「草野球の窓」

第85章
「逆 転」

 攻撃の常道は、まず先制し、中押点、だめ押し点と追加点を入れていくことだ。これによって、相手の戦意を喪失させる。だが、言うほどには簡単ではない。1〜2点先制しても追加点が取れないと、いつか逆転されるのではないかと不安を抱く。この不安があせりにつながり、攻撃が雑になったり、守備で失策したりするようになる。このようなあせりが本当に逆転を許してしまう。逆に、相手に先制されても、その後の追加点を許さなければ逆転のチャンスはある。したがって、追加点を許さないということが最も大事になる

 追加点を許さないためには、先制された原因をいち早く分析することだ。味方の失策で、打たれてはいないのに先制されることがある。失策は慎重になりすぎていることが原因である場合が多い。「慎重になりすぎて前に突っ込めなかった」「慎重になりすぎて腕が縮み暴投した」・・といったことは多くの人が経験している。あるいは、試合開始早々、まだエンジン全開となっておらず、少し強い打球に対して体がついていかなかった、といった経験も多いはずだ。こんな時は、ベンチや仲間が「腕が縮んでいるゾ。ワンバウンドになってもいいから思い切って叩きつけるような送球をしろ」などとアドバイスしてあげる。

 ストライクが入らなくて押し出し、あるいはワイルドピッチなどで先制されるケースもある。第84章で述べたように、これは自滅寸前の状態である。これに対しては気合を入れなおし、居直って打てるものなら打ってみろといった気持ちで投げる。気持ちの持ち方を変えることでピンチを脱する。

 打ち込まれた場合も第84章で述べたとおりである。ただ、序盤で打ち込まれた場合、投球パターンを変えてみることが有効である。「投球テンポが単調になってやしないか」「球を揃えすぎていないか」「配球が単純になり狙われているのではないか」と分析してみる。思い当たる節があればすぐに投球パターンを変える。特に、捕手が注意して頭を切り換えることが必要だ。こうしたことで相手の勢いが止まることもある。

 こうして、相手の追加点を阻止している間に追いつく努力をしなければならない。そして最後まで決して諦めないことが大事だ。自分だけは最後の打者にはならないという気持ちで打つ。1〜2点のビハインドであれば、一人走者が出れば十分逆転のきっかけになる。
 決して忘れてはならないのは、相手は「逆転されるかもしれない」という不安を抱いている点だ
この不安を巧みに衝くことだ。それはプレッシャーをかけ続けることであり、その方法はすでに何度となく述べてきた。野球は9回2死から、というではないか。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年11月26日掲載)


【幹事補足】
 師の最後の文句は、私には実に身にしみます。かつてある大会において、私のチームは最終回1―0でリードしていました。その大会で初めて3回戦に進めるという大きな期待を抱きながら私はレフトの守備につきました。一死を取った時、その期待はさらに高まりました。
 しかし、次の打者を四球で歩かせてしまった後、一塁走者は初球で即座に盗塁。二球目でなんと三盗を狙ってきました。あわてた捕手が三塁への送球を焦り、打者への打撃妨害を取られ、走者は出塁後わずか2球で同点のホームを踏んだのです。ここから期待は不安に変わりました。打撃妨害で出塁した打者は、またまた初球で盗塁。この後、センター前安打で走者が帰り、一瞬のうちに逆転負けを喫しました。
 ここで、二人の走者の連続盗塁、特に二人目の走者の初球での盗塁は、まさに我々の心理を揺さぶる効果的な攻めであったと言えるでしょう。「心理を揺さぶる」などと書くと、大げさに感じますが、プロ野球に比べ、むしろ草野球の方が心理に揺さぶられ易いと思えます。それを戦略として捉えるのは、上述の例からも効果的であることは明白です。



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