古地磁気学と岩石磁気学の基礎

直線近似 y = a + bx: York (1966) の特別解

観測点と直線上で調整された点. 古地磁気強度(古地球磁場強度)の実験における Arai plot の解析のために York (1966) の特別解を使用することが Coe et al. (1978) で提唱されました. York の理論では次の \(t\) を最小にします. \[ t = \sum_{i=1}^n \{w(x_i)(x_i - p_i)^2 + w(y_i)(y_i - q_i)^2\}, \] ここに \(w(x_i)\) と \(w(y_i)\) は観測値の重みです.理論は非常に複雑な \(b\) の一般的方程式を展開しますがここでは示しません.より簡単ないくつかの特別解のうち, \[ \frac{w(x_i)}{w(y_i)} = c \quad (\mathsf{constant}) \] と仮定したときの方程式は, \[ \left( \sum_{i=1}^n w(x_i) u_i v_i \right)b^2 - \left( \sum_{i=1}^n w(x_i) v_i^2 - c\sum_{i=1}^n w(x_i) u_i^2 \right)b - c\sum_{i=1}^n w(x_i) u_i v_i = 0, \] で与えられます.但し, \(u_i\) と \(v_i\) は次のとおりです. \[ u_i = x_i - \bar x, \quad v_i = y_i - \bar y. \] この特別方程式には3つのケースがあり, Coe et al. (1978) は次の条件で与えられる最後のケースを採用することを提唱しました. \[ w(x_i) = \frac{1}{\sigma_x^2} = \frac{n-1}{\sum_{i=1}^n u_i^2}, \quad w(y_i) = \frac{1}{\sigma_y^2} = \frac{n-1}{\sum_{i=1}^n v_i^2}. \] すると, \(b\) は次の簡単な式で与えられます. \begin{equation} b = \sqrt{ \frac{\sum_{i=1}^n v_i^2}{\sum_{i=1}^n u_i^2} } = \frac{\sigma_y}{\sigma_x}. \label{eq01} \end{equation} York (1966) はまた次の \(b\) の標準誤差と呼ばれる \(\sigma_b\) の推定値も導いています. \begin{equation} \sigma_b^2 = \frac{1}{n-2}\frac{2\sum_{i=1}^n v_i^2 - 2b\sum_{i=1}^n u_i v_i}{\sum_{i=1}^n u_i^2}, \label{eq02} \end{equation}

アライプロットにおけるデータの分散.

上の重み \(w(x_i)\) と \(w(y_i)\) に適用した \(\sigma_x^2\) と \(\sigma_y^2\) は必ずしも \(x_i\) と \(y_i\) の誤差を反映するものではありません.というのは,それらは平均の周りの分散だからです.しかし,それらは Arai plot における誤差に対する一般的認識と合います.即ち,測定誤差の絶対値は残留磁化強度に比例するというものです.その場合,図から分かるように \(x_i\) と \(y_i\) の誤差は次式で表されます. \[ \sigma_{x_i}^2 = (F_L \sigma)^2, \quad \sigma_{y_i}^2 = (F_E \sigma)^2, \] ここに \(F_L\) と \(F_E\) はそれぞれ実験室磁場と古地磁気の強度で, \(\sigma\) は一般的測定誤差を反映する定数です.よって,上の \eqref{eq01} と \eqref{eq02} で与えられる \(b\) と \(\sigma_b\) は正しいと考えられます.

参考文献: