菰釣山( 菰釣山:1,379m ) 2000.03.18 登山


  菰釣山から富士山を望む ( 2000.03.18 )

【菰釣山登山記録】

【菰釣山登山データ】

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菰釣山登山記録

3連休の初日に当たる土曜日、2月の 丹沢主脈縦走雨山・檜岳に続いて 3回連続となる 丹沢山塊への登山を行った。
このように 1つの山域に集中する傾向があるのは、その山域に行った際に山域地図をじっくり眺める機会があるからで、 「この山も面白そうだ」「そうそうこの山は前から登らねばと思っていたのだった」 などと色々な山行プランが頭に浮かびだし、 これが次回の山行の目的地決定に大きく影響するからである。
もっとも、今回の 城ヶ尾峠・菰釣山 は丹沢山塊の地図に載ってはいるものの、道志の山とも言えることから、このように言い訳じみたことを書くほど気にする必要はないのかもしれない。

今回選んだ 道志の森キャンプ場 − 城ヶ尾峠 − 菰釣山 − 道志の森キャンプ場 というコースは、 1988年発行のアルペンガイド 「丹沢」 (山と渓谷社) では 三つ星がついた難易度の高いコースとして紹介されているが、 コース自体は単調で容易であり、むしろアプローチが大変なことがこの評価となっているのかもしれない。
しかし、これはバスなどの交通機関を使った場合で、車でアプローチして登山口に早朝に着けば、午前中には下山可能なコースである。
家を出発したのは朝 5時過ぎ、まだ暗い空をみると星が輝いており、今日の天気は期待できそうである。
国道 246号線を進み、途中から相模湖へ向かう 412号線に入り、三ヶ木手前の青山丁字路で道を左折して 413号線をひたすら進んだ。
やがて見えてきた丹沢、道志の山々は皆白く輝いており、2日ほど前に降った雨が山沿いでは雪になっていたことを知った次第である。
今日は雪道歩きが楽しめそうで少々ワクワクする。

やがて、下善之木のところを左折して道志の森キャンプ場へとむかったが、 本来は少し手前の中山橋の所で左折すべきであったところを見逃してしまったらしい。
しかし、やがて道は中山橋からの道と合流し、すぐに道志の森キャンプ場に着いたのであった。
大型バスのUターン場所に車を止め、出発したのが 6時58分。少し歩くとすぐに道が 2つに分かれた。
下山時に分かったのだが、右の道は菰釣山直下への直登ルートとなる三ヶ瀬西沢を行く道で、私は左の道をとって落合橋を渡り、 三ヶ瀬東沢沿いに進んだ。

やがて前方からビートの効いた音楽が聞こえてきたのでビックリしたが、 これはキャンプ場にテントを張っていた若者たちが朝の 7時頃から音楽をかけていたのであった。
早朝の音楽にもビックリしたものの、この寒い冬にキャンプを張っている人達がいることの方がもっと驚きであった。
もしかしたら何かの合宿だったのかもしれない。
暫く進むと道が右にカーブし、やがて左前方に 鳥ノ胸山登山口 の標識が見えてきた。 事前に頭に叩き込んでおいた地図では、 ここからの登りは破線で表されていて難路を示していたはずであるが、ボーイスカウトが作ったと思われる 「コース 1周 4時間25分 (だったと思う)」 との標識があったことから、 もしかしたら道は整備されているのかもしれない。

暫くは東沢右岸の林道歩きが続き、やがて水晶橋を渡ったが、渡った途端に道が完全な雪道に変わったので少々ビックリさせられた。
それまでの道では、雪が所々に見られたものの積雪量は大したことなく、これは今日も雪が期待できないかと思っていただけに大変嬉しい驚きであった。
雪は 5センチ程積もっており、まだ寒いために固く締まっていて、足を踏み入れるとメリッメリッと音がして大変気持ちが良い。 この感触は久々である。
雪道には足跡が 2つほどつけられていたものの、完全に凍っていたことから、どうやら前日のものらしい。
全く初めて歩く道が雪に覆われていたのでは少々心細い訳で、このように足跡があると大助かりである。

歩き始めて 35分程経った頃、林道が左にカーブする所に城ヶ尾峠への登山口を示す標識が見えてきた。 ようやくという感じである。
山に取り付くといきなりジグザグの急登が始まったのだが、その登りも長続きはせず、すぐに上方に稜線が見え始め少々拍子抜けさせられた。
道は途中稜線と平行するように進む平らな道となり、やがて小さな尾根上を登ると着いた所が明るい城ヶ尾峠であった (7時56分)
歩き始めてからほぼ 1時間、山に取り付いてから 20分強 という呆気ない山登りであり、不完全燃焼であることこの上ない。

峠は南面の展望が開けており、ベンチもあって一服するにはもってこいの場所であるが、 エネルギーが燃え足りない私としては休むことなくすぐに右への道へと進んだ。
ほんの一登りすると三等三角点のある城ヶ尾山 (道志側では桃ノ木ゾーリ) で、 ここは山と呼ぶにはあまりにも登りが短く、また頂上も些か寂しい感じの場所であった。
但し、城ヶ尾峠からの登りに比べて、菰釣山へと向かう下り道の方は急で、「ああ成る程、逆から登れば山としての手応えを感じるのだな」 などと つまらない考えが浮かんだのであった。

道は完全に雪道で、軽アイゼンも付けていなかったことから少々下り斜面では苦労させられたものの、 比較的軽快に進むことができた。
このルートは東海自然歩道となっており、道の整備はしっかりなされているのであるが、それでも所々スズタケが五月蠅く、 しかも雪の重みでスズタケが倒れていてルートが分かりにくい箇所がいくつかあった。
しかし、道はさほど広くない尾根道のため、スズタケに道を覆われていても間違えようがないから安心である。
縦走中、所々で 富士山を見ることができたが、全て手前にある山々に中腹から下の部分が隠されており、 茶色や黒い山々の上に白い雪を被った部分だけが見えている様子は、何故か器に盛ったアイスクリームを連想させるのであった。

中ノ丸、ブナ沢ノ頭などのピークを越え、何回かの登下降を繰り返すと、やがてブナ沢乗越で、 右には三ヶ瀬西沢沿いの道志の森キャンプ場から来る道が下っていた。
この道を下山路に考えていたのであるが、谷沿いの道だけに雪が深いことが懸念され、もしかして誰も通った跡が無ければこのルートは敬遠しようかと思っていたところ、 ありがたいことに足跡が 1つ付けられていた。これで安心である。
ブナ沢乗越からはすぐの所に菰釣避難小屋があり、そこからは菰釣山まで一直線の登り道であった。
道はさほど急ではないものの、私の苦手とする一直線であり、しかも雪道であっただけに少々喘ぎ気味になったが、 やがて樹林の先にベンチと青い空が見え、9時42分、菰釣山頂上に着いたのであった。

菰釣山頂上は樹林に囲まれているものの西側だけは開けており、そこから見える 富士山の姿には唸らずにはいられなかった。
塔ノ岳から見た 富士山は、全ての山をその足下に平伏させているように見えるが、 この菰釣山から見る 富士山は、あまりに畏れ多くて他の山々が側に近寄れず、 富士山の周りに空き地ができているように見えるのである。
いかにも気高く、そのシンメントリーな姿には感動を覚えずにはいられないが、孤高の山であるように見えるのである。
また 富士山の右手には 御正体山がそのどっしりとした姿を見せてくれており、 また 富士山と御正体山の間には南アルプスの山々、 そして 富士山の右手には靄に霞んではいるものの 愛鷹山の姿も見えるなど、いつまでも見飽きない、素晴らしい光景であった。

そして頂上にいた 30分余りの時間、誰にも邪魔されず、私 1人でこの光景を独占できたのは大変幸せであった。
そうそう、富士山の反対側には樹林越しではあるが、 大室山の見事な姿を見ることができたことも付け加えておく。
しかしである、登り始めてからわずか 2時間弱。 先日登った丹沢主脈ならば、まだ塔ノ岳に着いたばかりの時間であるというのに、 今回はもうフィナーレを迎えてしまい、体力的に大変物足りない状況である。
ポカポカ陽気の頂上で握り飯を頬張りながら地図を眺め、肉体的に満足を得るルートはないかと思案した結果、一旦道志の森キャンプ場へ下り、 そこから鳥ノ胸山に登ることを思いついたのであった。

そうと決まれば、急いで下山ということで、富士山に少し雲が掛かり始めたのを機に 登ってきた道を走るように下山した (10時14分)
積雪量がこの辺は多く、また気温も上がってきて雪が柔らかくなり始めていたので、グリセードもどきの下降が可能になったからスピードもかなりあげることができたのであった。 これも雪山の楽しみである。
三ヶ瀬西沢への道は、予想した通り谷沿いの道のため積雪量が多く、踏み跡がなければとても初めて下る者にとっては躊躇われるような状況であった。
さして危険である訳ではないものの、谷の斜面をジグザグに下っていく道が雪で完全に埋まってしまっており、 足跡が付いていなければどこを通って良いか分からない状態だったのである。
誠に 「先達はあらまほしき」 ことを実感した次第である。

やがて雪の多い斜面から解放され沢沿いの道となると、 雪の量も少なくなったので、あとはひたすら下るのみであった。
やがて梯子を下ると林道で、右に進めば一山越えて先ほどの水晶橋へとつながり、 左へ進めば沢を渡って朝方車を止めた落合橋近くの二股につながることになる。
左に道を取り、今にも崩れてきそうな崖下を通って暫く進むと、やがて落合橋から繋がる林道とぶつかり、 右に曲がってからは二股まで一本道であった。
途中、前方の山あいになかなか見事な山が見えたがあれが鳥ノ胸山であろうか。
これからあの山に登ると思うと少し怯んでしまった。いくら菰釣山登山におけるエネルギー消費が少なかったとはいえ、 精神的には一旦登山が終了してしまっている訳で、一度シフトダウンしたギアを再びトップにもっていくのは、 私の場合なかなか難しいということである。

落合橋近くの二股に着いたのは 11時13分
本当に城ヶ尾峠、菰釣山だけなら昼飯前のアルバイトである。
本日通ったコースは肉体的にも精神的にもやや物足りないが、静かな山旅が好みの人にとってはなかなかであろう。
しかし、もしこの山から 富士山の展望を取ってしまったら、 この山域の魅力は恐らく半減してしまうと思える次第で、この山域は絶対に晴天時に登るべしである。

そうそう当然 「勝手に神奈川25名山」 に相応しい山であることも申し添えておく。

[以下 鳥ノ胸山 の項へ続く]


菰釣山登山データ

上記登山のデータ登山日:2000.03.18 天候:快晴単独行日帰り
登山路:道志の森キャンプ場−水晶橋−城ヶ尾峠登山口−城ヶ尾峠−城ヶ尾山−中ノ丸−ブナ沢ノ頭−菰釣避難小屋−菰釣山−菰釣避難小屋−三ヶ瀬西沢−道志の森キャンプ場
交通往路:瀬谷−(国道246号)−(国道412号)−青山−(国道413号)−下善之木−道志の森キャンプ場(車にて)
このまま 鳥ノ胸山


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