高校野球などでは、エースが予想外に調子が悪く、あるいは相手チームの打力が想像以上に力強く、完膚なきまで打ち込まれる場面がしばしばみられる。それにもかかわらず、なかなかリリーフ投手を出さない監督がよくいる。他に投手がいないのであれば仕方ない。しかし、登録選手には何人かの控え投手がいるにもかかわらず、リリーフを出さないのである。そういう監督たちは恐らく、控え投手の力はエースに比べて余りにも低すぎ、打ち込まれてもエースの方がまだましだ、と考えているのであろう。あるいは、地方予選もほとんどエース一人が投げ抜いて勝ち上がってきた。だから甲子園でもエースに全てを託し、エースが打ち込まれたらエースと共に心中するしかない、と考えているかもしれない。
だが第一に、エースの力量は「普段どおりに投げられれば」という前提での話である。調子が悪く、普段どおりの力が発揮できなければ、控え投手の方が力量が上ということもありうる。 第二に、投手交代の時期が遅れ、得点差が大きくつきすぎると、他の選手の気力・集中力を失わせ、バッティングも守備も粗くさせてしまう。要するに試合にならなくなる。エースに投げ続けさせても試合にならないのであれば、まだ挽回のチャンスがあるうちに投手を交代させ、流れを変えることによってチームの気分転換を図ることが必要となる。例え、控え投手が懸念どおり打ち込まれたとしても、試合にならない点は同じではないか。それならば、流れを変えるかもしれない可能性を追求すべきである。 第三に、50〜100名もいる部員の中から選ばれた16名の登録選手を信頼すべきである。3年生は勝つために苦しい練習に耐え、これが最後の試合なのである。選手登録された以上は、試合に出て活躍したいと思っている。エースが打ち込まれ、自分が投げなければと思っているのに、登板の機会すら与えられなければ、自分は監督から全く信頼されていないと考えるに違いない。 監督(=上司)の仕事は、まず選手(=部下)を信頼することから始まる。 これ、ゆめゆめわすれることなかれ。 |
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