヨーク・タイムズ・ブック・レビューでも絶賛されている本なのです。だから、もしちゃんと読んだとしたら、本当は様々な複線が張られて、面白いのかもしれないのです。もし、この本が本当は面白いんだーと反論される方がいらっしゃいましたら、是非
メールください。もう一度読み返してみるかもしれません。

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スキャンダル

著者ジョアンナ・エルム
出版(判型)扶桑社文庫
出版年月1998.1
ISBN(価格)4-594-02423-8(\705)【amazon】【bk1
評価★★★

主人公は、ワイドショー番組の女性リポーター。住んでいる家のすぐ近くで、有名なキャスターだった女性が殺されます。ところが、一番インタビューしたい被害者の息子は、彼女が喧嘩別れした友人だった。というところから話は始まるのですが、とにかく人間模様が面白い。内容的にはありふれているという感が否めないのですが、人間がここまで面白いと、ついつい引きずり込まれて読んでしまいます。詳しいことを書くと読んだときの面白味が半減するので、やめますが、暇つぶしの本としては最適ではないでしょうか。

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メビウス・レター

著者北森鴻
出版(判型)講談社
出版年月1998.1
ISBN(価格)4-06-208986-6(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★

北森さんの本は、2冊目なのですが、前の狐罠とはちょっと違った感じのお話です。
主人公(?)の元に、奇妙な手紙が届きます。その手紙とともに、昔の高校生自殺事件の真相が明らかになっていく、という話なのですが、ちょっと「これ」をやるには短いかなあ、という気がしました。最後が唐突というか。途中で、最後が見えてしまったのが残念だったのですが、しかし小説としては、面白いと思います。単純に犯人当てにしなければよかった気もするのですが。どうでしょう。

■入手情報: 講談社文庫(2001.2)

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記憶の果て

著者浦賀和宏
出版(判型)講談社ノベルズ
出版年月1998.2
ISBN(価格)4-06-182006-0(\950)【amazon】【bk1
評価★★★★

この本、あらすじや著者の紹介が全く書いていないんです。私は単に読む本が底を尽きかけていたのと、本の厚さと、「メフィスト賞」という帯にひかれて買ったのですが、これ、買おうと思う人少ないんじゃないですか(笑)。新人だし、中身が分からないし、厚いし。
それで、中を読んでみたのですが、面白い。なんていうんでしょう。小説と言っていいのでしょうか、これは。最後まで読んで、あらすじが書いていない訳が分かりました。書けなかったんですね、きっと(笑)。ちょっと哲学的というか、
笑わない数学者に、雰囲気的には似ています。京極さんの推薦文がまた良いのですが、「本書は、先行作品に対する敬意ある挑発である」、そのとおりだなあと思います。
主人公の高校生たちが、かつての自分を見ているようで、複雑な気分。案外好き嫌いが分かれるような気もするのですが、私は好きかな。読めば分かりますが、続きが出そうです。次作も楽しみな作家です。

■入手情報: 講談社文庫(2001.8)

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昏い部屋

著者ミネット・ウォルターズ
出版(判型)東京創元社
出版年月1999.9
ISBN(価格)4-488-01387-2(\2600)【amazon】【bk1
評価★★★★

さすが、ウォルターズ。と言える作品。主人公は、写真家で大富豪の娘、Jinx Kingsley。ある日、彼女は病院で目が覚めます。そして、婚約者が自分の元を去り、親友と結婚すると聞いて、自殺を図ったと聞かされるのです。しかし、そうした記憶が全く彼女にはない。そこへ、その親友と婚約者が惨殺死体で発見されます。当然最有力の容疑者である彼女は、記憶を取り戻し、自分の容疑を晴らすことができるのでしょうか、あるいは、彼女が・・・。
全員犯人に見えるというのが、ウォルターズの特徴とも思えるのですが、今回は、一番の中心人物が、記憶喪失という設定。さて、犯人は誰なのでしょう。

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闇に浮かぶ絵

著者ロバート・ゴダード
出版(判型)文春文庫
出版年月1998.2
ISBN(価格)(上)4-16-752751-0(\619)【amazon】【bk1
(下)4-16-752752-9(\619)【amazon】【bk1
評価★★★★

ゴダードの本って、かなり入り組んだ人物関係や、複雑なストーリーが特徴だと思うのですが、今回もその特徴が良く現れています。
今度の話は、11年前に自殺したと思われていた、准男爵家の長男が、いきなり戻ってくるというもの。父は亡くなり、爵位と財産は彼の弟に引き継がれており、当然弟、母、親戚などダヴェノール家の人間は彼を認めようとはしません。かろうじて失踪当時の婚約者と、乳母が彼を彼だと認めるのですが。さて、本当に彼は、ジェームズ・ダヴェノールなのでしょうか。それとも、准男爵家の財産を狙う詐欺師なのでしょうか。
今はやりの、リーガル・サスペンス的な要素を含みながらも、ゴダードらしい上品さを持っている作品。

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