相続について


「相続」とは、亡くなられた方(「被相続人」と呼びます。)の財産を、承継することです。 
「遺産」とは、不動産、預貯金、株式等のプラスの財産 のほか、 借入金等のマイナスの財産も含みます。
財産を承継する人を「相続人」と呼びます。「相続人」の範囲は、民法に定められています。

 

 

相続の手続き、遺言書の確認、遺産の確認、相続人の確認、相続放棄・限定承認、遺産の分割協議、遺産の分配・名義変更 について、以下ご説明いたします。

 

相続の手続き         

 相続の手続きの流れ (「相続」は、死亡した時から開始されます。)

1 死亡届
市区町村に医師の死亡診断書と共に、死亡届を提出します。
2 遺言書の確認
亡くなられた方(被相続人)が、遺言書を書かれていたかどうか? その存在を確認します。
3 遺産の確認
遺産を確認します。
4 相続人の確認
亡くなられた方(被相続人)の出生の時点からの戸籍謄本類を取得して、相続人を確認します。
5 相続放棄・限定承認の手続き
特に遺産の中に負債等があり、負債の額の方が多い場合等は、相続放棄・限定承認の手続きを取る事ができます。      (相続を知った時から3ヶ月以内)
6 遺産の分割協議
相続人間で、遺産をどのように分割するか協議をして、遺産分割協議書を作成します。
7 遺産の分配・名義変更
遺産を、各相続人へ分配します。
不動産については相続による所有権移転登記、預貯金については解約払戻し、株式の名義変更等 を行います。
8 相続制の申告・納付
10ヶ月以内に、相続税の申告・納付をします。

 

相続手続きのご依頼については こちら

 

遺言書の確認

遺言書がある場合は、遺言書に従って遺産を分割することになりますので、遺言書の有無を確認します。

遺言書には、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」等 の種類があります。  遺言について詳しくは こちら

公正証書遺言ではない場合は、家庭裁判所の「検認手続」が必要となります。
封印されている遺言書は、開封せずにそのまま家庭裁判所へ提出しなければなりません。

 

「検認手続」とは
遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の内容について、有効・無効を判断する手続ではありません。




遺産の確認

遺産をどのように分割するか? 相続放棄するべきか? の判断のため、また、相続税申告のために、遺産の内容を確認する必要があります。

遺産とは、不動産(土地・建物)、現金、預貯金、株式等の有価証券の他、車、貴金属等の被相続人が持っていた全ての財産のことで、借入金等のマイナスの財産も含まれます

では、「これらの遺産をどのように調べればよいのでしょうか?」
 被相続人の財産を、漏れなく把握されているという相続人は少ないことと思います。
ほとんどの相続人の方は、被相続人の方が残された遺品から、遺産を推測・調査し確定していくことになります。

預貯金・投資信託等
通帳・証書・キャッシュカードから調査します。その際は、相続人であれば、銀行・証券会社等に確認することができます。その際は、相続人であること証明する書類等が必要となります。
各金融機関から「残高証明書」の交付を受けることで、特定することができます。
具体的な必要書類は、各金融機関・証券会社等にお問い合わせ下さい。
不動産(土地・建物)
登記済権利証(登記識別情報通知)・登記事項証明書(不動産登記簿謄本)等により確認します。
「**町の土地を持っていたはずなのだけれど、権利証等が見当たらない。」というような場合
(1) 土地の場所が分かれば、法務局へ出向き、図面・登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得して調べることができます。
(2) 税務署からの 固定資産税の納税通知書 を探してみてください。
通知書の中に、被相続人所有の不動産の明細が出ています。
(3) 土地の場所が全く分からない場合は、**町 税務課に、被相続人名義の不動産についての「名寄帳」を請求する。というように、調査していきます。
株式
上場会社の株式については、証券会社からの取引報告書、株式発行会社からの決算報告書・株主総会招集通知書・配当金領収書等により確認できます。
非上場会社の株式については株券、決算報告書・株主総会招集通知書・配当金領収書等により、確認できます。
証券会社から「残高証明書」の交付、株式発行会社もしくは代理人の受託会社から「株式所有の証明書類」の交付を受けることで、特定することができます。

 

 

 

相続人の確認

遺産分割をしたり、遺産の名義変更手続き等をするには、相続人は誰か? を確定しなければなりません。
誰がどれだけ相続できるかについては、民法に定められています。
この定めらた相続人を「法定相続人」 定められた相続する分を「法定相続分」と呼びます。

 

法定相続人の範囲

  法定相続人 法定相続分
第一順位 配偶者 と 子 配偶者 1/2  子  1/2
第二順位 (子およびその代襲相続人がいない場合)
配偶者 と 直系尊属(親)
配偶者 2/3 直系尊属 1/3
第三順位 (子およびその代襲相続人がなく
親もいない場合)
配偶者 と 兄弟姉妹
配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4

※ 配偶者は常に相続人となります。
※ 相続欠格事由がある場合、相続人排除されている場合は、相続人となることはできません。

「代襲相続」とは
被相続人より先に、相続人が亡くなっている場合(相続欠格事由がある場合、相続人排除されている場合も)
○ 第一順位の場合 被相続人より先に子が亡くなっていた場合は、その子の子(孫)が代襲相続人となります。
○ 第三順位の場合 被相続人より先に兄弟姉妹が亡くなっていた場合は、その兄弟の子(甥・姪)が代襲相続人となります。
「相続人の欠格事由」とは
民法により、相続人となることができない欠格事由が定められています。
○ 故意に被相続人を死亡させた・死亡させようとした者
○ 詐欺または脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言をさせたり、変更させたりした者 等
「相続人排除」とは
被相続人は、自分の相続人となると推定される者が次の状況となった場合は、家庭裁判所にその者を相続人から排除するという請求をすることができます。
○ 被相続人に対して虐待、もしくは重大な侮辱を加えたとき
○ 著しい非行をしたとき
この手続きは、家庭裁判所で事実関係を調査した上、認められなければ、排除することはできません。
相続人の排除は、遺言でもすることができますが、この場合は、遺言執行者が家庭裁判所にその相続人の排除を請求しなければなりません。


相続人の調査

相続人を確定するために、被相続人および相続人の戸籍謄本類(除籍、改製原戸籍謄本等)を取得して調査しなければなりません。
法定相続人を確定するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類を間断なく取得して調査する必要があります。
被相続人に子も親もいない場合は、兄弟姉妹が相続人となるので、兄弟姉妹を確定するために、被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本類も間断なく取得する必要があります。

戸籍謄本類の揃え方は こちら




相続放棄・限定承認

遺産は、必ずしもプラスの財産だけでなく、マイナスの財産を含む場合もあります。
「プラスの財産のみ相続して、マイナスの財産は相続しない。」ということはできませんが、次の手続を取ることができます。
○ 全ての財産を放棄する「相続放棄」
○ プラスの財産の限度内でマイナスの財産を相続する「限定承認」

※これらの手続きは、自分が相続することを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。

相続放棄

「相続放棄」とは、被相続人の全ての財産の相続を放棄することです。 被相続人のプラスの財産より、借金などのマイナスの財産の方が、明らかに多いと分かっている場合は、この「相続放棄」の手続きを取っておくことが有効です。

手続きの方法は
自分が相続することを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述し、 家庭裁判所にこの申述を正式に受理してもらわなければなりません。
「相続放棄」の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書・被相続人の戸籍謄本・相続人の戸籍謄本・収入印紙 等 を提出して行います。
当事務所でも、相続放棄申述書の作成のお手伝いを承ります。 どうぞお気軽に、お問合せ下さい。
自分が相続放棄した後は
第一順位の相続人が全員相続放棄した場合は、第二順位の人が、また第二順位の相続人が全員相続放棄した場合は、第三順位の人が相続人となります。
《例えば》 第一順位の妻と子が相続放棄した場合、第二順位の親が相続人となりますので、その場合は、親も相続放棄の手続きを取る必要があります。さらに、親が相続放棄した場合は、第三順位の兄弟が相続人となりますので、 兄弟も相続放棄の手続きを取る必要があります。
(相続放棄の場合は、放棄した相続人が初めから相続人ではなかったこととなるので、その子供が相続人となることはありません。)


限定承認

「限定承認」とは  被相続人のプラスの財産から、マイナスの財産である借金等の返済を行い、もし、返済後にマイナスの財産が残った場合は、そのマイナスの財産を承継することは無く、プラスの財産が残った場合は、そのプラスの財産を承継できるという方法です。 被相続人のプラスの財産とマイナスの財産の、どちらが大きいかが分からない場合等に有効な方法です。

手続きの方法は
自分が相続することを知った時から3ヶ月以内に、相続人の全員が共同して家庭裁判所へ申述する必要があり、申述書の提出後、 相続財産管理人の選任・公告手続・債権者への返済等 の手続きも必要となります。「限定承認」の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書・被相続人の戸籍謄本・相続人の戸籍謄本・収入印紙 等 に加え、 相続財産の目録を提出して行います。

 

遺産の分割協議

遺言書が無く、相続人が複数いて法定相続分と異なる割合で分割する場合は、法定相続人全員で「誰がどの財産をどれだけ相続するか」を協議して、遺産を分割することができます。

この協議の内容を書面にしたものを 「遺産分割協議書」 と呼びます。


「遺産分割協議にあたり、行方不明者・認知症等の方がいる場合はどうしたら良いでしょう?」

相続人の中に未成年者がいる場合
未成年者の場合は法定代理人(親権者・未成年後見人)の同意を得なければなりません。但し、遺産分割協議をする相続人の中に『未成年者の子』と『その法定代理人』がいる場合は、「相互に利益が相反する」 関係となりますので家庭裁判所に申し立てて、その未成年者の 「特別代理人」を選任してもらわなければなりません。

相続人の中に行方不明者がいる場合
相続人の中に、行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に申し立てて「不在者財産管理人」を選任してもらい、行方不明の相続人に代わり遺産分割協議をしてもらいます。

相続人の中に認知症等の方がいる場合
相続人の中に、認知症等により判断能力が欠けている方がいる場合は、「成年後見人等」を選任しなければなりません。 ただし、成年後見人等も共同相続人の場合は、家庭裁判所に申し立てて「特別代理人」を選任してもらわなければなりません。




遺産の分配・名義変更

遺言や遺産分割協議に従って、遺産を分配し、各相続人の名義に変更します。





不動産(土地・建物)
遺産の中に不動産(土地・建物)があった場合には、この不動産の名義を、不動産を相続した相続人の名義に変更しなければなりません。
この手続きが「相続登記」(相続による所有権移転登記)というのもです。

相続登記の手続きについてはこちら

預貯金
預貯金の相続の場合は、解約もしくは名義変更の手続をしなければなりません。
預貯金の解約・名義変更等については、各金融機関により取扱いが異なります。
各金融機関の届出書・申込書のほか、被相続人・相続人の戸籍謄本類、遺産分割協議書等が必要となります。

株式
株式の名義変更については、上場会社の株式の場合は証券会社、非上場会社の株式の場合はその会社により取扱いが異なります。
各会社指定の申請書類のほか、被相続人・相続人の戸籍謄本類、遺産分割協議書等等が必要となります。
負債
借金等の負債は、原則、法定相続分通りに相続されます。
遺産分割協議をもって法定相続分とは異なる分割をする場合は、債権者の同意を得る必要があります。