任意後見制度

「任意後見制度」とは

判断能力が不十分になる前に

本人に十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態となった時に備えて、将来援助してもらう人を見つけて、その人との間で、
 自分の判断能力が衰えてきた場合には、自分に代わって、自分の財産を管理したり、契約を締結したりしてもらう ということを契約(これを「任意後見契約」と言います。)しておき、本人の判断能力が不十分になった時に、家庭裁判所に〈任意後見監督人〉を選任してもらい、その契約の効力が発生するという制度です。


任意後見契約の方法

「本人と、将来の援助者 の二人で契約しておけば良いのか?」
 
⇒ いいえ。任意後見契約は、公証人が作成する公正証書にしておかなければなりません。

公正証書を作成後、公証人により、法務局において任意後見契約の内容が登記されます。
将来援助してもらう人を〈任意後見受任者〉として登記します。
  
ただ単に、二人だけで契約したというだけでは、任意後見制度は適用されません。


任意後見契約を公正証書で作成するには

公証役場に、任意後見契約公正証書作成の依頼をし、契約の文案を作成してもらった上で、本人及び任意後見受任者が公証役場に出向いて、公正証書を作成してもらいます。
本人等が出向く事が不可能な場合には、公証人に出張してもらう事も可能です。

将来、「判断能力は十分あるが、身体が不自由」となった場合に備えて、通常の「委任契約」も併せて締結するという事も可能です。
詳しくは、公証人のHPをご参考下さい。http://www.koshonin.gr.jp/index2.html

 当事務所では、「公証役場と打ち合わる時間がない」 というような場合等、公証役場との間に入ってお手伝いする事もできますので、ご相談下さい。


いつから、任意後見人の活動は始まるのか

本人が判断能力が不十分となったときに、任意後見受任者や 親族等が家庭裁判所に申し立てをし、家庭裁判所に、任意後見人を監督する〈任意後見監督人〉を選任してもらいます。  
このときから《任意後見人》の仕事が開始されます。
この時点で、〈任意後見受任者〉だった人が《任意後見人》として登記されます。


任意後見契約の留意点

任意後見契約においては、法定後見とは異なり、《任意後見人》に「取消権が無い」点を留意する必要があります。
例えば、任意後見人の知らない所で、本人が詐欺的な契約により、高額な投資をしてしまった場合に、 取消権を持たない任意後見人は、その法律行為を取り消すことができません



任意後見人の仕事

基本的な仕事は、
本人の意思を尊重し、かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人の「財産の管理」や「必要な契約の締結」を行う事により、本人を保護・支援することです。

具体的には、自宅等の不動産・預貯金・年金の管理、税金の支払等、本人の財産を適正に管理すると共に、介護サービス提供契約の締結、入院の手続き等必要な代理行為を行います。

これらの支払は、任意後見人が管理する本人の財産から出します。
食事の世話をしたり、掃除をしたりという実際の介護の仕事ではなく、それらサポートをしてもらえるように手配する事です。

あくまでも、任意後見契約に基づく仕事ですので、法律の趣旨に反しない限り、仕事の内容は契約で決めた範囲のものとなります。


また、任意後見人は、行った後見事務の内容を、定期的に〈任意後見監督人〉に報告しなければなりません。


任意後見人・任意後見監督人の報酬

《任意後見人》に対する報酬は、任意後見契約の中で定めます。
報酬を支払うのが普通のようですが、家族等が任意後見人となる場合は、無報酬の場合が多いようです。

〈任意後見監督人〉には、必ず報酬を支払う必要があり、その額は、家庭裁判所が無理のない範囲で決定します。
この報酬は、任意後見人が管理する本人の財産から支払います。