「草野球の窓」

第84章
「自 滅」

 一本のヒット、一つの四死球からそれまで好投していた投手が自滅することがある。走者を一人出した時点では投手も「しまった」と思う程度で、どうということはない。しかし、続けてヒットを打たれたり、ストライクが入らなくなると、もうどうにも止まらなくなり、次から次へと走者を出し、長打を打たれたり、ワイルドピッチや押し出し、挙げ句はボークなどで自滅してしまう。

 一番大きな原因は何度も述べてきたように平常心の喪失である。好投してきただけに、こんなはずではないという思いが強く、冷静さを忘れてしまう。さらに走者を出すと、自信を失い、恐る恐る投げるようになってしまう。こうなったら、球威も制球もなくなり、ストライクが全く入らなくなったり、投げる球がみな棒球になって長打を打たれてしまう。

 もう一つの原因は疲れて握力が弱まり、球速や制球が失われる。これを、小手先で何とかカバーしようとするから、腰が開いたり、腕が下がったり、投球フォームが変わり、ますます球威や制球がなくなってしまう。疲れが原因の場合は無理して投げ続けるのではなく、リリーフ投手に後を任せるべきである。終盤、再度登板してもだめだ。弱った筋力は少々休憩しても元には戻らない。へたすれば、投球フォームを崩し、スランプに陥ってしまう可能性がある。

 冷静さがなくなっている場合には、平常心を取り戻す努力をする。が、言うほどには簡単でない。「打たれるかもしれない」「点を取られたらどうしよう」といった後ろ向きの考えにとらわれているからだ。一度恐怖を感じると簡単にはぬぐい去ることはできない。だから、平常心を取り戻そうとするよりも、居直って気合を入れることである。「打たれてもいい」「四球でもいい」「自分が一番投げたい球を投げたいコースに投げる」「とにかく悔いが残らない球を投げよう」「それで結果が出なければ降板する」という気持ちで投げる。だめだったら、リリーフ投手に後を託せばいいのだ。この場合、後で再登板すると再び好投する場合がある。いつの間にか平常心を取り戻すからだ。

 投手が自滅寸前にある場合、攻撃側が圧倒的に有利な立場にある。だからこそ、打者は気負ってボール球に手を出したり、力んでド真ん中の球でも打ち損じる可能性がある。少年野球の投手が投げる球をプロ野球の選手が空振りすることだってあるのだ。

 ベンチサイドとしては、常にリリーフ投手を準備させておくことだ大切である。好投している時ほど、突然の崩れに対して間に合わないことがある。リリーフ投手は試合が開始されたら、肩を作っておかねばならない。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年11月22日掲載)



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