「草野球の窓」

第61章
「無死満塁」

 無死満塁を迎えた。攻撃側は悪くても2点、うまくいけば4点くらい取れると皮算用をする。しかし、そのイニングが終わってみると無得点。「ああ、せめて1点だけでも取っておけばなー」と大いに悔やむことがある。無死満塁のケースは意外に攻めあぐねることが多い。何故、絶好のチャンスなのにモノにできないのだろうか。

 無死満塁の場面は守備側にとっては大ピンチで、必死である。しかし、守備側がとれる作戦は打者勝負しかないのである。つまり、打者に神経を集中せざるを得ない。盗塁される恐れがないので打者に集中できるのだ。
 これに対し、攻撃側には、
(1)積極的に打っていく
(2)待球して押し出しの四球を狙う
(3)スクイズで確実に1点を狙う   の3通りの作戦があり得る。
 攻撃にバラエティがあるだけに、攻撃側はどの作戦で臨むのか迷うのである。したがって打者はバッティングに集中できない。また、打者は「よし、ここでヒットを打てば俺はヒーローだ」とばかり気負って打席に立つ。この気負いがボール球に手を出させたり、外角球を引っかけたりさせる。このため、結局無得点に終わってしまう。

 大事なことは、ベンチの作戦を明確に打者に伝えることだ。それを伝えるサインを徹底すべきだ。積極的に打って出るならヒッティングのサイン、待球するならウェイティングのサインを出す。カウントによってスクイズを決行するつもりなら、やはりウェイティングのサインを出すべきだ。打者は何もサインが出ていなければベンチの作戦が分からない。打者によってはコチコチに固まっていて、サインを見るユトリのない場合がある。そんな場合、タイムをとって言葉で作戦を伝えることも必要である。もっとも、固まっている打者にヒットは期待できないが…。

 次に重要なことは、すでに何回も述べているように、相手バッテリーの注意力を打者に集中させないことだ。打者がベンチのサインを見ることもなく鼻息荒く打席に立っていれば、バッテリーは安心して打者の料理法に集中できる。しかし、打者がサインをじっくり見ていれば、バッテリーはスクイズの可能性を考え、1球はずして簡単にはスクイズさせないぞという警戒と強い意思を攻撃側に示す必要がある。攻撃側にスクイズする意思がなければ、カウントを有利にすることができる。待球作戦なら、ボックスのホームベースよりに立つ。投手は死球を恐れ、インコースには投げにくくなる。その分、ストライクゾーンが狭くなる。

 再度言う。

 ベンチの意思を明確にし、確実に打者に伝えること。
そして、
 相手バッテリーの注意力を打者のみに集中させない工夫を凝らすこと。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年6月16日掲載)


【幹事補足】
 今回は、アンケート結果でサインプレーをするチームが少ないという結果が出たことが背景にあるのでしょう。師のおっしゃることは、私もその正当性を実戦で十分確認してきました。
 ただ、これもアンケート結果でわかったことですが、サインプレーができるような十分な指揮系統が確立していないチームが多いのです。まずはこの点を考える必要があるでしょう。チーム内に経験者がいるのであれば、指令塔となってもらいましょう。それが年少者であっても信頼して任せてはいかがでしょうか。完全に横並びの選手構成であれば、順番に指令塔役を務めていくのも手です。その役を果たすには必然的に野球理論を意識しなければなりません。それがすでに向上の一歩なのではないかと思われます。



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