宇江佐真理
(うえざまり)作品のページ


1949年北海道函館市生、函館女子短期大学卒。95年「幻の声」にて第75回オール読物新人賞を受賞し、作家デビュー。受賞作を含めた「幻の声−髪結い伊三次捕物余話−」にて 第117回直木賞候補となる。2000年「深川恋物語」にて吉川英治文学新人賞、01年「余寒の雪」にて中山義秀文学賞を受賞。15年11月乳がんのため死去。享年66歳。


1.幻の声
−髪結い伊三次捕物余話−

2.深川恋物語

3.雷桜(らいおう)

4.春風ぞ吹く−代書屋五郎太参る−

5.甘露梅−お針子おとせ吉原春秋−

6.涙堂−琴女葵酉日記(ことじょきゆうにっき)−

7.あやめ横丁の人々

8.無事、これ名馬

9.ひとつ灯せ

10.深川にゃんにゃん横丁

11.うめ婆行状記

 ※ 堀留の家(藤水名子監修「しぐれ舟」収録)

     


   

1.

●「幻の声−髪結い伊三次捕物余話−」● ★☆

幻の声画像
 
1997年04月
文芸春秋刊

2000年04月
文春文庫


2000/04/23

宇江佐さんのデビュー作。
主人公・
伊三次は廻り髪結いですが、その傍らで町方同心・不破友之進の手先を務めている、 という設定。

「捕物余話」という題名ですけれど、作品の傾向としては“捕物帖”というより“市井もの”と言うべきでしょう。
本書の魅力は、
伊三次ひとりにあるのではなく、伊三次の思い女である辰巳芸者の文吉、不破友之進、その妻のいなみという4人の組み合わせにあると感じました。
とくに、文吉、いなみの女性2人の方が、男性2人より光っている気がします。やはり女性作家の持ち味が出ているからでしょうか。
本書では、この4人が代わる代わるに主役を勤めていますが、いなみの存在感が大きく光る「星の降る夜」が圧巻。また、「備後表」は人情話として良い味わいを出しています。

幻の声/暁の雲/赤い闇/備後表 /星の降る夜

  

2.

●「深川恋物語」● ★   吉川英治文学新人賞

 
深川恋物語画像

1999年09月
集英社刊
(1600円+税)

2002年07月
集英社文庫化


2000/01/09

江戸の深川を舞台にして描く、恋物語6編。
恋物語といっても各編毎にさまざまな江戸町民の暮らし振りが描かれており、宇江佐さんの工夫が感じられます。
ただ市井もの時代小説というと、つい藤沢周平「橋ものがたり北原亞以子「深川澪通り木戸番小屋と比較しながら読んでしまいます。
6編ともきれいに描かれた市井もののストーリィですけれど、「橋ものがたり」で感じたような読後の余韻が感じられません。その理由は何故かと考えてみました。
藤沢周平作品には、貧しいこと、身寄りのないこと等からくる哀歓がありました。それが作品全体に忘れ難い情緒をもたらしていたように思います。
本書では、貧しい生活を描いていても、その貧しさが実感として伝わってきません。その辺の違いがあるのかなぁと思います。ただ、これは創作力以前の問題でしょう。
なお、「狐拳」は良かったです。私が好きな傾向のストーリィです。

下駄屋おけい/がたくり橋は渡らない/凧、凧、揚がれ/さびしい水音/仙台堀/狐拳

          

3.

●「雷 桜」● ★★


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2000年04月
角川書店刊
(1700円+税)

2004年02月
角川文庫化


2001/04/12

瀬田村の庄屋・助左衛門の愛娘・が誘拐されてから15年後、遊は隠れ育てられてきた瀬田山を下り、父母の元に戻ってきます。しかし、その風体、振舞いは尋常の娘と異なり、村人達は彼女を“狼女”と呼びます。本書は、この遊の魅力により、一気呵成に読ませてしまう時代小説の佳作です。
これまでの宇江佐作品は、線の細さ故にもうひとつ魅力を欠いていましたが、本書は珍しく骨太である点が、とにかく魅力。
しかし、剛毅さのある一方、父母、兄を慕う遊の娘らしさ、家族の絆をしっかり描いているところに、宇江佐作品の良さをきちんと守っているという印象を受けます。
ストーリィは、遊の生涯と、次兄・助次郎が江戸で武家に取り立てられて仕えた御三卿・清水斉道の生涯が、絡み合って展開します。村人が畏れる山の中で育った故に、尋常の女性とは違った人生を送った遊。一方、斉道は、将軍の子としての重圧から精神を病み、自らその事に恐れを抱く人物。運命的な出会いをする2人の個性には、強く惹かれるものがあります。
本書の題名となった「雷桜」とは、折れた銀杏の途中から桜が育ち、下が銀杏、上が桜になった瀬田山中の樹のこと。遊を象徴するものですが、本作品に鮮やかな彩りを与えており、強い印象を残しています。
女性作家による時代小説としては、なかなか歯応えのある作品。楽しめることは確実です。

    

4.

●「春風ぞ吹く−代書屋五郎太参る−」● 


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2000年12月
新潮社刊
(1500円+税)

2003年10月
新潮文庫化


2001/01/15

幕府小普請組・村椿五郎太は、西両国広小路の水茶屋ほおずきで代書の内職をしつつ、「学問吟味」に合格して御番入り(役職就き)を目指している身の上。学問の進捗状況は芳しくありませんが、御番入りを果たさないと、将来を約束した幼馴染の恋人・紀乃との仲も果たせないという切羽詰った状況にあります。目玉がとりわけ大きいというのが彼の特徴。
そんな五郎太を主人公にした“時代版青春(受験+恋愛)物語”という趣の短編集です。

まずは題名の気持ち良さに惹かれて読み始めました。
五郎太自身にまつわるストーリィは、それなりなのですが、周囲に登場する人物たちが楽しい。五郎太の母里江、紀乃の父母俵平太夫藤乃、兄内記、水茶屋の伝助彦六、幼馴染の引出茶屋お内儀弥生、学問の師である二階堂秀遠大沢紫舟等々、それぞれ個性的です。
ただ、五郎太が狂言回し役に回った観のある「魚族の夜空」「千もの言葉より」の方が、2人の師にまつわる人情話を描いて気持ちの仕上がりになっています。
気軽に、気持ち良く読める、滑稽味もある時代連作短編集です。

月に祈りを/赤い簪、捨てかねて/魚族の夜空/千もの言葉より/春風ぞ吹く

          

5.

●「甘露梅−お針子おとせ吉原春秋−」● 


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2001年11月
光文社刊
(1500円+税)

2004年06月
光文社文庫化



2001/12/10

岡っ引をしていた亭主が突然死んで、息子夫婦と同居もしづらいことから、吉原遊郭に住み込んでお針子として働くことになったおとせが主人公。そのおとせが1年の間に見聞きした、吉原での春秋譚。

市井話といっても、江戸市中ではなく、舞台が吉原遊郭内となれば、男女の情愛がストーリィの中心となるであろうこと、そこに悲哀さが混じることは当然に想像されます。
しかし、本書の印象としては、それぞれの要素について、今一つ物足りなさを感じます。素人の女性が水商売の家に住み込んで内情を描いた作品としては、幸田文「流れる」という名品があります。また、市井における男女の哀感漂う情愛を描いた作品となると、藤沢周平「橋ものがたりが思い浮かびます。それらの作品と比べると、如何せん本書は踏み込み不足。
おとせは、岡っ引の女房にしては洞察力があるわけでもなし、世知に長けた女でもなく、吉原の風習を知らないが故に腰軽くひょこひょことあちこちに口を出す、そんな風があります。1年を経ておとせは吉原を出て行く訳ですが、結局おとせの吉原住まいは腰掛け程度、それ故各篇とも吉原という特殊世界の一部を垣間見る程度に留まった、という印象を受けるのです。
なお、本作品の面白味のひとつに、引手茶屋の主人で幇間も勤める凧助と、おとせの関係があります。夫婦漫才のようなやりとりがあって、とてもユーモラス。しかし、そんな可笑しさと悲哀さの両方を描くには、この連作短篇の頁数ではあまりに不足しています。その点も、結果的に物足りなさを感じることになった理由のひとつです。

仲の町・夜桜/甘露梅/夏しぐれ/後の月/くくり猿/仮宅・雪景色

    

6.

●「涙 堂−琴女葵酉日記−」● ★☆


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2002年03月
講談社刊
(1600円+税)

2005年08月
講談社文庫化



2002/05/27

元同心の妻・が、浮世絵師となった次男に誘われ、日本橋通油町の次男宅に移り住んでからの日々を描く連作短篇集。

長男および3人の娘の嫁ぎ先はいずれも町奉行所の役人、それに対して次男だけが風変わり、という設定。
そのため琴女の日々は、武家の生活と市井の生活とを対照的に描き出します。
そして、通油町には、今は絵草紙問屋の婿となった伝兵衛、医師の江場清順という八丁堀の幼馴染がいて、復活した友達付き合いが楽しい。また、清順の次女とその亭主の間には喧嘩騒ぎが絶えず、野次馬には格好の見もの。
その一方で、夫が殺害された真相を、長男・娘の夫たちが協力して追求していくというサスペンス要素もあります。
そうした二重性ストーリィというと、藤沢周平「用心棒日月抄を思い浮かびますが、惜しまれるのはサスペンス部分に緊張感が欠けていること。江戸市井の情緒部分は良いのですけれど、その辺りが宇江佐作品の物足りないところ。
次男・賀太郎、伝兵衛一家、清順一家らに面白味があるものの、主人公の琴女は、特に魅力があるという程でもない。武家の主婦像としては、諸田玲子「お鳥見女房の方が魅力的です。
まあ、それなりに楽しめる連作短篇集です。

白蛇騒動/近星/魑魅魍魎/笑い般若/土中の鯉/涙堂

  

7.

●「あやめ横丁の人々」● ★★


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2003年03月
講談社刊

(1700円+税)

2006年03月
講談社文庫化


2003/05/03


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祝言の最中に花嫁を奪われ、かっとなって相手を切り殺し、花嫁に自害された旗本の三男坊・慎之介が主人公。
その騒動で婿入りする筈だった相手の家が改易処分となり、その恨みから命を狙われることになります。そんな慎之介が送り込まれた場所が、本書題名のあやめ横丁

つい森田誠吾「魚河岸ものがたりのような、あやめ横丁の人々を描く連作短篇集と予想したのですが、それは誤り。
あやめ横丁に住む人々は、皆何らか訳ありの事情を抱えているらしい。そもそも「あやめ横丁」と聞けば、あやめという花を連想しますが、あやめ横丁という名前自体が訳ありらしい。
とりあえず慎之介が身を寄せたのは、岡っ引である権蔵の家。権蔵の娘・伊呂波を始め、この横丁の住民たちは、子供たちも含めていずれも個性的。そこが本作品の楽しさです。
そんな訳ありの不思議な町で半年を過ごす間に、短気なぼんぼんだった慎之介も世間の苦労を知ることとなり、人間的に成長していきます。本書はそんな慎之介のビルドゥング・ロマンス。
ひとつひとつのストーリィは哀感あるものですが、それと慎之介の若々しさが好対照。そして何よりも、読後に残るほろ苦さが印象的。
ストーリィ設定の妙が本作品の魅力です。

あめふりのにわっとり/ほめきざかり/ぼっとり新造/半夏生/雷の病/あさがら婆/そっと申せばぎゃっと申す/おっこちきる/あとみよそわか/六段目

  

8.

●「無事、これ名馬」● ★★


無事、これ名馬画像


2005年09月
新潮社刊

(1500円+税)

2008年05月
新潮文庫化



2005/10/09



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武家の7歳になる男の子が火消し「は組」を突然訪ねてきて、「頭、拙者を男にして下さい」と頼み込む。
突然の申し出に面喰う「は組」の頭・吉蔵とその家族ですが、それから少年は足繁く「は組」に通って来るようになります。
本書は、それから始まるハートウォーミングな連作短篇集。

男の子は村椿太郎左衛門といういかめしい名前ですが、本人自ら告げるに、相当な泣き虫で臆病者。
本書は、市井の火消し連中に揉まれてその太郎左衛門が逞しく成長していく姿を描いた時代小説と予想していたのですが、さにあらず。
は組の吉蔵とその娘のお栄が出会う様々な面倒事+たろちゃんの存在、というべきストーリィなのです。
吉蔵やお栄ほか、孫のおくみにまで「たろちゃん」と呼ばれて何の抵抗も感じていないところが、そもそも武家の男の子らしくないところ。でも、そこにたろちゃんの魅力があり、本作品の味わいがあります。

「は組」に通ううち次第に太郎左衛門はしっかりしてきますが、どうもそれは、実母の紀乃だけでなく吉蔵やお栄の思っていた姿とは違うらしい。
“意地”よりも“安全”というたろちゃんの考え方は、人から高い評価は得られないでしょうけれど、実は一番大事なことかもしれない。
たろちゃんを庇ううち、いつの間にかたろちゃんのそんな雰囲気に包まれている吉蔵一家と太郎左衛門との関わりが楽しい。
吉蔵一家と対比されるような、太郎左衛門の父・五郎太、母・紀乃、祖母・里江の三者三様も楽しめます。
この楽しさは、時代版ホームドラマと言って良いでしょう。
なお、たろちゃんの両親は春風ぞ吹く五郎太と紀乃。たろちゃんは出世頭の父・五郎太より、余っ程大物ですよ。

好きよ、たろちゃん/すべった転んだ洟かんだ/つねりゃ紫、喰いつきゃ紅よ/ざまァかんかん/雀放生/無事、これ名馬

  

9.

●「ひとつ灯せ 大江戸怪奇譚」● 


ひとつ灯せ画像


2006年08月
徳間書店刊
(1600円+税)

2010年01月
文春文庫化



2006/09/11

評判の料理屋を営む平野屋清兵衛は、息子に店を譲って隠居してから急に老け込み寝付いてしまう。自分ももう長くないと覚悟したのですが、親友の甚助が見舞いに来てくれた翌日急に身体の調子が良くなってしまう。甚助はどうも霊感があるようで、甚助に見えた死神を追い払ってくれたおかげらしい。
そのことがきっかけとなって清兵衛は、甚助も一員である「話の会」に加えてもらうことになります。
自分達が見聞きした不思議な出来事を語り合い、そのことによって自分達に降りかかる不運を振り払おうという趣旨。
本書の題名は、その会合の始まりの時に唱えられる決まり文句。“闇”の話を始めるときに“光”を唱え、闇と光の均衡をとろうという理由らしい。

単に見聞きした話を披露するというだけでなく、自分達もまたその渦中に巻き込まれるというのが、本書の持ち味。
商家の主人のほか、学者もいれば医者、同心、一中節の女師匠もいて年齢層もそれなりに広いといった按配。さながら“大江戸怪奇もの専門・少年探偵団”といった雰囲気です。
因果応報はともかく、先祖の霊などをきちんと慰めなかった所為かもといわれると、いくら時代物とはいえ納得いかないと感じる部分もあります。
本書の中で一番良い話だったのは、一同が箱根へ湯治に出掛ける「箱根にて」。そこでも怪奇譚に出会うことになりますが、良かったのはその事件そのものではなく、当地に住まう徳真様という名の尼僧と清兵衛との出会いのこと。
最後はハッピーエンドとはいきませんでしたが、こんな話もお江戸にはありますよ、というところでしょうか。

ひとつ灯せ/首ふり地蔵/箱根にて/守/炒り豆/空き屋敷/入り口/長のお別れ

   

10.

●「深川にゃんにゃん横丁」● ★☆


深川にゃんにゃん横丁画像


2008年09月
新潮社刊
(1500円+税)

2011年03月
新潮文庫化



2008/10/07



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深川にある山本町。その町にある小路は「にゃんにゃん横丁」と呼ばれている。住民に猫好きが多く、餌を与えたりするので、野良猫もよく通る、というのがその命名の由来。
そのにゃんにゃん横丁界隈を舞台に、喜兵衛店に暮らす長屋住民たちの間で繰り広げられる市井もの連作短編集。

つまり、アンダスン「ワインズバーグ・オハイオ」に代表される町とその住人たちを描く物語。舞台が江戸となれば、藤沢周平「本所しぐれ町物語北原亞以子「深川澪通り木戸番小屋に連なる作品と言ってよいでしょう。
狂言回し役は、頼まれ大家の徳兵衛、自身番の書役である富蔵、指物師の女房おふよという面々。
この3人、幼馴染という気安い関係にあることから、気は好いのだけれどお節介ぎみというおふよに引きずられ、住人の悩み、揉め事の面倒に首を突っ込むのが常、という趣向。
この3人、積極的に首を突っ込むというところが本作品の特徴かもしれません。
ただ、話がきれいごと過ぎる、という印象を受けます。それは、登場する子供たちが些か出来過ぎじゃないか?、という処で特に感じられます。
したがって、藤沢、北原両作品に比較すると、大江戸市井ものファンタジー物語という感じを受けます。そもそも住民が猫が好きで猫、その猫が・・・・ということ自体、ファンタジー的なのです。
まぁ、そんなきれい事過ぎると感じるところが、宇江佐作品に私がもうひとつ入り込まないままとなった理由なのですが。

表題が「にゃんにゃん横丁」ですから、猫たちがどうストーリィに絡むかが読み処なのですが、その点では冒頭の「ちゃん」がお見事。
女房が別の男と所帯を持って、娘と離れ離れになった父親の切ない気持が伝わってくるストーリィですが、最後にドキッとさせられるところがミソです。

ちゃん/恩返し/菩薩/雀、蛤になる/香箱を作る/そんな仕儀

  

11.

「うめ婆行状記 ★★


うめ婆行状記

2016年03月
朝日新聞出版

(1500円+税)

2017年10月
朝日文庫化



2016/05/04



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久々の宇江佐真理作品、遺作ということもあり、未完とはいえストーリィ内容も面白そうに感じられましたので、これが最後と手に取りました。

久し振りということもあってか、宇江佐真理さんの伸びやかな温かさが感じられて、いいなぁーと実感。
また、本書については数多く登場する主人公うめの家族、親族、周辺人たちが生き生きと動き回っていて、それも魅力です。

さてストーリィ。大店
伏見屋の娘で何不自由なく育ったうめですが、同心からの縁談申し入れに断れない状況も生じて、嫌々ながら北町奉行所同心・霜降三太夫の元に嫁入りします。そして長い年月が過ぎて二男二女も夫々に片付き、夫の三太夫も亡くなった今、堅苦しい武家の家から出て町中で独り暮らしをしたいと思うに至ります。
当然ながら賛成もあれば反対もある訳ですが、それを押し切っての独り暮らし。とはいえ、それから順調に進んだのはたまたま隣人が顔見知りの夫婦で、2人揃ってあれこれとうめの役に立ってくれたため、という次第。
しかし、嫁取りしないままの甥(伏見屋の跡取り)から、実は長年の恋人との間に5歳になる隠し子がいると打ち明けられ、うめの独り暮らしは一転賑やかなものとなります・・・。

ずっと家族の為に生きてきて、この際余生は羽を伸ばして気ままに暮らしてみたいと一家の主婦が考えるのは、現代にも通じる問題だと思います。
しかし、そう簡単にいくものかどうか。所詮は人と人、家族との繋がりがあってこそ独り暮らしも楽しく暮らせる、ということではないかと思います。

そしれにしても久々の宇江佐真理作品、とても楽しかったです。
最後になりますが、宇江佐真理さんのご冥福を心からお祈りします。

うめの決意/うめの旅立ち/うめの梅/うめ、悪態をつかれる/盂蘭盆のうめ/土用のうめ/祝言のうめ/弔いのうめ/うめ、倒れる/うめの再起/解説:諸田玲子

 


 

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