1997年12月

あなたに会いたくて(メアリ・H・クラーク) 氷の家(ミネット・ウォルターズ)
Speak No Evil(Rochelle Majer Krich) ジュラシック・パーク(マイクル・クライトン)
ロスト・ワールド-ジュラシック・パーク2-(マイクル・クライトン) クリスマスのフロスト(R.D.ウィングフィールド)
そして夜は甦る(原りょう) 私が殺した少女(原りょう)
さらば長き眠り(原りょう) レディー・ジョーカー(高村薫)
フロスト日和(R・D・ウィングフィールド) 女彫刻家(ミネット・ウォルターズ)
OUT(桐野夏生)
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あなたに会いたくて

著者メアリ・H・クラーク
出版(判型)新潮文庫
出版年月1997.11
ISBN(価格)4-10-216611-4(\629)【amazon】【bk1
評価★★★

私は、メアリ・H・クラークの作品を読んだのは始めてなのですが、かなり有名な人らしいですね。この作品は、試験管ベビーの話。主人公はTVリポーターの女性で、ある病院を取材に行ったときに、自分とそっくりな女性が刺されて運ばれてくるのです。そして自分の家に「アニーは間違いだった」というFAXが。
この酷似している女性の話と、試験管ベビーの話がいまいち結びつかなくて、ちょっと残念な気もするのですが。試験管ベビーの話なら、
第三双生児の方が上だと思います。でも、話の展開とか、最後の犯人を追いつめるところなど、ベストセラー作家らしく、面白く読めました。

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氷の家

著者ミネット・ウォルターズ
出版(判型)東京創元社
出版年月1994.4
ISBN(価格)4-48-801364-3(\2500)【amazon】【bk1
評価★★★★

久々、ミステリって感じのミステリを読みました。ひたすら謎解き。最初の氷室での死体(の残骸)発見から、もういかにも謎解きらしい話です。その死体がいったい誰なのかが、この話でのポイントになっています。途中、なんでこんな話が入っているんだろうと思えるところも多々あるのですが、ちゃんと最後に決着が付けられます。最後はすっきり爽快な気分になりました。お勧めの1冊。

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Speak No Evil

著者Rochelle Majer Krich
出版(判型)Warner
出版年月
ISBN(価格)
評価★★★★

今回の主人公は、女性事務弁護士デブラ。彼女の専門は、刑事裁判。ユダヤ人でラビの娘の彼女は、自分が刑事裁判の被告を弁護することで、実際には有罪の人間をまた社会に放してしまっているのではないか、という疑問に悩まされている。そんなときに、自分と同業の弁護士が次々と殺され、舌を切られた惨殺死体で発見され、彼女が疑われはじめる。なぜ犯人は次々と弁護士を殺すのか。被害者の共通点は?またデブラは自分にかけられた嫌疑をはらすことができるのか。
クリッヒの本は本当に好きで、出ると買ってしまうのですが、今回のは、なんとリーガルサスペンスの感じもあるスリラーです。。リーガルサスペンスって本当にはやりですが、面白いですよねえ。最後のほうで、デブラが弁護していた被告の判決がでるのですが、ドキドキしてしまいました。まあ、そこはクリッヒの力量なのかもしれませんが。

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ジュラシック・パーク

著者マイクル・クライトン
出版(判型)早川書房
出版年月1991.6
ISBN(価格)(上)4-15-207714-X(\1500)【amazon】【bk1
(下)4-15-207715-8(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★★

コスタリカのある島に、InGen社はあるテーマパークを建設しようとしていた。「ジュラシック・パーク」。最先端のバイオテクノロジーを使い、恐竜をよみがえらせ、動物園のように管理していたのだ。オープン前の視察のため、創設者のハモンドは古生物学者、古植物学者、数学者そして自分の孫2人をつれ、そのジュラシック・パークへと足を踏み入れた。驚嘆する世界。完璧にコントロールされた施設。そこは安全な本当の恐竜王国のはずだった。
この本は、絶対
映画のほうが有名だと思うのですが、どうでしょう。でも、絶対本のほうが面白い。なぜってクライトンが一番いいたかった部分が、映画には抜けているからです。この話は、バイオテクノロジーによって絶滅生物をよみがえらせようとする考えと、カオス理論の言う、この世の予測不可能性の相反を示唆していると思うのです。だから、恐竜ばかりに手をいれてしまった映画は失敗だと思います。本当に力を入れるべきは、マルカムの予言なのに。

■入手情報:ハヤカワ文庫(1993.3)

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ロスト・ワールド-ジュラシック・パーク2-

著者マイクル・クライトン
出版(判型)早川書房
出版年月1995.11
ISBN(価格)(上)4-15-207973-8(\1600)【amazon】【bk1
(下)4-15-207974-6(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★★

あのジュラシック・パークの悲劇から6年。恐竜は滅び、パークは崩壊した。しかし、一方で恐竜はまだ生き残っているという噂は絶えることがなかった。コスタリカ沿岸に、恐竜らしい死体が流れ着いたのを見てから、古生物学者のレヴィンは、恐竜の生き残る「ロスト・ワールド」を探しに出かけ、行方不明に。彼の残した最後の交信と、「サイトB」という言葉。レヴィンと共に「ロスト・ワールド」を探していた数学者マルカムは、レヴィンを探しに乗り出す。
この話は、前回の
「ジュラシック・パーク」以上です。ジュラシック・パークにはもう一つの島があった?という疑問が、この話のポイント。緊張感のある話の展開には、本当に脱帽。さすが世界のヒットメーカー・クライトン。でも、映画は金返せって感じでしたけど。

■入手情報:ハヤカワ文庫(1997.5)

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クリスマスのフロスト

著者R.D.ウィングフィールド
出版(判型)東京創元社
出版年月1994.9
ISBN(価格)4-488-29101-5(\880)【amazon】【bk1
評価★★★★

もう、フロスト君には負けました。警部で、勲章なんかもらっている一見すごい人なのに、書類仕事は大嫌い、机の上はごみため、捜査に使うのはろくでもない直感。それでいて単なる図太くて無神経なおじさんなのかと思ったら、案外繊細で、やさしかったり。人間的なフロストの魅力に取り付かれてしまいました。おすすめの1冊。

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そして夜は甦る

著者原りょう
出版(判型)ハヤカワ文庫
出版年月1995.4
ISBN(価格)4-15-030501-3(\640)【amazon】【bk1
評価★★★★

沢崎探偵シリーズ第1弾。新宿のはずれにある渡辺探偵事務所の沢崎探偵(なんで渡辺探偵事務所なのかは読んでのお楽しみ。別に隠すほどのことでもないですが)が巻き込まれた事件のお話。ルポイターの失踪が、都知事とかにからんでくる話自体ももちろん面白いのですが、なんといっても沢崎探偵のひねくれぶりが、私は好きです。ハードボイルドらしいハードボイルド。

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私が殺した少女

著者原りょう
出版(判型)ハヤカワ文庫
出版年月1996.4
ISBN(価格)4-15-030546-3(\680)【amazon】【bk1
評価★★★★

沢崎探偵シリーズ第2弾。私はこの話がとっても気に入っているのですが。相変わらずひねくれものの探偵、沢崎が今度は誘拐事件に巻き込まれます。沢崎はもちろん、脇を固める錦織刑事や、暴力団の橋爪なんかも私はおちゃめで好きです。警察にも暴力団にも睨まれているのに、それをなんとも思っていない(ようにおもえる)沢崎もまた、いいキャラクターですよね。

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さらば長き眠り

著者原りょう
出版(判型)ハヤカワ文庫
出版年月1995.1
ISBN(価格)4-15-207898-7(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★★

沢崎シリーズ第3弾。今回は依頼人のいない依頼です。依頼内容自体を知るために奔走する沢崎は、涙ぐましいというか、滑稽というか、本当に面白い人です。しばらく沢崎が姿を消していたことから、暴力団と警察の監視も厳しくなって(理由は全作読めばわかります)、結構大変な沢崎。ちゃんとシリーズものらしいラストもついて、久々満足の作品でした。

■入手情報:ハヤカワ文庫(2000.12)

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レディー・ジョーカー

著者高村薫
出版(判型)毎日新聞社
出版年月1997.11
ISBN(価格)(上)4-62-010579-1(\1700)【amazon】【bk1
(下)4-62-010580-5(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★

高村さんの本て、本当に癖がありますよね。彼女の本はなんだかんだいってほとんど持っているのですが、読むのに骨が折れます。今回のもすごい骨の折れる本でした。
ビール会社を狙った犯罪。裏で金を操作する株屋。そこから利益を受ける政治家。もういかにも今の日本の組織を批判するような本で、そういうのがだめな人はやめたほうがいいでしょう。なんとなく社会派的。
私個人の意見を言うなら、誘拐部分のみに焦点をあてて、はっきり犯人役を主人公にしたほうが、エンターテイメントとしての面白味が増すと思うのですけどね。でもそれでは高村薫ではない?


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フロスト日和

著者R・D・ウィングフィールド
出版(判型)東京創元社
出版年月1997.10
ISBN(価格)4-488-29102-3(\1080)【amazon】【bk1
評価★★★★

フロスト警部は、第2作になっても全然懲りていません。マレット警視に罵声を浴びせ、捜査は直感に頼り、穴だらけの囮捜査はするし、30歳の被害者を10代の少女と間違えるし、警察をかき回してくれます。でもなんか憎めないんですよね。部下には優しいし、権力に媚びるのが大嫌いなところとか、かわいいというか、世渡りが下手というか。しかも、皮肉っぽい言い方がまた的を得ていて面白いんですよね。一回はまると止められないフロストシリーズ。是非読んで見てください。

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女彫刻家

著者ミネット・ウォルターズ
出版(判型)東京創元社
出版年月1995.7
ISBN(価格)4-488-01368-6(\2600)【amazon】【bk1
評価★★★★★

母と妹を切り刻んで刑務所に行っているオリーヴ。彼女は本当に有罪なのか。作家のロザリンドは、次の本を書くために、彼女の周りを探るのですが。
この作家は本当に読者を裏切りませんね。登場人物がすべて怪しく見えて、本当にこいつを信用してもいいのか、という気分にさせられます。さて本当のところ、オリーヴは無実なのでしょうか。読み始めたら、本当に止まりません。寝不足覚悟で読んでください。

■入手情報:創元推理文庫(2000.8)

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OUT

著者桐野夏生
出版(判型)講談社
出版年月1997.7
ISBN(価格)4-06-208552-6(\2000)【amazon】【bk1
評価★★★★★

なんて重い本なんだろう、というのが正直な感想。出てくる主婦が皆、生活に疲れてしまっていて、自分も40とかになったらこんなになるのかなあ、とげっそりしました。主人公(?)の4人の主婦は、「生活に疲れている主婦」の代表とも言える、寝たきり老人を抱える主婦、夫の暴力に耐える主婦、借金で首の回らない主婦、そして子供の問題を抱える主婦なのです。性格とかの書き分けもとってもよくできていて、邦子さんとかこっちが殺したくなるような人でしたね。

それはさておき、話のほうは、本当に読んでみてくださいとしかいいようがありません。いわゆる犯人あてとかとは全然違います。4人の主婦が、ある事件から人生を道を踏み誤る話とでも言ったらよいのでしょうか。なぜか引き込まれて、結局最後まで一気に読んでしまいました。「女は強い」というのが、こんなところで現れたら怖いですね。

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