「草野球の窓」

第62章
「ヒットエンドラン」

 ヒットエンドランのサインを出しても成功しないことが多い。打球がフライやライナーとなり、ゲッツーを食らってしまうのは致し方ない。しかし、打者および走者のどちらか、あるいは両方がサインを実行せず、成功しないことが見受けられる。サインを見逃したのではない。分かっていて実行しないのである。
 走者にしてみれば、打者が本当に打つのだろうか、フライになるのではないかという不安がある。打者にしてみれば、走者は走ってくれるのだろうか、ボール球を打ってフライにならないだろうかという不安がある。このため、お互いに相手の動きを見合ってしまい、実行しなかったり、中途半端なプレーになってしまう。

 そもそもヒットエンドランの効果は、

(1)走者が盗塁のようにスタートするので、内野手がベースカバーに入ろうとして野手の間が空き、ヒットが生まれる確率が高くなる。
(2)ヒットが出れば1塁走者は一気に3塁まで進塁できる。
(3)内野ゴロによるゲッツーを防ぐことができる、などにある。

 一方、フライやライナーを打てばゲッツーとなってしまう危険性の高い作戦である。草野球では内野ゴロのバウンドが高いので、ゲッツーを食らう可能性は低い。であるならば、敢えて危険を冒してまでヒットエンドランを敢行する意味があるのだろうか。

草野球におけるヒットエンドランの効能を考えてみる。

 第一は、消極的な打者に積極性を持たせることができる。初球は例えド真ん中であっても必ず見逃す癖を持った打者がいる。初球の甘いストライクを狙わせることによってヒットが生まれれば、その打者は積極打法の味を覚える。
 第二は、草野球ではよく飛ぶ打球、すなわちサード前の大きなバウンドのゴロに対し、3塁手は投手のすぐ横あたりまで前進して捕球し1塁へ送球する。この際、1塁走者は3塁まで一気に走れる場合が多い。ヒットエンドランをやられたら、投手はすぐサードベースカバーに入るべきなのだ。あるいは、打球処理した3塁手はすぐベースカバーに戻らねばならない。だが、草野球ではこのベースカバーを怠るケースが非常に多い。したがって、サードベースががら空きとなり、2塁まで走ってきている走者は3塁をも陥れることができるのだ。
 第三の効能が最も重要な意義を持つ。ヒットエンドランは危険性の高い作戦である。打者と走者双方、すなわちチームとしてお互いが信頼関係にないと実行できない。ヒットエンドランが実行できるチームは、チームがお互いに信頼し合える関係にあることの証明なのである

 緊迫した試合では使いづらい作戦だが、チームの信頼感醸成に有効である。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年6月25日掲載)


【幹事補足】
 師は冒頭で打者と走者の動きについて述べておられますが、ヒットエンドランのサインが出たら、走者は「GO!」しかありません。打者に賭けるしかないのです。余計なことを考えない方がいいでしょう。打者が空振りしても盗塁で進塁できる可能性がありますし、内野ゴロでもゲッツーを免れます。つまりすべては打者次第です。ですから信頼することが重要なのです。
 ただし、唯一気にしなければならないのは「外野フライ」「外野ライナー」です。走者はこれだけに留意し、外野フライの場合は戻れるようにしたいものです。この時、ベンチの声は大変重要になってきます。打者を信じてダッシュした走者に対して、明らかに捕球されそうな外野フライが上がったなら、即座にバックの指示を与えてください。これが師のおっしゃる「チームとしての信頼関係」につながるのだと私は考えます。



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