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11.海鳴り 12.風の果て 13.本所しぐれ町物語 14.蝉しぐれ 15.たそがれ清兵衛 16.市塵 17.三屋清左衛門残日録 18.凶刃−用心棒日月抄− 19.天保悪党伝 20.秘太刀馬の骨 |
【作家歴】、暗殺の年輪、刺客、用心棒日月抄、消えた女、橋ものがたり、春秋の檻、隠し剣孤影抄、隠し剣秋風抄、密謀、よろずや平四郎活人剣 |
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●「海鳴り」● ★★☆ |
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1984年 文芸春秋 2013年07月 |
ウーン、感想をどう書いてよいやら悩む作品です。一面からだけ見ると、美しい物語、 と言えるし... ウン、わかるなア、と言うと、「何か問題抱えているんじゃないの、アノヒト」と言われ そうだし..... 一代で紙問屋の店を開くに至った新兵衛が、ふと自分の老いを感じてみると、家庭は幸せなものとは言えず、もう今更自分の力では変えられないものとして固まってしまっていることに気付く。そんな新兵衛が、新しい生活を切り開くため、再度出直しをするに至るストーリイ。 感想は新兵衛のことに集中してしまいますが、その他の登場人物たちにも、それぞれ同様な物語があるだろうことを、藤沢サンはちゃんと感じさせてくれています。ともかくも、新兵衛と道連れにエールを送りたい気分。 |
●「風の果て」● ★★☆ |
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1988年 文芸春秋
1994/02/19
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時代小説版企業小説と言いたい趣きのある作品です。 現在は、筆頭家老の立場にある桑山又左衛門。それが、かつての友人・野瀬市之丞から果し合いの申し入れを受けたことから、これまで自分が歩んできた道を振り返りながら、野瀬を捜し歩く、という設定が巧妙で、それが何より面白く感じます。 その辺りの機微を、単なる成功物語として直線的に語るのではなく、又左衛門をして過去を振り返らせ、検証させていくような展開が、藤沢さんの巧いところです。 |
●「本所しぐれ町物語」● ★★ |
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1987年 1990年
1993/09/16 |
アンダスン「ワンズバーグ・オハイオ」と同様に、本所しぐれ町という架空の町を舞台に、そこに住む人々を描いた連作短篇集。
幾つかの篇の中で、登場人物が行き交う分、また、主観的に或いは他の篇で客観的に語られる分、真実味が増して読み手に伝わってくる、という長所がこの形式にはあります。 この作品中でとくに忘れ難いのは、父親に死なれた10歳のおきちを描く一篇。幼い弟・妹を抱え、一人で借金して父親の借金を片付け、自分の借金のため女郎屋へ自ら2両で身売りしていく。その健気で、最後に子供らしさを見せるおきちの姿は、忘れられません。 鼬の道/猫/朧夜/ふたたび猫/日盛り /秋/約束/春の雲/みたび猫/乳房/おしまいの猫/秋色しぐれ町 |
●「蝉しぐれ」● ★★★ |
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1991年 文芸春秋 1994/02/24 |
時代小説における青春小説の逸品。 雑誌に連載中は、藤沢さん自身どのような作品になるのかまるで見当もつかず、自信もなかったとのことですが、そんなことが信じられないような名品です。 |
※映画化 → 「蝉しぐれ」
●「たそがれ清兵衛」● ★★ |
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1992年09月 文芸春秋 |
“隠し剣”の系統に繋がる短篇集です。ただ、題名が主人公が遣う秘剣の名前ではなく、主人公たちの異名であるところが違いであり、また特色です。 たそがれ清兵衛/うらなり与右衛門 /ごますり甚内/ど忘れ万六/だんまり弥助/かが泣き半平/日和見与次郎/祝い人助八 |
※映画化 → 「たそがれ清兵衛」
●「市
塵」● ★☆ |
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1989年 1991年 文芸春秋
1997/07/12 |
6代将軍家宣に仕えた儒者・新井白石を描いた歴史ものですが、かなり地味な作品です。 |
●「三屋清左衛門残日録」● ★★★ 菊池寛賞 |
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1989年 1992年 文芸春秋
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さる藩の用人を勤めていた三屋清左衛門が、藩主の交代を機に用人を辞し、江戸から戻って家督も息子に譲り、隠居生活に入ります。その隠居生活の日々を描く連作短篇集。名づけて“残日録”という訳です。 |
●「凶刃−用心棒日月抄−」● ★★ |
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1991年 1994年 文芸春秋
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シリーズ最終巻。本書については賛否両論あるようですが、私としては好きです。“用心棒日月抄”の裏軸とも言うべき、又八郎と佐知との関係にきっちりけりをつけた点、過去の3巻に捕われず、
あえて長篇推理風に仕上げた味わい、“日月抄”であって“日月抄”でない最終巻として、藤沢さんの巧さを賞賛したい思いです。 |
●「天保悪党伝」● ★ |
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1992年03月 1993年05月 2001年11月 2002/05/06 |
悪名高き練塀小路の悪党・河内山宗俊と、その周りに集う片岡直次郎、金子市之丞らを描いた、連作短篇集。 藤沢さんの弟子にあたる北原亞以子さんには「贋作天保六花撰」という作品があります。こちらではもっと人が良い片岡直次郎が登場します。一方、多岐川恭「練塀小路の悪党ども」は、もっと人が悪かったように思います。いろいろ読み比べてみるのも一興でしょう。 蚊喰鳥(天保六花撰ノ内・直侍)/闇のつぶて(〃金子市)/赤い狐(〃森田屋)/泣き虫小僧(〃くらやみの丑松)/三千歳たそがれ(〃三千歳)/悪党の秋(〃河内山宗俊) |
●「秘太刀馬の骨」● ★★ |
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1995年 文芸春秋 |
北国のさる藩において、前々家老暗殺に使われた“馬の骨”という秘太刀の遣い手を探し求める、という構成の連作短篇集。 |