袈裟丸山( 後袈裟:1,908m ) 2000.05.27 登山


  尾根道から眺めた袈裟丸連峰 ( 2000.05.27 )
【袈裟丸山登山記録】

【袈裟丸山登山データ】

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袈裟丸山登山記録

今回は袈裟丸山登山である。
この袈裟丸山は日光の南西、足尾銅山で有名な栃木県と群馬県の県境にある足尾山塊の南端に位置しており、 日本百名山である皇海山へは、 尾根伝い (難路といわれている) に行ける場所に位置している。
この山を選んだのは、登山道中腹に 「寝釈迦」 と言われる、仰臥したお釈迦様を彫った自然岩がある ということを以前ガイドブックで見知って、 いつかは登ってみたいと思っていたからで、今回行き先を考えるに当たって、 近頃太り気味で体力にあまり自信が持てない我が身に丁度良い高さ (1,908m) と考えたからである。

この 寝釈迦 が見られる塔ノ沢コースを辿るには、国道122号線沿い、 わたらせ渓谷鉄道沢入 (そうり) 駅の横から林道に入っていくのが正解で、 そのためには東北自動車道から日光宇都宮道路へと連絡し、清滝ICから国道122号線に入るか、 関越自動車道で高崎ICまで行き、そこから国道50号線を経て国道122号線へと入るという 2つのアプローチが考えられる。
私は、昔 栃木県の小山にいた頃、国道50号から国道122号線に入る際に少し道に迷った記憶があるものだから、 少々遠回りかと思ったものの迷わず東北自動車道を使うルートを選んだのであった。
順調に国道122号線に入り、庚申山・皇海山への道を右に分け、 やがて左 沢入駅と書いた標識が見えた所で、右に曲がって林道に入った。
暫く山道を進み、やがて見えてきた造林小屋の所で道を右に曲がって暫く進むと、駐車広場が 3つ程ある林道終点で、 そこには既に車が 10数台止まっていた (7時20分発)

立派なトイレがある登山口から暫く沢沿いに河原のような道を進むと、 やがて木の橋が現れ、その橋を渡ってからは山らしい沢沿いの道となった。
但し、この道は渓谷を楽しんだり、寝釈迦を見学に行く人たちのための遊歩道でもあり、若干登山道とは趣が違うような気もする。
季節は初夏であり、沢沿いの木々も緑の若葉をつけ、それが薄曇りとは言え時々差す日差しに輝いてなかなか気持ちが良い。
登山道には大きな岩がゴロゴロしており、また途中には見上げるような岩の絶壁もあって、 岩を彫ったという 寝釈迦 への期待も自然と高まってくる。

道を右に大きく曲がり、沢を何回か渡り返しながら登っていくと、 やがて谷を詰めるような感じとなってその先に丸太の階段が現れ、それを登りきった所が 寝釈迦 のあるコルであった (8時2分)
寝釈迦は登山道脇の岩の高みの一番上にあり、そこまでは立派な階段が付けられていた。この寝釈迦は大きな 1枚の御影石を彫ったもので、 頭は北を向いており、右手を枕にして右脇を下にした全身が彫られている。
ただ、素人考えで墓石のように磨き上げた御影石の像を予想していたところ、見事に裏切られた次第で、 岩肌は永年の風雨でかなり穿たれており、昔はもっとくっきりしていたであろうその姿も、 ややぼやけていたのは残念であった。

寝釈迦からは登山道らしさが増すようになり、山の稜線に向かって谷を詰めていくように進み、 途中から沢を離れてササ原の中を登っていくと、目の前に掘っ建て小屋 (失礼) とトイレが見えてきた。
ここが 1つ目の避難小屋である (8時45分)
この避難小屋を過ぎ、丸太の階段を登っていくと 5分程で樹林が切れ、 開けた台地状の場所に飛び出すことになった (8時50分)
ここが賽ノ河原で、地蔵尊とともに数多くのケルンが点在し、その様子は御嶽や武尊山など、多くの山に見られる賽ノ河原の中でも立派なものの部類に入るのではなかろうか。
ガイドブックによれば、この賽ノ河原は袈裟山が火山活動を行っていた頃の名残りを見せる溶岩台地だそうで、 今までの樹林帯が嘘のようにここだけ樹木がない。
また、周囲を囲む木々の向こうには、形の良い袈裟丸連峰の姿をこの日初めて見ることができたのだが、 山が遙か向こうに見えるのには些か驚かされた。

賽ノ河原で道を右に曲がり、再び樹林の中を進む。
美しいカラ松林を過ぎ、途中雨量計を左に見て小ピークを越えると、そこからは気持ちの良い尾根歩きが始まった。
この辺になると、ピンク色の花ををつけたヤシオツツジが目立つようになり、その美しさを楽しみながら登り着いた所が小丸山であった。
ここからは正面に皇海山の姿を見ることができるのだが、結構人が多く、 私はそのまま通り過ぎることにした (帰りに皇海山を確認した)
小丸山の下り斜面からは目の前の袈裟丸山が大きく見え、その起伏に富んだ尾根が右へと続いている様からは、 この尾根道を辿ることの困難さを感じることができた。

ところで、先ほどから袈裟丸山と一言で片づけているものの、実は袈裟丸山という山は存在しない。
これから登る前袈裟とその北側の後袈裟、そしてそのさらに北には中袈裟、奥袈裟が続いているのである。
そして、本日目指すのは前袈裟と後袈裟で、それ以上は登山道が厳しいとのことで今回はパスである。
小丸山を下ると今度は目の前に美しい白樺林の斜面が現れ、その基部にはドーム状の小さな小屋とトイレがあった。 これが 2つ目の避難小屋である。
ここからは白樺とササ原の中の登りとなって、一つピークを登り越すと樹林も切れ、ササ原が拡がる先には大きな前袈裟の姿が現れたのであった。

ササ原を過ぎ、再び樹林帯に入ると、やがて根っこの露出した登り道となったが、 意外にこれがキツイ。
途中にロープもあって、ここまでほとんど休み無しに登ってきた我が身には少々厳しかった。
それでも喘ぎながら樹林の中を登りきると、やがてササ原の尾根に飛び出し、その先は一等三角点 (補点) のある前袈裟の頂上であった (10時20分)
頂上には既に多くの先客があり、聞けば折場登山口から賽ノ河原に出るルートを辿ってきた人が多いようであった。
頂上は樹林に囲まれてあまり展望を得られず、わずかに赤城山方面が樹林越しに見えたのであったが、 この日は雲が湧き出ていてわずかに雲海の上に山の頂が少し見えただけであった。

前袈裟で腹ごしらえをした後、それではと後袈裟に進もうとすると、 そこには 「登山道の崩壊が激しく登山禁止」 と書かれた看板が立っているではないか。
本日は山域地図を入手しておらず、1996年出版のガイドブックだけを持参したのであるが、 そこには前袈裟 − 後袈裟間の登山禁止のことは一切書いていなかったのである。
やはり情報は最新のものを得ないととんでもないことになると大いに反省した次第である。
とは言え、ここで引き返すのも大変シャクであるし、また雨 山の時のような例もあることであり、 行けるところまで行った上で判断しようと取りあえず先に進むことにした (10時45分発)

樹林帯を抜けて下り斜面に出ると視界が開け、目の前に後袈裟の立派な三角錐が飛び込んできたのであったが、 こういう形の良い山が目の前にあるのに、登らずに帰るのはもったいないという気を強く持ったのであった。
また、後袈裟の右手には未だ雪を残す奥白根山、 そして男体山、 左手には霞んではいるがやはり雪を多く残した至仏山武尊山の姿が見え、ますます行かねばという気にさせられたのであった。
鞍部に下りて赤いつぼみがほころび掛けているシャクナゲの林を越えていくと、左右がスパッと切れて鎖の手すりが付けられた場所に飛び出したが、 ここが八反張ノコルで、通行禁止はここの崩壊が激しいためである。
確かに、左右が切れた細い道は崩壊が進んでおり、鎖の手すりも 1本の杭はグラグラしていて危険であったが、 慎重に通過すれば全く問題はないレベルである。
少々過剰反応のような気がした次第であるが、管理する側としては慎重にならざるを得ないのであろう。

2つ目の崩壊地を過ぎれば、後は普通の登りで、草付きの斜面を登り、 樹林帯に再び入って少し頑張れば そこは後袈裟の頂上であった (11時8分)
頂上は非常に狭く、4、5人が頂上を陣取ればそれで満杯という状況で、また、周囲は樹林に囲まれていて展望は全く利かない。
どちらかというと前袈裟から見えたその見事な姿に比べて頂上では拍子抜けさせられるものがあった。
この頂上は左に郡界尾根の下山路、まっすぐが中袈裟、奥袈裟を過ぎて皇海山へと至る尾根道との分岐となっており、 当初はガイドブックに従って郡界尾根を下って小中駅まで歩き、そこからわたらせ渓谷鉄道で沢入まで戻って、今度は徒歩で車のある登山口まで戻ろうとも考えたが、 沢入駅 − 登山口までの距離が思いの外長かったので止めた次第である。
従って、往路をそのまま忠実に戻ることにした。

復路は極めて順調であったが、ただ前袈裟からの下りで 何と 40人の団体登山客が登ってくるのに遭遇してしまったのにはまいった。
山は誰のものでもないのだからこういう渋滞に文句は言えないが、グループを 4つに分けるなどして、 狭い登山道が塞がらないような工夫が欲しいものである。
しかし、混雑もこの最初の下りだけで、あとはほとんど人に会わず、特に賽ノ河原から寝釈迦の間では誰とも会わなかったのは大変嬉しい限りであった。
寝釈迦からはもう観光コースという感じで、登山姿ではない人も何人か見かけたが、道がユッタリしているので邪魔にはならない。
そして、忠実に往路を戻り、車がおいてある駐車場に着いたのは 14時1分であった。

今回の登山は、山自体は高さもなく、またその景観もやや物足りなかったものの、 結構距離があり、今の私には十分過ぎるくらいのボリュームで、まあ満足のいくものであった。


袈裟丸山登山データ

上記登山のデータ 登山日:2000.05.27 天候:曇り時々晴れ 単独行 日帰り
登山路:塔ノ沢登山口−寝釈迦−賽ノ河原−小丸山−前袈裟−八反張ノコル−後袈裟−八反張ノコル−前袈裟−小丸山−賽ノ河原−寝釈迦−塔ノ沢登山口
交通往路:瀬谷−横浜IC−(首都高速・外環道・東北自動車道)−宇都宮IC−(日光宇都宮道路)−清滝IC−(国道122号線)−沢入−塔ノ沢登山口 (車にて)
交通復路塔ノ沢登山口−沢入−(国道122号線)−桐生−(国道50号線)−佐野IC−(東北自動車道・外環道)−練馬IC−(環状8号線)−用賀IC−(東名高速道)−横浜IC−瀬谷 (車にて)

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