虎御石ルート・・・3
足柄峠西坂地図 

虎御前石の直下の掘割を道跡と考えると、幅5メートル程の道が想定されます。表土のほとんどが火山灰混じりの土で、道路遺構があったとしても埋もれてしまっている可能性が考えられます。

左の写真は掘割を少し下ったところで、写真の塚のように見える地形の手前で道跡と考えられそうな窪地が左へ直角に近い角度で折れ曲がっています。

右の写真は掘割地形が直角に折れ曲がるところから振り向いて撮影したものです。
写真の右側に見られる土塁状の外側にも、尾根方向に下って行く別の細い道跡らしきものが確認できました。それ以外にも、現在の虎御石ルートの歩行路とは違う場所に道跡らしきものが幾つか見られます。このように幾条かの道跡らしきものが並列して見られるのは、古い時代の幹線路の特徴の一つでもあるのです。何度も道の付け替えが行われたりした跡なのかも知れません。

直角に折れ曲がったところの道を降る方向に撮影したものが左の写真です。
ここは人が一人通れるほどの狭い道になっています。
現在このような狭い道があるのは何故なのか。古い時代の相当数の年月が経っている峠越えの道が、造られた当時や使用されていた当時の姿のまま残っていることは考えづらく、長い年月が経つと地形はどの様に変化するかを頭の中で描きながら古道探索をしてみます。

上の写真の道では両側の山の斜面が45度の安定傾斜角の斜面になっています。前後の道の続きから、ここが古い道であったのかと想像したりしてみます。人一人が通れる狭い道は新しい時代に付け替えらた道なのか?

普通に山歩きをしているハイカーは登山道の周りの地形をこのように観察する人は殆どいないと思います。
ただホームページ作者はこのような拘りが古道探索の楽しみだと思っているのです。説明がくどすぎると思われている方には申し訳ありません。

上の写真と左の写真の道は尾根の北側を通っています。尾根の北側を道が通る付近では、現在の歩行路のところを古道が通っていたと考えて良いのか、判断が難しい場所なのです。またこの付近の道の谷側は、平場を思わせる平坦面が多く見られ、それらが自然地形なのか、または人工地形なのかで、古道の存在の判断ポイントとなりそうです。

この辺りは道の傾斜がそれほどないので歩きやすいところになっています。

右の写真の付近では歩行路面のほとんどが真っ黒な火山灰に覆われています。虎御石ルートは全般的に、他のルートと比較してみても、黒い火山灰が目立つ道になっています。

さて、写真の先で現在の歩行路は、写真左手の谷へと下って行きます。しかしその下り道には古道の面影は全く感じられません。急坂を下る道は人一人がやっと通れる程の細い道です。応急処置で付けられたような道でした。

谷に下りてから再び写真のところまで引き返えしてみました。

山中に見られる掘割地形

谷に下りてから再び引き返して、道跡らしき地形はないかと辺りを探してみますと、これまでの虎御石ルートが辿ってきた尾根の向かう方向に、断続した掘割地形が確認出来ました。上の写真と右の写真がその掘割地形です。これらの写真の場所は、現在の虎御石ルートの上り口から完全に離れていて、人が歩いた踏み跡さへ見られないところです。果たしてこれを道跡と考えてよいものか、当初ホームページ作者も迷いました。

先ほどの急坂の細い道は中途半端なところから谷へと下ってしまっています。それはおそらく地蔵堂川の伊勢宇橋に向かうための道で、便宜上新しく造られた道ではないかと思われます。
それに対して、これまでの虎御石ルートが通っていた尾根の延長上に見られる掘割地形は、本来の虎御石ルートの道跡以外に何が考えられるのか自問自答でした。

このような掘割地形だけで古道跡と判断してよいものなのかと考えます。いやいや、これは自然地形の谷であると、そのような視点から観察してみました。もし谷だとすれば、水の流れの跡がもっとはっきりしていても良いのではないか。また、山の傾斜から判断して、谷ならばもっとV字状になっているはずなのです。掘割壁の山斜面も妙に人工的で整いすぎています。果てはまたこれらの地形が人為的に加えられているものならば道跡以外に何が考えられるのか。

道跡と考えた場合はどうでしょうか。掘割底の平坦面は意外と広く、倒木さえなければ歩きやすい感じです。掘割が見られ始める上部は傾斜がきつくなっていますが、地形に逆らわす回り込む窪地も見られます。

この付近、人が入ってくることは殆どないようです。

掘割地形の下部も傾斜がきつくなっています。掘割地形の下部から真っ直ぐに下りる谷状の地形が見られますが、それは古道跡とは関係のない地形と判断できます。それに対して掘割地形の下部から尾根を回り込むようにして左方向へ平坦面が続いています。その平坦面が再び下降し始める付近に、上の写真左のような大きな岩が幾つか見られます。「こっちが道だよ」と教えてくれているような岩で、やはりそちらが古道跡の可能性が高いように考えられます。上の写真右は掘割地形の下部付近で、覆い草や倒木がなければ、きれいな掘割地形だと思われます。

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