山田かまち やまだ・かまち(1960—1977)


 

本名=山田かまち(やまだ・かまち)
昭和35年7月21日—昭和52年8月10日 
享年17歳(浄山悟道居士)
群馬県高崎市倉賀野1043 永泉寺(曹洞宗)



 

詩画人。群馬県生。県立高崎高等学校。幼少時から絵画や詩の才能に恵まれ、並外れた独創性を発揮して周囲の人々を驚かせていた。中学三年生頃からビートルズなどのロックに傾倒していたが、一年浪人の後に入学した県立高崎高等学校一年生の夏休みに自宅でエレキギターを練習中に感電死する。死後に遺作集として『悩みはイバラのようにふりそそぐ:山田かまち詩画集』が刊行された。






  

ぼくは人の心が分からない。
だけど人にいいような、
そして自分にもいいようなしゃべりかたをする。
いや、しようとしている。
だがそれがうまくいかないのだ。
それは人の心がわからないのと、人との会話の中で、
どんどんどんどん感じて、
反応してかんがえて、
声にしてださなければならないのだが、
それがどうもうまくいかない。
世の中は早すぎるのだ。
かんがえているひまもない。

 

(ぼくは人の心が分からない)



 

 昭和35年7月21日早朝、群馬県高崎市の高崎病院で生まれ、一陣の風を伴って明滅する光の如く走り去った少年山田かまち。高校受験に失敗し、予備校に通いながらもたくさんの絵を描き、愛、夢、希望、不安、怒り、悲しみ、心の思うままをノートに書きつけた。詩を書いた。小説を書いた。裸のかまちを書いた。ビートルズにあこがれ、ロックスターを夢見たかまち。52年、高崎高等学校に入学を果たした夏休み、〈お前は美しい。それは誰が何と言おうと、変わることのない偉大な真実だ。人に悲しまされるな。物事に悲しまされるな。おまえは生きることを生きろ。おまえは再びおまえをつかめ。おまえは眠っていた。それをゆり起こして、さあ、再びおまえを生きるんだ。再びおまえを!〉、最後の叫びを書き残して、エレキギターを思いっきりかき鳴らした8月10日。感電死するとも知らずに。


 

 高崎駅から一駅、倉賀野の駅舎を後にしてかまちが通った倉賀野小学校の裏道を西へ辿ると間もなく墓所のある大用山永泉寺が見えてくる。倉賀野城主金井淡路守秀景開基のこの寺本堂裏奥、高崎市保存木と銘された榧の大木を背に「中島家/山田家」墓。愛おしんでくれた祖母中島いとと共に眠っている。過去碑に戒名と没年月日、行年、生年月日、山田秀一・千鶴子長男かまちとあり、並んで平成二五年に他界した父秀一の名が刻まれていた。高崎線の線路際にある墓地の空気を揺るがすように時折電車の通過する音がまるでロックに聞こえてくる。〈生きているんだ/ロックに興奮して飛びはねる/生きている/生きているんだ/ロックに飛びはねていたって/ぼくは生きているんだ/絶対に抱くんだって……/ロックをこの体の中に〉



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

編集後記


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文学散歩 :住まいの軌跡


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