●「曲亭馬琴遺稿」● ★★ |
|
1990/07/17
|
「南総里見八犬伝」の作者・滝沢馬琴の人となりを丹念に描いた作品。秀作だと思います。 滝沢馬琴という人、そんなにも高評と悪評のある人物だったのでしょうか。それが森田さんの執筆の動機だというのですが。 馬琴、読本の執筆で生活を支えている。人気は上々のようですが生活は決して楽ではない。実は作料が入るほど出費も派手になりがちで寄付や酒食の供応などの経費が多く、執筆を減らした方が結果的に残るものは多かった、というのは現代の様相と極似していて面白い。 馬琴という人物、すこぶる生真面目である。 作品の執筆は、唐からの翻訳ものも仕入れ、ネタ探し、知識の習得に十分投資している。 こうした作品を書くための下調べは大変だったと思うのですが、作中の馬琴も同様だった筈であり、馬琴の姿に作者の姿をダブらせて見ることにもなります。貴重な一作と言えます。 |
●「魚河岸ものがたり」● ★★★ 直木賞 |
|
|
東京築地の魚河岸を舞台に、その町で働く人々を描いた連作短篇集。 ストーリィは、その町に吾妻健作という青年が、母親と共に住みついたところから始まります。 下町を舞台にした連作短篇集という構成は、読み易いし、面白く読めるという定番メニューでしょう。 私好みの一冊です。 市場通り/門跡橋/築地川支流/波除神社/海幸橋/勝鬨橋/晴海通り/隅田河口 |
●「明治人ものがたり」● ★ |
|
1998年09月 1998/10/12 |
この本は、著者が入院中に乱読した中から見つけた、興味深い「話のたね」をまとめた一冊とのことです。 明治天皇の人間性のこと、森銑三という伝記家のこと、森鴎外の娘・茉莉と幸田露伴の娘・文との対比。 しかし、何と言っても興味つきないのは、森茉莉さんと幸田文さんの比較です。 ※阿川佐和子と
檀ふみさんの違いなど、この二人の違いに比べれば、大したことないと思えてきます。(「ああ言えばこう食う」) 睦仁天皇の恋/学歴のない学歴/マリとあや |