酒井順子著作のページ No.1


1966年東京生、エッセイスト。高校在学中より雑誌にコラムを執筆。立教大学社会学部卒業後広告代理店(博報堂)に総合職として就職。3年間のOL生活を経て退職、執筆業に専念。2004年「負け犬の遠吠え」にて第4回婦人公論文芸賞・第20回講談社エッセイ賞をダブル受賞。


1.会社人間失格 !!

2.女の仕事じまん

3.かわいい顔して・・・

4.負け犬の遠吠え

5.先達の御意見

6.都と京

7.女子と鉄道

8.駆け込み、セーフ?

9.甘党流れ旅

10.黒いマナー

 
いつから中年?、ほのエロ記、女流阿房列車、鉄道旅へ行ってきます

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1.

●「会社人間失格 !!」● ★☆

  

1994年03月
読売新聞社刊

 
1997年02月
角川文庫

  

2000/07/29

本書は、酒井さんが広告代理店に総合職OLとして就職し、3年間のOL生活を送った経験に 基づくエッセイ集です。
「会社編」「世の中編」「ワタクシゴト編」に分けられていますが、断然「会社編」が面白い!です。就職して3年目、酒井さんはOL生活を送りながら、「週刊読売」にこのエッセイの連載を開始したのだそうです。ですから、まるで隣のOL話を聞くような、親近感があります。

そうだよなあ〜と共感を覚えること、そうかあ〜大変なんだなあ〜とOLの苦労を知る楽しみ、多々あります。
例えば、会議の時、男性はテーブル下に並ぶ女性の脚を楽しく密かに見ているのですが、その一方で女性達はずっと太腿の筋肉を緊張させることに奮闘しているのですとか(「会議中の足」)。他にも、文房具、コピー、睡魔、電話等、身近な苦労話が盛り沢山。
同じ会社で働いていた逢坂剛さんの解説にある一文。「順子サンが、通勤電車の中で豪快に寝ているのを、何人もの同僚が目撃したことを知れば、もっとおもしろく読めるだろう」と。
それは勿論です。酒井さんへの親しみがずっと増しました。

   

2.

●「女の仕事じまん」● 


1996年01月
角川書店刊
(旧題「働く女に福来る」)


2000年01月
角川文庫
(495円+税)

   

2000/12/03

様々な女性の職業を取り上げてのエッセイ集。
第1章では、酒井さんの憧れの的だった職業もあれば、酒井さんのOL経験からその大変さを語る職業もあります。
いずれにせよ、それらの職業に対する同性の見方は如何なものか、そんなところに興味惹かれます。

第2章となると、これはもう職業というより、その時々の女性そのままの姿。第1章以上に興味ある問題です。
ちょっと時間が空いた時の読書用として飛び飛びに読んだため、散漫な感想になりましたけれど、酒井さんの素直な本音語りには楽しさを感じます。

第1章・職業婦人への手引き ・・・スチュワーデス、看護婦、ホステス、バスガイド、総合職OL、モデル、添乗員、美容部員、歯科衛生士、 ワイドショーレポーター、キャディさん、高校教師、女子アナウンサー、デパートガール、政治家、 エアロビクスインストラクター、ビラ配り、美容師、プレス、レジ係、受付、コラムニスト
第2章・「女」という職業・・・女子小学生、女子中学生、女子高校生、女子大生、家事手伝い、主婦、嫁・姑、妊婦、母親、おばあさん

   

3.

●「かわいい顔して・・・」● ★☆

   

1997年04月
角川書店刊
(旧題「面々草」)
  

2000年06月
角川文庫
(438円+税)

  

2000/07/23

初めて読んだ酒井さんの本。
女性というと、気取った一線は死守するものと思い込んでいたのですが、酒井さんのエッセイを読んでいると、そんなことはおかまいなしに平然と女性の恥部までどんどんばらしてしまっている、という印象を受けます。化粧室という女性の楽屋裏を覗かせてもらったような、楽しさを感じます。
なかでも圧巻なのは、冒頭の「女子アナ顔−ビールをかけられて喜ぶ」
プロ野球の優勝祝賀会では、女子アナまでビールをかけられてしまうのが常。酒井さんはこれを見ていて、女性の“犯され願望”を感じてしまうのだとか。つまり、キャーッ、やめてーと言いつつ、もっとビールをかけられたい、という雰囲気があるのだそうです。
「そして終わった後はたいてい、陵辱され終わったアナウンサーが・・・(中略)・・・テレビを見ているこちらの方が恥ずかしくなってしまうくらいの、ワイセツぶりなのでした」 う〜ん、こんなこと言っても良いのかなぁ。(苦笑)
いろいろな場面における人の表情の背景を、いろいろと考察してみたエッセイ集。女性の顔の裏側が、ちょっと覗けた気分です。

1.「見られたい人々」:女子アナ顔、モデル顔、ドライバー顔、ミスコン顔、女子高生顔
2.「本能に従う人々」:カップル顔、寝顔、化粧顔、食事顔、歌い手顔
3.「困惑する人々」:サラリーマン顔、乗客顔、ボランティア顔、エッチ顔、パチンコ顔
4.「演技する人々」:新婦の友人顔、患者顔、あいさつ顔、ワイドショー顔、聞き手顔

     

4.

●「負け犬の遠吠え」● ★★   婦人公論文芸賞・講談社エッセイ賞

  
負け犬の遠吠え画像
  
2003年10月
講談社刊

(1400円+税)

2006年10月
講談社文庫化

   

2004/03/13

 

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酒井さん言うところの“負け犬”とは、狭義には未婚・子ナシ・30代以上の女性のことであり、広義には普通の家庭を築いていない女性のこと。
なにも勝ち・負けと決め付けなくてもと思うのですが、「無理矢理にでも(勝ち負けに)分けてしまうと単純に面白い」というのがこの遠吠えエッセイの所以。

確かに読み始めると、ウンウンと頷き、面白く感じることが実に多い。ついつい、30代以上独身女性の同僚を思い浮かべ(ゴメンナサイ)、比較実証しながら読んでしまうのです。
そもそも負け犬とは、本人たちの自虐ではなく、世間の目が(優越感をもって)そう我々を見ている事実があると言う。...判るなぁ。
負け犬ストーリーは、小説にブリジット・ジョーンズの日記、ドラマにアリー・myラブ等あり。また、オスの負け犬を分類してみせるかと思えば、メスの負け犬も向田邦子系長谷川町子系に分類し、女性政治家は自民党に前者が多く社会党に後者が多いと語る発展的負け犬論も傾聴に値します。
そんなアレコレにいちいち頷きつつ、最後にはそんなことどうでもいいじゃないかと思うに至るのが、本書の魅力・爽快感。仕事をもつ女性にはお薦めの名エッセイではないかと思う次第。

余はいかにして負け犬のなりし乎負け犬発生の原因/コラム・負け犬ストーリー/負け犬の特徴/コラム・オスの負け犬/負け犬の処世術負け犬と敗北/負け犬にならないための10ヵ条/負け犬になってしまってからの10ヵ条

  

5.

●「先達の御意見 ★★

  
先達の御意見画像
  
2005年04月
講談社刊

(1238円+税)

2007年04月
文春文庫化

  

2005/06/14

負け犬の遠吠えヒットを受けての、酒井さんと先達10人との“負け犬他流試合十番勝負”

先達各々の経験、風格によっても対談の様子は随分と変わるところが面白い。
皮切りとなるのは阿川佐和子さん。テンポよくどんどん酒井さんに突っ込みを入れてきます。この乗りの良さは佐和子さんの強みですね、読み終わってみると、これだけの突っ込みしているのは佐和子さんのみ。まぁ、特攻隊長は似合っていますけど。
2番手の内田春菊さんは、本書中群を抜いた存在。父親違いの子供を抱えて3回も結婚し、仕事でも大活躍なのですから。
その後には層々たる面々が続きます。上坂冬子、瀬戸内寂聴、田辺聖子、いずれも確固たる信条を抱えた主ばかり。「負け犬」論評もそれぞれですが、そんな先達を前にした酒井さんは、まるであどけない小犬のようです。3人の対談の中では、瀬戸内寂聴さんとの「源氏物語」に関する話題がかなり楽しい。
林真理子さんは超のつく“勝ち組・勝ち犬”とか。負け犬になりかけたところで発憤、結婚し、子供ももうけ、作家としても大活躍。負け犬の心情もよく理解しているというのですから、これ以上何をかいわんや。
印象に残った発言は次の2つ。
春菊さんの「ただ使ってみたいから使っているだけ」(出産)。
坂東真砂子さんの「三十代の負け犬は生きものなだけまだマシ。四十を過ぎたらゴミだから!」は、凄い!
「負け犬」というテーマにとらわれず読むならば、なかなか贅沢な顔ぶれの対談集です。

阿川佐和子:五十代になると勝ち犬も負け犬も歩み寄るのよ
内田春菊:その謙虚な渇きが、恐るべき観察力に繋がるんだと思う
小倉千加子:負けてる部分をさらしてラクになりましょう
鹿島茂:負け犬よ、万世橋に集まれ!
上坂冬子:還暦を迎えたら迷いも期待もなくなって懊悩から抜け出すわよ
瀬戸内寂聴:源氏物語の紫の上は結果的に負け犬よね
田辺聖子:流れのままに楽しんだらいい
林真理子:結婚にも受験と同じような努力をすべきなんです
坂東真砂子:日本のイラク派兵は男性側の負け犬の遠吠えじゃない?
(総括対談)香山リカ:負け犬は、嫌になったらトランクひとつで旅立てはいいから

 

6.

●「都(みやこ)と京(みやこ) ★★

  
都と京画像
  
2006年09月
新潮社刊

(1500円+税)

2009年03月
新潮文庫化

   

2006/10/13

 

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明晰でセンスの良い語り口が魅力の酒井順子さんによる東京と京都の対照エッセイ。
酒井さんも東京っ子ですけれど、30歳になってから京都の魅力を感じるようになり、ついに20泊21日という京都滞在をしてのけたとか。
その酒井さんが初めて京都に行ったのは高校の修学旅行だったといい、私は中学の修学旅行だったのですが、その年代では京都の魅力って判らないんですよ。私にしても魅力を感じ出したのは奈良とか一人旅をし出した20代半ばから。
その東京人にはなかなか理解しづらい京都という土地柄、人柄をさらっと書き流しながらきちんと核心をつかんでいる、それでいて理屈っぽいところ少しもなく、読んでいてめっぽう楽しいというのがこの一冊。

京都の魅力を知ったからといって、酒井さんは京都と東京のどちらにも肩入れはしない。むしろ、両方を対照することによって各々の良さを再認識しているといった風がある。だからこそ本書は気持ち良く楽しいのです。
何でも貪欲に受け入れてしまう東京があるからこそ、外部者をそう簡単に受け入れない京都のしたたかさ、奥深さ、それ故の面白さが対照的に楽しめる、といって過言でないでしょう。
京都にしてもそんな東京があるからこそ自らを誇示できる筈、そんな気がします。
京都と東京の対照はあらゆる事柄に及びます。そこが楽しい。
比叡山と東京タワー、祇園祭と高円寺阿波踊り辺りまではともかく、京都大学と東京大学、果ては綿矢りささんと金原ひとみさんにまで及ぶのですから、流石と言うべし。
単に楽しいというに留まらず、この酒井さんの観察眼、とても為になります。是非本書をお楽しみあれ。

なお、甘里君香「京都スタイルではしたたかな京都が語られていて興味深かったのですが、本書は東京と京都の対照というところに面白さがあります。この違いは著者の持ち味の違いというところでしょう。

言葉/料理/節約/贈答/高所/祭り/流通/神仏/大学/書店、喫茶店/若者/文学/宿/交通/サービス/土産/敬語/田舎/女

  

7.

●「女子と鉄道 ★★

  
女子と鉄道画像
  
2006年11月
光文社刊

(1300円+税)

 

2006/12/22

 

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本の世界における鉄道好きといえば、昔は内田百、少し前までは宮脇俊三氏(そういえば阿川弘之氏も)、というのは衆目の一致するところだと思いますが、思い浮かぶのは皆男性ばかり。
そこに颯爽と酒井順子さんが登場したとあれば、鉄道エッセイの愛読者としては惹きつけられるのは当然のこと。
さらに、エッセイの中身そのものが酒井順子流で面白いのですから、まさに言うこと無し!

宮脇俊三さんクラスになると相当の鉄道好きですから、読書とはいってもそこは伝道者の薀蓄を拝聴するといった雰囲気がありました。
その点で酒井さんは、とても鉄道マニアまで至らず、でも普通の人よりかなり鉄道好き、というところなので気楽に味わえるところが嬉しい。自分もこのクラスの鉄道好き、と親近感を抱くことができます(ただし、実際には酒井さんのようなフットワークの良さは持ちませんが)。
しかも、酒井さんが白状するところの、鉄道好きですけれど、いやいやそんなマニアではありませんと含羞を篭めて我が身をつくろうところ、共感を覚えます。
列車に乗るとつい寝てしまう、折角の高千穂線に乗りながら全線の殆どを寝て過ごし、あの高千穂峡を渡る屈指の絶景を気づくことも無く寝たまま通り過ぎたというエピソードには、呆れるどころか、その可愛げな大胆さに惚れ惚れしてしまいます。
さらに、本書エッセイは鉄道そのものだけに留まらず、大学の鉄道研究会、女性専用車両、Suica ペンギン、鉄道もなか、痴漢、東京ステーションホテルと、まこと話題は幅広い。
そして最後は、宮脇俊三氏の名著時刻表2万キロを以って締めてくれるのですから、ファンにとっては嬉しいところ。

薄い一冊とはいえ、鉄道エッセイ・ファンにとって本書は新たな領域(きっと女性ファンに)を切り開いた革命的な書であると言っても(大袈裟すぎるかなァという気もありますが)過言ではないのです。

  

8.

●「駆け込み、セーフ?」 ★☆

  
駆け込み、セーフ?画像
  
2007年02月
講談社刊

(1500円+税)

2010年04月
講談社文庫化

   

2007/02/23

 

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週刊現代連載のエッセイ「その人、独身?」の2冊目となる単行本化。
ちょうど酒井さん30代最後の日々を綴ったことから、本書題名になったとのこと。言うまでもなく、その言葉の背景には三十代のうちに結婚、という意味が含まれているようです。

酒井さんというと評判になった負け犬の遠吠えのイメージが未だに強く、ついついそうした目で読んでしまいます。
30代であるうちは“負け犬”といいつつ、そこには未だ余裕も感じられたのですが、さすがに40歳という大台を目前にするともう最後だという追い詰められた気分になるのか、そんな話題が本書においては多い。
男性の場合はどうかなぁ。30歳、40歳、当時その変化は大きいと思ったものですが、今思えば大したことはない。やはり50歳、そして60歳でしょうか。前者は体力が落ちたと感じるだけでなく、目に飛蚊症・老眼というはっきりした事象が現れますし、退職という問題が視野に入ってきます。後者は元より還暦という言葉があるぐらいですし。しかし、通り過ぎてしまうと、何だ別に変わらないじゃないか、という気分もあるのです。
ただ、男性の場合と違って女性の場合は、生殖能力の限界という問題が厳然とあるのだと酒井さんは唱えます。そりゃ大きいですよね〜。その点に関しては、男性の理解は不足しているかもしれません。

女子と鉄道までいかなくても、中国地方の木次線&代行タクシー、北海道で廃線直前の池北線乗車の話が本書中に紛れ込んでいるのは嬉しい。
また、黒田清子さんについて、また雅子皇太子妃殿下、紀子さまについても語った篇があります。それに関するエッセイはさすがに女性ならではの視点あり。なるほどなぁと酒井さんの慧眼に感じ入った次第です。
なお、「戦国武将、誰となら・・・」の篇で家康、信長、秀吉、次いでお札の福沢諭吉、夏目漱石までやり玉にあげられてしまう篇は傑作。とくに秀吉へのコメントには笑っちゃいます。

   

9.

●「甘党流れ旅」 ★★

  
甘党流れ旅画像
  
2007年07月
角川書店刊

(1500円+税)

 

2007/09/09

 

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酒井さんが甘味を求めて日本全国を旅するという、食主体の旅エッセイ。
その場でしか食べられないものを、という基準でお店を探して旅していると未知なる甘味がたくさんあることが判ってきた。そのうち「よーし、こうならうなったら全都道府県制覇しよう!」という妙な意地が湧いてきた、とのこと。
その酒井さん曰く、「甘党という軸を持つと、観光ではいかないであろう場所に行き、出会わなかったであろう人と出会うことができることを発見した」と。なるほどなぁ、食べる以外にそんな魅力もありましたか。
本書を読んでいると、その通りであることを痛感します。
どの甘味にも、その甘味が生まれた必然性、エピソードがあるのですから。食しながらそんな話を聞くのも楽しからずや。

東は餅モノが多く、西は小麦モノが多い、という。
その殆どは地元で自然に生まれたものが多く、それ故に自然なものが多い。○○餅とか○○団子とかが多いのはその所為でしょうし、昔は砂糖が貴重であったから砂糖の代わりに塩で小豆を煮たというのも、割とあったことらしい。
東京から近い観光名所の日光、水羊羹は冬場のものというその理由は昔々は暑い夏場には水羊羹を保存しておけなかったから、というのに納得。
みつ豆を日本で初めて考案したのは、東京浅草の舟和。その舟和の代名詞ともいうべき芋羊羹は、高級だった練羊羹をなんとか廉く作れないかという発想からだったとのこと。いやはや勉強になることばかり。

各地の素朴な甘味を味わうためだけに旅行する、なんと贅沢な旅でしょう。
私も独身時代あちこちへ旅行しましたが、あちこちへ行くこと、列車に乗ることが楽しみで、甘味をいろいろと味わうまでの余裕はありませんでした(ま、少しは食べてますけど)。
これから旅に行くとしたら、是非それを旅の楽しみにしたい、と思うばかり。

はじめに(京都府 円山公園 お薄、ゆであずき)/北海道・東北/関東/中部/近畿/中国・四国/九州・沖縄/あとがき

  

10.

●「黒いマナー」 ★☆

  
黒いマナー画像
  
2007年09月
文芸春秋刊

(1429円+税)

 

2007/10/17

 

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「黒いマナー」という表題から、ブラックジョーク的なマナー語りを予想したのですが、流石にそこまでは至らず。
総じて言えば、現代社会だからこそのマナーを本音を交えつつ語り、それを通じて風刺的に世相も語ろうという、意欲的なエッセイ本。
その象徴的な章が、「はじめに」に代えての「結婚のマナー」。祝辞にしても出来ちゃった婚、晩婚、再婚と状況に応じて使い分けなくてはならない。
また、メールお受験に関するマナーなども、典型的な現代日本ならではのマナーでしょう。
そしてそれ以上に注目すべきは、注意するに際してのマナー。昔であれば注意されないように振る舞うのがマナーだった筈。それが今や、会社・家庭・世間において注意する側に余っ程、配慮・覚悟・用心がいる。それに比べ、注意を受ける側は実にあっけらかんとしたものです。マナーを守るべきなのは、注意される側から注意する側へ移ったのです!

こう考えると現代社会は実に多様多彩。単に礼儀作法を承知しているだけではとても足りず、相手の心の裏を読み取って柔軟に対応する能力が欠かせないのです。
「マナー上手な人って、実はけっこう黒い、のではないか?」というのが本書題名の意味のようです。

とても私には、不足なくマナーを守ることなどできそうにありません。だとすれば、割り切って開き直ることこそ必要なのかも。
なお、本書中で一点学んだことあり。
自分はしたいけれど他人にされたくないというのは、“自慢”だそうです(ちょうど喫煙に似ているとのこと)。その一言については、肝に銘じておくこととしましょう。

結婚のマナー−「はじめに」にかえて/おつきあいのマナー/季節のマナー/関係性のマナー/危険なマナー/おわりに

  

酒井順子著作のページ No.2

 


 

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