天狗山・男山( 天狗山:1,882m ) 1997.12.6登山


 途中の岩場から見た天狗山( 1997.12.6 )

【天狗山・男山登山記録】

【天狗山・男山登山データ】

フォト


天狗山・男山登山記録

10月に 浅間山に登った際、 アプローチには車を使ったのだが、復路も往路と同じ上信越自動車道−関越自動車道を戻るのは、 都心に入ってからの環状8号線の混雑が予想されイヤだったため、それを避ける意味で清里経由にて中央自動車道を通って帰ることにした。
中央自動車道須玉ICまでの国道141号線を通っている時、右側に見えるはずの 八ヶ岳は雲に隠れて全く見えなかったのであるが、 左側の信州の山々の中に一際目立つ形の良さで、大変気になった山があった。
山にも女性に対するのと同じように、その姿に一目惚れさせられることがあるようで、その山は周囲から抜きんでて形の良い鋭角な頂点を持つ ピラミッド型をしており、家に帰ってからもその姿が気になってしようがなかったのである。

早速 「東京周辺の山」山の雑記帳山の本の項参照) にて調べてみると、どうもその山は 天狗山 あるいは 男山 であるらしい。
こうなるとすぐに登りたく (会いたく) なり、土日毎に登るチャンスを伺っていたのだが、 やはり恋と同じで私用があったり天候に恵まれずでチャンスを逃し続けていたのであった。
その間、「マイカー登山」 (これも山の本参照) の中にもこの山が取り上げられていているのを発見して、 さらに登る意を強くし、やっと 12月6日に実行の運びとなったわけである。

一つ懸念されるのが降雪の状態であったのだが、中央自動車道を須玉ICで降りて、 国道141号線を北上するにつれて周囲に雪が結構積もっているのが見られ、2,000mに満たない山とは言え、 些か登るのが心配になる。
左手に冠雪した八ヶ岳の雄大な姿を眺めながら 141号線を進み、清里を過ぎてから、右−川上村 という標識を見て右折し、 すぐに小海線の踏切を渡って広い農道を走っていくと、左前方に黒々とした山塊が見えてきた。
場所から言ってその山塊が目指す天狗山・男山らしいのだが、どうも私が恋い焦がれていた山とは違うような感じがして、 アレッという気持ちさせられたのだった。
しかし、山の形などは見る角度によって全く違うこともあり、山違いだと断定できる自信もなく、 とにかく登ってから判断しようという気持ちで山に向かうことにする。

川上村に入ってから大深山 (オオミヤマ) 遺跡の標識を見て左折し、 少し登っていくと、目の前に立ちはだかる大きな岩峰が聳えているのが見えてきたが、どうもこれは天狗山らしく、 その魅力的な姿に登高意欲が高まって来たのであった。
すぐ先でまた大深山遺跡方面への道が左に分かれており、そちらへ進むと 5分ほどで大深山遺跡の駐車場が見えてきたが、 ガイドブックによれば登山口は大深山遺跡方向へ曲がらずそのまま車道を進んで、暫く先とのことであり、 車道歩きが長いので戻るのが億劫に感じらる。
駐車場に車を止めて、いざ来た方向に車道を戻ろうとしたが、すぐ目の前に 「登山道」 と書かれた標識があるではないか。
恐らくこれはガイドブックに書かれたルートとは異なり、天狗山を左側からほぼ直登する道らしい。
車道歩きがイヤだったので、この標識を見て予定を変更し、道路を渡ってすぐに唐松林の中に続く登山道を進むことにする (午前8時45分)。

道は、林道のようで轍の跡が付けられており、途中 2軒のコテージを過ぎると、 緩やかに登っていた道は下り始め、すぐに先ほどの大深山遺跡駐車場の前から続く道路にぶつかってしまい、 また道路の向こう側はゴルフとなっていて進む方向が分からなくなってしまったのだった。
周囲を見渡すと、天狗山と書かれた標識があったのだが、驚いたことにその標識は今歩いてきた方向を指しているではないか。
おかしいと思いつつ少し戻ってみると、すぐ先で道は二股に分かれており、私はその鋭角に曲がっている分かれ道に全く気づかずに通り過ぎってしまった訳である。
よくよく考えてみたら、本来の登山道は大深山遺跡駐車場前の車道を進み、この標識の所まで来て山に取り付くのが正しく、 私が通った唐松林の道は、車道が道路工事中の頃の迂回路だったようである。

登山道は車道と平行するようにつけられていて、その車道の向こうにはゴルフ場のグリーンが拡がっており、 距離を稼ぎ、高度を上げていってもゴルフ場のグリーンはホールを違えながらもいつまでも左手に見えている。やや白ける感じは否めない。
カラマツの落ち葉で完全に埋もれた登山道を進んだが、暫くは傾斜も緩く、また太陽を背中に背負いながらの快適な登りが続く。
斜面、登山道は日当たりも良いため、雪もほとんどなく、今朝ほどの心配は杞憂に終わったようである。
斜面が徐々に急になって苦しい登りが続くようになり、さらに上を見ると天狗山に続くであろう尾根が岩壁のように立ちはだかっているのが見え、 これからの大変さを思い少し気力が萎えかかる。
しかし、意外に距離は近く、先ほどのゴルフ場がはるか下となり、周囲の木も灌木に変わり、右手に天狗山の大きく垂直な岩肌が良く見えるようになってきた頃、 フイに尾根の上に飛び出したのだった。

その場所には標識が付けられており、右−天狗山、左−男山となっている。
右に道を取るとシャクナゲの群落に入ったが、ここは日が当たらないため雪がかなり残っていて、シャクナゲも葉を丸めて寒そうにしている。
やがて視界の良い岩場となったが、そこからは八ヶ岳が良く見え、また南アルプスも左方に見えて、頂上で待っている展望が素晴らしいものであることを 半ば約束してくれているような感じであった。
暫くは薄暗い岩混じりの雑木林の中を進むと、やがて明るい岩場に出る。そこをよじ登っていくと、今度は先ほどの景色に加えて反対側に浅間山の冠雪した姿を認めることができるようになる。
細い尾根道を進み、最後の坂を一気に登ると、そこは雪が一面に残る天狗山の頂上で、二等三角点と標識、そして丸イスのようなもの (方向指示板だったのかもしれない) が私を迎えてくれた (午前10時着)。

ここからの展望は 360度ではないものの、抜群の一言で、ほぼ 100点を与えられる素晴らしいものであった。
まず目に付くのは 八ヶ岳で、その左方には黒々とした 甲斐駒ヶ岳、 そしてその左には 鳳凰山が並び、鳳凰山の後方には真っ白な 北岳の姿が見え、白根山という名前を納得させるに十分な姿を見せている。
八ヶ岳の右側には真っ白な 鹿島槍ヶ岳五竜岳といった 北アルプスの山々がやや霞みながらも見え、さらにその右方には浅間山がその存在を誇示している。
20分ほど頂上にいたが、その間誰も訪れる人はなく、素晴らしい展望を独り占めでき、いわゆる至福の時を過ごさせてもらった。

男山に向かうため再び往路を戻り、先ほどの尾根の分岐点からさらに先に進むと狭い岩稜地帯となったが、 ガイドブックには危険だとの脅かしが書かれていたものの、実際はそれ程でもなく、アッという間に通り過ぎてしまった。
但し、天狗山頂上から続く岩場は下が垂直に切れ落ちた、落ちれば命は助からないのは必定と思われる断崖絶壁で、 肝が縮む思いをさせられることは間違いなく、慎重に通らねばならない。
岩場を過ぎて少し下ると、男山から進んできた時にこの岩場を避けて大深山遺跡へ下る道が左手 (男山からは右手) につけられている鞍部となり、 そこからはススキと灌木の気持ちの良い日溜まりハイクとなった。

この後、男山までは 4つほどピーク (1つは頂上を通らず巻く) があり、 最初のピークを除いて後は岩場のため好展望が得られ、右に浅間山、左に南アルプス、正面には双子のように並んだ男山 (男山は双子の左の方) とその左に 八ヶ岳が見えるといったように素晴らしく、どのピークでも足を止めずにはいられなかったのだった。
また、天狗山頂上では山に隠れて見ることができなかった 富士山が、逆光の中ではあるが姿を現す。 山梨、長野の山に登って富士山が見えないと何となく物足りなく感じるので、これは大変嬉しかった。
尾根の北側には雪も多く残っており、また暗くて何となく陰気な感じがする杉の林があったものの、総じて登山道は気持ちの良いもので、 途中人工的に作った堰堤かと思わせる見事な岩の造形などもあって楽しませてくれた。
やがて左に信濃川上駅への道を分けた後、最後の登りとなったが、結構急勾配でさらに斜面が雪に覆われていたため滑りやすく、 登りにくくて苦労させられた。

男山頂上は本当に 360度遮るものがなく、八ヶ岳とその手前に広がる八ヶ岳牧場、野辺山高原が、 雪によって白く化粧されており、その雄大な眺めは大変素晴らしく、何時間でも見ていられるものであったが、 残念なことにこちらの頂上は天狗山と違って中高年の男女 15人ばかりのグループに占領されていて、 私は隅っこに座るしかなかった (午前11時40分着)。
しかし、隅っことは言え昼食を食べながら周囲を見ていると新しい発見もあり、富士山の左に見える山がよく見れば 瑞牆山で、さらにその左に見えるのが金峰山であることに気づき 嬉しくなってしまったのだった。
また、男山から見る天狗山の雄々しくどっしりとした姿には驚かずにいられない。

下山は、信濃川上駅までのルートをとることも考えたが、車道歩きが何となくイヤで、結局先ほどの、 岩場を避けて大深山遺跡へ下る道まで戻り、そこから下山することにする。
道はカラマツの落ち葉が絨毯を敷き詰めたようになっており、やや道が不明瞭で、なおかつ急勾配のため滑り易くなっていたものの、 その分スピードも出て、アッという間に今朝ほどの登山路と合流し、やがて今朝ほど迷った車道との分岐点に着くことができたのだった。
車道から振り返ると天狗山の岩峰がそそり立っているのが見える。良い山に登ったなあという充実感を抱きつつ約10分ほどで駐車場に戻ることができたのだった (午後1時50分)。

この天狗山・男山が私の惚れた山だったのかどうかは 最後まで分からずじまいであったものの、 間違いなくこの山は好展望を得られるお勧めの山と言えよう。


天 狗 山・男 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ登山日:1997.12.6 天候:晴単独行日帰り
登山路:大深山遺跡駐車場−コテージ−天狗山登山口−尾根分岐−天狗山−尾根分岐 −大深山下山口−1,797mピーク−信濃川上方面下山口−男山−信濃川上方面下山口−1,797mピーク−大深山遺跡下山口−天狗山登山口−大深山遺跡駐車場
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央自動車場)−須玉IC−川上村−大深山遺跡駐車場(車にて)
交通復路:大深山遺跡駐車場−川上村−須玉IC−(中央自動車道)−八王子IC−瀬谷(車にて)


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