愛鷹山( 越前岳:1,504m ) 1999.11.21 登山


 縦走路より越前岳、鋸岳、位牌岳を振り返る( 1999.11.21 )

【愛鷹山登山記録】

【愛鷹山登山データ】

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愛鷹山登山記録

この日曜日に愛鷹山を縦走してきた。
登山口である十里木高原までのアプローチについては既に
山の雑記帳に書いた ので省略するが、 登山口には駐車場、トイレもあり、私がタクシーで着いた 8時過ぎには既に数台の車が駐車していた。

登山の前にまず腹ごしらえということで、越前岳の影に入ってしまってあまり日が当たらないこの駐車場で少々寒さに震えながら、 御殿場駅前のコンビニで購入したおにぎりをほおばった。
そして、身支度をして駐車場を出発したのは 8時13分であった。

まず目指すはすぐ上にある展望台であるが、登山口からは道が 2つに分かれており、右の道は展望台まで 7分、 まっすぐの道が 5分ということであった。
少々 (人によっては大いに というが) へそ曲がりの私としては、 5分かかる道の方は何か階段でも使ってショートカットしているのではないかなどと勝手に思い込み、 右の道を進むことにしたのであるが、ススキの道を少し進んで四阿 (あずまや) と石碑がある場所に至ったところで、 この道は急勾配を避けるべく大きく迂回するだけの道だということに気づき、慌てて直登する道に戻ったのであった。

霜がおりて滑りやすい急勾配の道を登っていくと、すぐに丸太で組まれた展望台のある場所に登り着き、 この日は快晴だったこともあって、展望台からは大きな 富士山と その下に拡がる雄大な裾野を眺めることができた。
富士山の雪は荒れた山肌をうっすら覆っている程度で、登山道を含め多くの山の襞を浮き立たせており、 それが筋骨隆々とした男らしさを感じさせて、普段お目にかかれない 富士山の姿に暫し見とれたのであった。
展望の良い尾根を登っていくと、やがて樹林帯の中の登りに変わり、本来なら振り返っても 富士山の姿は見えなくなるはずであったが、 冬が近づき落葉した木々の間からは時折 富士の頂上付近を眺めることができた。

緑を残すアセビの間を通り、落葉を踏みしめながら登っていくとやがて崩壊地で、ここも展望が開けていて 富士山がよく見え、気持ちの良い場所であった。
ただ、この辺は霜が融けているためか、ぬかるんでいて歩きにくく、私も滑って膝に泥をベッタリつけてしまった。
本日の難所である鋸岳通過を考えると、どうも幸先が悪い。
この登山道は越前岳の北斜面のために日が滅多に当たらなかったのであるが、やがて仰ぎ見る稜線スレスレに太陽が見え始め、 踏み跡の多い樹林の中を一登りすると越前岳の頂上に飛び出すことができた。時刻は 9時26分であった。

頂上はあまり広くないものの南側が大きく開けていて展望も良く、逆光の中とはいえ、 これから進む位牌岳の姿をよく見ることができた。
位牌岳の姿は堂々としてなかなか魅力的であり、またそこに至るまでのギザギザした山容に驚かされたのであるが、あれが噂に聞く鋸岳であろう。
振り返れば、樹林の上に 富士山も見え、明るく気持ちの良い頂上である。
ここで、またまたおにぎりを食し、暫く休んでから呼子岳へと向かった (9時40分発)

越前岳から呼子岳までは気持ちの良い縦走路で、横を見れば樹林越しに今登ってきたばかりの越前岳が見え、 その大きな姿に少々驚かされる。
また、その左側には 富士山も見えてなかなかの構図であったが、 富士山の方は雲がかかり始めており、呼子岳頂上に着いた頃にはもうほとんど雲に覆われてしまっていた。
呼子岳は縦走路上の小ピークといった感じで、頂上も狭く、また途中で追い抜いた団体も後から追いついてきたので、 早々に立ち去ることにして割石峠へと向かった。

割石峠は、峠という名に相応しい感じの場所で、三方を山に囲まれたスリ鉢上の底にあり、 左に下れば愛鷹神社を経て愛鷹登山口へ、まっすぐ進めば天狗の畑を経て蓬莱山から鋸岳へと続く縦走路ということになる。
そして峠の右側は、岩のスキ間から谷へ急激に下るようになっており、空木岳直下の木曽殿越を彷彿させるものであった。
峠には 『警告 平成10年秋の長雨によりこれより鋸岳までの縦走路は崩壊したところが多く非常に危険です。 立入りはご遠慮下さい。 ・・・ 静岡県遭対協富士支部・裾野市』 と書かれた看板が立てられていたのであるが、 先への踏み跡は明瞭につけられており、ここで引き返すわけにはいかない。

天狗の畑はショートカットの道があったので通らずじまいであったが、 名前からして山の中に急に畑が現れたような平らな草地があるのであろう。
登り着いた蓬莱山からは、進む先に 妙義山を思わせるような風化した岩峰と 岩に巻き付くロープや鎖が見え、緊張感が一気に高まった。
いよいよ本日のルートの核心部、鋸岳の通過である (10時40分発)
いきなり両側がスパッと切れ落ちた幅 50pくらいの道を歩かされ、次に岩に張り付けられた鎖&ロープに頼りながら岩を乗り越すことになった。
下は切れ落ちている上に、足の置き場所を注意しないと足に力が入らず手の力だけで身体を引き上げなくなるところがあり、 鎖の整備状態・耐久性が心配なだけに少々ビビるところである。

この後、鎖やロープを使っての崩れやすい岩場の登下降が続いたが、やはり緊張していたのだろうか、 どういう順序であったかはあまり覚えていない。
ただ、一旦南側の岩場を下り、また鎖にしがみつきながら登り返した後、岩の間を通って北側に出たことは覚えている。
そして、今度は岩に横に張られた鎖を頼りに、切り立った崖をトラバースしたのだが、足場の関係から身体を一瞬投げ出す感じになるところがあり、 肝が縮む思いであった。
しかし、緊張しながらふと左を見ると、山の間から御殿場市街であろうか、広い平地が見え、悪戦苦闘の状況とはあまりに違う静かな人々の営みを思わせるその光景に 何か今の状態が現実離れしたものに感じ、随分気が楽になったのであった。

ただ、この悪場がまだこれから 1時間近くも続くのかと思うと少々心細くなり始め、 気が抜けるような場所に出たら大休止して体制を整え直そうと思っていたところ、何のことはない、蓬莱山と向き合う岩場に立った後は、 易しい一般的な縦走路が続き、却って拍子抜けといった感じであった。
鋸岳通過後は樹林帯の中の歩きやすい道が続き、平坦な道が多く、先ほどの悪場通過時に大休止をと考えたことなどスッカリ忘れ、 一気に位牌岳直下の分岐点 (どこへ続く道か忘れてしまった。地図には掲載されていない) まで辿り着いたのであった。
ここで小休止している 5人ほどのグループを抜き、一気に斜面を登り始めると 再び鎖場が現れ、初めは鎖を使って岩場をトラバースする状態が長く続いたかと思うと、 次に鎖を使っての長い直登が待っており、難易度はあまり高くないものの、先ほどの鋸岳で体力を使った私にはかなりきつく感じられた。

鎖場が終わると登り斜面がまたまた延々と続き、位牌岳頂上に着いた時はかなり息が上がってしまっていた (その前に、ここを登り切れば位牌岳頂上かと思ったら、さらにその先にピークがあってガッカリさせられたことが影響しているのかもしれない)
頂上に着いたのは 11時53分であった。
位牌岳の頂上は小広いものの、樹林に囲まれて展望はあまり利かない。ただ、日差しが暖かくて気持ち良く、倒木に腰掛けて大休止である。
本当はここで一眠りしたいくらいであったが、ここはまだまだルートの半分ほど、先は長いので 20分程休んで袴腰岳へと向かった。

休んだお陰で体力も回復し、縦走路を快調に飛ばしていく中、振り返ると 位牌岳の山肌が見えたが、 ここは噴火口だったのであろうか。焼けただれた煉瓦のような岩が火口壁のように剥き出しになっているのが印象的であった。
やがて着いた袴腰岳は、ウッカリすれば通り過ぎてしまうような場所で、道が左へカーブする所に道標があり、袴腰岳と書かれているだけである。
私も女性 3名がそこに休んでいなければ気が付かなかったかもしれない。
一応その上の方にも登ってみたが、頂上を示すようなものは見つからず、やや拍子抜けである。

袴腰岳から愛鷹山までは、途中、馬場平といった平坦な場所もあり、気持ちよく歩ける登山道が続いている。
そして何よりも良かったのは、この間全く人に会わなかったことで、静かな初冬の山歩きを楽しめたことであった。
やがて、私の持つ地図にはない、愛鷹山直下から水神社経由にて桃沢へ下る道を左に分け、ササに囲まれた斜面を登りきると明るい愛鷹山頂上であった (13時44分着)
頂上はやや狭いものの、下が枯れ草に覆われていて、若い男女 3人のグループと、犬を 2匹連れた夫婦が休んでいた。
展望の方はあまり利かなかったが、なかなか気持ちの良い頂上である。
ここで残りのおにぎり 2コをたいらげ、記念写真を撮った後、14時8分に下山を開始した。

頂上を下るとすぐに桃沢神社があり、石碑や祠らしき建物、灯籠などが置かれていた。
立派な鳥居をくぐるとあとは一気の下りである。
ササの中のやや滑りやすい道をドンドン下っていくと、やがて東海大へと続く道との分岐点で、私は柳沢を目指しているので左の道をとった。
この分岐点には少し登山道からはずれた所に水場があり、冷たい水が飲めることを期待させたのであるが、 小さな祠のような中にあった水場は水たまりのようでとても飲む気にはなれず、あきらめて登山道へと戻るしかなかった。
さすがにこの頃になると疲れてきているので、ちょっとした寄り道が億劫になり、しかも目的を達せられないと疲れがドッと出る。

やがて登山道は林道にぶつかり、さらにこの後 2回林道を横切ることになった。
道はややササがうるさく、道を覆って地面が見えなくなっているところも何ヶ所かあったものの、総じて緩やかで快調に下ることができた。
ただ、溝のようにえぐれた箇所が所々にあり、地面が濡れていて滑りやすかったのには些か閉口させられ、 さらにその溝のような道でワレモコウ色に白い模様のある蛇を見かけたものだから、ビックリである。冬も近いのにまだ冬眠していないのであろうか。

暫く下り続けると、道もドンドン平坦になり、目の前に農道が現れた。
傍らには登山口の標識もある。これで無事下山であるが、バスに乗るまでにはまだまだ歩かねばならない。
愛鷹シックスハンドレッドゴルフクラブを横目で見ながら下っていくと、やがて道は 2つに分かれ、どちらへ行くか迷ってしまった。
よく分からないまま、今まで歩いてきた道路の延長となる左の方の道を進んだのであるが、振り返ると左 赤野観音の標識が立っているではないか。
これはまっすぐ進むのが正しかったと気づき、農道のような道へと軌道修正したが、ゴルフ場側からも道が分かる標識が欲しいものである。

赤野観音を過ぎ、山を下って東名高速道の下をくぐり、柳沢のバス停までかなりの距離を歩き、 ようやく着いたバス停で時刻表を見ると、午後は 13時台に 1本あるだけで、全く話にならない状態であった。
バス停の傍らに公衆電話もあったことからタクシーを呼ぶことも考えたのであるが、ガイドブックに、柳沢入口まで行けばバスの本数もあると書いてあったので、 重い足を引きずって柳沢入口までまたさらに 20分ほど歩いたのであった。
しかし、柳沢入口においても 時間に合うバスは皆無で、結局、柳沢入口にあった洗車場の一角で着替えをした後、 道路の向かい側にあったセブンイレブンでタクシーを呼び、片浜駅まで行ってもらったのであった (16時15分)
ヤレヤレである。

さて、今回の愛鷹連峰であるが、縦走コースは長く歩き応えがあり、 また途中の鋸岳の鎖場はスリル満点で、低山ながらも精神的、肉体的に充実感を味わえた山であった。
翌日は、足が痛い状態であるとともに腕の方も痛かったから、鎖場でのアルバイトのせいであろう。
ひょっとして私の技術が未熟であるせいかもしれない。


愛鷹山登山データ

上記登山のデータ登山日:1999.11.21 天候:快晴のち時々曇り単独行日帰り
登山路:十里木登山口−展望台−馬ノ背−越前岳−呼子岳−割石峠−鋸岳− 位牌岳−袴腰岳−馬場平−愛鷹山−愛鷹600CC−柳沢−柳沢入口
交通往路:瀬谷−(相模鉄道)−横浜−(東海道本線)−国府津−(御殿場線)−御殿場−(タクシー)−十里木高原
交通復路:柳沢入口−(タクシー)−片浜−(東海道本線)−熱海−(東海道本線)−藤沢−(小田急江ノ島線)−大和−(相模鉄道)−瀬谷


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